酒呑童子   作:珈琲フロート

10 / 10
第10話 閑人閑話(後日談)

閑人閑話(後日談)

 

「ウー」

「ギャー」

「これは、憑依防止魔法と強制転移魔法だ」

「ここから出せ~」

「結界を破れない」

「俺は10日も、ここに閉じ込められている」

「おのれ、甲羅不労人(こうらふろうと)。またしても、お前の仕業か」

 

ここは、とある林の中の小さな社(やしろ)の境内

「お前らも懲りないな」

魔法陣の前に立つ山伏姿の男が言った。

 

「覚えてろ」

「人の恋路を邪魔しやがって」

「邪魔するさ。お前たちがやろうとしていることは犯罪だ」

「おとなしく、霊界に引き籠っていろ」

「唵(おん)~~(如呂如呂)何多羅寛太等(なんたらかんたら) 娑婆訶(そわか)」

「カッ—」

魔法陣に囚われていた、悪霊たちは消え失せた。

注:何多羅寛太等(当て字)

 

「そこ、何やつ」

近くの木陰に向かって、彼は手裏剣を投げた。

竹籠を担いだ百姓姿の若い男が姿を現した。

額と胸、左腹部に手裏剣が突き刺さっている。

「何か妖怪?」

「違います人間です。用はあります」

 

「手裏剣イメージですか」

「これ子供の玩具ですよね。25世紀半ばに流行った」

彼の体に刺さっていた手裏剣が消えた。

手裏剣の幻影を見せる玩具だった。

 

「わざわざ25世紀まで時空跳躍して、この玩具を買っていましたね」

「自分で使うためでしたか」

彼はあきれ顔で言った。

「何だ、誰かと思ったら時空パトロールか」

「手裏剣イメージ、これ欲しかったのだ」

『子供か…』

 

「時空警察のパトロール隊員が潜んでいることはご存じでしょう」

「うむ、時巡(じまわり)さんね。いつもストーカーのお仕事ご苦労さん」

「コーラフロート (甲羅不労人)こと本名、赤本濃紺さん」

「憑依(ひょうい)霊を退治していましたか」

「うむ。萃香と夫婦(めおと)になった小太郎に憑依しようとする不届き者が後を絶たないのだ」

「何故、萃香たちに関わるのですか」

「うむ」

「大体の見当は付きます」

 

「あなたは母親の”魔女アカモート”の能力と”すきま妖怪・紫(ゆかり)”の能力を併せ持つ」

「はて、赤と紫を混ぜると濃紺になったかな」

山伏姿の男は話を茶化した。

 

「だが二人とも女だ。この組み合わせで子供は作れないぞ」

「あなたの父親は紫の子孫ではないのですか」

「さあ。父は特別な能力を持ち合わせてはいなかった」

「ちなみに、赤本は母方の姓なのだ」

「ある研究者の話では、このような能力が子孫に発現することは稀だそうです」

 

「紫の行動が不明なので我々には分かりませんが」

「何故分からない」

「時空パトロールの監視対象は人間だけです」

「太古の神や妖怪の類は監視対象外です」

「何故」

「彼らの正体は異星人かも知れません。また何者かによって創造された生物兵器かも知れません」

「時空犯罪を修正したら、太古の神あるいは異星人の怒りを買い、人類が滅亡する事になったら困りますので」

 

時空パトロール隊員は呟いた。

「ときに因果律を破る能力」

「時間の流れに逆らい、歴史を改変する者」

「しかし、この様な能力者の存在は、この世界でどのような意味を持つのか解明されていません」

 

山伏姿の男は呟いた。

「生物がなぜ存在するのか理由は解明されていない」

「時の流れ、つまりエントロピーの増大に抵抗する系としての存在」

「しかし因果律に支配されるもの」

 

「確かに。私たちは歴史を作っていると思っているけれど」

「生物が存在しない場合の自然界を考えれば」

「自然界の歴史を改変する存在なのかも知れませんね」

「でも、自らの存在を否定しても意味がありません」

「生物も自然の一部なのですから」

 

「君たちは労働して自然を改変する」

「私は不労人。君たちの歴史を修正する者だ」

「なんちゃって」

「実は勝手気ままに生きているだけ」

 

「禅問答もどきは、これ位にしましょう」

「しかし、あなた方のことは分からない事だらけです」

 

「ある神話では、太古の女神が自身の分身をこの世に置き去りにして捨てた話があります」

「その分身の名はアカモート。時と人の運命を操る能力を持つ者」

「その能力の一部を、あなたの母親は引き継いでいたという」

 

「あなたの母親は16世紀の生まれで19世紀に亡くなっている」

「ですが、能力の関係で実際に何年生きたのか不明です」

「あなたが生まれたのは母親が亡くなってから300年後の22世紀半ば」

「母の話では、私は12世紀末に亡くなるそうだ」

「俺、その時代が大好きだから…骨を埋めることになるのだろう」

「めちゃくちやだ」

時空パトロール隊員はため息をついた。

 

「母は私を看取ったと言っていた」

「紫様の助けで、母は何度も時空跳躍しているのだ」

「私も何度か時間旅行に連れて行った」

「既に私も母を看取りに行ったことがある」

「だが今も時々、私たちは会っている」

「よかったですね」

 

「あなたの母親が紫を召喚したことが、あなたの誕生につながったのですね」

「いや、母は紫様を召喚していない。そのような能力はない」

「その時、紫様は隙間の出口と母が形成した時空透視穴の両方が見えていたそうだ」

「そして好奇心から自らその穴に飛び込み、時空跳躍したのだ」

「紫様は母を上手く利用するために召喚されたと言っていたのだろう」

 

