転生先は競走馬 え?ウマ娘も?   作:ちょこ@みんと

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2023年シナリオに登場の強い3頭
さんざん苦しめられた3頭
完全にイメージです。


5 ウマ娘編 選抜レース!

トレセン学園に無事入学。私とシロは第7クラスというクラスに入れられた。

なんで全7クラスの内7番目なのかは謎だが、1から6のクラスには、過去活躍した名だたる名馬がいた。

恐らくだが、ある程度の年代で区切られているみたいだ。同学年となる名馬相手に、どのようにレースをしていこうか、戦々恐々しつつも机に置いたクッションに顔をうずめて考える事にした。

 

「って、なんで教室にクッション持ち込んでいるのかな~?」

 

隣の席になったシロに問いかけられるが、それをあえて無視する。食う・寝るの2つが私の趣味であり生きがいと知っているシロは、基本的に私の好きな様にさせてくれる。

だから中等部でも授業中にクッション持ち込んで爆睡していても、横でのほほんと笑っているだけだった。試験はシロと常にワンツーを決めていたので、先生方も文句を言えなかったのもあるけど。

 

入学式(寝ていたので何も覚えていない)を終えて教室に入り好きな席に座り、今は担任が来るのを待つばかり。なので、持ち込んだクッションを取り出して顔をうずめても何も問題はないはず。

 

「いや、問題しかないだろ?」

 

前の方から声が聞こえ顔を上げると、前の席に座ったウマ娘がこちらをジト目で見ている。そのウマ娘の左右に座っているウマ娘もこちらを見ている。

見知らぬウマ娘の接近にシロが気性難を発揮して、表情をスンと消す。俺や仲の良いウマ娘以外はこんな感じだから、俺は慣れているが3人の視線に動揺が混じる。

 

シロと三者三様の視線を受けているこの状況で俺は

 

改めてクッションに顔をうずめた。

 

「いやいや、だからなんでだよ?」

 

「何? ネコちゃんのやることに文句あるの?」

 

前のウマ娘とシロが睨み合う。一触即発状態となる。……が、左右の2人は気にした風も無い。

 

「はっはっはっ! いやぁ~、中々に愉快な者たちがいるようで、楽しみだな!」

 

「……どうでもいいよ。お前が静かにして欲しいけど」

 

私以外の4人のウマ娘がそれぞれ話始めるが、私はそれらをまるっと無視する。 あ゛ぁ~~~……クッションが気持ちいいんじゃぁ~~~……

 

「つか、こいつもある意味すげえな」

 

「いいではないか! よく寝ることも大事な事だ! 大いにいいではないか!」

 

「いやいや、教室に持ち込んでいいのかよ?」

 

「で? あんたたちは何なの?」

 

シロの声に苛立ちが混ざり始める。これはもうすぐ爆発しそうだ。爆発したら後から俺が大変な事になってしまうから、とりあえず起き上がってシロの代わりに話すとしようか。

 

「……ねむ……。で? おたくらは誰?」

 

「ああ? ……ああ、そうか。まだ名乗って無かったな。俺はアウトオブアメリカ。こっちのうるさいのがインデュラインで、こっちの静かなのがテイクオフ。クラスに入ったら初っ端からクッション取り出したウマ娘に話しかけたくなっただけだ」

 

「そう? 話したんだからもういいよね? おやすみ……」

 

「待て待て。こっちは名乗ったんだからそっちも名乗れよ」

 

「えぇ~? 面倒……」

 

「分かりやすい程に眠そうだな! 改めて太陽王・インデュラインだ! 以後よろしく!」

 

「……テイクオフ。よろしく」

 

(……)くいくい

 

3人の自己紹介を聞いていると、机の下でシロが俺の袖を引っ張る。警戒を緩め始めている合図だ。

シロは他人に関して好き嫌いが激しい性格をしている。おまけに俺を妻だの夫だの公言している程に好意を寄せている。一部ふざけている節も見られるけど。

なので、俺がふざけたりバカな事をすると周りの反応を見る。批判的・拒否的な人には敵対するし、おまり気にしない・受け入れる人には寛容的になる。

 

実際、今のクラスの中で私たちに話しかけているのは目の前の3人だけで。他のクラスメイトは遠巻きにこちらを窺ってヒソヒソと話している。

シロ的にはこの3人は『問題無さそう』という感じなのだろう。無表情に色が戻り始める。

 

