俺様がカイドウだ!!!! 作:ヘルスパイダー
気になった人は『ドラゴンボールZ 超大魔王』で検索して読んで下さい。
野蛮人の聖地と呼ばれるここ天空闘技場は異様な熱気に包まれていた。
その理由はここでは当然のことであるが、この天空闘技場のスター選手同士、それも超大物の試合があるからだ。
試合会場となる場所には開始1時間前以上から既に満席となっており、誰も彼もがこの試合を楽しみに待っている。
それがまさかこんな結果に終わるとは──―
『この天空闘技場のメインイベント中のメインイベントであるフロアマスターを賭けての決戦がまさか
実況者の説明通り、リングの上ではフロアマスターであるヴァイオレットがボロボロとなった状態で転がっていた。
その反対に、挑戦者であるカイドウは大の大人1人分程の大きさもあるトゲトゲの金棒を片手で担ぎ上げながら、無傷のまま仁王立ちしている。
周りで観戦していた観客達も「流石はカイドウだ!」「やっぱりヴァイオレットでも無理だったか……」「とんでもねぇ奴が現れやがったぜ」とカイドウについて口々に評価する。
僅か10秒ほどにしか満たない試合であったが、そこでカイドウがヴァイオレットに下した強烈な一撃は凡庸な試合100回分を観るよりも価値があったと言わざるを得ない。
さて、急な展開に理解が追いついていない者もいるだろうから、今から時を少しばかし巻き戻しておこう。
あれはカイドウがカルヴァンとの試合を終えてからのことだった。
「いやはや、流石はボスっすね。終わってみればいつも通りの余裕の勝利でしたね」
「ウォロロロォォ! まあ、余裕だったが他の馬の骨よりかは歯応えはあったな」
ご機嫌なカイドウは部下が買ってきた大量の酒を飲み干しながら、部下から祝いの言葉を受け取る。
「ん? ようやく来やがったか」
酒を飲む手を止めて部屋のドアの方をカイドウが睨むと、コンコン! とドアをノックする音が聞こえてきた。
「おう、中に入っても問題ねぇぞ」
「失礼しますボス」
ドアを開けて入ってきたのはいかにも平凡なサラリーマン風の男で、部屋に入るなり手に持ったカバンから数枚の紙の資料をカイドウに手渡す。
それを受け取ったカイドウはペラペラと書かれている内容に目を通しながら、サラリーマン風の男に問いかける。
「なるほど、どうやら事は順調に運んでいるようだな。それで、
「ええ、ありがとうございます。全員が全員とも全てうまくいっているとは言いませんが、目を見張る才能を持つ者が数名いますね」
カイドウが言う
そんな身寄りのない子供を使ってなにをしているのかというと、簡単に説明するなら戦力の増強だ。
行く当てのない孤児を衣食住の保証を条件に、念能力者として育て上げファミリーに勧誘しているのだ。
当然のことながら、それを懐疑的に見る者はいるが、大半の子供はそれが罠かもしれないと分かっていながらも生きる為にその手を取ってしまう。
そして、そんな子供の育成を任せていた念能力者である部下の1人であるサラリーマン風の男が今日カイドウの元に定時報告しにやってきていたのだ。
手渡された資料と報告を聞きながら目ぼしい子供を脳内でピックアップしていく。
「目ぼしいのはギード、アウガ、フウガ、ライガの4人ぐらいか……。そうだな、専属の教育者としてお前らコイツらの親になれ!」
「「「「ええぇぇぇ!!?」」」」
部屋に設置されているテレビを観ながら試合観戦を楽しんでいた部下たち4人は、カイドウからの突然の提案に驚きの声を上げる。
「何を驚いてやがる。別に仲良しこよしの家族ごっこをしろって言ってる訳じゃねぇんだ。一応はガキ共の保護者ってのが世間的に必要だろう。お前らの言うことを聞かなきゃブン殴って言うことを聞かせりゃいいんだ。気楽にやりやがれ」
「まあ、それなら……」
「仕方ないっすね」
「うっす、ボスの命令なら了解です!」
「ガキのお守りか……、面倒だが承った」
全員がカイドウの命令とあればと全員が渋々と了承の意を口にする。
それに満足したのか、手元にある酒を浴びるように口に放り込むと、資料に書いてある1人の子供の写真を凝視する。
「なに、お前らだけに子守は任せねぇよ。俺様も1人面倒を見てみてぇガキがいるからな」
「はぁ? え、ボスもガキを育てるんですか!?」
「……大丈夫なのか?」
