ドラゴンクエスト 〜金たまの花嫁〜   作:peg

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前回までのあらすじ

 ベロキアの街で聖女アトルと微妙に喧嘩した俺は、勇者パーティーの一人と出会い、セルゲイカンタグラヴ=ヴラゴ32世なるネズミの依頼を受け、魔神と戦う羽目になった。

主な登場人物
リザック:俺。数々のバグを修正し、世界を正常なものへと導いてきた、導かれしもの。
聖女アトル:エルフの薬を作るバイヤー。
魔王:ふしだらな女。
魔王幹部ムドー:世界の真理を読み解いてしまった哀れな魔族
女神:物理法則の修正を担う神。最近手が回らなくなってきた。
セルゲイカンタグラヴ=ヴラゴ32世:女神に集り、金儲けせしめんとする教祖。




アンダーワールド

 ネズミであるセルゲイカンタグラヴ=ヴラゴ32世の依頼を、俺は受けることになった。

 深夜に徘徊する変質者を追い払う仕事だ。

 

(いや、変質者じゃなくて魔神か……。魔神ってなんだ?)

 

 ドラクエに魔神と呼ばれる存在が居たかどうか、俺は全く思い出せなかった。

 【時の砂】に釣られて安請け合いしてしまったが、早速後悔していた。

 

(くそ! 俺のチート知識が役に立たないだと!?)

 

 えばるネズミを前に、俺は内心で毒づいた。

 しかし、よくよく考えると、前世の知識に足を掬われたことはあれども、救われたことは殆どと言っていいほど無かった事に、はたと気づいた。

 そう、それはエロゲの(エロ)知識だってそうだ。俺は前世で賢者の何たるかを知った気になっていたが、女体の道は深く険しかった。ソレを知ることは、さながら雪山で滑落しながらパスタを鼻から啜るような苦行に等しい。

 

「はぁ……」

 

 ベンチに深く腰掛けた俺は目を瞑った。俺にチートなんて実は無いのだ。

 

「本当に任せて大丈夫でチュか? テンションおかしいぞお前でチュ」

「ぐぅ……ぶつぶつ」

(……冷静になれ。ここはドラクエの世界だ。大丈夫だ。割とゲームっぽいイベントが多い)

 

 何というか、敵が割りと短絡的なのだ。それは、行商を襲う盗賊にも言えたことだが。

 表現すると次のようになる。

 

《おっす! オラ盗賊! おまえ誘拐すッペ!》

 

 野生の盗賊が現れた。

 

 よくよく考えて欲しい。

 この声だけ聴こえた状況を検証すると、田舎の農夫が山賊に身を落とし、何者かに襲い掛かっているように聞こえるだろう。

 しかし、実態は異なる。

 実はこの農夫、魔王に仕える【じごくのもんばん】ですら、鋤一本で互角に渡り合える槍の名手なのだ。

 魔王に村が襲われた折、手元にあった鋤一本で暗黒天下一武道会に参加し、遂には全王様もおったまげた存在である。

 ここまで聞けば、こいつのシルエットが自ずと浮かび上がってくるだろう。

 

――それは違うドラゴ……。

 

《おっす! オラル○ィ! 海賊王になる野菜だ》

 

 そう、こいつは股に括った一本の伸びる槍を携えた蟹頭だったのだ。

 

――混ざり過ぎだよ!?

 

「がはっ!?」

 

 教会でいつの間にか眠りこけていると、再びクソ女神の声が聴こえ、降ってきた本日の配給が俺の頭を直撃した。

 

「いってー!? なにこれ??」

――【やみのランプ】です。

 

 降ってきたのは、【やみのランプ】だった。

 ってか後頭部が痛い、痛すぎる。

 完全に尖った部分が直撃しやがった。

 流石に、身体が休まらない状況で回想なんてする(神聖敵性体出没地で寝る)べきじゃなかったんだ。

 そもそも、昨日の夜更かしが祟っているようだ。

 俺はおもむろに立ち上がった。

 

「チッ。眠てぇ。目を醒ますか、『ザメハ』」

「あぁ。急になんかブツブツ言ってたと思ったら、寝言だったでチュ」

 

 ネズミを肩に移動させた俺は、自身に『ザメハ』を掛けた。『ザメハ』は、『ラリホー』等で眠らされてしまった仲間を、強制的に起こす魔法だ。

 