「……では、こちらも。私はシュネージュネコ。ネコと呼んでくれ。食う寝るに全てを注ぐ人生を歩もうとするウマ娘だ」

 

「ホワイトロリータよ。シロって呼んで」

 

「およ? そっちの無表情から敵意が薄れた?」

 

「シロってよんで。ネコちゃん第一主義なの。ネコちゃんの敵は私の敵よ」

 

「ああ、なるほど。分かりやすいな」

 

……どうやら、シロはこの3人を友人認定したようだ。良かった良かった。

 

なんて、入学初日にプチイベントがあったが、以降はつつがなくホームルームも終わり、寮の自室に戻り。

 

 

 

「シロ?」

 

「……や」ぷいっ

 

あ~……、爆発しなかったが、ちょっとイラっとしてプチ不満からストレスを感じているなこれ。こういう時シロは私を抱き枕にして寝る。そうしないとストレス解消できないから。

……しょうがない、今日は我慢しよう……

シロに抱き枕にされる間、私は自分の寝具を使えない。寝具に私が意識を向けるのを嫌がるからだ。しょうもないとは思うがシロとしては自分に意識を向けて欲しいようで……

 

「おやすみ」

 

「うん♪ おやすみ、ネコちゃん♪」

 

 

 

 

 

さて、私はウマ娘だ。

私たちはウマ娘だ。

 

ウマ娘としてこの中央トレセン学園に来た以上、レースに出て勝つ。ゆくゆくはGⅠの舞台で華々しく活躍する。

それはあらゆるウマ娘が心の奥底から望んでいる本能とも言える部分。ぐうたらに過ごしたい私だって、そういう本能はある。

 

厳しい審査や試験に合格した選ばれたウマ娘がここ、トレセン学園に集まる。自分以外はライバルという環境で、鎬を削り合い遥か高みを目指す。

 

今日はその高みへの第一歩とも言える選抜レースの日。いわば実力テスト。

選抜レースで実際に走り、自分の実力を発揮して、大勢のトレーナーに見てもらい、目に留まったトレーナーを契約をして、訓練を経て、新バ戦デビューとなる。

そう、今日を含めて数日間の間でトレーナーの目に留まる様に、自分の実力を示す。売り込む必要があるわけだ。

 

 

「ネコちゃ~ん♪ 頑張って~♪」

 

「お~……シロはご機嫌だな……」

 

ご機嫌なシロの声援を受けて芝2000mの選抜レースに出走するため、寮の入口から待機所に向かう。この後シロと入学式で知り合った『リカ』と『ライン』と『イク』も組み分けは別だけど同じ距離で出走予定だった。

入学してから何だかんだと一緒に過ごすうちに、シロもすっかり警戒心を解いた。……と思う。まだトゲはあるものの話をしているので嫌ってはいないはず。

3人は中等部でも一緒だったらしく、気性に難ありの問題児として遠巻きにされていたと、リカが笑いながら言っていた。

 

その3人は違う場所で集まるらしく、ここにはいなかった。

 

うるさく無駄に尊大なラインこと『インデュライン』、口が悪く常に喧嘩腰で不良扱いのリカこと『アウトオブアメリカ』、頭が良く座学は常に満点だが授業をサボりまくりのイクこと『テイクオフ』。ちなみにイクは今のクラスになってから、授業はサボらずに寝るか読書をしている。性格は大人しいはずなのにある意味問題児だね。

そこに加わったのは、食う寝る以外やる気ゼロの怠惰なウマ娘『シュネージュネコ』と、シュネージュネコ以外に興味を示さない排他的な超性格難の『ホワイトロリータ』。

それぞれのかつてのクラスメイトからすれば『なんか増えてる……』程度の認識だが、私達を知らぬ者からすれば目に余るようで、5人一組で常に遠巻きにされているのが現状だ。

まぁ、私を含めて全員がどうでもいいと思っているから大したことではないのだが。

 

待機所に到着後、走る番になったのでゲートに向かう。今回走るのは私を含めて6人。

私の適距離は1200~4000m。自分でも思うが意味が分からないね。でも、物心ついた頃からシロの時には過剰で身の危険を感じるような求愛? から逃げては捕まっていたのでこれでも『逃げ』る事には自信がある。長距離の逃げは無理だけど。出来ない事も無いけど体がガタガタになる。

 

今回は2000mなので十分に逃げれる。スタートが間に合わず先行でも、結局は先頭に立つのでユルユルっとスタートをすればいい。

1番目のゲートに入る。この狭さが落ち着く。立ったまま寝れそうな感じがまたいい。

基本的にウマ娘は狭いゲートを嫌がる傾向にあり、嫌々とゲートに入る他5人。集中力が欠けて気がそぞろになっている。これはもしかすると楽勝なのでは?

