「エメラルドさん、今度、私の先輩が皐月賞に出るんです!一緒に行きませんか?」
「はい!行きます!皐月賞、テレビでしか見たことないんです!」
「はい!サクラスターオー先輩っていうんですけど、最後の末脚がぐわーってかっこいいんです!」
「あ、私この前の弥生賞テレビで見ました!外からぐわーんって逃げてるビュコー先輩を差し切ったの、本当にかっこ良くて!」
「ですよね!今度の日曜日、正門前に集合にしましょう!」
「わかりました!チヨノオー先輩、お誘いいただきありがとうございます!」
「はい!楽しみにしてますね!」
クラスの友達とお昼ご飯を食べた帰り道。チヨノオー先輩に皐月賞観戦へのお誘いをいただきました!何度か親にレース場に連れて行ってもらったことはありますが、クラシックレースの感染は初めてです!
「チヨノオーさん、アルダンさん、おはようございます。」
「おはようございます~。チヨノオー先輩、アルダン先輩」
「二人ともおはよう~。・エメラルドちゃんは眠そうだね。」
「はい…。楽しみすぎて昨日は眠れなくって…。」
「あら…。大事なレースで居眠りしていたら損ですよ~?」
「はい…頑張っておきます…ふわぁ…。」
「じゃあ行きましょうか!」
朦朧とする意識の中、アルダン先輩とヤエノ先輩に手をひかれながら駅へ向かいます。そういえば、トレセン学園に入る前も全然眠れなかったんだっけ…。ヤエノ先輩が、半分寝ている私を気遣って乗り換えのないルートにしてくれました。4月の温かい陽気の中、ふかふかの電車の椅子に座ると、かろうじて保っていた意識が遠くへ行ってしまいます。
アルダン先輩に起こされると、もう中山につくタイミングでした。あれ…?私、いつからアルダン先輩の胸の中で寝てたんだろう…。まだ眠い目をこすりながら、先輩に手を引かれ電車を降ります。
「わぁ…!すごい人の数…!」
中山レース場の最寄り駅では、ホームが埋め尽くされるほどのレース新聞を持った人の波が改札口に吸い込まれていきます。あれ?アルダン先輩はこういうところにいても大丈夫なのかな…?
「エメラルドちゃん、きょろきょろしちゃうとはぐれちゃいますよ?」
「チヨノオー先輩、ありがとうございます、私、こんな人が多いの初めてで…。まだレースまで時間あるのにこの人の数じゃちゃんと見れるか不安です…。」
「大丈夫ですよ!スターオー先輩に頼んで、いい場所を用意してもらったので!」
チヨノオー先輩に連れられてやってきたのは、レース場にある関係者席。
「わぁ…私こんなところ来るの初めてです!」
「えへへ…実は私もなんだ~…。アルダンさんは来たことあるんでしたっけ?」
「ええ。幼少のころから多くのレース観戦はこのような場所か映像でしたから…。」
…アルダンさん、なんだかちょっと寂しそう…。
「すみません、私は何か食べ物を買ってきますね。」
「あ、ヤエノ先輩、私も行きます!レース場の焼きにんじん、なぜかおいしそうに感じちゃいますよね~。」
ヤエノ先輩と屋台をめぐってお昼ご飯を調達します。私は焼きにんじんと焼きそば、それにチョコバナナとポップコーンを買いました。持って帰ったらアルダン先輩にびっくりされちゃいましたが…。
そのあと、10レースの時間までみんなでご飯を食べ流れレース観戦をしながら過ごしました。先輩から教わるレースのことは新鮮でとても勉強になりました。
気が付くとスターオー先輩の出る皐月賞の本馬場入場の時間でした。
「スターオー先輩、調子よさそうですね!」
「はい!弥生賞の後もすごい強度で練習してましたから!」
「1番人気は譲ってしまいましたが…。スターオー先輩なら勝てるレースですよ。」
「…私はゴールドシチ―先輩が気になります。見栄えが他とは違うような…。」
4人でレースに関する話をしていると、青いスターターに乗った係員が旗を振り、ファンファーレが流れます。
『スタートしました!どっと飛び出しています。20頭――』
「やっぱりビュコー先輩が…!」
「マティリアル先輩は後方から…」
「…届くかな…。ああっ!アサクサマジックが…!」
「スターオー先輩!!いけーっ!」
「きた!来ましたよ皆さん!やったー!」
スターオー先輩は外からぐーんと上がってきて、目のウマ娘をぐーんと差し切って1着です!
「スターオー先輩のとこ行きましょ!ね!」
チヨノオー先輩が今にも走り出しそうな勢いで扉の前に立っています。ヤエノ先輩もアルダン先輩もいつもと雰囲気が違います…。やはりアツいレースを見た後だからでしょうか。
ウィナーズサークルに降りると、ちょうどスターオー先輩がレース後の検査から戻ってきたところでした。すごい数のカメラが向けられています。スターオー先輩はマイクの前に立つと、ルドルフ先輩のように人差し指を天につき上げました。それと同時に、大勢の観客からわぁっ!と歓声が上がります。…これは三冠宣言!驚きと同時に、心の奥底に炎がともりました。今すぐにでも走りたくなる衝動を抑えながら、スターオー先輩のインタビューに聞き入ります。
インタビューの後、スターオー先輩に控室に招いていただきました、やっぱり現役のG1ウマ娘は私なんかとは体つきから雰囲気まで何もかもが違います
「初めまして。ブラックエメラルドちゃん。私はサクラスターオー。話はチヨからよく聞いてるよ」
「ひゃい…よろしくお願いします。サクラスターオー先輩。」
「あはは、そんな硬くならなくていいよ。そうだ、私のこと”スター”、って呼んでよ。」
「いえ…でも…先輩ですし…。」:
「ん~…。じゃあ、私からのお願い。ダメ?」
「うぐ…わかりました…。す…スター、さん。」
うぅ…こんな呼び方…緊張しちゃう…。
「ふふ、ありがとう。そうだ、みんなでこの後一緒にご飯でも行こうか。いいよね?トレーナー。」
そうして、私たちはスターさんと晩御飯を食べに行きました。私は気に入られてしまったのか、スターさんの隣でたくさんご飯を食べさせてもらっています。うぅ…ちょっと居心地悪いかも…。
1987年4月19日
第47回 皐月賞 G1
芝2000m 20頭 晴・良
1 3枠6番 サクラスターオー 57 東 2:91:9 2番人気
2 9枠19番 ゴールドシチー 57 本田 2 1/2 11番人気
3 1枠1番 マティリアル 57 岡部 アタマ 1番人気