「なるほど。しかし正直な話」

「あなた方の能力はとても便利で、うらやましい」

「君たちも時空跳躍装置を使ってどこにでも行けるではないか」

「私たちは仕事ですから。私用では装置を使えません」

「あなたのように、好き勝手に時間旅行している人とは違います」

 

「私にも制約がある」

「元々自分が生きている時代には時空跳躍できない」

「一度時空跳躍して滞在した時間帯には、再び行くことができない」

「それは量子が同じ形では同時に存在できないので弾かれるのです。あるいは多重世界の分枝が確定したためなのか...」

「量子もつれ…で何とか」

「だめです」

「でも、あなた自身の時間で10年近く経過すれば新陳代謝の効果が出て、また行けますよ」

 

「ところで、鬼伝説の元ネタになった者たちを見たことはあるかい」

「ええ、あなたを監視しているときに見ました」

「異民族と共存できなかった悲しい事件が元ネタなのですね」

「祖先は自分たちの行いを正当化するために、彼らを一方的に悪者に仕立て上げたのですね」

 

「いつの時代もハト派とタカ派は存在する」

「人と鬼の両方に、お互いの共存を模索する者はいたはず」

「悲しい事件はあったが、最後は共存できたのだよ」

「彼らは私たちの祖先の一つとなった」

「世代を重ねて彼らの血は薄まり、金髪碧眼は見られなくなったが」

「彼らの容姿や能力は遺伝情報として子孫に引き継がれているのだ」

 

「そうですね」

「あなたも異才の持ち主」

「私たちは、能力者を受け入れる必要があるのかも知れません」

 

「いずれにしても、生まれつきの能力者は時空パトロールの監視対象ですが」

「時空は現在過去未来ともに確率の範囲内で常に変動しているので」

「”重大な歴史改変”に該当する時空罪を犯さない限り、あなた方の時空跳躍は制限されません」

 

「時空は確率の雲のような存在で、観測者が現れたときに収束して具現化すると…聞いたことがある」

「だったら、私が歴史改変しても他の人には関係ないはず」

「他の人が観測した時には、異なる状況が具現化しないか?」

 

「その辺のことは証明されていません」

「ただし、一度具現化した現実は確率が変わるのでしょうか、ほかの収束とつながり易くなるという説が有力です」

「極めて多数の具現化現象が繋がり、歴史がつくられていくのでしょうか」

「いづれにしても、私たち時空パトロールは時空犯罪の発生を監視・防止するだけです」

 

「うむ、歴史上の重要人物に近づかなければ、大体大丈夫だよな」

「言うまでもありませんが大量殺りく、破壊行為は駄目です」

「未来技術を利用した金儲けや売名行為も禁止です」

「オーパーッ(その時代の文明にそぐわない出土品)となる物の遺失物にもご注意願います」

「まあ、時空跳躍後の影響がどう出るのか、結果次第です」

 

「時空警察を所管する世界連邦時空省特殊事象対策局は、時空改変について」

「僅かな改変ならば放置します」

「大幅な改変については、当局の判断で勝手に修正することがあります」

「重大な歴史改変で時空罪に該当する場合は、能力者を時空跳躍前に逮捕拘束して改変を阻止します」

「歴史改変を意図していない場合は、身に覚えのないまま法廷に立つことになります」

「時空跳躍中は、くれぐれも慎重に行動してください」

 

そう話すと、男は一瞬で姿を変えた。

今までの百姓姿は光学迷彩の一種だった。

ヘルメットに戦闘服を着用した、戦隊ものヒーローの様な姿になった。

「ではまた別の時代、別の場所で会いましょう」

かれは敬礼した。

山伏姿の男は合掌して答えた。

「ではまた、何時か何処かで」

二人は、そう言い残すと姿を消した。

 

 

            終

 

 

 

(資料)

花月夜 「Yonder Voice」

 

第1話 「浅き夢見し、酔ひもせず」【砕月】

砕月 DiGiTAL WiNG

第2話  東方vocal No.13 「破月」 

【東方】「酔花」

第3話  東方萃夢想「砕月~天零萃夢」

    忘れじの故郷 【砕月】

第4話 【Eurobeat】 Catch Us 「A-ONE」【English Subtitle】

Demetori - ネクロファンタジア ~ Remix (necrofantasia)

第5話  東方ヴォーカルアレンジ 紅い月 藤宮ゆきVer

     幽閉サテライト / 孤独月【FullMV】

     悪戯センセーション(Vo:あやぽんず*/あよ)

第6話  幽閉サテライト - 炸裂アイロニー

    【東方Vocal/Electro】 Lullaby 「Frozen Starfall」【Subtitle】

第7話  【東方Eurobeat ENG SUBS】Here I Am【A-ONE】

     東方萃夢想 最終ボス 伊吹萃香のテーマ「御伽の国の鬼が島」

第8話 【東方Vocal】幽閉サテライト / 瞳を閉じて、映す夢幻

     東方花映塚 最終ボス 四季映姫・ヤマザナドゥのテーマ 東方紫香花Ve「六十年目の東方裁判

    東方カラオケ 断罪ヤマザナドゥ

第9話  舞々 / 恋酔月

    【東方Vocal】 真実の詩 「EastNewSound」

 

 

東方 ~ Vocal」 [Silver Forest] 萃夢想歌

 

 

 

 

【東方】「砕月」をアイリッシュフルートで"Broken Moon" on Irish flute【TOUHOU】

 

 

 

(東方project 二次創作)

  小説 酒呑童子

 

お読みいただきまして、ありがとうございます。

 

            (作者) 珈琲フロート

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。