大嫌いな幼馴染みと一緒に、セックスしないと出られない部屋に閉じ込められた   作:和鳳ハジメ

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クエスト14/キャスト・オフ

 

 

(オレは……この猫の着ぐるみを着たヤツを壁ドンして口説かなきゃいけねぇのか??)

 

 余りのショックで体に力が入らない、アキラは立ち上がる事が出来なかった。

 

(そりゃあ、顔だけ出てるのは不幸中の幸いだけども!! 色気も何もねぇ!! そりゃ言ってる事は理解できるし自業自得だろうけどおおおおおおおッ!!)

 

 納得行かない、激しく納得行かない。

 目に闘志を燃やし、アキラは顔を上げて。

 

「――交渉したい、それ以外を着てくれ、頼むから」

 

「交渉ってコトは、アンタは何を譲歩するワケ?? 話してごらんなさいな聞いてあげるから」

 

 猫の着ぐるみ装備の理子はドカッとソファーにふんぞり返り。

 負けてなるものかと、アキラは立ち上がる。

 そうだ、脱がさなければならない、どんな手を使ってでも。

 

「自分で脱ぐなら手荒な事はしないぜ」

 

「この着ぐるみの中にスタンガンを隠し持ってるって言ったら?」

 

「………………いやそれ卑怯じゃね?? オレ、勝ち目なくね??」

 

「ほっほーっ! アンタはこの色気のない格好のわたしを壁ドンする運命にあるのよ!! 悔しいわよねぇ……、少女マンガが好きなアンタが、初めての壁ドンがこんなのでぇ」

 

「テメェ!! くっそー、ここぞとばかりに煽りやがって!! 今すぐ力付くで全裸に剥くぞオラァ!!」

 

「ふーん、へー、そう~~、暴力に訴えるんだアンタって……」

 

 ニタリと笑って挑発する理子に、アキラとしては黙るしかない。

 今ここで無理矢理脱がしにかかるのは、余りにも悪手。

 今後のパワーバランスに大きく影響する、具体的にはアキラは理子の奴隷になる可能性すらある。

 

「…………どうだろう、オレが全裸になるからそれを脱ぎませんか理子様?」

 

「却下、アンタ昨日と同じコトを繰り返したいの?」

 

「じゃあオレがそれ着るから、そっちは普段着で良いから」

 

「そうねぇ~~、アンタの方を動きにくくした方が効果的よね」

 

 んー、と理子は楽しそうに考え込む。

 実の所、この着ぐるみの下に他の服を着ているのだが。

 イニシアチブを得る作戦は、とても上手く運んでいる。

 

(もう少し勿体ぶった方が効果的よね、でも焦らし過ぎると暴走するわ。何かトドメの一撃は無いかしら……)

 

(くッ、何を考えてるんだコイツ!! ――待て、そうじゃない、ああ、そうじゃない。これだ……これを理由にして――――ッ!!)

 

(いえ違うわね、この中の姿こそが必殺! ふふん、噂の童貞を殺すニットワンピの威力を見なさいっての!!)

 

 いつ脱ぐか、それが問題だ。

 理子がなお、思考に没頭しようとした時であった。

 アキラは立ち上がって、理子をソファーから立たせて壁に押しつける。

 次の瞬間、ドンという音がして。

 

「――――アキ、ラ?」

 

「お前は良いスタイルしてるしさ、それに……スゲェ可愛いからさ、そうやって警戒しててくれ」

 

「っ!? ちょっ、かお、ちかい……」

 

「キスされたくなきゃ、黙れ、口を手でガードしとけ、でないと全部脱がしてキスする」

 

「~~~~~っ!?」

 

 あわあわと理子は両手で己の口を塞ぎ、視線はアキラから離せない。

 顔を背けたい、とても恥ずかしい、でもそれをしたらキスされる気がして。

 

「良い子だ理子、もうさ、前みたいにお前を只の幼馴染みとして見れねぇんだ。だから……少しだけで良い、気を使ってくれ、もう少しだけオレの為に我慢してくれ」

 

(アキラ……、そんな、ズルい、アンタってズルいのよ)

 

 こくんと彼女は頷き、それを見たアキラはとても柔らかく笑った。

 次の瞬間、理子はアキラの腕の中に居て。

 

「外に出ても、あんま過激な格好するな。可愛いお前を誰にも見られたくない、オレだけが独占したいんだ」

 

(ううっ、なんで今それを言うのよぉ……、ホントにそう思ってくれてるの? それとも、この為だけに言ってるの?)

 

「オレは本気だ、日替わりクエストの為に言ってるんじゃない。――――オレはお前を独占したい、多分……見て見ぬフリをしてたんだ。こんな気持ちをお前にぶつけるなんて考えられなかったから。……でも、今は違う、もっともっとお前を知りたいし、オレを知って欲しいんだ」

 

(…………わたしは、何を言えば良いのよ。ズルい、卑怯よアキラ、だから大嫌いなのよ、わたしの心をこんなにも乱すのに、アンタはわたしを――)

 

 どうしたら、彼の言葉に何かを返せるのだろうか。

 どうしたら、己の気持ちを伝えられるのだろうか。

 理子は意を決して、弱々しくアキラの胸板を押し返す。

 

「理子……?」

 

「少し、少しだけ目を瞑ってて」

 

「ああ、お前がそう言うなら」

 

 がさごそと衣擦れの音がする、恐らく着ぐるみを脱いでいるのだ。

 でも何故、とアキラが困惑する中。

 