「まぁ!?」

 

 するとバキバキに朝立ちし、教会の見習いシスターに2度見された俺は前屈みになった。

 

「……」

「どこが目覚めてるんでチュ!?」

 

 

 

 

 俺達は、聖女アトルを待たずに教会を出た。配給を売った金を、また半分どこかに寄付されてはかなわない。

 

 街の道具屋に聞いた話だが、【やみのランプ】に火を着け、その燃えた香油の匂いを嗅ぐと一瞬のうちにその日の夜へとタイムリープするらしい。

 ソレは気を失っているんじゃないか、と思わなくもないが、主観的にはそうなるらしい。試したくないね。

 そして、滅多に出回ることのない製作が禁止されたアイテム何だそうだ。レア度は高い。

 しかし。

 

「これを売るなんてとんでもない! とてもお値打ちが付けられないよ!」

「かぁーっ! つっかえねぇ!!!」

「あー! 勿体ない!」

 

 店主の言葉に、俺は【やみのランプ】を地面に叩きつけた。

 買い取り拒否されること、既に8件目。

 最後に裏路地の闇行商に買い取りを依頼したのだが駄目だった。

 なんと【やみのランプ】は、街の至る所で買い取りを拒否されてしまった。使い道ないし、産廃やん……。

 

(というか、なんで闇とかが冠詞に付くアイテムなわけ?)

 

 やはり、奴は邪神なのかもしれない。

 

「元気出すでチュ」

 

 ネズミに励まされてしまった。

 女神から渡されたクソアイテムだが、それなりに使い道があるかも知れない。探せば、と前置きが付く上に、具体的には何も思い付けないが。

 

(これ以上は時間の無駄だ)

 

 俺は売ることを諦めた。

 

 

 

 

 午前の日が昇りきらない路地裏は、何処かジメジメとした空気が漂っていた。

 ネズミの案内に従って、俺は魔神とやらを探している。

 と言っても、出没地点に向かい始めて既に2時間くらい経過していた。

 

「こっちでチュ!」

「……」

 

 目の前の足元をヴラゴ32世が駆けた。俺は足早にその後を追う。

 

「次はこっちでチュ!」

「……っ」

 

 路地の角を右に曲がる。人間の通れる道を通ってくれるだけ、まだ有情があるのかも知れない。

 

「次は……」

「いい加減にしろ!! 同じとこぐるぐる回ってんじゃねぇ!!!」

 

 ヴラゴ32世はネズミだけあって、物凄く鳥頭らしい。

 

(これはつらい)

 

 2時間も同じところを回らされていた。気の長い俺でも流石に切れる。

 

 俺はハムスターじゃない。

 ゲームなんかで同じ作業をするくらいなら、俺はドロップアイテ厶コンプを目指す。そして、段々と物欲センサーに引っかかって、同じエリアをグルグルと回り始めるんだ。

 

「!?」

(危ねえ……憎しみで我を忘れるところだった)

 

 トラウマスイッチが入った俺は、頭を振って現実に戻った。

 

「いや、着いたでチュよ」

「なんだと!? うっ……!」

 

 しかし、ぐるぐる周回していたというのは、俺の勘違いだった。

 確実に目的地に迫っていたのだ。

 確率は収束する。そう、ドロップアイテムは本当にあったんだ。《小数点以下の確率で落ちる》という意味の分からない言葉を信じた俺は、狂ったハムスターのように戦い続けた世界線を思い出して頭を抱えた。

 

「大丈夫でチュか? あ、見るでチュ」

 

 辺りの路地が急激に狭まり、何度も見た路地の風景が、貼り付けたテクスチャのように平面的になっていく。

 

「こいつは……一体……?」

「もうすぐでチュ」

 

 そう言うと、ネズミは壁を走っていった。

 

「お、おい!」

 

 俺もヴラゴ32世を追って恐る恐る壁に足をかけると、右足を掛けたまま、ふわ~っと前方に吸い寄せられるように進んでいくことができた。

 

「……うおっ!?」

 

 この感覚はアレだ。

 自身に目的地を定めない『ルーラ』を掛けた状態で浮き、この世界が宇宙のどこにあるのか啓蒙を深めると、『ルーラ』の効果がおかしくなってフラフラとしたまま暫く解除不能になる現象に似ている。

 魔法使いの連中は、大体その現象を使って浮いているのだ。

 つまり。

 

(魔法を使ってないのに、物理法則がバグってる!!?)

