兄・子世代ifチート能力を駆使して転生人生謳歌します!   作:八重歯

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103 新任教師

 

 

今年は新しくリーマス・ルーピンが闇の魔術に対する防衛術、ハグリッドが魔法生物飼育学の教師になった。それ以外の大きな変化はやはり、吸魂鬼がホグワーツの警備にあたることになった、という点だろう。

吸魂鬼はホグワーツの入り口全てに配置されている。もし時間外にホグワーツをこっそりと出ようとしたら──吸魂鬼は容赦なく魂を奪う。

吸魂鬼の恐怖を味わった生徒たちは、今年は抜け出したりしない。と心に決めたに違いない。

 

それ以外はいつも通りに授業が始まる。教師たちは去年の簡単なおさらいから始め、今年待ち受けているフクロウ試験の大切さを俺たち五年生に切々と訴えていた。そして、──試験に備え山盛りの課題がだされてしまう。

 

初日の授業を全て終えて、大広間に向かう。夕食後には寮で課題祭りだと思うとまじで気が重くてため息しかでなかった。

 

 

「俺、ペーパーテストパスできないか本気で聞いてみようかな」

「理論も大切だから」

「……だる……」

「一緒に頑張ろう、ね?」

「めんど……」

 

 

これからのことを考え憂鬱になっている俺に、セドリックは苦笑しながら背中を叩く。

一日目でこれなんだ、きっと今年はずっとこの調子に違いない。……あーもうモデルずっと続けるなら学歴なくてもいいかなぁ。なんて現実逃避するくらいにはやる気が出ない。

 

 

「そういえば、ハグリッドの授業どんな感じだったんだろうね」

「うーん。やばそうではあるよな」

「まあ……ちょっとね」

 

 

今日はまだ闇の魔術に対する防衛術や魔法生物飼育学がないから彼らがどんな授業をしていたのかはわからなかったが、大広間に入ると、ハグリッドとリーマスの授業の噂があちこちから聞こえてきた。

 

リーマスの授業はわかりやすく、それでいてユーモアがありかなりの生徒から好印象を抱かれているようだ。

一方、ハグリッドはスリザリンとグリフィンドールの三年生が初授業だった。そこで生徒が怪我をするという事件が起こり──まあまあ流血したらしい。本来ならドラコがヒッポグリフを罵倒し、怪我をするという流れだったが、怪我をしたのはドラコではなく別の生徒のようだ。

まあ、ドラコはハグリッドに対して好印象は持っていないが、とはいえハリーと友達だ。馬鹿なことを授業にしなかったのだろう。

代わりに──と言うのが正解なのかわからないが──怪我をしたのはクラップとゴイルだったらしい。また、微妙な二人だな……。

 

セドリックは生徒たちの噂話を聞きながら真剣な顔で「初日に怪我はやばいかもね」と声を落としながら言う。ハッフルパフの机でもハグリッドの事が話題に上がっていて、魔法生物飼育学を選択している生徒たちは次の授業が無事に終わる事ができるのかかなり心配しているようだった。

 

 

「暫く自重はしそうだな。……つまらない授業にならなきゃいいけど」

「ハグリッド落ち込んでるだろうな……姿も見えないし」

「後で、小屋に行くか?」

「うーん……宿題が終わって時間があったらね」

 

 

セドリックはあくまで宿題を優先させることにしたようだ。監督生になったからか、ちょっと融通が効かなくなってる。

模範生なのは立派だけど、正直ちょっと息苦しい。もう少しだけ融通きかせてくれてもいいのに、とこっそり思う。

……まあ、なんだかんだいって俺の小さな可愛い校則違反くらいなら、見逃してくれるんだろうけど。

 

 

夕食の後はすぐに寮へ戻った。

たくさんの生徒が談話室で宿題をしている中、俺が入って来たことに気づいたシリウスがソファの背からひょこりと顔を覗かせ「待ってました」とばかりに駆け寄り尻尾を振った。

 

 

