大嫌いな幼馴染みと一緒に、セックスしないと出られない部屋に閉じ込められた   作:和鳳ハジメ

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クエスト16/天使のお薬

 

 

 ――セックスしないと出られない部屋・8日目。

 天使のオッサンは、理子から送られた要望に頭を悩ませていた。

 彼女の提案は、彼女とアキラの関係を進展させるのに有効であるように思えたが。

 

「しかし理子はん……ちょっと劇物でおまへんかコレ……??」

 

 だが楽しい、実行すればとても尊いモノが見れるだろう。

 天使はそう確信するが、一歩間違えれば関係の破綻に繋がる。

 ここは、慎重に考えなければいけない。

 

「まったく……お二人には驚かされまっせ、いやーホンマ今までで一番楽しいお二人でんがな! 何処までも粘ろうと拒否する癖に、一歩づつお互いの関係を深めていく……ああ、尊みエネルギーの後味がこんなにエエとは――!! でもそれはそれ、これはこれでんがな理子はん、…………悩みますなぁ」

 

 もし彼女の要望を通し、そして良い結果が得られたのなら。

 それは二人が、この部屋から出て行く事を意味する。

 天使のオッサンにとっても喜ばしい事ではあるが、一抹の寂しさもあって。

 

「でも、……ここは巣立つ所やさかい。うん、――ガンバやでお二人さん!!」

 

 何組もの恋人達を成立させ、地道に人口を増やす事が天使のオッサンの使命。

 別れの日は近い、また一組のカップルが巣立つ。

 喜ばしい事ではないか、と涙ぐみながら天使は彼女の要望通りに手配をして。

 

「ぐふっ、ぐへへへへへへっ、じゅるり、今度はどんな尊いもんが見れるんやろなぁ……!!」

 

 ――そして朝、食事を終えた二人が見た物は。

 

『相手の心の声が聞こえる薬を飲みましょう、効果は一時間。グッドラック』

 

 は、とアキラの喉から掠れた声が漏れた。

 今日の日替わりクエストは、いつも以上に訳が分からない。

 だが、天使のオッサンという超常的存在が用意した物なら本当に効果がある事であり。

 

「なんでッ、だあああああああああああああああああああああああああああああああああッ!!」

 

「へー、ふ~ん、こんなのでねぇ……」

 

「おい理子ッ、何でテメェはそう冷静にしてられるんだよ!! 相手の心の声だぞ?? うわああああああああああッ、マジかッ、マジかよおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 

 アキラとしては頭を抱えるしかない、だってそうだ。

 もし飲んでしまえば、己の内側に秘めたアレやソレな感情がダダ漏れであり。

 

(――いや、つまりそれはコイツも同じ。なら……い、いやいやいやッ!? ダメだろそんなの!!)

 

 何というか、そういう薬に頼るのはダメだと彼としては思うのだ。

 彼女から自発的に、或いは自分の言葉で聞き出すことが重要なのではないか。

 

「で、何時のむ? わたしは今からでも大丈夫よ」

 

「待て待て待て、早まるな、頼むから待ってええええええええええええええ!!」

 

「面白いを通り越して、いっそ哀れなぐらいに必死ねアンタ」

 

「必死にもなるだろ!! だって心の声だぞ!? それって本音とかだろ!! お前だって嫌だろうが!!」

 

 薬の入った小瓶を持つ彼女の手を両手で掴み、アキラは血走った目で理子に迫った。

 しかし、彼女はさらりと。

 

「わたしは最終的に処女を喪うリスクがあんのよ? それなら心の声ぐらいどうってコトないでしょ」

 

「――う゛ぐッ、そ、それを言われるとだな……」

 

 黙りつつも飲みたくないと全身で告げる彼に対し、理子の態度は冷静に見えた。

 だが。

 

(ううううううううううっ、このバカアキラ!! 誰が誰の為に仕組んだと思ってるのよっ!! 心の声がアンタに聞こえちゃうだなんて、恥ずかしくないワケが無いでしょうがっ!!)

 

 彼女とて乙女だ、いざ目の前にしてみれば躊躇いも恥じらいもあって。

 だが、飲まなければ関係は進まない。

 理子は全身全霊で冷静さを保ちながら、余裕たっぷりに提案した。

 

「ま、楽しそうだし飲みましょ。どーせ一時間で終わるんだから」

 

「だから待て、待ってください理子様。こう考えようぜッ、一時間なら日付が変わる一時間前に飲んで、飲んだら寝る! これだ!!」

 

「それなら今から飲んでゲームした方が楽しそうじゃない?」

 

「――――それだッ、理子、お前天才じゃ……って流されるかよ畜生ッ!! 飲んだら最後だぞ? 分かってんのか? 飲んだらお終いだぞ??」

 

 主に、アキラの尊厳的な意味で。

 この部屋に来てから、どれだけ彼女に対し邪な念を抱いているのか。

 どれだけ、制御出来ない好意を、暴走してる恋情を、どれだけ、どれだけ、どれだけ。

 そんな感情を知られるのは、出来るだけ少なくしたい。

 

(その意味では、ゲームすんのは有効かもしれねぇがさぁ……いやダメだろ)

 

 仮にボードゲームをするとしよう、ならば確かにゲームの駆け引きが楽しくなるかもしれない。

 だが。

 

(オレが対面に座るお前の胸の谷間とか、へそチラとか、おっぱい揉みてぇとかキスしてぇとか、ちょっとした拍子に考えた事が筒抜けになるって事だろ??)

