兄・子世代ifチート能力を駆使して転生人生謳歌します! 作:八重歯
おお!ここがハッフルパフの寮なんだ!
映画では一回も出てこなかったからどんな寮なのかなーって思ってたけど、なんかお洒落なカフェ…ガーデンカフェみたいだな。
入り口の樽を模しているのか、窓は丸くて窓辺には沢山の花が添えられている。
談話室の作りはグリフィンドールみたいに豪華でも、スリザリンみたいに冷たくもない、素朴だけどあったかい雰囲気だ。
全体的に黄色と黒のカラーリングで纏められていて、木製の机や椅子、銅製の植木鉢、そして至る所に草花が沢山ある。
草花が飾られているのは、寮監のスプラウト先生の趣味かな?薬草学だし、植物が好きなんだろう。…うん、なかなか悪くないんじゃない?マンドレイクとかあったら嫌だけど。五月蝿そうだし。
談話室を見回していると、「ノア!」とセドリックが心配そうな顔で手を振りながら俺の元に駆け寄ってきた。
「遅かったね、なんの話だったんだい?…やっぱり減点と罰則?…大丈夫だった?」
「いや、俺のスリーサイズが知りたかったんだって」
「えっ…スリー…サイズ…?」
セドリックは純粋なのか、特に疑うことのない目で俺の胸、腰、お尻を順に見ていき「やっぱり女の子?」と頬を染めて呟いた。
「…ジョークに決まってるだろ!…それよりさ、俺の部屋ってどこ?」
「ノアのジョーク、わかりにくいよ…。部屋はこっちだよ!僕ら、同室だったんだ!」
「へえ?すごい偶然だな」
セドリックは嬉しそうに笑い、俺の手をとってぐいぐい引っ張っていく。
丸い扉を超えて草花で所々飾られている階段を上がれば、長い廊下に出た。廊下の左右には一定間隔で扉が並び、そのひとつひとつが生徒たちの部屋なのだろう。
「──あ、新入生は扉に名前が貼ってあるよ」
ふと近くにあった扉が開いて、名も顔も知らぬ上級生に声をかけられた。
教えてくれた上級生に視線を向ければ、美しい俺に話しかけたと思わなかったのか、その上級生はぼっと顔を真っ赤に染め、上擦った声で「や、やぁノア!僕は──」と自己紹介を始めようとした。
「──先輩、すみません。部屋に先に行って荷物を確認しなくちゃいけなくて…」
しかし、俺と上級生の前にセドリックが体を滑り込ませると、そのままにっこりと笑って頭を下げ、俺の手を引っ張ったままずんずんと勢いよく歩き出した。
上級生はいきなりの事でぽかんとしてる。…そんな急いで荷物確認しなくても良くない?
「ノア、ここが僕たちの部屋だよ!」
「ここかぁ…2人部屋?」
「うん、そうみたい。他は2人か、3人部屋みたいなんだ」
まぁ何人部屋でもいいか。
扉を開ければ、パッチワークのキルトで覆われているベッドが2つ壁際に並び、その奥にこぢんまりとした銅と木で作られた洋服箪笥がある。部屋の中央には丸い机があり、ここで勉強する事も出来るのだろう。
たったひとつある、銅枠で出来た丸窓は、青々とした草花で飾られていた。
左側のベッドの上には、セドリックのトランクが置かれている。ってことは、俺は右側のベッドだな。
「セドだけかー……俺が魅力的だからって、襲うなよ?」
「お、襲わないよ!」
ベッドに座り、にやりと悪戯っぽく笑ってセドリックを見上げれば、セドリックは顔を真っ赤にして首を振った。
…いや、マジで俺の魅力に慣れてもらわないと困る。どんな聖人君子でも寝入った俺の素晴らしい魅力にくらりとキてしまい、過ちを犯さない保証はない!
襲われないように、寝る時にベッド全体に魔法かけとこうかな…。俺はどれだけ男の娘でも、尻処女を失うつもりはない!普通に女の子が好きだ!
「7年間、よろしくな、セド!」
「うん、よろしく!」
セドリックは顔を真っ赤にしながらも、嬉しそうに笑った。
俺は早速机のそばにある大きなトランクをベッドの上に置き、中を開いて服やダイアゴン横丁で買った物などを俺の勉強机や箪笥に片付けていく。
勿論、わざわざ運んだりするのは面倒だったから、杖を振るって服や教材に勝手に収まるように指示すれば、荷物たちはちゃんと俺が望む場所に収まった。
うん、魔法って便利!