「あぁ、そのガキ死んだな」
「ボスが直接面倒を見るガキか……、興味があるな」
「ああぁん?」
部下全員から信じられないといった顔で見られたカイドウは、不機嫌さを隠すことなく部下たちを睨みつけると、全員揃って明後日の方向を向いて口笛を吹いて誤魔化す。
「オメェらが心配するような問題じゃねえよ。それに、ソイツは俺様が拾ったガキだ。礼儀は多少悪いが俺様の言うことならちゃん聞く奴だ。それよりもだ、今後の天空闘技場での試合をどうするかだ?」
部下たちの軽率な発言にカイドウからのお咎めもなく、今後の天空闘技場での立ち回りについて話し合う。
「しかし、やはり前回の試合の結果を見て俺様と戦おうって気概のある野郎が現れなかったな」
「そりゃ仕方ないっすよ。あんなもん見せつけられたら挑む気なんざ失せますぜ」
「なら、やっぱり俺らが200階にまで登ってボスと戦うってのがベストな形じゃないっすかね?」
「だな。まあ、流石に手合わせしたら俺らの体がもたないから不戦勝って形になるがな」
「うんうん!」
ざっくりとした案しか出ないが、フロアマスターとの挑戦権を獲得するにはこの方法しかないだろう。
とりあえず、部下たちはこのまま天空闘技場で活動を続けさせ、俺様はコイツらが200階の闘技者になるまではアジトに戻って力仕事でもするとしようか。
「ボス、お戻りになるのでしたらすぐに車と飛行船のご用意を致します」
「いやいい、たまにはちゃんとした運動もしなきゃ体力が落ちちまうからな。流星街まで走っていくとしよう」
「えっ、ちょっとボス!?」
ガシャン!
部下の静止を聞く間もなく、部屋の窓をぶち破って高さ200階の部屋から出ていった。
普通ならばそんな高さからパラシュートも無しに飛び降りれば死は免れないのだが、この場にいる者全員がカイドウの安否を心配するどころか、ため息を吐いて壊れた窓の弁償をしなければと口にする。
♦
天空闘技場を飛び出し、その巨体に似つかわぬ凄まじい速さで空を文字通り駆けるカイドウ。
六式の1つである月歩と剃の複合した自身のオリジナル技である瞬足に加え、全身から念のオーラを放出して速度を増すブーストを使用したカイドウは人間ミサイルと呼んでも過言ではなかった。
「ウォロロロォォ!! もう酒が切れちまった。やはり
目的地である流星街にいる今後自分の子となる子供に頼む品を考えながら空中を駆けていると、前方から巨大な影が目に入ってきた。
「グオオオオォォォォ!!!!」
「あん? なんだありゃ? トカゲ……いや、ドラゴンか」
カイドウは酒に酔って飛び出したために気づいてはいなかったが、現在カイドウが飛んでいるここは第一級の危険生物が生息している超危険地帯であり、空中ですら安全地帯はなく、そこにはプロのハンターですら死の危険が及ぶ最強生物のドラゴンの縄張りだ。
そんなところに、無防備にもやってきたカイドウはドラゴンにとっての敵であり餌でもあった。
だが──―
「邪魔だ!!!」
「グギャァ!!?」
今回ばかしは相手が悪すぎた。最強生物である筈のドラゴンでさえ、カイドウにとっては視界を遮る羽虫でしかなかった。
無駄に大口を開けて捕食しようとしたドラゴンに対して、念を込めた右ストレートの1発で鋭い歯の大半を根こそぎ砕き、顎の骨は修復不可能なレベルで粉砕され、そのままドラゴンは意識を失って地上へと墜落していった。
「っけ! せっかくの酔いが覚めちまった。まあちょうどいい、このままさっさと流星街に戻るとするか」
落ちたドラゴンに見向きもせぬまま、カイドウは目的地である流星街へと足を急がせる。
♦
ここは流星街の中でも特に闇に近い場所と呼ばれている通称『暗黒道』といい、表と裏のどちらからも爪弾きにされた悪党が集う場所であった。
そんな地獄のような場所で神妙な顔つきをしながら貧乏揺すりを繰り返し、部下からの報告を受け取る男がいた。
「そんで、ボスが天空闘技場を飛び出したって話が届いたのは何時間前だ?」
「はい! ペリップさんからの報告は3時間前ですね」
「それじゃあ、ボスが持っている携帯電話のGPSは今どこを指してんだ?」
「えぇっと……、それが流星街の2つ向こう側にあるグジャ大森林を物凄い速さで移動しています!」
「──―っ、おっかしいだろ!? 天空闘技場からここまで飛行船を飛ばしても数日はかかる距離があんだぞ!?」
