転生先は競走馬 え?ウマ娘も?   作:ちょこ@みんと

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作者は気性難です。取扱いにご注意を。
・あらゆる『感想』は調子が下がります。
・評価はしないでもらえると調子が安定します。
・『UA』『お気に入り』『しおり』が増えると宇宙猫と化します。
・投稿する時点で若干、過呼吸になっています。 
(;゚∀゚)=3ハァハァ

レースはゲームから参照

軽い鬱になってヤル気がゼロになり絶不調を乗り越えたと思ったら
夏バテ到来!
なんとか乗り越えるも精神的な調子が戻らぬまま……

ようやく戻れました。
それと、前話でシュネージュネコのスキル発動のシーンでスキル名を付け足しました。
由来は……ノリです。


8 ウマ娘編 デビュー

模擬レースの翌日。

シュネージュネコはまだ眠っていた。

授業をサボったシロがお腹に顔を埋めて深呼吸を繰り返していたが、いつもと変わらない日常風景なので特に変わりのない日であった。

 

「いや、ツッコミどころしかない!」

 

部屋に響く声。部屋の住人以外の第三者の声である。というよりも様子を見に来たリカの第一声だった。ちなみに今は午後の3時頃である。

リカの声でもぞりと動く影。誰か起きたのか? と思えば、全く関係の無いはずの人物が目を覚ます。

 

「……イク?」

 

「んにゅ? どうしたのぉ?」

 

1つのベッドに寝ているこの部屋の住人2人ではなく、床に敷かれたマットの上にクッションを枕に寝ていた者が反応していた。リカの呟きの通りラインであった。

そういえば昼食後から姿を見ていないような? そう思いうがやはり昼食を一緒に摂ってから姿を見ていない。同じクラスなので見落としていることはないはず。

 

「イク、いつからここに?」

 

「んぁ? ……んぅ……お昼食べて、様子を見ながらここで一休みと思って、ネコの私物のマットとクッションを出して横になっていたんだけど……今何時?」

 

「昼から見かけないなと思っていたらここにいたのかよ。ちなみにもう午後の3時だ。トレーニング前に様子を見に来たんだが……、まさかお前が寝ているとは思いもしねぇ」

 

「あはは……。いやぁ、ネコの持ってるマットとかすごく寝やすくてさ。今度おすすめのを一緒に買いに行くんだよね。睡眠は大事だから」

 

分かる。分かるが、他人……他バの道具に寝転がって言う事じゃないと思う。持ち主が寝ているからって好き放題にしていないか? つか、シロと一緒にさぼりかよ……

 

「そろそろ起きろよ? 他の連中はもうトレーニングに行っているぞ。マチタン先輩がお前を探していたぞ」

 

「おぅ? 了解。二人とも起きそうにないし私もそろそろ行くかな」

 

結局、この日シュネージュネコは目を覚ますことは無く、ホワイトロリータは思う存分にネコを吸うことが出来たと、後に満面の笑みで語ったという……。

 

 

 

さらに翌日 朝

 

寝惚け眼をこすりながら起き……

れなかったので、お腹の上の異物をベッド横にぺいっ! と投げ捨てる。

異物が「あふん♪」と鳴いたが、いつもの事なので気にしないでベッドから降りる。降りる際に何か踏んだ気もするが、別に気にする事でもないので洗面所に向かい顔を洗う。

 

洗面所から戻ると幼馴染がベッド横の床に寝転がり恍惚の表情で悶えているが、これもいつもの出来事なのでスルーして部屋のカーテンを開ける。薄明るくなった外の風景が視界に飛び込む。

 

「うん、今日もいつもと変わらない一日になりそうだ」

 

そう呟くと制服に着替えて朝食を摂りにカフェテリアに向おうとして、部屋の中にいる幼馴染に先に行く旨を伝えると、扉を閉めて鍵を外からかけると空腹感を感じるお腹をさすりながら外に向かった。

 

 

 

カフェテリアでクラスメイトと合流して一緒に席に着く。

カフェテリアは朝練後のウマ娘たちが朝食を食べているためそこそこ混んでいた。これから登校前のウマ娘で溢れる事になるので早くも遅くも無い時間帯でもあった。

 

