大嫌いな幼馴染みと一緒に、セックスしないと出られない部屋に閉じ込められた   作:和鳳ハジメ

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クエスト20/尽くす男

 

 

 ――セックスしないと出られない部屋・十日目。

 空気は、昨日から引き続き重かった。

 セックス禁止令を出した彼女は、アキラと一言も口を聞かず。

 

(気不味い……メシが缶詰なのがいっそう……くッ

どうにかしないと!!)

 

(あ、意外と缶詰だけイケるわね。でもそろそろカップ麺も恋しい……、そーなるとセックスしなきゃなのよね、悩ましいわ)

 

 今までの暖かな食事から、部屋の角にどっさり置かれた缶詰へ。

 理子が当初予想したより様々なバリエーションがあり、その上で美味だったのは嬉しい予想外ではあったが。

 問題はやはりある、アキラの事もあるが。

 

(娯楽が無くなったのは痛い……、本の一冊でもあれば楽にコイツを無視できるのに!)

 

 無言で無視するにも限度がある、退屈は人を殺しかねない。

 寝るにも限度があるし、二人きりの部屋には視線を遮る所が皆無に近く。

 

(そろそろ、喋るコトぐらいはしてあげましょうか)

 

(どうする、どうすれば理子の機嫌が治るッ! 死ぬぞ? オレは死ぬぞ?? リコニウムを接種しないと生きていけないんだが??)

 

 飴を与えようとする彼女に対し、アキラは彼女の機嫌をどうやって治すか。

 昨日から何度目か分からない、脳内会議を開催した。

 

(オレに残ってるのは言葉とセックスと、そして……オレ専用のポイント残高だ)

 

 天使のオッサンの説明には無かったが、自己目標達成で得られたポイントは、それぞれの専用ポイントであり。

 実の所、それで暖かい食事を出せたのだが。

 

(どれだけ居るか分からない以上、節約は必須だもんな。アイテムリセットに缶詰が含まれない様に交渉して正解だったぜ)

 

 缶詰にかかったポイントは、リセット前の共有ポイントから。

 つまり現在の出費はゼロであり、更に言えば。

 

(理子も自己目標を達成できていたら、ポイントとお願いが残ってるんだよな……でも、使った形跡は無いし)

 

 達成できていないか、そもそも気づいていない、のどちらかだ。

 ならばアキラとしては、ルールをひっくり返されない為にも言及する事が出来ない。

 

(気になるが……今はしかたねぇ、オレの手持ちのポイントで何が変えるか、それが問題だ)

 

 アキラは真剣な目で、タブレットの交換ページを調べ。

 そして一時間後。

 

(こ、これだぁ~~~~ッ!!)

 

 目当ての物を理子の背後で手に入れたならば、後はどうやって渡すかだ。

 機嫌が悪い相手に、口を聞いてくれない相手にどうするか。

 今のアキラには、欲望にまみれた秘策があって。

 

「…………だーれだッ!!」

 

「……………………――――はぁ、アンタって本当にバカねぇ」

 

「うおおおおおおおおおッ!? 理子が喋ったッ!? オレの女神が喋ってくれたぞおおおおおおッ!!」

 

「はいはい、嬉しいの分かったから手を退けなさい、凄く邪魔だから」

 

 こうも喜ばれると、戦意が薄らいでしまう。

 惚れた弱みとはよく言ったものだ、アキラがそうであるように理子もまた確かに彼を愛している。

 誰にも邪魔されず、もう少し恋人になった余韻に二人っきりで浸りたい気分だって否定できない。

 

「んで、何なの? セックスはしないわよ」

 

「そうじゃない、実はちょっとな……プレゼントを用意してたんだ」

 

「ふ~~ん、へぇ、そーなの、ご機嫌取りに来たってワケ? そのプレゼント代、どっから出したのよポイントはゼロでしょうが」

 

「勿論、リセット前にだ。事前に天使のオッサンと交渉しといたんだぜ!!」

 

「あっそ、好きにすれば」

 

 素っ気なく返した彼女であったが、それは嘘だと確信していた。

 何故ならば、彼女は彼をずっと監視しており。

 

(リセット対象に化粧品がならなくて良かったわ、ま、これも天使のオッサンの想定の内なのかしらね? ――でも、お陰で手鏡を使ってコイツの行動は全て見えてた)

 

 そう、彼がタブレットを操作して交換していた一部始終を。

 理子は確かに、その目で目撃していたのだ。

 となれば、当然の様に疑問は出てきて。

 

「んで? 何をくれるって? ま、何をプレゼントされた所でセックス禁止は解かないけどね」

 

「それを期待してないとは言わん、でも……お前が口を聞いてくれないのは……スゲェ辛いんだ、だからさ、機嫌を取ろうって訳なんだけど、でもそれ以上の事もあって……いや、オレが先走ってるだけなんだけど」

 

 口ごもるアキラに、理子はおやと眉を動かした。

 幼馴染みとしての経験が、恋人としての勘が、女としての嗅覚が、期待しても良いのではと囁く。

 