 

 仮にswitchなどで対戦ゲームをするとしよう、当然、視線は画面かもしれないが。

 

(そっち系してる時の距離が近いんだよテメェは!! なんで隣なんだよ肩は触れるし良い匂いするし!! 興奮したらバシバシ叩いてくるし!! リアル妨害しかけてきたり時には楽だからってオレの膝に頭を乗っけたり、オレの頭におっぱい乗っけたり好き放題じゃねぇか!!)

 

 耐えられない、色々とピンク色が溢れてしまう。

 ならば当然、それが伝わる訳で。

 

「なら妥協案と行こうぜ、オレは寝る一時間前に飲む。お前は好きな時に飲めよ」

 

「え、嫌よそんなの。全然面白くないわ、それに~~、一度アンタの心の中を見てみたかったのよねっ、あー、学校で唯一の童貞はいったいどんな思考してるのかしら??」

 

「は? 待て、待ってくれ、今、学校で唯一の童貞とか言ったか??」

 

「言ったわよ、男子は知らないでしょうけどね。女の子には女の子のネットワークがあんのよ。――ウチのガッコ、童貞ってアンタだけよマジで」

 

「~~~~~~ッ!? ば、バカなアイツらがッ!? 恋人いないって」

 

 アキラ達の通う高校、生徒総数三〇人で廃校疑惑があれど何故か存続してるド田舎校。

 同級生達に限っても、七人中七人が恋人はいない筈で。

 愕然とする彼に、理子は呆れたように告げた。

 

「こっそり付き合ってたり、町でナンパしたりとかで、マジでアンタだけみたいよ童貞は」

 

「………………ち、ちなみに、そう、いや、オレは信じてるぞ? でも一応というかだな、うん、こんな事を聞けばお前は絶対に怒るだろうけど――」

 

「はっきり言えば? ヘタレでダメなアキラだもん、どーせ予想はつくし」

 

「そのぉ…………理子様は、お付き合いなされてる方とか、以前交際なさってた方とか、処女膜だとかは……??」

 

「はぁ…………アンタねぇ、いや分かってたけども、殴られても仕方ないコト言ってるの分かってるわよね??」

 

 予想通りとはいえ、腹立たしいものは腹立たしい。

 額に青筋を浮かべながら呆れた顔で、拳を握りしめる理子にアキラは平伏するしかなく。

 

「殴っても蹴っても良いから教えてくれッ!!」

 

「嫌よ、ま、アンタがそれを確かめる方法は二つね。――わたしを抱くか、薬を飲むかよ」

 

「そこを何とか!! オレの全部やるから!!」

 

「そんな口約束なんて信じませーん、というかさ、その前に色々あるでしょうが、そもそもどれだけ一緒に居ると思ってるの? 何で不安になるワケ??」

 

「そ、それは――」

 

 不安になってるとは少し違う、この部屋に来てから、彼女を意識してしまってから。

 他の男の、それも可能性があるだけで。

 とても、否、かなり、非常に、狭量になっているのだ。

 

「不安じゃない? じゃあ嫉妬? 同じコトよ」

 

「でも――」

 

「――知りたいって気持ちは理解するけどね、アンタが本当に童貞かどうか知らないし。だから……飲もうって言ってんのよ」

 

「理子……」

 

 頬を赤く染めて、ぶっきらぼうに言った彼女に。

 アキラは、思わず抱きしめたくなった。

 けれど、本当にそうして良いのか迷って。

 

「…………意気地なし」

 

「ッ! ああもうッ、分かってくれよ!! こんなの使わなくても言葉にしたいんだよ!!」

 

「はぁっ!? 分からないわよ!! こないだからそればっかじゃん!! 何も言わないし強引に押し倒すワケでもないし!! 言わなきゃ分かんないわよ!!」

 

「うぐッ~~~~!! そ、それは、それはだなぁッ…………」

 

「ははっ、ほら、アンタは何も言ってくれないじゃない…………」

 

 口ごもるアキラを前に、理子は俯いた。

 彼は己の事を好きだと、愛してくれていると思っていた。

 前まではそうじゃなくても、この部屋に来てからは確かにそうだと思っていた。

 

(でも、本当に? 本当にアキラはわたしのコトが……)

 

 鼻の奥がツンとなる、目頭が熱くなる。

 頬に一筋、水滴が流れるのを感じた。

 きゅっと胸が締まって、逃げ出したいぐらい息苦しくて。

 

「理子、お前……」

 

「ねぇアキラ、わたしってアンタの何なわけ? どうして何も言ってくれないの? わたしじゃダメなの?」

 

「ちがッ、それは違うッ!!」

 

「何が違うのよ!! いやっ、わたしに触るな!! 嫌い嫌い嫌い嫌いっ、アンタなんて大嫌いなんだから!! 大嫌いなんだからぁ…………っ!」

 

 泣きながら睨む理子は、右手首をアキラに掴まれ。

 残る左手でポカポカと彼の胸板を叩く、力なく何度も何度も、啜り泣きながら叩く。

 

「ばか、ばか、ばか、嫌いよ、アンタなんか、アキラなんか……大嫌い、大嫌いなのよ」

 

(オレは――何をやってるんだッ?)

 

 彼女のそんな姿を見て、聞いて、叩かれて、そのままでいいのだろうか。

 否、否、否、断じて否。

 今この時に言わなければ、何時、言うというのか。

 ――アキラが覚悟を決めた瞬間だった。

 

「嫌い嫌い嫌い、…………嘘、嘘よ――好き、ホントは大好きなの、アキラ……」

 

「ッ、~~~~ぁ、理子!!」

 

「っ!?」

 

 その瞬間、彼女は目を見開いて驚き。

 瞼をゆっくりと閉じ、叩いていた手は彼のTシャツをギュッと掴んだ。

 アキラは、理子にキスをしたのだった。

 

 

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