スキルを使った影響で丸一日半眠っていたので、お腹の虫が大合唱している。くきゅる~と、鳴り止まぬお腹を宥めつつとりあえず素早く食べれる物として、うどんと蕎麦とラーメンとナポリタンをテーブルに置く。

隣の席にはいつの間にか追いついたシロが何食わぬ顔で朝食をテーブルに置き座る。いつもの見慣れた光景に目を細め、箸を手に取り食べ始める。

 

ちゅるちゅる、ごくん。ちゅるちゅる、ごくん。

 

「ネコちゃんは相変わらず麺類は噛まないのね」

 

「だって、噛まなくても飲めるし、喉越しがいいんだよ?」

 

「麺類って喉越しをどうこう言う物じゃないはずなんだけどね?」

 

「いや、麵類は喉で味わうんだよ? だから、麺類は飲み物だよ」

 

 

 

「っ!!」

 

その声が耳に入ってハッとした。おもむろに私は立ち上がるとカウンターへ向かう。

 

「ちょ! おい、どないしたん!?」

 

後ろから声をかけられるが、今はそれどころではない。私は思うままにカウンターへ赴くと静かに一言告げる。

 

「ラーメンを大盛で」

 

あたたかい大盛のラーメンを持って席に戻る。「まだ食うんかい……」と隣から声が聞こえるが今は無視だ。

箸で麺をつかみすすると意を決して飲む。 ちゅるちゅる…… ……ごくん。

 

「!!」

 

多少抵抗はあったものの、口に含んだ麺を噛まずに思い切り飲み込む。そして驚愕する。

噛めば小麦の味と香りが麺に絡んだスープと共に口の中一杯に広がるのだが、噛まずに飲むと麺の風味とスープの味が一つとなり、まだ十分に熱の残っているそれが喉を通っていく。お腹の中に熱を感じて飲み込んだと理解すると、噛まなかったことで薄まらないスープの味と噛むのとは違う麺の風味が、喉から口と鼻へと抜けていく。

噛めば味、飲めば風味。なるほど、麺類は飲み物。いい得て妙だと思う。

 

「……なるほど」

 

「いや、何がなるほどやねん……。ちゃんと噛まんかい」

 

「しかしな、タマ。白いウマ娘が言っていたんだ。麺類は飲み物と」

 

「誰やねん、ソレは。いいからちゃんと噛みや」

 

と、タマが言うが私は器のラーメンを『噛んで』『飲んで』味わう。

レンゲにスープと麺をすくい、ちゅるごくん。うん、スープをすくうことで喉をするりと通り抜けるし、何よりスープの風味や香りが強まる。……気がする。

 

「だからちゃんと噛まんかい!」

 

 

 

「後ろ、なんか騒がしいね?」

 

「ん? ああ、タマモクロス先輩とオグリキャップ先輩だな。オグリ先輩がえげつない量のラーメン食べてる。……うわぁ、飲み干してる……」

 

どうやら後ろが騒がしいのは先輩たちが楽しそうに食事をしているからみたいだ。朝の食事風景としては問題ないと思うので意識から追い出す。

私の目の前に並んだ麺類は、空の器に変わっている。レースから今朝までの睡眠で消耗した色んな諸々は、これで回復したことになる。……けど、もう少し、こう……

 

「はい、ネコちゃん。お茶漬け。もう少し欲しいでしょ?」

 

私の前に置かれる茶碗一杯分のお茶漬け。もう少し欲しいと思っていたところに置かれるソレからシロに視線を向けると、ニコリと微笑むだけだった。

流石、私の幼馴染。もう少し欲しいと思った所に差し出されたお茶漬け。米とお出汁だけの具のないお茶漬け。最後に掻き込むのならこれで十分だ。

私はお椀を持ち米をほぐすと、一思いに掻き込み、飲む。

 

「うん、お茶漬けは飲み物だ!」

 

 

「っ!」 ガタン! 「うえっ!? ちょ! おい、待ちぃ! ドコ行くねん! おーい! って何やそれ? お茶漬け? いや、だから! ちょ! オグリ待て! だから飲むな!」

 

 

後ろが騒がしい気もするがスルーだ。夜が明けてから時間も過ぎているので、ここも混む時間になってきたのだろう。朝練終りのジャージ姿のウマ娘たちがちらほらと目立つようになった。私たちの食事も終わったのでそろそろ登校するとしよう。

 

 

 