 

『さあ、各ウマ娘がゲートに入りました。選抜レース芝2000m、いよいよ出走です』

 

選抜レースでも実際のレースを想定して実況がついている。残念ならが走っている最中にじっくりと聞くことは出来ないので、後で録画を見てどんな実況をされていたのかを確認しようと思う。

いよいよその時がやって来る。ゲートに一点集中。

 

開いた!!

 

『各ウマ娘いっせいに飛び出しました。ハナを切るのは1番のシュネージュネコ、1人だけ抜け出して先頭を走ります』

 

ゲートが開いて一気に飛び出す。数瞬遅れて他5人のウマ娘も飛び出す。逃げは私だけで後は後方でバ群を形成している。

 

『先頭はシュネージュネコ、快調に飛ばしていきます。このままリードすることが出来るのか?』

『先頭から5バ身離れて2番のレインボーアマゾン、すぐ後ろに6番ヴェネチアダンス、1バ身後方に5番リズンペイシャ、並ぶように外に3番アグネスルーラ、すぐ後ろ4番フィーナーカフェがシンガリだ』

『意気揚々と差を広げていくシュネージュネコ、これはどうでしょうか?』

『掛かっているかもしれません。一息つけるといいんですが』

 

スタートしてすぐの1・2コーナーを余裕をもって曲がっていく、先頭を走っているから邪魔される事なくスピードを保ったまま直線に入れた。2番手は今第2コーナーを曲がり始めたところだ。

 

あくまでもこれは選抜レース。練習試合のようなもの。自分が今持てる実力を発揮して、トレーナーにアピールするのが目的。

だから1番になる必要はない。相マ眼のあるトレーナーなら例えビリでも素質アリと分かればスカウトするから。

 

私だってのんびり走りたかった。ビリでもいいと思った。

でも、『良血バ』『血統』にこだわるトレーナーが思った以上に多いわけで、私やシロの様な一般からの参加を快く思わない、最初から切り離している連中の目を見て思った。

 

これ私が勝ててばどうなる? と。

 

確かに私はぐうたらすることが好きだ。出来れば老後はのんびり悠々自適に生きたい。なんなら好きな様に食っちゃ寝できれば理想だ。

だけど、同じくらい面白い事が好きだ。場を混沌とさせるのが好きだ。何とは言わないが『ロウ』と『ニュートラル』と『カオス』なら、カオス一択だ。

整然と整った場面で場をぐちゃぐちゃにかき乱すのが好きだ。右往左往する周りの反応を見るのが好きだ。そんな様子を見てのんびり寝れたら最高だ。面白い事の為なら喜んで悪役も引き受けよう。

 

ああ、そうだ。いいじゃないか。

トレーナーの連中の目が、評価が、発する言葉が気に食わない。それでいいじゃないか。

どうせ私たちは入学前から気性に難ありの問題児として認識されている。今更普通に走るのは面白くない。

 

このまま一気に差を広げて大差で勝つ。カメラに入らないくらいに圧倒的に引き離してやる!

全然消費していないスタミナに火を灯す様に、ぐっと足に力を入れて駆けだそうとした。

 

 

 

瞬間

 

視界が爆発するような輝きで埋め尽くされた

 

 

 

『第2コーナーを抜けて、先頭が早いのかやや間延びした展開になっています』

『各自、自分のペースを保っているようですね』

 

『順位を振り返っていきます。先頭は相変わらずシュネージュネコ。おっと? シュネージュネコが加速を始めたぞ? 2番手との差をグングン広げていきます。スタミナは持つのか?』

『作戦でしょうか? それとも暴走でしょうか?』

 

目に映る景色が流れるように加速していく。普段の走りではありえない、トップスピード前回の走り。徐々に加速ではなく最初からフルスロットル!