「そりゃ、ボスだからとしか言えないでしょ……」
「ああそうだよな!? チックショー、お前らさっさとボスを出迎える準備すっぞ。それとあのガキ共も呼んで来い!」
「「「「「ウッス!!!」」」」」
カイドウが天空闘技場に出かけている間の留守を任された男が頭をガシガシとかきむしりながら部下たちに指示を飛ばす。
数日前にこの流星街の状況の定時報告を任せたペリップからの『ボスがそっちへ帰還した。後は任せる。あっ、それとさっきメールで送ったガキの面倒はコッチで見ることになったから、飛行船やらなんやらの手続きなんかも一緒に頼む』という連絡を受けた男は続いてカイドウが超猛スピードで流星街に接近しているという情報に、常識って何だっけ? と一時的に現実逃避していたが、いつまでそうしていても事態は変わることは無い。
いくら理解不能な事態が起こったとしても、自分の身の保身を守ることにかけてはこの場にいる誰よりも優れている故に、即座に行動に移せるのがこの男の強みなのだ。
だからこそ、カイドウに留守を任せるに一番相応しいと判断され、この場の誰よりも偉い命令権を持つことが許されている。
それから1時間も経たない間にカイドウが好む酒とツマミを用意し終え、別の場所で念の修業をしていたガキ共の招集も完了させた。
「ウォロロロォォ! 流石はジャッカルだな。俺様の帰りを知ってこんな豪勢な宴の用意をするなんざ気が利いてやがる」
「当然ですよボス。アンタが怒って暴れだしたら誰にも止められないからな」
「ウィ~ヒック、ん? なんか言ったか」
「いえ別に、それでペリップの奴から聞いたんですが、あのガキ共をそっちの方で引き取るって話の方は……」
「ああ、事実だ。今は天空闘技場で教育者として養子にすることに決めた」
そうカイドウが口にすると、招集されていた子供の何人かがコソコソと隣の者と喋り出した。
大方誰が選ばれたのかの噂話でもしているのだろうと考え、カイドウは特に注意することなく酒とツマミを楽しむ。
「そういや、姿が見えねぇがアイツはどうした?」
「ああ……、いつもの部屋に引きこもってます」
「そうか、まあ別に構うことはねぇ。礼儀作法なんぞこの街じゃゴミみてぇなもんだ。後で俺様から迎えに行くとする」
ご機嫌な様子のカイドウにこっそりと緊張していたジャッカルはほぉっと安心して胸に詰まっていた息を吐く。
「ウォロロロォォ! 美味い酒と飯だったぜジャッカル。そんじゃ俺様はあのガキんとこに行ってくるから、後のことはまたお前に任せるぞ」
「へい! お任せくださいボス!!」
用意されたご馳走を全て平らげ、ジャッカルに引き続き留守を任せると伝えると、カイドウは目的であった自身の養子となる子供がいる部屋へと足を運ぶ。
そこは他の部屋と違って重厚な造りのドアが鎮座しており、その大きさも他の部屋の数倍以上はあった。
元々この部屋はカイドウの部屋だったのだが、天空闘技場に行く際に空き部屋にするのも勿体ないということで、才能があると思ったその子供に部屋の使用権を譲ったのだ。
「ウィ~、入るぞカンナ」
ノックをすることなく無遠慮に部屋に入るカイドウ。
「……ん? 何か用なのボス?」
部屋の中央で地べたに座って何やら作業をしている女の子が部屋に入ってきたカイドウを見上げてキョトンとした顔で何の用か
その容姿は雲のような真っ白いふわふわとした髪をしており、宝石のような緑の瞳、小生意気そうな顔立ちをした控えめに言っても美少女と呼ぶに相応しい美貌であった。
「おう! 実は天空闘技場でやることが一旦なくなっちまったから帰って来た。それでな、お前への用もあってここへ来た」
「ふぅ~ん、それで私への用って何なのさ?」
「ああ、実はお前を俺様の娘にしようと考えてる」
「……は?」
カイドウの言ったことが理解出来なかったのか、顔が宇宙猫となったまま戻ってこない。
なんとなくそうなるのではないかと予感していたカイドウはやれやれと頭をかきむしりながら、気つけとしてパァン! とカンナの目の前で猫だましをして正気に戻す。
「はっ! 何かとても信じられない言葉が耳に入ったのですが?」
「一応言っとくが、さっきのは空耳じゃねぇぞ。正真正銘お前は今日から俺様の子だ」
