学園都市というのは表向き学生向けの学習塾や学校機関の集合機関だが、実態は研究者たちにとっての街だというのがこの街に住む人間の偽らざる本音だ。
『外』の人間は他にはない超能力という力に目を奪われがちだが、やはりそうなのだ。
それは『超能力者』第三位、御坂美琴とて変わらないこの街のルール。
七人しかいないとされている『超能力者』であってもその図式は変えられないのかと美琴は絶望していた。
8月17日
美琴は街中にある電話ボックスの中で小さな懈怠端末を操作していた。
携帯普及率100%ともいえる学園都市に存在する電話ボックスは相当少ないうえに、その中でさらにケータイを使う美琴の行為はじっと見ればおかしなものだが、そこまで熱心に中学生ほどの少女を見る人間が居ないので結果、美琴は目立たずに電話ボックスを一時間ほど占拠していた。
(これで4基目っ)
そんな奇妙な行動をしている美琴は何をしているのか、サイバーテロと言われる行為犯罪行為だ。
美琴自身の『超電磁砲』と呼ばれる発電能力を用いて行われる高度なハッキング能力の前には学園都市の能力者の機密が管理された『書庫』ですら容易く貫通し、ハッキング先に攻撃を行うことなど容易い。
自身が攻撃をした証拠すら隠蔽する事が出来るが、念には念をいれて美琴は自身の端末と学園都市の電話局を電話ボックスから直接接続し足がつかないように工夫もしている、
そのために美琴はこんな真夏に密閉された空間で一時間も過ごしていたのだ。
誤解がないように言っておけば、御坂美琴という少女は本来このような犯罪をするような人間ではない、素行が良いとは断じて言えないが、それでも彼女は常盤台中学に所属する“お嬢様”なのだ。
そんな彼女が何故このような悪事に手を染めたのか。
(『絶対能力進化実験』!絶対に止めて見せる!)
絶対に止めなくてはいけない学園都市の闇に触れてしまったのだ。
『絶対能力進化計画』。
超能力者第三位『超電磁砲』のクローン二万体を超能力者第一位『一方通行』が撃破することによって第一位を学園都市の命題『SYSTEM』(レベルシックス)へと押し上げる大規模実験。
知らない内に学園都市の闇は自分に及んでいたのだ、国際法ガン無視の人間のクローン体の製造。美琴のクローンとして生み出された『妹達』(シスターズ)。
撃破とは、御坂がたまにやるような能力者同士の『決闘』なんて生易しいものではなく、『殺害』を指す。
いや、例え『決闘』になったとしても『妹達』では『一方通行』には勝てない。人為的に『超能力者』を生み出す実験から誕生した『妹達』だがその実験は失敗し、彼女たちの能力強度は『異能力者』(レベル2)ほどしかない。
先日、超能力者第三位である美琴でさえ一方的、まったく相手にされず敗北したのだからレベル2程度がどうなるかなんて火を見るよりも明らかだ。
直接対決に敗れた以上美琴の取れる手段は今やっているような研究所を外部からハッキングして研究所ごとデータをぶっ壊すといったような妨害工作しかない。
(研究が出来なくなれば実験は凍結するはず)
そんな覚悟を決めて美琴は研究施設を潰していった。
Sub 2
「あ、なんかメール来てる」
「どうしたの?」
「なんか仕事の依頼が来てたんだよね、無条件反射能力応用研究所のデータの復元依頼だってさ」
「あー、確かに逆算お兄ちゃんの得意分野だねー」
Sub3
美琴が『絶対能力進化実験』に関わっている研究所を端末から破壊可能な範囲をあらかた破壊し終わったのは夕方、日が沈むかという時間帯になってからだった。
「あとは直接行ってぶっ壊してやる」
「それは困るなぁ」
「誰!?」
美琴が後ろを振り向くと白いシャツを着たさわやかな感じの男が立っていた。
「やあ、僕は木原逆算。初めましてだね、常盤台の『超電磁砲』」
「……木原」
『木原』、美琴の脳裏に浮かんだのはその名を持つ研究者一族。美琴自身も彼らの1人に『幻想御手』を巡る一連の事件で遭遇している。
そして何より美琴が『書庫』から盗み見たデータに記載された『絶対能力進化実験』の統括責任者の名、木原幻生。
「さっそく邪魔が来たってわけね、足がつかないように工夫したんだけどなー」
軽い口調とは裏腹に美琴の周りに青い電気がバチバチと迸る、木原と一度交戦した経験から美琴は目の前の相手を侮るつもりは一切なかった。
「おっと、僕にその気は一切ないよ、ただお願いがあってね」
「……あによ、聞くだけ聞いてあげようじゃない」
両手を肩まであげ降参のポーズをとる逆算だが、美琴は油断なく見据え攻撃の姿勢を解かないまま先を促す。
「これ以上の施設の破壊は無駄だし、面倒だからやめてくれないかな?」
「は?」
瞬間、逆算の足元に雷にも似た電撃が落ちた。
「とぼけたこと言ってんじゃないわよ、あたしを馬鹿にしてるの?」
「いや、まったく?話は最後まで聞いてくれよ」
目の前に雷が降ってきたというのに逆算は笑みを崩さないままだった。
「御坂さんはきっと誤解してるんだ、さっき君は僕を『邪魔』と呼んだけど、とんでもない。僕は君が徒労を教えに来たんだよ」
「んによ、さっきから無駄とか徒労とか、アンタが来たってことは私の施設妨害は効いてるって証明じゃない」
「まぁまぁ、落ち着いてっていったろ話は最後まで聞いてくれって、とはいっても今の御坂さんには難しいみたいだからこれを見てよ」
逆算は自分の鞄から弁当箱ほどのタブレットを美琴に差し出す。
美琴は罠を警戒したが、自身の電磁センサーで銃火器を所持していないことを確認しからおずおずと受け取る。
隙を見せないように深く読み込むことをせず速読、流し読みの要領で読み込んでいく美琴(美琴の処理能力なら難しいことではない、美琴だけでなく多くの能力者の必須スキル)の目が見開かれた。
「研究委託計画書ってことは……」
「そう、君が潰しまわっている研究所のデーはもうほとんどが他の系列研究所や末端に引き継がれてる」
「それならそこも片っ端からぶっ潰すだけよ!」
「目を背けるな」
びくりと美琴の肩が跳ねた
「君なら分かるはずだろ、ここに書いてあることの意味が」
この次から原作と大きく乖離します