第二次大戦で死んだかと思えば今度は戦車道   作:狼黒

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電撃戦?グデーリアンの?…あぁまほのね

1945年、ちょび髭等ナチスが率いるドイツ、第三帝国は滅びの時を迎えようとしていた

東からはソ連、西からは米英中心の連合軍が迫っていたからである

焦ったドイツは1944年12月16日に「秋霧作戦」を開始して戦局挽回を狙ったが失敗し、却って戦力が著しく低下した

更には1945年3月に開始された「春の目覚め作戦」も失敗し、津波ともいうべき大量のソ連兵と火砲、戦車により、4月には首都ベルリンまでに追い詰められていた…

 

 

「はぁー…もうここまで来たら無理でしょ」

 

「それはそうですけど大尉、そういうことはあまり言わない方がいいかと、タダでさえ親衛隊には睨まれてるんですから」

 

操縦士がそう言ってくるが、もう首都にまで攻め込まれてるこの状況で親衛隊も糞もあるかと思う

首都を守る守備隊なんて「ヒトラー・ユーゲント」や「国民突撃隊」なんていう連中が戦力の大半やぞ

特に「ヒトラー・ユーゲント」はこの状態になってもまだ逆転できると信じてるし、「ヒトラー・ユーゲント」と「国民突撃隊」の兵器の大半は「パンツァーファウスト」が一基

接近しないと効果がない兵器、弾は1発のみ、しかも軍事訓練もまともに受けてない、その上高齢者…

これで戦車撃破出来たら奇跡だな

「ヒトラー・ユーゲント」は一応軍事訓練ぽいものは受けてるから戦車は撃破できるだろうけど、迫りくる赤い津波ことソ連軍相手じゃ焼け石に水だ

少年や高齢者まで前線に動員しだしたらもう終わり以外の何がある?

おまけに指揮してる連中は戦場にすら出たことがないんだぞ

あと親衛隊だけど、目の前で虐殺してた連中が気に入らなかったから殴り飛ばして以来、ことあるごとに親衛隊の監視が付くようになった

ちょび髭の暗殺未遂の時なんて逮捕されたしな

 

閑話休題

 

「敵さんは数千両の戦車、それに対して私らは十両ちょっと…これで勝てると思ってんのか?ましてや燃料、弾薬共に尽き欠けるてるうえに半数は初めて実戦という戦車兵が使ってるんだぞ?」

 

おまけに第一次大戦で使われたとかいう戦車を持ってきた時は我が目を疑った

豆鉄砲に機関銃を防げる程度の防弾装備、しかも速度は亀並みの戦車を持ってきてどうするのかと

 

「司令部から電報ですよ、大尉」

 

そう言って近くにいた親衛隊将校が電報を持って歩み寄ってくる

内容は…はいはい

 

「ブランデンブルク門に展開するコミュニストを歩兵と協力し鉄槌を下すべし…ね…」

 

たった一両の戦車と数十人の兵士で何千といるであろうソ連軍を撃退できると思っているのだろうか

しかも多分今近くにいる歩兵中隊と動くことになるんだろうけど、「パンツァーファウスト」を持った高齢者が殆ど、小銃持った兵隊片手しかおらんやん

同じことを考えているのだろう、操縦士もこの電報を持ってきた親衛隊将校をまじかこいつみたいな目で見ている

ばれたら殴られるぞ…まぁ気づいてないみたいだけど

 

「命令は伝えましたよ、『英雄』殿?」

 

嫌味ったらしくそう言ってナチ式敬礼をすると去っていく親衛隊兵士

それを見ている操縦士がハイライトが消えた目で青筋を立てながら睨みつけていた、怖いわ

因みに私の戦車に通信手はいない、基本的に監視についてる親衛隊が命令を持ってくる

敵の攻撃にビビった親衛隊の連中が逃げだしたせいで他の戦車にどんな命令が出たのかを聞いてそれを実行するなんてことはよくあった

 

「操縦士、さっきからエンジンがご機嫌斜めみたいだから宥めながら進め、あと目のハイライトを戻せ、装填手、場合によっては急激な軌道をするかもしれんが砲弾を落とすなよ、落としたら死ぬと思え、まぁ絶対敵さん対戦車火器を大量に持ってるだろうからな、用心して進むぞ、Panzer vor」

 

さてと、絶望的状況だけど精々頑張りますか

 

 

「…懐かしい夢を見たな…」

 