『ノア、頼む。早く散歩に連れて行ってくれ!』

「そうだ、散歩行かなきゃ」

 

 

シリウスはそわそわと落ち着きなく、必死さを滲ませながら俺の周りをぐるぐると回る。……あ、トイレか。

 

 

「そうだったね。鞄、預かっておくから、行ってあげて。自由時間が終わるまでには戻ってくるんだよ?」

「ありがとう、行ってくる」

 

 

鞄をセドリックに渡し、シリウスを連れて談話室を出ればシリウスは振り返ることなく疾走した。よほど膀胱やばかったんだろうなぁ……。トイレに行ったのか、それとも森か。

 

 

中身は人間とはいえ、見た目は犬だ。シリウスも自分が犬のアニメーガスであるシリウス・ブラックだとバレるためにはいかないから、その辺は恥を捨てて森でするのか?

中身は人間でも、見た目は犬──見たくはないけど、まあ仕方ない。

 

そういや今までどうしてたんだろ。孤児院や屋敷では全く気にしていなかった。勝手にトイレを使っていたのか、外で済ましていたのかな。トイレ行ってるの見たことなかったけど。

 

 

ここではどうするんだろう、と思っていたら、シリウスは寮の一番近くにある男子用トイレにまっすぐ向かうとそのまま前足で器用にドアノブを回し扉を押し開け、するりと体を滑り込ませた。

 

 

しばらくした後、ジャーと水音がしたと思ったら、すっきりした顔のシリウスが出てきた。俺と目が合うと、気まずそうに視線を泳がせる。流石のシリウスも、勝手にトイレに行って用を済ませる賢い犬の不自然さに気づいたのだ。

今までも家でトイレを使っていたのかもしれないが、一応こっそりとタイミングを見ていたのだろう。だが、今回初めて長時間寮に拘束され、膀胱がピンチに陥り人としての尊厳を失いかけて──つい、そこまで気が回らなかったんだな、きっと。

 

 

『……クィレルにトイレの使い方教わったのか?』

『そ、そうなんだ!』

 

 

助け舟を出せばシリウスはそれに乗り、こくこくと何度も頷いた。

 

 

『トイレ、談話室の奥にもあったけど、気づかなかったのか?』

『どこの扉だ?また後で教えて欲しい』

『わかった。……じゃあ夜の散歩はやめとく?』

『ずっと寮でお利口にしていたんだ。少しだけ外を走りたい。体が固まってしまう……』

『オッケー。まあ、運動不足もダメだしな』

 

 

シリウスは嬉しそうに耳をピンと立て、早く行こうと俺のローブを噛んで引っ張った。

正面玄関から外に出れば、シリウスはすぐに気持ちよさそうに駆け出した。時々何かの匂いを確認するように嗅ぎ回り、走る。止まって、走る。周囲を警戒する──を繰り返している。

心地よい風が吹き、青い芝生や遠くにある禁じられた森がざわざわと不気味に揺れた。

 

数十分もすれば満足したのか、シリウスは舌を出しながら戻ってきて俺の周りを一度駆け回った。

 

 

『ありがとう、もう十分だ。──そういえば、今日のご飯はなにかな?』

『あ』

『……まさか、忘れて──?』

 

 

シリウスの耳と尻尾がぺたんと垂れる。

そうだ、課題が大量に出た衝撃で忘れていた。ちゃんとシリウスが食べられる何かを持ってこなきゃならなかったんだ。

 

 

『ごめんって、今から取りに行こうぜ』

 

 

俯いた頭を撫でれば、耳がゆっくりと立ち上がり、シリウスは「わん」と了承の意味を込めてひと吠えした。

 

 

ハッフルパフ寮の近くに厨房があり、そこにはホグワーツで働くハウスエルフが暮らしている。寮まで続く廊下には数々の料理や食べ物の絵画が飾られていて、その中の一つ──果物の絵画の梨を撫でる。すると梨はふるふると身を捩ってくすくす笑い出し、突然黄緑色のドアの取っ手に変わった。