放課後

 

リギルに所属したライン、カノープスに所属したイクは放課後になると早足で教室を出て行った。リカは新人の個人トレーナーと契約したそうだ。集団行動を是とするチーム所属を嫌がり、自由の利く個人トレーナーと契約したそうだ。まぁ。気性難と言っても悪ぶっていて集団が嫌いというだけで、割といいやつではあるんだけどね。……リカがなんかこっちを睨んでいるがスルーだスルー。

 

さて、私が寝こけていたから結局トレーナー契約できていないんだよなぁ……。これで誰も希望しなかったらどうしよう? シロに聞いても、あの後私を寮の部屋に連れて帰ったから良く分からないようだし。

会長に聞けばいいのかな? 会長に色々と丸投げしてしまった感があるからね。と、いうわけで生徒会室に行ってみようか。

 

 

「君たちを受け持ちたいと、希望するトレーナーたちだ。今現在所属しているウマ娘、昨年の成績やおおまかな方針について書いてあるから、参考にして欲しい」

 

生徒会室に向かうと業務真っただ中のシンボリルドルフ会長、エアグルーヴ副会長、ナリタブライアン副会長に出迎えられた。

対する私とシロ。応接用のソファに座りテーブルに広げられた書類を見る。シロは人見知りを発揮してしまい、私のお腹に顔を埋めて悶えているが放置する。3名の視線が刺さる気もするがそれも放置だ。

一応、私たちを育成したいと思っていると思われる、トレーナーの情報が乗っている。有名どころから無名の新人まで一通り。それらの用紙をザっと流し見ていく。主に所属しているウマ娘の人数と育成や出走の方針。

 

お? これは良さげだ。これにしよう。私の思いを考えればここがいいだろう。

 

「ここに決めたいと思います。『チームハダル』に」

 

「あ、ああ……。それはいいんだが……」

 

いまだ私のお腹をもふもふクンカクンカしているシロに視線が突き刺さっている。そのせいで、私の言葉も差し出した用紙もスルーされているような? ……ちくせう。

 

「えっと、会長?」

 

「あ、ああ……、すまない。チームハダルだったね? ……ふむ、確か卒業や引退で今は所属ウマ娘がいないチームだったな。実績は……GⅠでの勝利は無いがウマ娘の実力に合わせてGⅡ以下で勝利している。いわゆる中堅のチームだな」

 

「じゃあ、今は誰もいないんですね。ますます好都合です。シロはこの通り人見知りが激しいのであまり大人数でない方がいいんです」

 

「……(すぅーーー)……(はぁーーー)……」

 

「……この通り人見知りが激しいのであまり大人数でない方がいいんです」

 

「なぜ言い直した」

 

いやだって、ねぇ? どう見ても変質者にしか見えないこれを見て人見知りなんて言葉が通じるとは思えないんだよなぁ……。

実際、先ほどから突き刺さる3人の視線はどう見ても、変質者のソレを見る視線でしかない。

 

「……(すぅーーー)……(はぁーーー)……うぇへへ~」

 

「……はぁ~……」

 

何とも言えない空気の中、私は視線を天井に向ける。ああ、このまま現実逃避がしたいよぉ……

 

 

 

その後はトリップし始めたシロを生徒会室の床にポイして退室する。後ろから「おい! これを置いていくな!」と聞こえたが、生徒会室を出て扉を閉めた時点で隣でニコニコして立っているので、胡乱気な視線をシロに向けつつもチームハダルの部屋を目指す。

 

「で? 結局どこに所属するの?」

 

「私のお腹を吸わないで、お願いだから話を聞いていて欲しいな」

 

「え? ネコちゃんを吸うのは私の生きがいだよ?」

 

「辞めちまえ! そんな生きがい」

 

心底、不思議そうな表情をするシロを連れてチームハダルの部屋に到着。ハダル以外の希望者には会長の方からお断りの連絡を入れてくれるとのこと。束のような希望者リストだったので全力で丸投げしてきました。

コンコンとノック。部屋の中から男性の返事を聞き扉を開ける。

 

中には中年に差し掛かったぐらいの男性が一人。人好きのする顔で柔和な笑みで私たちを迎える。

 

「ようこそ、チームハダルへ。私はトレーナーの小牧原。以後よろしく」

 