 

 俺は白目を剝いた。

 転生したせいで俺の脳も大概バグっていると思うが、現実は小説よりも奇なりとはよく言ったものだ。意味あってるよね……?

 この世界の物理法則は、大体ガバガバだ。

 

 

 暫く進むと、振り返ったネズミが言った。

 

「さぁ! 着いたでチュ!!」

「やっとか。って、うわぁ……」

 

 バグを使って辿り着いた場所。

 そこは、ネズミーランド。ネズミ達の楽園だった。

 脚が異様に長かったり、顔が異常にデカかったり。

 そこには、無数の気味の悪い不定の生き物が蠢いていた。

 目玉が飛び出しているやつも居るが、隣のやつを貫通して普通に通り過ぎていく。ムササビのように空中を行き交う、顔だけのネズミもいた。

 空を見上げると虹色にマーブルされており、建物の間を通る風切り音が、脳の溶けそうな音を奏でていた。

 

「え、なにこれ?」

「神のご加護でチュ。この空間は不可侵領域なんでチュ」

 

 んな訳あるか。

 アンダー(バグ)ワールド。

 近づいただけで取り込まれてしまいそうな、物理法則の坩堝と化していた。無茶苦茶やん、こんな……。

 

 

 

 

 ヴラゴ32世に付いていくと、そんなアンダーバグワールドの中でも比較的マシなエリアに辿り着いた。

 多分道を違えると、一生ここから出てこれなくなる。そんな予感が、ヒシヒシと俺のマジックなセンスに訴えかけてきた。

 

「ここでチュ。ココでいつも変なのが出て来るでチュ」

 

 先導するヴラゴ32世が指さした。既に変なのが湧いてるとは言ってはいけない。言ってしまえば信用を失って、俺もこの楽しい楽しいアンダーバグワールドの住人となってしまうだろう。

 そこにあったのは、ファンシーな庭園。

 天蓋からピンク色の光が降り注ぎ、美しい花々が咲き誇っていた。高そうな飛び石が敷かれ、道が作られている。なお、よく見ると、花弁一枚一枚に漏れなくネズミの顔がついていた。

 

「おえっ」

「このサンクチュアリで体調が悪くなんて……。大丈夫でチュか……?」

 

 サンクチュアリってなんだよ。

 情報量が多すぎて吐き気がしてきた。

 

 その時、庭園の奥地からブーメランパンツにマントだけ着けた、オレンジ色の魔族が歩いてきた。

 そいつは、無駄にモンローウォークを決め、飛び石の上を踊るように進む。

 

「あいつでチュ!!」

「なに……!?」

 

 変態デビ○マン。

 そいつを視界に入れた俺の頭によぎったのは、めっちゃ強いダークヒーローの名前だった。

 

「オレの名前は【ムドー】。魔王軍四天王がひとり。脆弱な」

 

 しかし、そいつは名乗りあげている途中で急に消えた。

 

「……あれ? どこいった?」

 

 暫くすると、庭園の奥地からブーメランパンツにマントだけ着けた姿の魔族が足早に歩いてきた。

 

「オレの名前は【ムドー】。魔王軍四天王がひとり。そこの」

 

 そして、片手を広げて決めポーズを決めたまま消えた。

 

「ね? やばい魔神なんでチュ!」

(こいつは……)

 

 姿が消えたあと、再び庭園の奥地からブーメランパンツにマントだけ着けた姿の魔族が歩いてきた。

 そして、また出てきたと思ったら、同じ名のりを繰り返した。

 

「オレの名前は【ムドー】。魔王軍四天王がひとり。お前は」

「前半要らんくない!?」

 

 何か言いたそうにしているけども、話が全然わからない。というか、話が全く進まない。

 消えたムドーが、今度は猛ダッシュで迫ってきて言った。

 

「あの、助けてくれない? 助けてくれたら、魔王様におま」

「あはん」

 

 俺は外人風に察した。

 こいつは時間のループにハマり、25文字前後喋ると強制的に元いた場所に戻される呪いにかかっている。

 そして、見るからに脳筋だ。こいつはきっと、魔法を使ってバグから抜け出す等という発想が無いのだろう。

 無駄に文字数を消耗するムドーを尻目に、ヴラゴ32世が俺へ頻りに訴えた。

 