(な、流されちゃダメよ……、冷静にならないと、アキラは確かに今、0ポイントなのに何かを交換した)

 

 それは、彼がポイントを保有している事を意味する。

 アキラだけが使えるポイントがあって、理子と共有しているポイントは0のまま。

 ならば、その存在とは。

 

(――――ああ、自己目標達成のポイントね。お願い以外にもあった筈だわ)

 

 確認してはいないが、己にもそれがある筈だ。

 自己目標も達成している筈、彼がそれを言わないという事は。

 つまり、イニチアシブを取ろうとしているという事で。

 

「…………ねぇアキラ、何を渡そうか当ててみましょうか」

 

「ッ!? はッ!? 分かるのか!?」

 

「分かんないわよそんなもん、――でも、推測なら立てられる」

 

「…………ハッタリなのは、見え見えだぜ理子」

 

 アキラは彼女の鋭い気迫にたじろいだ、そうだ、これはハッタリに決まってる。

 彼が今から渡そうとしているのは、早まったとも言えるが不意打ちであるとも言えた。

 きっと彼女ならば、喜んでくれると確信しているが、絶対に予想出来ないとも踏んでいて。

 

「この部屋に来てから、恋人になってから、見えてきたモノがあるの」

 

「……何を」

 

「アンタの性質よ、わたしのコトとなると途端に臆病で、嫉妬深くて、全てを独占しないと気が済まない弱虫」

 

「よ、よわッ!?」

 

「ホントのコトでしょ? ――そして今、アンタはこう言った『先走ってる』って」

 

 ビクンとアキラの肩が揺れる、その一瞬を理子は見逃さなかった。

 正直に言えば、彼の言うとおりハッタリである。

 だが、必要なハッタリだ。

 

(考える時間はあったもの、ええ、痛感したわ閉じこめられたから、――コイツに対抗するにはわたしの方が上だって刻みつけるしかない)

 

 だから、何が何でもプレゼントの品を当てなければならない。

 考えろ、考えろと理子は必死に脳を回転速度を上げる。

 

「アンタはわたしと恋人になるだけじゃ満足しなかった……だから閉じこめた、そうね?」

 

「それが? 何の関係があるんだ?」

 

「最後まで聞きなさい、――アンタはわたしとの関係をもっと強固にしたい、そして喜ばせたいと思ってる、同時に独占したいとも」

 

「…………それが? 理解してくれて嬉しいぜ」

 

 二人の間でバチバチと火花が散る、アキラはズボンのポケットに入れたプレゼントが妙に冷たく感じた。

 理子はその雰囲気を敏感に読みとって、冷徹に推測を重ねる。

 

「わたしが喜ぶ、……つまり女性にとって嬉しいコト、そしてアンタにも利益がある、その上で関係を強固に出来て……今、アンタが手に入れられるモノは」

 

「わ、分かるわけがねぇッ!!」

 

「――――ポケットを意識したわね? ええ、答えは指輪、ならプロポーズリングね、ペアリングだとアンタは満足しないもの、ピアスはわたしの体を傷つけるから嫌、だからプロボーズリング、ね、間違ってるかしら?」

 

「~~~~ッ!?」

 

 悠然と微笑む理子は、凄みと美しさがあって。

 ゴクリと唾を飲み込んだアキラは、項垂れてため息を一つ。

 そしてポケットから、指輪を出して。

 

「…………当たりだ、なぁ理子、オレとこの先もずっと一緒に居てくれ、結婚して欲しい」

 

「え、嫌よ。嬉しいけど今のアンタじゃ嫌、恋人関係を解消されないだけマシって思いなさいな」

 

「…………結婚してくれ理子ッ!!」

 

「だから嫌、いやナイわ、うん、監禁してそれ渡すとか喜ぶ女が居ると思ってんの?? 頭沸いてない??」

 

 バッサリと切られて、アキラの涙腺は思わず緩む。

 即座に滂沱の涙を流しながら、彼女の足下に縋り。

 

「おろろろろろおおおおおおおん、結婚しれくれよ理子おおおおおおおおおおおお!! お前に捨てられたら生きていけないんだよおおおおおお!! ここからは出せないけどさあ、お前の将来全部オレにくれよ、オレもオレの全てをやるから!!」

 

「うわっ!? ちょっと足にしがみついて泣くんじゃないわよバカ!! ああもうっ、今は受け取れないって言ってんでしょうが!! ちょっとは汲み取りなさいよ!!」

 

「………………なる、ほど??」

 

 それはつまり、違う時であれば大丈夫なのか。

 アキラが一抹の安堵を覚えた瞬間であった、彼の手から指輪は奪われて。

 

「はい、没収」

 

「いやそりゃねぇよ理子ッ!? 受け取らないなら返してくれよ!!」

 

「は? 女心を無視したペナルティとして没収するの当たり前でしょ、あー、残念だわぁ、プロポーズリング欲しかったのになぁ、このデザイン良さげだし、ちゃんと受け取りたかったのになぁ……」

 

「おいいいいいいいッ!? なら返せよッ!? もう一度プロポーズさせろよおおおおおおおおッ!?」

 

 追いかけっこが始まる、広いとは言えない部屋の中を二人はぐるぐると走り回って。

 とはいえ、理子は女でアキラは男だ。

 体格差もあり、彼は彼女のTシャツの裾に指をかけて。

 

(ははんっ! 奪い返せると思わないコトねっ!! ――――アンタが悪いのよアキラ、わたしを本気にさせたアンタがねぇっ!!)