 

 

『ここ、厨房への隠し通路なんだ』

『よく知ってるな』

 

 

果物が落ちた後、ぽっかりと穴が空いていて遠くからいい匂いが漂ってきた。シリウスは驚く、というよりも感心した声で言った。──多分、この仕掛けを知っていたんだろう。

 

 

『流石に動物の毛が舞ったら申し訳ないしさ、シリウスはここで待ってろよ。ちょっと頼んでくる。何が食べたい?』

『そうだなぁ。グリルチキンと、野菜、それに果物とか』

『オッケー』

 

 

シリウスのリクエストを聞いて、俺はホグワーツの厨房へと降りて行った。

 

 

ホグワーツの厨房は何度か侵入したことがある。

その時と変わらず天井は高く、大広間ほどの広い空間だった。石壁にはずらりと真鍮の鍋やフライパンが山積みになり、部屋の奥には巨大な煉瓦の暖炉がある。あの暖炉から各寮へ掃除しに行っているのだろう。

 

俺が姿を見せると、ハウスエルフ達はわっと高い声を上げ駆け寄ってきた。

 

 

「ノア様!ノア・ゾグラフ様!」

「どうされました?もうお菓子がなくなりましたか?クッキー、ケーキ、ビスケット、何でもございますよ!」

「ありがとう。今日は俺のペットのご飯が欲しいんだ。グリルチキンと、果物と──野菜は茹でてくれる?犬が食べても大丈夫なやつを……そうだな、あの盆いっぱいくれるか?」

 

 

調理台の上にある銀の盆を指差す。俺に群がっていたハウスエルフ達は「かしこまりました!」と元気いっぱいに言いながらすぐに頼んだものを取りに走って行った。

 

 

「あ、ねえ君。あの鍋二個借りていい?」

「もちろんでございます!──さあ、どうぞお持ち帰りください!」

 

 

壁際にある鍋を指差し、近くにいたハウスエルフに聞けば、即答で頷き快く両手鍋を二個抱えるようにして持ってきてくれた。

ハウスエルフは『仕事を与えられる』事を、何よりも幸福だと思っている。彼らにとって魔法使いに生涯無償無給で隷従することは栄誉な事であり、彼らにとっていいご主人様とは『理不尽に叩いたり怒鳴ったりせず、その上でやりきれないほどの仕事を与えてくれる人』を指す。そう考えると、ホグワーツという職場、ダンブルドアという主人に使えることはこれ以上ない名誉で幸福なことなんだろうな。

 

 

「ううん、一つはここに置いておくからさ、前の皿と同じで──」

「あ!無くなったらすぐに補充、ですね!」

「そうそう。犬にあげるからバランスよく頼むよ」

「私めのお仕事ですね!わかりました!」

 

 

ハウスエルフは大きな目をキラキラと輝かせ、自信満々な笑顔を見せる。他のハウスエルフにない特別な仕事は、彼らにとって日常を彩る趣味のようなものなのだ。

 

そうこうしている間に大量の肉や温野菜が乗った盆を持ったハウスエルフ達が戻ってきた。

杖を振り浮遊させながら「ありがとう」と言えば、お礼を言われ慣れていないハウスエルフ達は感動で身を震わせながら「とんでもありません。またいらしてください!」と手を振って俺を見送ってくれた。

 

 

「シリウスー持ってきたぞー」

『ああ、うまそうだ!』

 

 

シリウスは嬉しそうに飛び上がって喜びを表し、賢い犬らしくきちんとお座りをした。

……いや、犬だからこれでいいんだ。犬はナイフとフォーク使えないし。

盆をシリウスの前に置いたが、シリウスは食べることなくじーっと俺を見ている。

……もしかして、「よし」されるのを待っているのか?そこまで躾けたわけではないんだけど、シリウスにとって賢い犬はこうする、と思っているのかな。

 

 

『よし』

 

 

俺のよしを聞き、シリウスはすぐにがっついた。

 

 

 

 

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