「あいつにサンクチュアリが乗っ取られているでチュ! 女神様が、お前ならなんとか出来るって言ってたでチュ!」

「クソ女神め……!」

 

 なんてことに巻き込んでくれるんだ。

 俺は変な事件に巻き込んだ女神に暴言を吐いた。

 というか、これは乗っ取られていると表現すべきなのだろうか。

 

 その時、金属の割れるような音が響き、世界が白黒に変わった。邪神とのエンカウント音だ。

 

「チュ? 女神様でチュ! なんまいだぶなんまいだぶ」

 

 この異常事態に、目を瞑ったヴラゴ32世は両手を合わせて手を揉み始めた。

 横向きに。

 果たしてそれは、信徒のお祈りとしてあっているのか?

 

――リザック。リザックよ。私の声が聞こえますか?

 

「あーあ、あ、あ、あー」

 

 俺は耳を両手で連打しながら、声を上げて女神ボイスの入力を拒否した。 

 

「変なお祈りの仕方でチュ」

「!?」

 

 あろうことか、それを見ていたネズミにダメ出しを貰った。

 

(コイツにだけは言われたくなかった)

 

 なにせ、商人手揉みお祈りネズミだ。

 しかしながら、人間に駆除される分際で、女神に取り入って儲かろうとするそのスタイルは、正直嫌いではない。

 

(しかし、まぁ……)

 

 今回のこのバグも、ネズミを憐れんだ慈悲の女神の側面を持つ駄女神が、仕方無く俺に頼んだに違いない。

 

――こほん。近い将来、その魔族を中心に物理法則が崩壊し、世界が滅びます。リザック、何とかしてください。いや、何とかしなさい。

 

「何さらっととんでもねぇ事言ってんの!?」

 

 ところが駄女神は、急に世界が滅ぶとか言ってきやがった。

 

――数々のバ、不具合をデ……。報告した実績を持つ貴方に頼んでいるのです。頼みましたよ。

 

 女神はそう言い捨てて、世界の白黒が元に戻った。

 女神曰く、世界崩壊規模のバグだった。

 そして、半分くらいバグって言っちゃてるじゃん。

 

「お前、実は凄いやつだったでチュ?」

「まぁな」

 

(しかし。何とか……。って言ってもよ)

 

 俺は考え込んだ。

 こちらに走り寄ってきて、ゴチャゴチャ言って消える。これをを延々と繰り返す魔族。

 助かる光明が見えたせいか、焦りから段々と走り方がBB素材みたいに暴力的になってきている。こっちくんな。

 一体どうすれば解除できるのか、皆目検討もつかなかった。そもそも解除すると、魔王に狙われている俺は襲われるのではなかろうか。

 

「どわああああぁ――」

(一体どうすれば……)

 

 その時、俺の視界にあるものが飛び込んできた。走り寄る魔族が躓いて転び、飛び石がひっくり返ったのだ。

 

「これだ!」

 

 飛び石をよく見ると矢印が刻印されていた。それは、ダンジョンでよく見る一方通行の罠だったのだ。

 ダンジョンで不用意に乗ってしまうと、壁に叩き付けられ続け、壁の染みになってしまうという悪辣な罠の一種だった。

 因みに転んだまま矢印に乗ってしまった悪魔は、まんぐり返しですっ飛んでいった。絵面が酷い。

 

 俺が思い付いたのは、壁面透過バグ。

 一方向に進み続け、様々のものをすり抜けるバグだ。

 

「何してるんでチュ!?」

「まぁ見てなって!」

 

 俺は早速、飛び石ひっくり返して配置し直した。

 壁が無いため、形は卍型だ。

 

「よし、これで集まってきたムドーが邪配合して、離脱できるはずだ!」

「え!? 邪配合って何!? オレどうなるの? 集まってきた」

 

 って何! と言いたかったのだろうが奴は消えた。

 俺が考えついたのは、【やみのランプ】を使い、違う時間軸のムドーを無理やりぶつける方法だった。

 ドラクエに分裂する魔法は存在しない。が、実は時間軸をコントロールし、あたかも同位体が同じ時間軸に存在する魔法が存在する。

 それは、人間が扱う魔法に分類されないが、『ふたつにわかれる』という魔法名で魔物の間で存在していた。

 実は、これは『ラナルータ』系の魔法の一種とされ、違う時間軸の詠唱者を呼ぶというものだ。当然、呼び出したやつが死ぬと未来時間軸のやつは死ぬが。

 