「わぁ…!それ、なんて言う魔法?」
「ん?片付け魔法」
「凄いね!」
「そうかぁ?セドもできるようになるさ」
セドは感心しながら自分の荷物を棚や引き出しに入れる為にばたばた動き回る。父親との別れの時の寂しそうな表情は微塵もなく、これからの期待と、輝かしい未来を夢見て目はきらきらと輝き、頬は子どもらしく赤く染まっている。
セドリック・ディゴリー。
今はまだ幼いこの少年は、6年生の時に炎のゴブレットに名前を入れ、三校対抗試合でホグワーツ代表選手になりそこそこ頑張る。まぁ目立つのはやっぱりハリーだけど。…それで、最後に移動キーに設定させられたゴブレットにハリーと同時に触れ、リドルの墓の前に飛ばされて、ペティグリューなんかに殺される。
そんな悲しい運命が待っている。
死なせない為に、ゴブレットに手を触れないようにすれば…きっとハリーだけがリドルの墓に行く事になる。…うん、これでセドリックの死は回避できそうだけど、なんかハリーが死ぬフラグが立たないか不安だなぁ…。
まぁ、俺は原作を大きく外すつもりはない。けど…死んでほしくないキャラが多いし…。
ハリーと関わるにつれ、あの可哀想でかわいい少年が沢山苦しむ事になるのは…主人公だとは言え、壮絶で悲惨な運命すぎないか?と思うようになっていた。
両親は一歳の時に死んで、その後過ごすいとこの家で居場所は無く、ホグワーツでは毎年とんでもない試練に立たされる。
それでグレずになんとか生き残ってるのが、ハリー・ポッターの凄いところで主人公らしいところだろう。
まぁ、誰だってグレてやる気無くして自暴自棄になってる主人公なんて見たくないからな。
人は誰だって過酷な試練を楽しみに待っている、それを主人公と愉快な仲間達がどのように乗り越えていくのか──悲惨であればあるほど、心躍るものだろう。
勿論、ファンタジーで物語の世界だと知っているから、小説の中の話だから楽しめた。
俺はこの世界に来て、ハリーと出会い、ハリー・ポッターの小説外のハリーを知っている。
俺と会えて嬉しそうに笑ったり、冗談を言って頬を膨らまして怒ったり、なかなか会えなくなるとしって悲しみに泣いたり。まだ主人公ではない──ただのハリーを知っている。
「…みんな、守れたらいいんだけどなぁ」
ベッドに寝転び、ぽつりと呟けばセドリックが「え?何か言った?」と鞄をガサゴソしながら聞いてきたから、何でもないという意味を込めて手を振った。
死なせたくないのは、シリウスとセブルスとリーマスとトンクスとフレッドとセドリックとダンブルドアと…って多すぎるな。
好きなキャラばっかり死ぬ──わけではなく、ハリポタの5.6.7巻は怒涛のキャラ殺しラッシュだったから仕方がない。
俺は原作を読んでいて、今でも7巻のホグワーツの決戦で、リーマスとトンクスとフレッドが何の説明もなく死んだのは納得いかない!
…いや、そんな場面があったら納得するっていうわけではないけど。──あの小説はハリー目線で進むから、死に目にも会えなかったという、悲惨さの現れなんだろうけど!それにしても酷すぎる。
…うーん。
ぶっちゃけ、セドリックとダンブルドア以外は生かそうと思えばいける気がするんだよなぁ。シリウスはあの死へのベールを潜らせないようにする。リーマス、トンクス、フレッドは決戦中守ったらいいし。セブルスは常にめちゃくちゃ効く薬を持たせるか、その場に俺が居て治癒魔法すればいい。
セドリックは…彼が行かなかった事で、ハリーの動きが謎すぎてなぁ…ちょっと、怖い。その前にリドルの墓の場所突き止めてこっそり守る?うーん、でもなぁ…。
ダンブルドアは、その死にかなり重要な役割がありすぎて、救えるのかどうか微妙だ。救ったとして、その後の未来は大きく変わってしまうだろう。
つまり。
俺は完璧な傍観者としてまったく原作に関わらずに生きていくのか。
好きなキャラを救う為に裏で行動しまくるのか、道は二つに一つだ。
まぁ…ハリーが入学するまでに2年あるし、ちょっと考えよう。……っていうか!6.7年生の時、俺はホグワーツに居れないのか。もう卒業しちゃってるじゃん!
…これは…かなり面倒臭そうだな。
流石にハリポタマニアの俺だとしてもだ。
原作を何度も読み、映画を毎週見ていたが、この世界に来た数年は見てないんだ。ちょーっと、記憶があやふやだ。大きなイベントは覚えてるけど、6.7巻って精神的に辛い事が多すぎて、ぶっちゃけ原作も映画もたまーにしか見てないし。いや、大好きだけど、大好きだからこそ辛かったわけで。
「ノア、談話室に降りない?」
「──ん、そうしようか」
片付けを終えたセドリックが俺に声をかけてきた。
俺は思考を切り替え寝転んでいた体を起こし、セドリックと共に他の生徒達が集まる談話室へと降りていく。
…ま、なるようになるだろ。俺はチートだし!