大嫌いな幼馴染みと一緒に、セックスしないと出られない部屋に閉じ込められた   作:和鳳ハジメ

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クエスト24/ポイント・オブ・ノーリターンは過ぎ去った

 

 

 子供が出来るとは、どういう事だろうか。

 ベッドの上で背中合わせ、二人は言葉を交わさず。

 

(結婚があるだろ? 理子がオレの家に来るかオレが理子んちに行くか、出産まで金稼がないといけないし、それから育児の本とか読んで勉強……)

 

 いったい、幾らの金銭が飛んでいくのだろうか。

 親に援助を頼んで受け入れられたとしても、男として夫として一年で百万以上は稼ぐ必要はあるだろう。

 

(オレ、ウチの手伝い以外で働いた事がねぇんだよな……)

 

 その上で、受験勉強をする可能性も考慮しなければならない。

 大学、進学という問題があるのだ。

 

(親としては……大学は出てって気持ちはあるだろうなぁ……)

 

 そしてそれは、きっと理子も彼女の親も同じで。

 子を孕む、それだけでどれだけの影響があるのか。

 ただ、これだけは言える。

 

(どんな事があっても……オレは理子を諦めない、産まれてくる子も諦めない)

 

 けれど考えてしまうのだ、どうしても、考えてしまう。

 

(オレは……親になれるのか? 良い父親になれるのか?)

 

 何より。

 

(取り返しの付かない後悔を、理子に与えてないか?)

 

 ぎゅっと拳を握る、バカだバカだと彼女から言われてきたが。

 本当に自分は愚かだ、彼女にこんな選択をさせてしまった。

 嫌われて当然、憎まれて当然、部屋から出てた途端に縁を切られても不思議じゃない。

 

(――――でも、お前はオレを見捨てないって、オレの側にいてくれるって。今なら心から理解できる)

 

 信じられる、当たり前と言っても良い。

 リンゴを落としたら地面に落ちる、それと同じぐらい当たり前の事だと。

 今なら言える、きっと彼女も同じ気持ちだろうと。

 

(理子との子供……可愛いだろうなぁ)

 

 どちらに似ているのだろうか、男でも女でも彼女に似て欲しい気がする。

 でも自分と似た子も悪くない。

 

(男なら、ベタだけどキャッチボールとかしてぇよな。女なら……ままごととかしてぇ)

 

 それを、理子が側で暖かく見守っているのだ。

 彼女と我が子が一緒に昼寝している所に、タオルケットをかけるのだっていい。

 きっとそれが幸せで、でもそれは。

 

(理子も……同じだと嬉しいよな)

 

 同じ幸せを共有できるのなら、これ程に嬉しい事はない。

 けれど、現実を考えてしまえば乗り越えなければならない壁が、責任が大きくて。

 足が竦む、このまま踏み出していいのか確信が持てない。

 

(ねぇアキラ……アンタはわたしとの子供を望んでくれるの?)

 

 それは理子も同じだった、覚悟はした、道を選んだ。

 だが、どうやっても不安は消えない。

 どうやって踏み出していいのか、スイッチを押すことが本当に正解なのか。

 

(もし無事に産めたのなら、きっと幸せなんだろうな)

 

 今が幸せではない、とはいわない。

 妙な状況に陥ってはいるが、結ばれたことは本当に幸せで。

 でも、選んだ事とはいえ。

 

(展開が早いのよね、いつかはってそりゃあ少しぐらい考えたことはあるけど……、結婚してからって、もっと大人になってからだって思ってたし)

 

 子を孕む選択をした、だから何としてでも産む。

 必要なら両親とだって縁を切るだろう、だけど。

 

(幸せに……みんなから祝福されて産まれて欲しい)

 

 法的には成人になるのだろう、けれど子供だ、自分達はまだどうしようもなく子供なのだ。

 もしもの場合、二人でちゃんと育てられるだろうか。

 子供に苦労や不便はさせたくない、アキラにだって無理はして欲しくない。

 

(――最悪の事態は覚悟しておかないとダメよ)

 

 結婚式なんてしてる余裕なんてない、どこか遠い地で二人と我が子だけで。

 でもそんな厳しい生活も、彼と子供がいれば乗り切れると思うのだ。

 それがどんなに甘い考えでも、少なくともそうであって欲しいと。

 