 俺が思いついた作戦は、『ラナルータ』系の魔法を発動する【やみのランプ】を使って、2、3日先のムドーを呼び寄せ、同時にぶつけて邪配合するというものだ。たぶん、同位体が複数いる時点で何らかのバクが生じるものと思われる。

 

 作戦を伝えた後。

 全世界に散らばる、ルイーダのエロい酒場のマッチを渡した際に、ムドーはしたり顔でこう答えた。

 

「貴様、ルイーダの店を知っているのか……? ふん、あの店」

「あ、はい」

 

 やつも常連だったらしい。

 ちょい悪デボラちゃんの描かれたマッチを渡すと、奴は表情を綻ばせた。悪いことは言わない、お前は神さま復活ムービーに参上する不気味の谷に落ちた踊り子がお似合いだ。

 

 夕方に差し掛かり、ムドーは【やみのランプ】に火を灯した。ここから先は、正直俺もどうなるか分からない。所見のバグっていうものは、出たとこ勝負なところが大きい。

 

 その昔。

 俺も現代で生きていた頃。

 セーブしてロードしたら、何故か特定のコードが揃ってしまい、意味も分からずエンディングを迎えてしまった事が、一度や二度で済まないくらいあった。

 原因が分かったのは、大分大人になってからだが、当時の俺は超能力と言って憚らなかった。青い記憶だ。

 

 しばらく経って、ムドーによる同次元邪配合作戦が実行された。

 

「ドワラー! ――」

「サヌワラー! ――!」

「アンスノセヌンティ」

「一個しか手に入らない装備の選択はやめろォォ」

 

 4人の分裂した時間軸の異なるムドーは、一方通行の罠に乗ると、断末魔を上げながら一つのセルに集合した。

 

「うわ」

「うわ」

 

 それを同時に見ていたネズミと共に声を上げてしまったが、それは仕方のないことなのかも知れない。

 

 オレンジ色のムドーが集合すると、次元振動したままピンク色をした宿屋の店主に変わった。肌もピンク色だ。ムドー、どこいった。

 何故そうなったのか、皆目検討もつかなかったが、ネズミ的には一応魔神を追い払ったことになったらしい。

 

「ありがとうでチュ! お礼に約束の【時の砂】を上げるでチュ!」

「あぁ」

 

 【時の砂】が入った小瓶を受け取り、俺は股座にしまった。俺には大事なものを股座にしまう性質があるのだ。

 

「さて、返してもらうぞ」

 

 さらに、ピンク色をした商人が傍らに置いている【やみのランプ】を回収しようとした。

 しかし、その時に事件は起きた。

 

「お客さん……昨晩はお楽しみでしたね。リセットボタンを押しながら、人生を終えて下さい」

「何の話!? 死んでんじゃんそれ!?」

 

 無表情のピンク色をした宿屋の店主に、突然手を掴まれた。店主の両目は互いに明後日の方向を見ており、正気が疑われた。ホラーやん。

 

(なんだ、このゲッソリとする感覚は……!)

 

 俺は、常用している人間用の下剤を、誤って初めて飲んでしまった初心者のような、腸の感覚を覚えた。更に、視界がぐにゃぐにゃとネジ曲がり始め、緑のやつにしておけばよかったという幻聴が聞こえた。

 

「何が起こっているんでチュ!?」

「ネズ公! 逃げるんだ!! お前まで飲まれちゃいけねぇ! 出来るだけシンパを増やして、負債分を回収してくれ! 合言葉は、儲かるだ!!」

「ネズミ講の話してる!!?」

 

 俺の体が崩壊し始めた。

 具体的には、テクスチャと当たり判定がバグったモンハンみたいになり始めている。

 

(く、これは……。バグの無限錬成だ!!)

 

 世界の法則が乱れ、触れると無限にバグっていくアレだ!!

 

(このままではいけない! ……女神様!!)

 

 神に助けを初めて求めた。

 しかしながら、いつもの女神じゃ駄目だ!

 

(時空を司る女神様、助けてくれ!!)

 

 テクスチャが崩壊する中、俺はいつもとは違う女神に助けを求めた。

 

 

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