「よろしく。シュネージュネコです。後ろのはホワイトロリータで、少々人見知りする娘なので、長い目で見てもらえるとありがたいです」

 

私が部屋に入るとトレーナーが椅子から立ち上がりこちらにやって来ると、手を差し出してきたので握手をしながら自己紹介をする。穏やかそうな感じの人で、これならシロも慣れるのは早そうだと安堵する。

 

「早速で悪いけど、2人の適性を見たいからコースに行こうか。模擬レースを見た限り中距離は苦にしていない様子だったけど、他の距離を知りたいからね」

 

「大体でよければですが、シロは中長距離で追い込み、私は全距離で長距離は追い込みで後は逃げで走ってます」

 

「お? それぐらいが分かっているなら話は早いね。実際に軽く走ってみてその後はメイクデビューも含めて今後の話をしていこうか」

 

トレーナー先導の元、練習場のコースへ向かう。シロと二人で芝のコースを走る。距離は1200m、1600m、2000m、3200mの各距離。

1200mは私が逃げ、シロは距離適性が合わずスピードが乗り始める前にゴールしてしまう。1600mのマイルも短距離同様の結果となってしまう。

余談だが、私は2000mは逃げるが3200mは追い込む形をとる。流石に長距離を逃げ切れるスタミナは無いので、中盤までは軽く流す程度に走って終盤に向けて徐々に加速して、最終直線でスパートをかける走り方をする。

 

中距離である2000mになるとシロの適正距離になる。シロは中・長距離の追い込みと得意としているため、中盤まではゆっくりと加速していくスロースターター型だ。中距離では残り1000mくらいからのロングスパートも可能だが、コーナーはあまり得意ではないので速度を維持して外に膨らむか、速度を落として曲がって再加速かを状況に応じて走っている。

長距離は最終直線での末脚により爆発的な加速が出来るので、中盤からのシロの動きは追い込みウマ娘としては普遍的な走る走り方をする。

 

しかし、シロはその走り方とは別にもう一つある。それは、私と一緒に走る時限定ではあるのだが……。

 

 

練習コース 芝2000m

シュネージュネコ 逃げ ホワイトロリータ 追い込み 12バ身差 残り400m時点

 

「うふふふ……♪ ネコちゃ~ん♪ 今行くわね~♪」

 

スキル【芦毛の追跡者】発動

 

シロが1歩、地響きがするかの如くに叩き付けるように踏み出すと同時に、一気に最高速度でターフを駆け抜ける。

コーナーの途中であったが、外に膨らまず速度を維持したまま内ラチに平行に駆け抜ける姿は異様の一言。ついでにだらしない表情で駆け抜ける姿も異様の一言。

残り200mで12バ身あった差は半身となり、私の後ろでぴったりと張り付くように走る。不気味を通り越して気味の悪い笑いと別の意味で荒い呼吸を添えて。もぅやだぁ、この娘……。

 

残り100mで私に並ぶように抜け出しそのまま追い抜いていてゴールを通過。クビ差で差し切られてしまう。

いつも思うが本当に不気味な加速をする。シロが発動するその能力は、なぜか私相手が限定だが、私に追いつくために一気に最高速度で走ることが出来る上に、私に追いつくまでの消費スタミナを大幅に減らすという物。追い付いた瞬間に背後で笑う様子から、私にはストーカーされてるようにしか思えないんだが……。

 

長距離はお互いが追い込みなので、併走のように流して最終直線でスパートをかけた私の背後にぴったりと張り付き、ゴール前で追い越すという結果に。走った後にシロに心底「キモイよ♪」と言ったら嬉しそうに悶えていた。本当、たまに何でこれが幼馴染なんだろうかと思う時がある。

 

 

場所は戻ってチームハダルの部屋へ。

小牧原トレーナーに走っている所を見てもらった上で、今後の事について話し合う事となる。

 

「あれだけの走りが出来るのならメイクデビューは早めがよさそうだね。シュネージュネコは7月1週目の中京で1600mのマイル、ホワイトロリータは翌週に同じ場所で2000mの中距離で行こう。勝利する前提で話を進めるが、走りたいレースとか目標はあるのかい?」

 

「トレーナー、私はネコでいいですよ? 目標はGⅠよりもGⅡ以下に多く出たいですね。ぶっちゃけ、ここを卒業した後を考えてお金を稼いでおきたいというのが本音です」

 

「私はシロでいいですよ。私もネコちゃんと同じく、GⅡ以下でお願いします」

 

「そう? 僕としては諸々の手続きとか取材とかの面倒があまりなさそうで嬉しいんだけどね? ほら、ね? それはそれとして、クラシック三冠とかトリプルティアラとか興味ないの?」

 

「名誉よりもお金です」

 

「おぉ~、ぶっちゃけたね。分かりやすくていいんだけどね」

 

苦笑するトレーナー。さすがにダメか? GⅠ目指そう的な感じになるのか?

