気づいたらしずかちゃんだったので道具を借りパクしてみた   作:さわやふみ

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5.小金稼ぎと初経験

しずかちゃんになってから数日が過ぎていた。

 

記憶喪失というか人格が変わったことも今のところ周りにはバレずに過ごせている。少しでも怪しまれた時は『さいみんグラス』を使っている。

 相変わらず記憶は戻らないが、この生活が軌道に乗ってきたこともあり不自由は感じていない。ただ、小学生だけあって自由に使えるお金は少なかった。ジャイアンやスネ夫から巻き上げたとしてもたかが知れているし、ここらで纏まった資金を手に入れておきたいところだ。

 しかし未成年だと自由に稼げないし、急激に資金が増えても怪しまれるだろう。

 

直接のお金集めでドラえもんの道具を使うならやはり『フエール銀行』一択となる。

 

フエール銀行は、1時間ごとに利息がつく、未来の銀行の携帯型ATMだ。1時間あたりの金利は、普通預金なら10%、1か月定期預金なら20%、1年定期預金なら50%で、融資だと20%。

 各種手続きは窓口の前にお金を置くだけであり、個人の特定と手続きは全て音声で出来る。

 お金を預けておくだけでとんでもない利子で増えていくという最強のアイテムであり間違いなくS級なのだが、この道具の使用は抵抗があった。

 直接、道具をお金稼ぎに使うと罪に問われる、と言う漫画でのドラえもんの言葉を思い出したのと、そもそもフエール銀行は未来の銀行だ。今の時代から預金したアクセスログ自体を残すことが怖い。そしてこんな危険な道具をタイムパトロールが監視していない可能性は低い。

 

よってこの道具もやはり念のためパスする。

 

お金を稼ぐならあくまで間接的にしておきたい。しかもなるべく身の丈にあった金額感で。

やり方はいくつかありそうだが、道具の併用が必要そうだ。

 

俺は早速、のび太との約束をとりつけドラえもんに合うことにした。いちいちのび太を介して会いに行くのは面倒なのでいずれはドラえもんがこちらに来てくれるよう調整しておきたいところだ。

 

「のび太さん、ドラちゃん。この間はありがとう。ピアノの練習が厳しくて助かったわ」

 

「よかったね。落ち着くまで借りてていいよ」

 

「ありがとう。あ、そうだ。使い方がちょっと良く分からなくてのび太さんで試してもいい?」

 

「うん!いいよ!」

 

のび太はあっけらかんと応える。

 

「じゃあいくわよ」

 

俺は怪しまれることなくさいみんグラスを通してのび太を見据える。

 

「あなたは段々眠くなる……。ちょっと1時間ばかり寝ることにしました」

 

言葉を言い切る手前で既にのび太は座りながら寝ていた。

 

(上手く寝てくれた。さいみんグラスは2人いると相手にしにくいからドラえもんだけにしないとな)

 

「わー!寝たわ!すごい!」

 

「しずかちゃん、のび太くんはさいみんグラス使わなくても寝る子だよ」

 

確かにそうだった。

 

「さて、ドラちゃん。あなたは『ラッキーガン』と『かならず当たる手相セット』を持っていたら私に貸したくなる……」

 

先制攻撃だ。これは賭けでもあった。さいみんグラスがロボットであるドラえもんに有効か不明だったからだ。

失敗を考慮して最初はつまらない内容で催眠を試しても良かったが、根拠のない自信もあった。仮にドラえもんに催眠が効かなかったとしても何とかやり込めるだろうし、何よりしずかちゃんになってから調子に乗ってスリルを求めていたこともあるのかもしれない。

 

直球で際どい要求を伝えたが果たしてドラえもんは……?

 

「うん、あるよ〜」

 

実にあっけらかんとしてポケットから2つの道具を取り出してくれた。

 

「そ、その道具を私に貸してね」

 

「うん、分かった」

 

若干、反応っぷりが催眠による効果なのか分かりにくかったが、疑いも持たずに平然として道具を貸すドラえもんを見て確信できた。

 

あとは『メモリーディスク』でドラえもんの記憶を消して完了だ。

ただ一点だけ懸念がある。メモリーディスクは頭の上に置いて使用するため、記憶を消去した後にポケットにしまうまでの記憶はどうしても残ってしまうのだ。

毎回、メモリーディスクをポケットにしまう際、目の前に(しずかちゃん)がいたらさすがに怪しまれてしまうだろう。

 

俺がのび太家を離れた後に『メモリーディスク』でしずかちゃんと会っていた記憶ごと消すよう『さいみんグラス』で催眠をかける。

 

それがベストだ。

 

「じゃあ私がこの部屋を出たらドラちゃんは『メモリーディスク』を使って一時間前までの記憶を消してね。あ、のび太さんの記憶もね」

 

「はーい」

 

自分の記憶を消す事なのに従順に聞いてくれた。一時間前の記憶消しはちょっとやりすぎたかもしれないが初回だし念のためだ。

 

そのまま(しずかちゃん)はのび太家を後にした。

 

そして土曜日、学校が休みの日を迎える。

 

