兄・子世代ifチート能力を駆使して転生人生謳歌します! 作:八重歯
今日は待ちに待った、初めての闇の魔術に対する防衛術の授業だ。授業そのもの、というよりもやっぱりリーマス!リーマス・ルーピンだ!
ハリポタでは毎年新キャラが現れるけど、やっぱりシリウスとリーマスが現れる今年のインパクトは強い。ファンにもアズカバン編は大人気だったし。
二人ともこの後も色んな意味でキーパーソンとして出てきたりするし、俺だって前世では親世代大好きだったし!
ホグワーツの汽車ではあんまり話せなかったし、できたら交流深めて仲良くなりたい。
シリウスはアニメーガスじゃなくて人間の姿に戻ったら感動しそう。ハリポタ界屈指のイケメンだし、身なり整えて写真撮りたい。
「セド、早く行こうぜ!」
「珍しいね、君が早く行きたいだなんて」
「ほら、リーマス先生の授業めちゃくちゃいいらしいし。セドだって楽しみだろ?」
「うん。今年は期待してていいって、フレッドとジョージも言ってたもんね」
闇の魔術に対する防衛術の教師は一年しか続かない。みんな私的な理由だったり、怪我をしたりなんだかんだで辞めてしまうのだ。その原因は、たしかヴォルデモートが闇の魔術に対する防衛術の教師ができなかった腹いせに、一年しか続かない呪いをかけた、んだったはず。めちゃくちゃ大人げない。
気持ち少し早めに来たが、防衛術の教室はすでに半分くらいの生徒で埋まっていた。いつもなら教室の真ん中から後ろの方の席から座っていく生徒たちも、率先して前の方に座っている。表情は明るく、誰もがリーマスの授業に期待しているのがわかる。
俺とセドリックは真ん中くらいの場所に座った。生徒たちが口々にリーマスの授業内容や、彼自身について楽し気に噂していると、授業開始の少し前にリーマスが現れた。
「おや、みんな早いね」
リーマスは少しだけ驚いたような顔をしたが、目元の皺を深くして柔らかく笑うとゆったりとした足取りで教壇へ進んだ。服装はところどころつぎはぎがあり見窄らしく、髪も白髪が混ざっている。くたびれた雰囲気があるが、それでも頼りない様子はなく、どこか自然だった。
授業開始を告げるベルがなる。
リーマスは朗らかな表情で生徒を見回し、「では、授業をはじめます」と告げた。
「今年、君たちはO.W.L試験を控えているね。今までの傾向から、試験に備えた授業を進めていきます。試験は筆記と実技があるので、筆記は魔法生物の生態について、防衛術の論理について、また、実技──実践形式の指導もしていきます。
それでは……今日は、少し重たい話から始めることになるね」
その言葉に、何人かが顔を見合わせる。リーマスは一呼吸置き、言葉を選ぶようにして視線をめぐらせた。
「ディメンター……吸魂鬼の話をしよう。もう、みんな彼らを見たよね?」
その言葉で空気がわずかに揺れた。みんな、数日前の汽車の冷たい暗闇を思い出したんだろう。
「彼らは人の幸福を食べる。幸福な記憶が強ければ強いほど、それが彼らの餌になるんだ。──けれど、同時にそれは武器にもなる。君たちが幸福な記憶を思い出すことが、守護霊を呼び出すための条件になるんだ。守護霊魔法、それだけが、吸魂鬼を退けることができる唯一の方法だ。──だけど、これがまた難しい。大人の魔法使いでも、習得するのは困難です」
その言葉に、何人かが後ろを振り向き俺を見た。
リーマスも俺を見て、ふっと表情を緩める。
「そうだね。──ノア・ゾグラフくん。彼は、五年生にして守護霊魔法を成功させていた。ノア、もしよければ見せてくれないかな?」
「俺の守護霊、高いですよ?」
からかい混じりにニヤリと笑いながら立てば、リーマスは肩をすくめて苦笑した。俺の態度からしても、冗談だとわかっているのだろう。
「それは大変だ、私に払えるといいが」
「後で俺のお願い、一つ聞いてくださいね。──エクスペスト・パトローナム!」