 

「まぁ、いいでしょう。さっきも言ったけど、僕としてもGⅠでの手続きやインタビューやら諸々の面倒をしなくていいのは助かるからね。それに、実際に走る君たちの意見を重視すべきだと思っているからね」

 

どことなく私と気が合いそうなことを言うトレーナー。前半が本音では? と思わなくも無いけど私も面倒事は嫌いだし、手抜きをしたい系のウマ娘だし。このトレーナーとならやっていけそうと感じた私はデビューに向けて程々に気合を入れるのだった。

 

 

 

 

 

日は過ぎて7月1週目の日曜日。

小牧原トレーナーは、能力の底上げとして基礎固めを中心にメニューを組んだ。走行フォームとかまだまだ見直す所があり、徐々に早くなっていると実感し始めた頃、私達のメイクデビューの日となった。

合間合間でウイニングライブの練習もあり、踊る私を見るシロの表情が危なかったとだけ記しておく。そのシロは一発で完璧に踊っていた。曰く、ネコちゃんのおかげと。マジで意味が分からんかったし、理解しようと思わないので気にしない事にした。

 

前日に付近のホテルで一泊して、当日は軽くジョギングを行い調整に問題が無いこと確認。意気揚々と中京競馬場へ入る。

有力な対抗バはいないので、おそらく私の一人勝ちになるだろう。なんて気楽に考えて控室を出て行った。

 

 

『さぁ、最終コーナーから最初に抜けて来たのはシュネージュネコ! 速い! 後続との差は広がるばかり! 強い! 強いぞシュネージュネコ! 2番手のマルトリセイルがコーナーを抜けたが差は5バ身差! 差をグングン広げてこれはセーフティーリード! シュネージュネコが今1着でゴール板を駆け抜けた! メイクデビューを制したのはシュネージュネコ! 圧倒的な実力差を見せつけメイクデビューに勝利しました!』

 

翌週、同じ場所で

 

『最終コーナー抜けて大外からホワイトロリータが上がってきた! 3.5mの坂も何のその! 最後方から大外を通って先頭へ一気に躍り出た! 残り200m、後続も追いかけるが1バ身、2バ身と差が広がっていく! 2番のオールドスターは間に合わない! 勝ったのはホワイトロリータ! 2着のオールドスターと3バ身差で勝ちました! 最後方から7人をぶち抜いての1着! すさまじい末脚を見せつけたぞ!』

 

 

 

と、いうわけで。

あっさりとメイクデビューを制してしまったので、改めてトレーナーと今後のレースについての話し合いとなった。

 

「いやぁ、強いねぇ。全然余裕だったね。私も安心して見ていられたよ」

 

「それほどでもありますけどね。で、次のレースの相談なんですが……」

 

「それなんだけど、余裕とはいえ大丈夫なのかい? 連戦や中1週なんて普通はしないんだけどね? そうじゃなくても月2回の出走希望はやりすぎじゃないのかい?」

 

「あ、シロはともかく、私は大丈夫です。昔から一晩寝れば疲れなく起きれますので。なんなら、先週の疲れも無いですよ? というか、翌日にはもう無かったですよ?」

 

「それが本当なら凄いよねぇ? いやまぁ、翌日から当たり前のようにいつものトレーニングに参加していたし、体調に問題は無さそうだから大丈夫だと思ってはいるんだけどね? シロも翌日休んで次の日から練習に参加していたし、こっちもこっちで問題ないようにしか見えないしね?」

 

トレーナーが頬を掻きながら苦笑を漏らす。元々の特性というか体質というか、そういう物なんだからしょうがないじゃん? と、内心で呟く。

 

「で、トレーナー? 次のレースはどれに出ていいの?」

 