あの後、結局撃退できずに高齢者を守りながら後退して、親衛隊の奴らから殴られたことまでは覚えてる

目を覚ましたら日が暮れてたからな

まぁそれはさておき、朝飯作って食べるか

 

「おはようヴィーラ、よく寝てたな」

 

「まぁ眠れる時には寝るに限るんだよ…おはよ」

 

そう言う私の目の前にはエプロンを着て料理をしているまほがいた

何言ってんだって言いたいだろうけどもう気にしてない

というか

 

「お前料理できたのか…」

 

「失礼だな、私だって料理ぐらいできる」

 

そう言って作った料理を皿に盛り付けていくまほ

まほの言う通り中々美味しそうな匂いが漂っているうえに、盛り付けも綺麗で食欲をそそられる

 

「おー美味そう、美女が私の好物使って飯作ってくれるとは冥利に尽きるね」

 

「発言がおっさん臭いぞ…」

 

しゃーないねん、こちとら前前世から数えたら70超えとるじじぃやぞ

そう考えながら「いただきます」と言ってまほが作った料理を食べ始める

まぁこのやり取りは既に習慣となりつつある

初めはどうやって入ったのかと聞いたが、本人曰く

 

「西住の名前で合い鍵を作らせた」

 

とドヤ顔で言ってきたから阿保じゃねぇのかと思ったけど

まぁまほが居なかったら基本的に菓子パンあたりで済ませてただろうから、温かいご飯が食べられるのはありがたい

昼は学食で済ませて、朝夜はまほの飯を食べるサイクル

まぁそんなことしたら噂になるのではないかと思うだろうが、もう既になってる

「そういう関係なのか」と聞かれたこともあったけど、あくまで幼馴染なだけと言ってある

何故かまほがむすっとしてたけど

 

「えーと今日は…グロリアーナと練習試合?」

 

「それは明後日だ…今日は二手に分かれて紅白戦だ」

 

「あー、そーだったそーだった」

 

まったく…と呆れるまほにごめんごめんと言いながら味噌汁をすする

因みにこの味噌汁鰹節で出汁を取ってる

たまたま作ってるところを見たときにマジでとってたから我が目を疑った

何でも菊代さんなる人から教わったのだとか

 

「早く食べろ、じゃないと遅刻するぞ」

 

「へーい」

 

本当は遅刻する時間ではないけど、私の髪のセッティングとかをまほがやってくれるから余裕を持っておいた方がいいのよね

いつだったか、前世のころに髪の手入れとか一切せずに戦ってたら怒られて、それ以来操縦士と装填手が髪の手入れとかをやってくれたんだったかな

けどそれでよくケンカしてて宥めるのに一苦労だったな…

で、今世では日本にいたころはまほとみほがやってくれて、ドイツにいたときは同級と後輩がやってくれてたんだよね

なんでも「こんなきれいな髪をしているのに勿体ない」んだとか

そんなことに費やすぐらいなら戦車に乗りたいんだけど、圧のある笑顔で「いいな?」とか言われたら大人しくするしかないでしょうよ

あれだ、その笑顔の後ろに般若が見えたようなそんな感じ

まぁやってくれる分にはありがたいからしてもらってるけどね

 

 

『ヴィーナ、頼んだ』

 

「あいよ、まぁ精々頑張るさ」

 

通信機越しにまほにそう返すと、周りを警戒していた相手チームに向けて側面から突っ込むヴィーナのティーガー

気づいたパンターG型が砲塔を旋回させるが、その時にはもう白旗が上がっている

 

「まずは一台、次弾装填、旋回左40度で待機、通信手、敵の戦車の履帯を狙って撃ちまくれ、敵さんのヘイトを少しでもこちらに向けろ、煽れるだけ煽れ」

 

フラッグ車を護衛していたパンターG型が3両、挑発に乗って戦列を離れてこちらに向かってくる

だがこれこそがヴィーナの望んでた展開、後退しながらこちらへ誘導する

 

「3両接近、左の奴からやる、運転手、2秒後にアクセル全開、すれ違いざまに叩き込んでやる」

 

「敵、左右と正面に分かれました!どうしますか!?」

 

「変更なし、撃破したら撃破車両を盾にして右を片付ける、運転手、撃破車両の陰にドリフト、入ったら急ブレーキしてバック、装填手、急ブレーキ入るけど砲弾を落とさないように注意な」

 