魔法の言葉に合わせ、杖先から銀色の光が溢れ、広がる。それは麒麟、と呼ばれる魔法生物の姿を模ると、息を呑む生徒達の頭上を悠々と飛び回り、俺の前に静かに戻ってきた。
机の上に立ち、じっと俺を見下ろす。手を伸ばせば麒麟は目を細め甘えるように手に擦り寄り、ふっと光の粒になって溶けるように消えた。
その瞬間、教室は水を打ったように静まり返った。
しん、とした静けさの中に、自分の心臓の音だけが響いているような気がした。呼吸を忘れた生徒たちが、一斉に息を吸い込む気配が伝わってくる。
──そして次の瞬間、大歓声と拍手が弾け、教室に色が戻った。リーマスも満足そうに表情を緩め、優しく笑いながら手を叩いていた
「素晴らしい!ノア、ありがとう。ハッフルパフに三点加点しよう。──今のが守護霊魔法だね。一人一人、自分の守護霊は違うとされています。吸魂鬼、守護霊魔法については教科書七八頁を見てください」
生徒たちは幻想的であり、生命力に満ちた不思議な力を感じさせる守護霊を見た興奮でひそひそと話しながら教科書を開いた。
そこからはしばらく板書の授業が続いた。今から習得するのはプロテゴのようで、とりあえず二人一組になり、交互にプロテゴとエクスペリアームスを使い、防衛する練習をするらしい。
全員がよくわからない論理をノートに書き写した後、リーマスは杖を一振りして机と椅子を教室の端の方に移動させた。
中央にスペースをつくり、そこで各自練習をするらしい。
適度に距離をとって広がるように指示をされ、生徒たちは二人一組になりながらぱらぱらと散らばる。俺はいつものようにセドリックと組んだ。
「俺、もうプロテゴ使えるから、俺が攻撃側な」
「うん、わかった。──いつでもいいよ」
セドリックは何度か教科書を見て杖の振り方を確認し、少し緊張しつつ俺と対峙した。
「エクスペリアームス」
「プロテゴ!──っ!」
俺が放った魔法はセドリックの手に一直線に飛び、張られた防壁を簡単に砕いた。セドリックの杖はバシンと弾かれ宙をくるくると回る。杖をアクシオで呼び寄せれば、セドリックは痺れる手を振りながら苦笑した。
「流石に一回では無理だね」
「まあな。右下から左上に、こう──するかんじ?」
杖の振り方は魔法一つ一つで異なる。といっても、俺はどの魔法を使いたいか──その魔法の事を考えながら適当に杖振るだけで、できてしまうが、とりあえず教科書通りに右下から左上に素早く振ってみた。
「──ほら、な?」
「わ。本当だ。……いくつか魔法かけていい?」
俺の目の前に見えない透明な盾が現れた。見えないが、空気が少し歪んでいる──ような気がして、よく目を凝らせば見えなくもない。
セドリックが「エクスペリアームス!」「ステューピファイ!」と唱え、魔法は正しく発動したが俺に届く事なく盾に弾かれた。
「本当に壊れないんだね」
セドリックが感心したように頷く。
俺は世界最強の魔法使いだから、そりゃセドリックの魔法は余裕で弾くことができる。
「まあな、でもこれ──」
「驚いたな。プロテゴに長時間の持続性はないはずなんだが……」
「──あ、リーマス先生」
生徒たちを見回っていたリーマスは俺の側にくるとじっと透明の盾を観察するように見ていた。そうなんだよな、プロテゴって一瞬だけ盾ができる魔法だった気がする。
「私もいくつか、試していいかい?」
「いいですよ」
リーマスは心なしか楽しそうに言いながら杖を出す。俺が頷いた途端、気軽な感じでひょいと杖を振ったが──。
「うわっ!」
ドンッ、と強い爆発音と共に鼓膜が揺れた。
俺の目の前の盾は一瞬ブレたがまだ健在で、リーマスはもう一度少し微笑みながら──とはいえ目はなんだかマジである──杖を鋭く振るう。
先ほどより強い爆発が俺の前で起こる。
いやいや!当たらないけど、爆発の光が目に痛い!後、生徒に容赦なくない?