突然の、本来はあり得ないはずの急激な加速に足がしっかり付いて行っている。むしろこれが当たり前なんだと体が理解して、合わせて手の振りも同調していく。

未だ混乱の真っただ中の頭の中は、それとは別に冴えわたってスッキリしている部分もあって、ウマ娘という存在を十全に理解していなかったと改めて感じさせられた。

 

この走りこそが私の……

ウマ娘としての私なんだと

 

私はウマ娘・シュネージュネコだ!

 

『シュネージュネコ、ものすごいスピードで第3コーナーに入ります。これは曲がり切れるのか? 後続は向こう正面の半分ををようやく過ぎたところだ』

『少し外に膨らんでいますが曲がっていますね。これは後方は追いつけますかね?』

 

『シュネージュネコに引っ張られるように後続のバ群が加速を始めた。しかし、カーブで速度が落ちています。シュネージュネコは第4コーナーを抜けて最後の直線に』

『圧倒的ですね。多少外に出ていますが、スピードを保ったままでカーブを抜けました。あとはスタミナが持つでしょうか』

 

楕円形のトラックコースを、丸みを帯びたの六角形と置き換えイメージ。角で少しずつ曲がる様に意識して走る。少し余計に走ることになるが、外を大きく徐々に曲がることで、本来ならスピードを落として体を傾けるカーブを、スピードを保ちゆっくり傾ける『ゆるやかなカーブ』として走る。

スピードが緩まるカーブでスピードを保ったまま走り抜ければ、その後の直線にそのままのスピードで入れるし、なんなら更に加速することも出来る。

 

理由は分からないが、どうやら私は同年代とはかけ離れた身体能力を持っているようだ。練習なんてしなくても大抵の運動は人並み・ウマ並み以上にこなせた。中でも『走る』事に関しては特にずば抜けていた。

短距離は常に先頭、長距離は最後の方で加速と、私1人で2人分の走りを行えた。これがなんなのか分からない。

けど、これも私の一部だ。私の中にいる『もう一人』もそう言っている。なら遠慮はいらない。2人分の全力を、ここから!

 

『最後のコーナーを抜けて、先頭に立ったのはシュネージュネコ。後続を大きく引き離して行きます』

『余裕の走りだ! これは楽勝ムード! これは決まりか? 後ろと大きく離れていく』

 

『200を通過。ここでシュネージュネコはさらに加速、この子の足はどうなっているんでしょうか? 後続は今第4コーナーを抜けましたが、同時にシュネージュネコがゴールイン!』

『圧倒的な大差でレースを制しました、シュネージュネコ。カメラを引いても後続が映らない程の大差だ。圧倒的な実力差を見せつけました』

『これは将来が楽しみですね』

 

ぶっちぎってゴール! 

のまま走り出す。

 

本来はここからトレーナーが注目するウマ娘に契約を持ちかけるんだけど、私とこの後走るシロは逃げ出すつもりだ。

私は基本ぐうたらが具現化したウマ娘だし、シロは人付き合いが超絶的に不可な性格。まずチームに所属なんて無理な話だと思う。

 

なので狙いは私達みたいな性格難でもいいと言ってくれるトレーナーかつ、個人が理想。最低限この性格を容認してくれれば、私がシロとの橋渡しをすればいいだけだしね。

 

『今、全員がゴー……っとぉ? シュネージュネコは止まらないで……今コースを越えて走り去りました! どこに行くんだシュネージュネコ!』

 

コースの外に出てそのまま駆け抜ける。ゴール付近にはウマ娘をスカウトしようとしていたトレーナーたちが見えたような気がしたが、彼らに囲まれる前に脱出……もとい逃げてやったぜ!

校舎前を駆け抜け寮の入口が見える頃には駆け足程度に速度を落としていた。後ろから誰も追いかけて来ないのが分かったからね。

 

で、寮の前には私物のエアーマットが十分に膨らんだ状態で置いてあり、マットの横にシロが立って待っている。

シロも私に気が付いたようで、両手を広げて私を出迎えてくれる。

 

「おかえり~♪ ネコちゃ~ん♪」

 

「ただいま~♪」

 

てててっと駆け足、からのぴょいっとジャンプ。

エアーマットに着地、からの五体投地。

 

「ネコちゃ~ん? これはどういう事かしら~?」

 

マットにぽすん、と座ったシロに頬を指先でつんつんされる。

うぬぅ……、幼馴染とはいえ、私のマットとの逢瀬を邪魔するとは……

 