「まじか……、私がボスに気に入られているのは知ってるけど~、まさか娘にしたい程だったなんてねぇ~♪」
「…………」
カイドウの娘にするという言葉が本当だと納得すると、カンナはニヤニヤした顔でカイドウの顔を覗き込むが、当の本人のカイドウはその仏頂面を変えることはない。
「俺様を相手に冗談が言える程度に肝が据わってるなら家族ごっこの真似事くらいは出来るだろう」
「ちぇっ! ボスは全然面白い反応してくれないからつまんない」
ぶ~っと膨れっ面で文句を言うがカイドウはそれに答えることなく懐から数枚の紙の束を取り出してカンナに渡す。
「俺様にいちいち強さ以外のことを求めるな。それとホレ、これを受け取れ。あと今日から俺様のことはボスではなく父と呼べ」
「あ~、そうだよね。今日から私の親になるんだし、お父さんって呼んだ方がいっか。っで、この紙に書いてある内容のことなんだけど」
ピラピラと手に持った紙をカイドウに見せつけるようにするカンナ。
その書かれている内容というのは武器と道具の作成依頼といったものだ。
1枚目に書かれていたのはとにかく頑丈な武器数種類の作成で、カイドウのメイン武器である金棒に加えて、薙刀やモーニングスター、大剣に槍などと様々な種類の武器のデザインと形状、そしてカイドウの体格に合うように大きさの指示まで書いてある。
これだけであるのならば、どこぞの鍛冶屋にでも依頼すればいいと思われるが、カイドウが考える頑丈の理想が高すぎるのだ。
カイドウが考える武器とは自身の怪力に振り回せれても耐えうる頑強さを誇り、どんな相手からの攻撃も受け止められる盾にすら転用できる丈夫さを兼ねそろえた、およそ普通の腕の鍛冶師どころか名人などといった腕利きの鍛冶師ですら匙を投げる依頼だ。
だが、カンナならばこの条件をクリアできる実力を持っている。
カンナの持つ念能力の1つである『
そして、2枚目の紙に書かれているのは酒が永遠に出続ける瓢箪型の酒壺を作れ! と命令口調でデカデカと書かれており、恐らくカイドウが一番欲してるのがコレなんだなとよく分かる。
これもまた普通の人間では作成不可能な類のものだが、カンナの2つ目の能力である『
そして、最後の紙には1枚目に書かれた武器を瞬時に入れ替えることができるアイテムを作れと書かれてあった。
「なんじゃこりゃ、いくら私が変化系と具現化系の2つを100%修得出来る特異体質で、それに合った能力を身につけたからって無茶ぶりが凄いんだけど」
「ウォロロロォォ! オメェなら出来ると信じて任せてんだ。必要な材料がありゃ部下に言え、もしそれで文句がありゃ俺様からの依頼って言えばいいし、今じゃオメェは俺様の娘だ。雑に扱うような自殺志願者はここにはいねぇだろ」
「ああ……、だから私を娘にしたのか。つっても、私はどこぞの未来から来た青いタヌキじゃないんだけどもね」
っと言いつつも、無茶苦茶な武器と道具の作成依頼にウキウキを隠せない様子のカンナに問題無さそうだと判断したカイドウが頭を少し乱暴に撫でてやる。
「ふん、その顔なら問題は無さそうだな。困ったことがありゃジャッカルに相談しな。あいつなら俺様も信用も信頼も置ける優秀な部下だからな」
「ふへへへ、うん! 分かったよお父さん♪」
「おう!」
さっそくのお父さん呼びに笑って返し、そのままカイドウは部屋を出ていった。
親子となったにしてはその関係は依頼人と請負人といった淡泊なものだが、その間には確かな信頼があり絆があった。
「それにしても私とボスが親子か……、所詮は書類上だけの偽りの関係だってあの人は思ってるかもしれないけど……」
物心をつく前からこの流星街で生まれ育ち、生きる意味なんかも存在しなかった自分にカンナという名前を授け、食べる喜びも何かを作る楽しさも、そして自分が誰のために生きるべきなのかという存在理由だって作ってくれた世界で一番大切で純粋に好きな人。
「さぁ~って、せっかくお父さんが私に頼んできた依頼品だし、100%満足いく出来の物を作るぞ!!」
そして、2ヶ月後に天空闘技場にいるカイドウ宛に武器と道具が届いたのは言うまでもない。
新キャラのカンナちゃんのキャラ設定に随分と悩みました。
容姿としては小林さん家のメイドラゴンのカンナちゃんを意識しており、性格はざぁ~こと言いそうなメスガキをイメージしています。