俺様がカイドウだ!!!! 作:ヘルスパイダー
あっ、それと作者はドラゴンボールの小説も同時に書いているので、この作品とドラゴンボールの作品交互に投稿していくのであしからず。
流星街にいるカンナからカイドウが依頼した物が届いたその当日のこと。
つい先日天空闘技場にて10勝を果たしたカイドウは、すぐさま金棒の性能を確かめる為に、さっそくフロアマスターへの挑戦権を使用して戦う舞台を整えた。
その日の夜はカイドウに遅れてようやく200階選手になった部下たちの祝いを遅ればせながら開くこととなった。
「ウォロロロォォ! こいつはいい出来だ。使う前から分かる! この手に張り付く感触からして俺様専用というのがビシビシ伝わってくる。そう思うだろお前ら!!」
「「「「ウッス! マジでカイドウさんの為だけの武器だと思います!!」」」」
「ウォロロロォォ!! そうだろそうだろ! 早くこいつでフロアマスターの野郎をブン殴ってやりてぇぜ!!」
酒を飲みながら送られた武器を子供のようにはしゃいで自慢するカイドウに、部下の4人は少々ゲッソリとした様子で酒を大量に浴びるカイドウを見つめる。
「おい、今の話これで何度目だ? 」
「軽く5回は超えてるな」
「あれってボスが養子にしたガキが作った物だろ? 確かに一目見ても業物って感じだが、にしたって自慢話が過ぎると思わねぇか? 」
「ああ、初めはボスが子育てするって聞いた時は不安だったが、今じゃ別の不安が出てきたな」
コソコソとカイドウの耳に入らないようになるべく小声で会話する4人だが、最初の方はこうじゃなかった。
宴の始めの方は届いた金棒を右手で持ったり左手で持ったりしてひと通り感触を確かめた後、悪くねぇとニヤリと笑みを浮かべて金棒を自分の座る椅子の横に立てかけて酒をあおっていた。
そのまま金棒のことは触れずに明日戦うヴァイオレットの話題に移り変わったのだが──―、
それが酒を飲むにつれて明日の試合の話からいつの間にか金棒の話へと戻っていき、笑い上戸となったカイドウがひたすら部下に娘のカンナが作った金棒をいいね! させるちょっとしたパワハラ上司へと変貌していった。
「ウィック! おい、なにそんな俺様に隠れてコソコソ話してんだ?」
「いえいえ、何でもねぇですよボス!」
「ほら、明日はフロアマスターとの対決の日。じゃんじゃん酒を飲み明かしましょうよ!」
ジロリというよりギロリといった擬音の方が正しい鋭い視線をぶつけてくるカイドウに、部下たちは酒を手に持って誤魔化し入ったが、そこでカイドウの親バカ地雷を踏んでしまったのだ。
「ウォロロロォォ! そうだ酒だ。見ろこの瓢箪を!! こいつに入れた酒は念を
再び始まった娘自慢に辟易しながらも、相槌マシーンと化した部下たちの地獄の飲み会は夜通し繰り広げられることとなったのだ。
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「ウィ~ヒック、頭が痛えな……。久しぶりに二日酔いになったぜ。今何時だ?」
部屋の壁に備えつけられている時計に目をやると、時刻は既に昼前を指しており、試合の開始時刻は13時となっている。
まだ試合は始まってはいないが、この時間からでは酒を抜くことは出来ず二日酔いのまま試合に出なければならない。
とはいえ、それはさして問題ではない。ここ天空闘技場に現在滞在している200階クラスの闘技者で自身に敵う者はおろか、こんな悪条件の状態でも攻撃を喰わすような強者はいないと断言できる。
情報は全て部下から送られてくるものであるが、試合のビデオから念を覚えるまでの背景など大体の情報は全て目を通してある。
当然、今回戦う選手であるヴァイオレットの戦闘スタイルから経歴に至るまで全て調べ尽くしており、そのうえで問題ないと判断する。
今仮に問題があるとするならば、床で無様に空になった酒瓶を持ってぶっ倒れている部下たち4人だろう。
「おい! とっとと起きやがれバカ野郎ども!!!」