「うぬぅ……、幼馴染とはいえ、私のマットとの逢瀬を邪魔するとは……」

 

「ネコちゃん? 心の声が駄々洩れよ?」

 

「それよりもシロ? もうすぐシロの番じゃないの? 頑張ってきてね。できれば一番になって。で、そのまま帰ってきて」

 

「注文が多いわね~。……まぁ、私のためって分かっているからあまり強く言わないわ。私もそのまま帰って来るから、待っててね」

 

すっと立ち上がった芦毛の幼馴染は、選抜レースに出るため手をひらひらさせながら、のんびりと歩いて行った。

その背中が見えなくなる頃には私の眠気も限界で、ふわふわなマットと暖かな日差しで、日向ぼっこ気分から微睡みモードに移行したのは言うまでも無かった。

 

 

 

 

 

「うわ、マジで寝てる」

 

「うむ! 気持ちよさそうで何より!」

 

「……いいなぁ……」

 

んゆ? 何か声が聞こえる……?

徐々に意識が浮上する感覚の後、寝惚けた思考のまま起き上がる。

視界には最近見慣れ始めた3人と、見慣れた不機嫌顔の幼馴染。

ああ、「邪魔された」って思ってるな、これ。

 

「おはよう、何? なんの集まり?」

 

「いや、俺ら選抜レース終わった後にシロが来たんだがよ? レースの後そのままコースぶっちぎって走り去るから、どこに行くのか気になったんだよ」

 

「最後方から7バ身差を一気に追い抜き、ゴールしてスカウトかと思えば! そのままいなくなったではないか! 愉快!」

 

「またか、なんて呟きもあったから余計に気になってね、追いかけてきたわけ。で、そのマット寝心地よさそうだね? 今度貸して?」

 

「こいつら全然離れないのっ! ネコちゃんどうにかしてっ!」

 

「無理言うなよ幼馴染。マットは貸すけど破損や没収は弁償ね? ところで、皆のレースは? スカウトは?」

 

五体投地で寝ころんだままというのは失礼なのでマットの上に座るが、右にイクがぽすんと座りそのまま倒れ、左にシロが座りながら私を抱えるように倒れこむ。

反転する視界。右から「あ~これいい~」という声が聞こえ、左からぴったりくっついたシロの深呼吸の音が聞こえる。

 

「……で? レースは? スカウトは?」

 

「おう、そのまま続けるんかい」

 

シロの手を振りほどこうとするが万力のようにがっちりと、私をホールドしている。なせが左からもホールドされて「いいなぁ~これ……」とか聞こえる。

 

「……で? レースは? スカウトは?」

 

「…………はぁ~……もういい」

 

「お疲れだな! 早く休むといいぞ!」

 

「俺、なんでこいつらと一緒なんだろな?」

 

んなこと知らんがな……。

首だけを動かして下を見ると、疲れた表情のリカと明るい笑顔のラインが見えた。

 

「あ~……、レースな? 俺達も1着だったぞ。でもな、中等部から問題児扱いっていうのを知られたらしく、扱いづらい気性難のウマ娘と思われているようで」

 

「一応声をかけてくれた者もいたのだがな! 私が太陽王と知るやモーゼの様に道を開けてくれたのだ!」

 

「まぁ、こいつと同類扱いされてな、あっという間にいなくなったよ」

 

「初対面でいきなり太陽王は触れたくないよな~」

 

なんて呑気に答える。3人の表情に焦りは無いし、能力はあるんだからその内どこかが拾うだろ。なんでも性格難の問題児ばかり集まる隔離所扱いのトレーナーもいるらしいから、最悪そこが拾ってくれるだろう。というか私たちも最悪はそこかな?

 

「で? お前らは? なんでぶっちぎって行ったんだ?」

 

「ネコちゃんを吸うためよ!」

 

「お前には聞いてない。てか吸うなよ!」

 

「シロの性格難があるからね、チーム所属は無理そうだし、こんな私たちを拾ってくれそうな個人トレーナー待ち」

 

「ああ、俺らと同じか。こっちもそんな感じだ。こいつら放っておけないからな、寛大な心の個人トレーナー様を探しているんだ」

 

尊大と奔放に挟まれる不良か……大変だな……

 

「まぁ、なんだ……頑張れよ?」

 

「なんで今俺同情された? おお?」

 

なんて、やいのやいの言いながら、初めての選抜レースの日は終わりを告げた。

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