この日、友達と一日中遊ぶと親に言い残して俺は競馬場へ向かった。自由に使える資金を手に入れたいためだ。

 しかし競馬場には未成年者は単独で入場出来ないので、その辺のお父さん(・・・・)候補を探す。

 

「あのぉ……今日1日私のお父さんになってください」

 

一人歩いている裕福そうな小太りの中年を見つけて、『さいみんグラス』を通して語りかける。しずかちゃんの可愛さなら道具を使わずとも丸め込めるかもしれないが別の意味にとられてしまうとやばいので、道具で確実に本当のお父さんになってもらう。

 

「も、もちろん。いいとも」

 

催眠効果もあって即答だ。

この人も美少女の父親に1日なれるなんて幸運なことだろう。

 

ちなみにここに来るまでに既に1つ道具の効果を発動している。それは『かならず当たる手相セット』だ。手相を自分が望む内容で書き込める代物であり当然、金運の相を自分にセットしている。

 

ただこれだけで競馬場にのぞんでも大した収入は見込めない。

 

そこで『ラッキーガン』の登場となる。

 

ラッキーガンは、人の運を操るリボルバー(回転式拳銃)だ。2色の弾があって、赤色の弾が当たった人は幸運に恵まれ、黒色の弾が当たった人は不運に見舞われる。

 装弾数は4発。赤色の弾が3発、黒色の弾が1発。初めにこれらの弾をすべて装填しロシアンルーレットのように撃つ。

 

これをお父さん(・・・・)にむけて撃つ。

赤が出る確率は75%なのでまぁ大丈夫だろう。仮に黒が出ても不幸はお父さんに向かう。

 

ピンポーン♪

 

赤が出た。

この状態でお父さんに万馬券を購入してもらう。

 

「お父さん、当たったらお金分けてね♡」

 

これで仕込みはOK。金運が上昇しているしずかちゃんのフラグをたてることで『かならず当たる手相セット』とのコンボが発動するだろう。

 

 

数時間後

 

 

20万円ほど稼いでホクホク顔で帰宅。

金額はもうちょっと稼ぎたい気もしたが多すぎない適度な量だ。なお、1日お父さんにはバイト代として2万円を握らせたし不平はないでしょう。さいみんグラスでジャイアン達のように直接お金を巻き上げても良かったが、こちらのやり方のほうが後ろめたさもない。

 

ただこのやり方はもう2度とやらないほうが良い気がする。『ラッキーガン』を使っていたらいつか25%の確率で黒が出る。

 不運のイベントは人それぞれだろうけど、のび太は車や自転車に轢かれてドブに落ちていた。

いくら他人のオジサマがくらうとしても、20万円に相当する不運としてはリスクがデカい。打ちどころによっては死ぬかもしれないし、さすがに死なれてしまうと罪悪感が出る。

 

 来週はテストもあるし一旦、道具の利用はこのぐらいにしておいて、大人しくしずかちゃんとして暮らすことにするか。

 美少女だと買い物するにしてもオマケされたり、もてはやされたりと平凡な日常でさえ楽しいのだ。また日に3回という日課になってきているお風呂タイムもちょうど楽しみの1つになってきている。未だ他人の体という感覚を拭いきれず触ることも躊躇っていたが、気づいてしまったのだ。清潔を保つためにやむを得ずシャワーをあの場所にあてた瞬間、実感したことのない得も言えぬ快感が体中を駆け巡ることを。

このまま当て続けるとどうなってしまうのか。

 

(試してみたい……!)

 

恐らく女として体験するエクスタシーが初の体験なのだろう。

未開の領域に入ってしまいそうな気持ちになるため控えていたが、どこかもどかしい気持ちの日々が続いていた。今日こそこのムラムラを何とかしたい。

 他人の体を、しかもあのしずかちゃんの体を触るという罪悪感に対して、ただ体が欲しているだけだと自分に言い聞かせながら風呂の栓を回す。そして湯が湧くまで宿題を済ませてしまおうと思ったが気持ちが高揚して全く手が付かない。

 

今頃のび太さんは何をしているのだろう……。

 

 

 

……ん?

 

(なぜ今のび太が出てきた?)

 

しかも俺は“さん”付けで呼ぶことはない。

まぁ、いい。今は他のことなどどうでもいいのだ。

 

風呂が湧き上がるお知らせ音が聞こえ、俺は希望に満ちた表情で浴室へ吸い込まれていった。

 

 

 

 

 

(自主規制のためこのシーンカット)

 

 

 

 

 

部屋に戻ったしずかちゃんは余韻に浸り惚けていた。

乾ききっていない髪は乱れ、顔はまだ紅潮し火照っている。

 

想像以上にすごかった。女の快感は男とは違い、周りが見えなくなるほど頭が真っ白になった。時折、押し殺していた甘い吐息が、可愛らしくも卑猥な喘ぎ声となって浴槽に響き渡った。鏡に写るしずかちゃんがそれに合わせてよがる姿も興奮を引き立たせていた。

 

ただ、絶頂と同時に虚しさも感じた。初めて女の快楽を知りつつも一人で何をしているんだという気持ち。自分の体だがしずかちゃんという他者の体をイジってしまった罪悪感が後から押し寄せた。

 誰も知らぬ夕暮れ時、(しずかちゃん)は一人複雑な気持ちになっていた。


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