「「「「ギャッ!!?」」」」
叫び声と蹴りで4人は部屋の壁に埋まるように吹っ飛んでいく。蹴りが飛んでくる直前の叫び声と殺気に意識が目を覚ますよりも本能が危険を察知してギリギリ念で防御をとった為に大事には至ってはいないが、ギャグ補正が無ければ死んでいたと後の彼らは語っていた。
朝っぱらから暴力で叩き起こされた部下たちはウ~ウ~とゾンビのような動きで顔を洗いながら意識を覚醒させ、先に試合会場へ出ていったカイドウの後を追うように急いで服を着替えて部屋を出る。
“ワアアアアアアアァァァァァァァ!! ”
試合会場へ部下たちが着いた頃には既にカイドウとヴァイオレットの両者がリング上で対面しており、それを見た観客達が言葉にならない声を歓声として挙げているのだ。
正直言ってこの歓声は二日酔いの頭には堪えるが、リング上で立つカイドウは嫌そうに顔をしかめているだけで、二日酔いの様子を一切見せていなかった。
「ウィ~、耳障りな歓声だな。頭にくるぜ」
「やれやれ、目の前に立つ私のことは無視ですか。まあ、貴方ほどの強者であるならばその傲慢な態度は許されるのでしょうね」
カイドウの目の前に立つ女のように綺麗な顔をしているヴァイオレットは、キザったらしく薔薇を手に持ち無駄にキラキラした顔を隠そうともせず、観客達に見せつけるような仕草でカイドウに語りかける。
その顔立ちや仕草からはおよそ闘技者ではなくアイドルか俳優にしか見えないが、彼は紛れもなくこの200階の頂点であるフロアマスターの1人なのだ。
ヴァイオレットの戦い方はシンプルな接近戦タイプで、手に持つ薔薇の花弁を操り武器にして戦う様は戦場の王子様と呼ばれるほどに鮮やかで、対戦相手からは鮮血帝と恐れられている。
そんな彼の目から見たカイドウの姿は絶対的な生物であり、決して自分では敵うことのない高みの存在に見えた。
それでも彼がこの場から逃げ出さないのは闘技者としての誇りと、戦士として高みへの挑戦を心待ちにしていたからだ。
『さあ皆様お待たせいたしました。フロアマスターヴァイオレット選手と怪物の異名を持つカイドウ選手のフロアマスターを賭けた世紀の一戦が始まろうとします!! そして、カイドウ選手は金棒を持っての登場だ!! これはつまり、ただでさえ強いカイドウ選手の攻撃力が上がるという! まさに、鬼に金棒といったところでしょう!!』
実況の声がいつも以上のテンションで喋っているが、それもその筈だ。今リングに立っているのは薔薇の貴公子の2つ名で呼ばれているヴァイオレットと怪物の2つ名で呼ばれているカイドウ。
どちらもこの天空闘技場にてトップクラスの実力の持ち主だ。特にカイドウの方は実力の一部もまるで見せずに完勝しているという規格外ぶりに、この試合でヴァイオレットはカイドウの実力を引き出すことが出来るのか? というまるでヴァイオレットでは勝つことは無理だろという認識が広がっている。
「──―以上が試合のルールだ。それでは、始め!!」
試合が始まる前の審判からの恒例のルール説明があったが、内容は変わらないため聞き逃していたが問題はないだろう。
「まずは先手を取らせてもらう! ローズメイル」
薔薇の花弁が大量に空へと舞い上がり、それらすべてが繋がりあってヴァイオレットの全身を覆う鎧へと変貌を遂げた。
その強度はおよそ花弁とは思えない程に硬く、その重量は花弁らしく軽やかなもの。火、水、雷、土などの属性攻撃にも耐性を持っており、かつてカルヴァンと戦って勝てたのもこの花弁の鎧があったからこそなのだ。
だが、それでもヴァイオレットの胸中は不安で押し潰されるかのようであった。
今まで幾多の強敵たちからの攻撃を防いできた絶対的な信頼を持つこの鎧ですら、目の前のカイドウの攻撃を防げる未来のビジョンがまるで見えないでいる。
「ほぉ、操作系と強化系の合わせ技か。効率としては悪いが、結果としては見た限り上出来な発だな。だが──―」