(アキラとの子供、可愛いだろうなぁ……男の子がいいかな、女の子がいいかな……ああ、双子ってのも悪くないわね)

 

 双子は出産が大変と聞くが、何となく憧れてしまう。

 自分もアキラも、それぞれ一人ずつ我が子を抱えて散歩をするのだ。

 我が子を抱えて食料品を買い出しに行ったり、時には公園でピクニックをするのも良い。

 

(そうな未来になれば良いって思うの、アンタはどうなの? ねぇアキラ――――)

 

 背中合わせに未来を思う二人、一方、天使パワーでそれを見守っていた天使のオッサンと言えば。

 

「ふおおおおおおおおおおおおおおおお!! 尊いっ!! 尊いですわお二人さん!! 天使のオッサンは……オッサンは嬉しい!! 我が子の事を真摯に考えて!! 愛する相手の事を思って!! 繋がっている!! お二人は言葉を交わさずとも繋がってんがな!!」

 

 尊みエネルギーが限界を越えて満ちあふれていくのを感じる、これは使わなければならない。

 次のカップルの仕込みに使う予定もあった、だが天使として、それだけに使うのは矜持が許さない。

 

「悩んでくんな!! 盛大に悩んで答えを出すんやでお二人さん!! 子供を孕む事が決まってるとはいえ、悩んで答えを出す事に、二人で答えを出す事に意義があるんや!! オッサンがなぁ……天使の名にかけて幸せにしてやるわい!! だから今は――もっと尊い姿を見せてぇやっ!!」

 

 天使のオッサンが二人から見えないところで、感動と興奮で叫んでいるその時。

 彼らは、ふと気づいて。

 

(――――いや待て、土壇場でコイツがヒヨったらどうする?? そのまま突き進むのか?)

 

(アキラの事だから、間際でやっぱ無しとかもうちょい考えさせろとか言いだす可能性があるわね……)

 

(最悪、スイッチを奪って押さなきゃいけねぇのか……、ならコイツが正気のままだと抵抗される)

 

(――精神的にチンコ勃たない、そこまで考慮するべきね)

 

 双方、襲う気ガン決まりで思考する。

 対話をする気はある、だが最後の最後にどうなるかは分からない。

 ならば、その時にノーと言えない状況を作っておくべきではないのか。

 

(確かエログッズはポイント消費無かったよな、――インパクト重視で攻めるか?)

 

(……ああ、アキラも同じコトを考えてる可能性があるわね、そうなった場合……、勝った方が部屋を出た後の主導権を握る)

 

(ネコ耳は目的に気づかれかねないし諸刃の剣だ、となれば……むしろ子作りセックスとは正反対の方向から、だな)

 

(――――前に雑誌で読んだコトがあったわね、恋人とのセックスにマンネリを感じた時の対処法、ええ、あの時はくだらないって流してたけど……)

 

 妙な方向に全力で突っ走る二人に、天使のオッサンといえば。

 

「癖になりそうやわぁ、お二人の迷走っぷり。まだこの状況下でもケンカップルが見れるんかぁ……ううっ、オッサンは、オッサンは実に楽しいでぇ!! 心境の落差に風邪引きそうやけど、見守るに楽しすぎる!!」

 

 ビール片手に枝豆と、もはや野球観戦するオッサンそのものだ。

 天使のオッサンに面白がられてるとは露にも思わず、アキラと理子はお互いを出し抜こうと必死に思考を巡らして。

 

「――――ねぇアキラ、前立腺って知ってる?」

 

「はいッ!? い、いきなり何言ってんだテメェ!?」

 

「雑誌で読んだんだけどね、こうやってコンドームを指にはめて、あ、ローション出しといて」

 

「いやいやいやいやッ!? 待てって、マジで待てって、何でいきなりそうなるんだよ!!」

 

 激しく動揺しながらも、ベッドから慌てて降りて尻を抑えるアキラ。

 理子はそんな彼に、にっこりと微笑んで。

 

「歴史の教科書に書いてあったでしょ? ――鳴かぬなら鳴かせてみせようホトトギス、ま、鳴くのはアンタなんだけど」

 

「それ鳴くっていうより強制的に勃起させられるヤツだろおおおおおおおおおおおおおッ!?」

 

 彼は交換ページから取り寄せた、後ろの穴用の大人の玩具を握りしめながら。

 先手を取られた、と唇を噛んだのであった。

 

 

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