「………………アンタにしか、見せないわよ。アンタの為に、選んだのよ」

 

「――――ぁ、う、うん……良いぜ、スッゲー似合ってる…………今すぐ、キスしたいぐらいに。閉じこめて何処にも行かせたくない、マジで」

 

 耳まで赤くなってる事を、理子は自覚していた。

 その上、彼の顔だって見れない。

 己は今、どんな顔をしているのだろうか。

 

「………………キス、しても良いわよ。壁ドンなら、……するでしょ、たぶん」

 

「………………我慢できなくなるから、髪にだけ」

 

「そう…………好きに、しなさいよ」

 

「ああ、……好きにする、だから、お前はしばらく喋るな、首輪とか鎖とか付けたくなるから、黙ってキスされてろ」

 

 そう言いながら、アキラは酷く喉が乾いているのに気づいた。

 口の中がカラカラで、彼女の柔らかそうな唇に吸いついたら餓えが満たせそうなのに。

 でも、それをしてはいけない。

 

「……理子」

 

「っ! ぁ、――っ」

 

 恐る恐るアキラは右手を理子の頬にあて、彼女はその瞬間ビクッと肩を震わせる。

 その姿が何より愛おしくて、アキラは強く抱きしめたい衝動を堪えるのが大変だった。

 

「…………ん、ああ、良い匂いだな、同じシャンプー使ってる筈なのに、どうしてこんなに艶々した髪でさ、良い匂いしてんだよ」

 

 ちゅ、ちゅ、と理子のショートカットの髪にキスの雨が降る。

 彼女はぐるぐると視界が揺れる錯覚を覚えながら、必死に立って。

 

「なんでこんなにテメェは可愛いんだよ……、なぁ、髪以外にキスしてもいいか? 嗚呼、許してくれるなら手足を縛ってベッドで無茶苦茶してぇ……でも、お前に嫌われるような事はしたくねぇんだ」

 

「…………はぁ、ふぅ、ぁ、――――ん……、なら、手、うん、指なら好きにして良いから、今だけ、今だけは私の手を好きにして、それで……我慢できる?」

 

 彼女にとっては、とても過激な提案だった。

 そこが妥協点でもあった、このままだと髪以外にも際限なくキスされてしまう、それは心臓が持たない。

 なら、そう、手だけなら耐えられるかもしれない。

 

「…………ごくッ、い、良いんだな? 本当に、好きにして……良いんだな?」

 

「………………するなら、早く、恥ずかしくて死にそうなんだから」

 

「――――いくぞ」

 

 次の瞬間、くすぐったい感触が指先に発生した。

 思わずアキラの顔を見ると、切なそうに、しかして欲情している瞳で理子を見ている。

 ぞくぞくと、彼女の背筋に何かが走りそうになる。

 

(こんなアキラなんて……)

 

 独占欲にまみれた、でも必死に自制して。

 ぺろぺろと丹念に指が舐められ、がじがじと噛まれていく。

 息が荒くなる、理子もアキラも、何かいけない事をしているような背徳感に支配され。

 

「――――んっ、痛っ」

 

「うぁッ、す、すまん!! あー、血が出てるな」

 

「あ、ああ、そうね、…………ならこれでお終いにしましょ、どこかで絆創膏を見たから、探してくるわ」

 

「…………スマン、ちょっとやり過ぎた」

 

 数十分も続いたソレは、理子の左手の薬指の根本に付けられた歯形によって終了した。

 まるで指輪のように鬱血し、少しだけ血が出て。

 彼女はそれにキスしたくなる衝動を、頭を降って脳から追い出した。

 

(うおおおおおおおおおおおッ!! ヤりすぎたぁ!! またもヤりすぎたじゃねぇか!! ああもうッ、理子に嫌われたらッ、い、いやそんな風じゃないと思うけども!! しばらく顔が見れねぇえええええ!!)

 

(ううっ、まだ心臓がドキドキ言ってる……顔が火照ったまま戻らないわ……)

 

(土下座……、そう、ここは土下座が必要かもしれん、いやでも普通にした方が良いのか? うーん分からねぇ!!)

 

(――――でも、知らなかった。アキラがあんなに独占欲強めだなんて、アレ、マジで言ってたわよね……)

 

 理子は考える、今までアキラが暴走していたのは。

 確かに性欲というのもあるだろう、だがそれ以上に強い独占欲がそうしているのではないか。

 

(なら……何か手を打たないと、同じ事の繰り返しね)

 

 身が持たない、あんな迫られ方を何度もされるなら。

 不意打ちで唇を奪われた方が、告白される方がマシな様に思える。

 

(――――独占欲ってコトは、わたしがアキラだけって思わせれば良いのよね)

 

 なら、どうすれば良いのか。

 理子は左手の薬指に絆創膏を張り終え、風呂場の脱衣所に置いたままだったタブレットに手を伸ばす。

 そして交換ページを開きながら、ベッドまで戻り。

 

「り、理子――」

 

「ちょっと買う物あるから、しばらく放っておいて」

 

「あッ、はい、そうします……」

 

「うーん、何か良い道具か何かがあれば……」

 

 その日、彼女はずっと考え込んでいて。

 アキラは悶々としたまま、理子の顔色を伺って過ごし。

 ――セックスしないと出られない部屋・七日目。

 

「………………何ぞ??」

 

 朝起きたアキラが目にしたのは、テーブルの上に鎮座したゼクシィ一年分であった。

 

 

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