 

 次の瞬間、理子はTシャツをするり脱いでデコイにした。

 アキラの手には、脱ぎたてホヤホヤのシャツが。

 そして目の前には両手をブラの代わりにし、ニヤニヤと笑う彼女の姿。

 

「――――――ッ!? ちょッ、理子ッ!? お前なにやってんだよ!!」

 

「えー、誰かさんがTシャツ持って行ったから手ブラしてるんだけど? ああ、欲情した? ごめんなさいね巨乳美少女で、でも安心して、…………この手のどっちかに指輪はあるから」

 

「ッ!? ぇ、あ、ぅ、~~~~ッ!! お、おまッ、お前ッ!?」

 

「いやーピンチだわ、すっごいピンチ、今無理矢理に襲われたら、指輪を取り替えされちゃうし犯されちゃうなーー、ピンチだわぁ」

 

 あからさまな挑発に、アキラは声無き叫びを上げた。

 これは誘いであって誘いではない、無理に取りに行けば彼の理性はぷちんと切れて襲うだろう。

 となると、理子は軽蔑どころか恋人解消さえ言い出しかねない。

 

「くッ、お、オレはどうすれば――――」

 

「もしアンタが紳士なら、わたしが愛してるアキラなら、どっちか片方だけ選んで取り返すコトも出来る筈なんだけどなぁ~~」

 

「ぐううううううッ、狡いぞテメェ!! オレはッ、オレはッ!!」

 

「ほらほら~~、愛しのカノジョが風邪引いちゃうわよ~~」

 

 理子は暗に言っているのだ、どっちか片方を選んで正解だったら指輪を返すと。

 当然、無理矢理にセックスしない事が大前提であり。

 

(か、考えろ……、選ぶだけじゃ済まない、あの手ブラを、あの凶悪なわがままオッパイに触れるという事で、そこに隠された指輪を……、ともすれば確実に乳輪も見えるってのに生殺しでぇッ!!)

 

 はぁ、はぁ、と呼吸が荒くなる。

 なんて息苦しいのだ、こんな二者択一が、プレッシャーが存在するのか。

 もし間違えれば、理性を保てる自信なんてない。

 

(だが……、正解でもそれは~~~~嗚呼、オレに理性を保てる自信は無い!!)

 

 なんという、なんという挑発、誘い。

 ここで押し倒せば、もはや二人の関係がどうなるか分からない。

 

(どうする……どうすれば良いッ!!)

 

(ふ、ふふふっ、迷え、迷うのよアキラっ!! こっちはノープランなんだからね!! ま、例え押し倒されてセックスになっても事後にワザと泣くからね!! そうじゃなかったらヘタレって罵ってやる!!)

 

 そう、これは公平な勝負ではない。

 アキラは絶対に理子に無理強いできない、それを計算に入れた圧倒的に彼女に有利な二者択一。

 数十秒間、彼は悩みに悩んだ挙げ句。

 

「…………それは預けとく、目に毒だからとっととシャツ着ろ」

 

「ふーん、へぇ、そーう来るのアンタは」

 

「ウルセェッ!! 犯されたくなければとっとと着ろよ!!」

 

「据え膳があるのに押し倒せないヘタレ、恋人の手ブラも剥がせないヘタレ、チンコ付いてるワケ??」

 

 反撃したい、大声で言い返したい、だがそれをすれば理子の思う壷だ。

 アキラはぐぬぬと唸って、じっと耐えるしかなくて。

 その時であった、シャツを着た彼女はさらりと告げて。

 

「罰として、アンタ明日の昼までご飯抜きね」

 

「ッ!?」

 

「なんか文句ある?」

 

「…………ねぇよ畜生!! これで勝ったと思うなよ!!」

 

 捨て台詞を吐いて、アキラはふて寝を開始。

 

(くそッ、くそくそくそッ、ゼッテェ、ゼッテェに理子とセックスしてやる、強引にでも合意をもぎ取って――――滅茶苦茶セックスしてやるッ!!)

 

(なーんて考えてるんでしょうね、ま、最悪の場合に備えて缶詰を咄嗟に投げる練習でもしておきますか)

 

 かくして、部屋は戦争状態に陥った。

 ――セックスしないと出られない部屋・十一日目。

 その昼である、ようやく食事を許されたアキラは食べ終わった後で。

 

「――――これを見ろ理子ッ!! 交渉の時間だオラアアアアアアッ!!」

 

 血走った目で、勝負を仕掛けたのであった。

 

 

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