まさか突撃してくるとは思っていなかったのか、慌てて照準を合わせようとする相手チームのパンターをすれ違いざまに側面に砲弾を叩き込んで撃破、その戦車の陰に入ると急ブレーキをかける

直後、目の前を相手チームのパンターが放った砲弾が通り抜けていく

まさか急停止するとは思っていなかったパンターは再装填を急ぐが、バックして出てきたティーガーに撃ち抜かれた

残りの一両は誘いこまれたことに気付き、煙幕を張りながら後退するが

 

「…発射」

 

煙幕の中的確に当ててきたヴィーナのティーガーによって撃破された

 

 

「はぁ~…普段とやってること変わりない筈なのにここまで疲れるとは…」

 

「お疲れさん、反応速度とか装填速度は自己ベストだ、まぁもっと頑張ればあと0.3秒は縮められるね」

 

そう言いながらタオルとドリンクを配る

まぁ今でも十分早いけど、装填速度とかは早いに越したことはない

ここ、黒森峰での私の役割は早い話が伏兵

陣形を組んでる敵に側面、背後などから殴りこんで敵の陣形を崩すのが仕事

まほの得意とする戦術は前世のドイツが使ってた電撃戦、それの歩兵なしバージョンだ

黒森峰が誇る重戦車群が敵戦車に悠然と突撃、最も防御線が薄いところに戦力を集中しそれを食い破り、その穴からマウスやフェルディナントなどの戦車が敵の防御線を食い荒らしつつ、まっすぐに敵フラッグ車へ突撃、その首を取る

これはまほだけでなく、黒森峰全般が得意とする戦術だ

だが、この戦術には致命的な弱点が存在する

それは突破するのに時間がかかってしまった場合、敵の増援が到着して膠着状態になってしまうことである

そして突破できたとしても、もし敵の立ち直りが予想以上に早かった場合、せっかく開けた穴を閉じられて孤立、撃滅されてしまうことだ

これに関しては前世の独ソ戦、そして「秋霧作戦」、「春の目覚め作戦」などがいい例だ

まぁそもそも無理があった作戦のせいじゃないかとも思うけど

 

閑話休題

 

まぁあの時と違って補給に関しては心配しなくていいけど

そこでまほが考えたのが、敵の増援を他の場所に向かわせればいい、または敵の注意をいくらかでも別方向にそらせばいいんじゃないかということ

そうすれば必然的に敵の防御線は薄くなり成功確率が高まる

で、そんな無茶なことができるのは私しかいないってことだ

3年の先輩もまほと同じ考えだったみたいだからスムーズに行った

因みに私も同じ考えで、前世じゃ国防軍の上官はこの考えに乗ってくれたからソ連軍を叩けたけど、西部戦線で親衛隊に言ったら馬鹿かと言われた

その親衛隊上官は殴っておいた、大佐らしいが知ったことか

因みに紅白戦は勝った

まぁ始まる前から「呪われてるのかな私たち」って相手チームが言ってたぐらいだからな、さすがに申し訳なかった

 

 

「ヴィーナ、少し話があるんだが」

 

「むぐむぐ…ごっくん、どうかした?」

 

その日の夜、まほが作ってくれた晩飯を食べているとまほが話しかけてくる

 

「やはりこの作戦は危険すぎると思う」

 

…まぁ確かにこの作戦、私一人でやってるから下手すれば何もできずに撃滅される可能性すらあるからな

聖なんたら、ソ連、米軍戦車軍団なら問題なく対処してきそうな気はする

名前を覚えるのがいちいち面倒なのよ

まぁそれはさておき

 

「大丈夫大丈夫、そうなったら全速力で逃げ切って見せるさ」

 

スターリングラードからの脱出などで後退は慣れてるからな

アルデンヌ、ゼーロウ高地では米軍、ソ連軍の猛攻から脱出した私だ、超ベテランの戦車兵じゃない限りやられはせんよ

ここじゃ親衛隊のクソッタレどもも居ないから殴られることもないしな

 

「だが…」

 

「大丈夫だって、私を信じたまえ、ごちそうさん」

 

まだ何か言おうとしていたまほの言葉をさえぎって食べ終わった食器を片付ける

私を気に掛けるより、まほは自分らしい戦車道を思いっきりやってほしい

私はそれに従って、その範疇で暴れまわるだけだからな

無論、前世みたいに平気で味方を見捨てる親衛隊とは違って、全員の安全を確保しながらね

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