ヴァイオレットの作り出した鎧を見て感心するカイドウだが、今回は娘が作ってくれた金棒の初披露という門出の時、普段ならば余裕を持って相手の全力を引き出してからトドメを刺すのが彼の流儀だったが、これほどこの金棒の実戦相手に相応しい存在はいないといった状況に、初手からトドメを刺す気構えでいた。
「この金棒を持った俺様に初めて出会っちまったのが運の尽きだったな」
不敵な笑みを浮かべると、手に持っていた金棒を逆手に持ち変え腰を深く落とす。
「こいつは本来なら剣で使用する技なんだが、やろうと思えば金棒でも使えるとっておきだ。まあ、剣による斬撃じゃなく、金棒による打撃になっちまうから技名を少し変えて──―」
途端にカイドウの姿がブレたかと思えば、先程まで立っていたカイドウの位置から強烈な破壊音とリングの石板が粉砕されて巨大な砂埃が生じた。
気がつけばカイドウはヴァイオレットの目の前に接近しており、咄嗟にヴァイオレットは残った薔薇の花弁を全て自身の前に壁として展開するもその行動は何ら意味をなさなかった。
『アバンストリーム』
その技名が聞こえたと同時に、目の前の花弁の壁は搔き消えてしまい。ヴァイオレットの意識は宙を舞い、体は天高く吹っ飛んでいた。
「……がはっ!?」
何が起こったのか理解できないままに、ヴァイオレットは地面への衝突による痛みによって意識を取り戻したが、立ち上がろうにも全身の骨が砕かれたかのような強烈な痛みと痺れによって指一本動かすことさえできないでいた。
「ウォロロロォォ! まだ意識を失っていねぇとは流石だな。いや、意識を取り戻したといった方が正解か?」
小さく息を整えようと必死で浅い呼吸を繰り返すヴァイオレットに不用心に近づいていくカイドウ。
だが、それよりも早くヴァイオレットに近づく者がいる。それは、幸か不幸かこの試合の審判を任された男だった。
「……ヴァイオレット選手戦闘不能! よって、この試合の勝者!! カイドウ選手!!」
彼は辛うじて息をしているヴァイオレットの状態をひと通り確認すると、全身の骨は砕けているかひび割れている様で、全身から皮や肉が裂けて血が溢れ出ている。
こんな状態では試合はおろか、一刻も早く治療しなければ命に関わってくる重症である。
そう判断した審判は両手をカイドウや観客達に分かるように大きくクロスさせ、ヴァイオレットの戦闘続行不可能と宣言する。
『この天空闘技場のメインイベント中のメインイベントであるフロアマスターを賭けての決戦がまさか
審判の宣言を聞いた実況の者が声高々にカイドウの強さを改めて認識させる。
そして、あまりにも一瞬な出来事に事態を吞み込めずにいた観客達もポツポツと現状を理解できてきた者が現れ始め、口々にカイドウを評価する声が上がりだした。
「早く救護班急いで! ついで緊急治療の必要性もあり! 直ちに病院への連絡も!!」
審判の男は腰に下げていた無線機を手に取り、控室にいる救護班へ出動の手配と病院への連絡を済ませるように指示する。
「ウォロロロォォ! 今回はこの金棒の出来を確かめる試金石に使わせてもらったが、次にまた戦う機会がありゃ今度こそテメェの力を見せてもらうぜ」
「──―っ、次こそは、必ず満足のいく試合を──―」
「もう喋らないで! 君は絶対安静の状態なんだ。あっ、救護班こっち! 急いで!!」
息も絶え絶えながらに必死に言葉を紡ごうとするヴァイオレットを審判はなだめながら救護班へと引き渡す。
「ああ、次はもっと強くなったオメェと戦いてぇ」
担架に担がれて試合場から消えていくヴァイオレットに対して、カイドウなりのまた会おうという意味を込めた別れの言葉を送る。
こうして、いつも以上にあっけなく天空闘技場において最も名誉なフロアマスターの称号をカイドウは手にれたのだった。
次回から本編であるハンター試験に突入させようと思います。
これまでの話でいかにカイドウが化け物じみた強さの持ち主か理解できたでしょうから問題ないですよね?