「本当に無理そうなら止めるからね? それでもいいなら……今週ジュニア級のGⅢ 函館ステークスがあるな。その後は8月2週に新潟でダリアステークス、オープン戦だな。8月の後半になればオープンやGⅢがちらほらと増えだすから、それを狙ってもいいな」

 

「じゃあ、今週! 早速GⅢに行く! 賞金3000万円を手に入れる!」

 

「全額もらえる訳じゃないぞ? 半分は税金やURAやトレセン学園が取り、1割はトレーナーで、残り4割がウマ娘って知っているよね?」

 

「分かってますよ? まぁ、でも手当や税金で諸々した後に1200万近く手に入るんですよ? 月30万の手取りとしても40ヶ月分! 40ヶ月も働かなくてもいいんですよ!」

 

「いや、働こうぜ? まぁ、そう考えるとそれなりの金になるのか?」

 

先日も言ったが、私はGⅠの勝利や名誉が欲しいわけでは無い。賞金を稼いで可能であればのんびりと余生を送りたい系の面倒くさがり屋なのだ。どうせシロは着いて来るだろうし妹も一緒に暮らすと言うだろうし、それを考えれば食費をメインに諸々考えれば月100万は欲しい。流石にそこまで使うことは無いと思いたいが、住んで食べるだけで生きていくわけでは無い。それなりに娯楽も楽しみたいし他に買い物や病院などの出費も考えれば、100万でも少ない可能性もある。

月100万で年間1200万。引退やトレセン学園卒業後が20歳前後として、85歳前後で死ぬと考えれば最低でも65年分で7億8000万が最低ライン。長生きする可能性やそもそも住む人数や環境により、月100万で足りない可能性もあるんだからそれ以上に稼がなくてはいけない。

まぁ、これに関してはシロも一緒に頑張ってくれるし、来年にトレセン学園に入学する私とシロの妹もこの考えに賛成しているので、最低4人のウマ娘で頑張るので一人当たり2億が目標となる。4割で2億なので最終的に5億稼ぐ必要がある。なので、最低限の目標として5億稼ぐこととして、それ以上を目指せばそれだけ生活が豊かになると考えている。

 

まぁ、保険や年金の関係で何かしらの職に就くけど、日雇いや派遣やパートなどの最低限仕事はしています的なスタンスを保てればいいので、そこまでこだわらないで生きて行こうと思う。

GⅠウマ娘になったからと言って必ず脚光を浴びるわけでは無いのだ。GⅠを快勝しても人知れず行方が分からなくなるウマ娘もいれば、GⅠ未勝利でも未だに人気のあるウマ娘もいる。

それを考えればやっぱり名誉よりもお金なわけですよ。名誉で食べていけるのはそれなりのドラマを持っているか、元々の名門ウマ娘だけだろう。寒門である我々には縁のない話である。

 

「と、いうことで、早速1200万円を稼ごうと思います」

 

「もう勝った気でいるんだね? いや、勝つんだろうけど」

 

「大丈夫です。舐めた真似はしません。出るからには全力で勝たせてもらいます」

 

ぐっと右手を握る。週明け自分の貯金残高に1200万円が追加されることを妄想しながらトレーニングに勤しむのだった。




アニメ版のウマ娘の第2シーズンの11話を見て

ティンときた!
Σ(゚□゚;)

『ウマ娘編』と『馬編』の後をどうしようか考えていたのですが、いい感じで思いついた内容があるのでその方向で書いて行こうと思います。
まぁ、まだまだ先なんですがねぇ~

途中の芦毛のウマ娘の感想については、知人に麺類は飲み物と勧めた時の知人の戯言ですので、あまり細かい事は気にしないでください。

久しぶりなのでリハビリとして短めで。



追記で前話で出したオリジナルスキルの紹介

シュネージュネコ『胡蝶の夢』
任意発動可能。スタミナが無くなりそうな時に翌日分のスタミナを前借りして全回復する。レース直後に前借りした分を補うために強制的に寝てしまい、翌々日の朝まで目覚めることは無い。

ホワイトロリータ『芦毛の追跡者』
中距離以上で残り1000mから発動可能。自分より前方にいる特定の芦毛のウマ娘の背後に追いつく変態的な位置取りと加速を行う。その際のスタミナ消費はほぼ無いに等しい。

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