俺が貼ったプロテゴは、リーマスの二度目の攻撃により破壊された。
教室内に舞い上がった埃で軽く咳き込みながら周りを見れば、セドリックはいつの間にか巻き込まれない場所に避難していて、他の生徒たちも突然の爆発音に驚き壁際まで下がっていた。
「──素晴らしい!ここまで持続性を持つプロテゴは、もはやプロテゴとはいえない。別の何かだ……ノア、君は誰に魔法を習ったんだい?」
「えーと。独学です。俺は世界最強の魔法使いなんですよ、リーマス先生」
にっこりと笑って言えば、リーマスは目を見張った。すぐに面白そうに目を細め口角を上げると「本当に、そうなのかもしれないね」と言いながらハッフルパフに五点の加点をくれた。
授業が終わり、鞄の中に教科書をつめ次の授業へ向かおうとする中、リーマスが俺を呼び止めた。
「ノア、少しいいかな?」
「はい、大丈夫ですよー」
なんだろう、と振り返ったが、リーマスはにこにこと朗らかに笑ったまま話し出さない。セドリックはすぐに自分が聞かない方がいいのだと察し、「先に行くね」と俺に小声で伝え教室から出て行った。
最後の生徒が俺とリーマスをちらちら見ながら出ていき、教室の中は二人きりになる。
それを確認してから、リーマスは口を開いた。
「君に頼みたいことがあってね」
リーマスは笑顔を浮かべたまま、けれど目だけが俺を測るように細くなった。探るような光が瞳の奥にちらりと走り、ふと、その視線が俺のポケットに刺された杖へと落ちる。
俺は肩にかけた鞄の紐を持ち直しながら、リーマスの目を見た。
「俺に頼みたいこと?」
「うん。今日の授業を見ていて思ったんだ。ノア、君の魔法の制御力は本当にすごい。君のような生徒が、これから進める実技の練習で、クラスメイトの模範になってくれると助かるんだ」
「模範……?」
「簡単に言えば、アシスタントのようなものだよ。今後、魔法の実践練習を段階的に進めていく予定だ。実践には相手が必要だろう?」
「……俺でいいんですか?」
少し眉を上げて尋ねると、リーマスは目尻の皺を深くし、優しく笑った。
「君だからいいんだよ」
「へえ……じゃあ、いいですよ」
「ありがとう」
リーマスは息を吐くように笑うと、少しだけ視線を落とし、また俺の目を見て言った。
「それでだ。──もしよければ、後日少しだけ時間をもらえないかな?授業の準備もあるし、どんな風に協力してもらうか、軽く打ち合わせをしておきたい」
「了解です。そのときは『お願い』一つ聞いてもらいますからね?」
リーマスを見上げながら言う。
美しい俺の蠱惑的な表情!──でも、リーマスはどこか眩しそうにしただけだった。
「……ああ、それは怖いな」
肩をすくめ、おどけたように言うリーマス。
この人が先生らしくなくて、色んな生徒から人気が出るのはこの雰囲気と、距離の近さにあると思う。先生というより、近所のお兄さん──いや、家庭教師みたいな雰囲気がある。確か、ホグワーツに来る前は家庭教師してたんだっけ?
「じゃあ先生、また後日」
「またね、ノア」
扉を開くと、廊下にはいつも通りの魔法学校の賑わいが戻っていた。
次は魔法薬学だったかな、と思いながら足を進めれば、見覚えのある後ろ姿を発見する。いつも三人一緒なのに、今は彼女一人だけだった。
そうか。彼女は授業多いし一人の事も多いのか。──あ、ちょうどいいかも。
「ハーマイオニー」
「あ、ノアさん。こんにちは」
ハーマイオニーは重そうな鞄を肩に担ぎ直して振り返る。今年の授業は始まったばかりなのに、すでに少し疲れたような笑い方だし、表情もぎこちない。
「疲れてる?目元、隈ができてる」
背を曲げて、ハーマイオニーの顔を覗き込む。近距離で俺に見つめられたハーマイオニーは、「っ」と息を飲み一気に顔を赤らめると、狼狽えながら首と手を勢いよく振った。
「だ、だ、大丈夫です!ちょっと、面白い本を読んで、夜更かしして、それで──ああっ!すみません、私急いでて」
ハーマイオニーは腕時計を見ると小さく悲鳴を上げ、心から残念そうに眉を下げた。
そんなハーマイオニーを見て、俺はにっこりと笑った。
ーーー
授業開始を告げるベルの音が響く。
ぼんやりと虚空を見つめていたハーマイオニーは、びくりと肩を振るわせ、意識を取り戻す。
彼女は今どこにいるのか、今がいつなのか混乱したが、すぐに踵を返し次の──過去の授業へ向かった。
ーーー
その日、最後の授業は魔法生物飼育学だった。ハグリッドは一番初めの授業での失敗で自信を大幅に無くしてしまったようで、五年生にもなって木こり虫の飼育という簡単でつまらない授業になっていた。
そんなつまらない授業が終わった後、俺は寮や大広間に行くことなく魔法薬学の教室へ向かった。
地下牢の階段は相変わらずじめじめしているし、気温が三度は低い。
魔法薬学の扉を開けたがその先に人影はなく、俺は隣の研究室に向かう。トントン、と軽くノックし「ノア・ゾグラフです」と声をかけた。
──が、当然のように返事はない。居留守なのか、本当に居ないのか微妙なところだ。
次の授業はもうないはずだし、大広間か?でも、セブルスって高確率で俺を無視するからなぁ。
「セブルス先生。報告したいことがあるんです。セブルス先生にも関係があることなんですけど」
扉に向かって声をかけてみる。居留守なら、自分に関係がある用事が何か気になり、無視できないはずだ。セブルスって厄介ごとは早めに処理したいタイプだろうし。
待つこと数秒。もう一度「セブルス先生」と言おうと口を開いた時、ぎい、と音を立てて扉が開いた。
開いた隙間から眉を寄せ深い皺を刻んだセブルスが嫌そうな顔で俺を見下ろす。
「あ、いたんですね。入っていいですか?」
「……入れ」
「ありがとうございます」
セブルスは苦い顔をしたまま扉を大きく開けてくれた。感謝を込めてにこ、と笑ってみたがセブルスの眉間の皺が少し緩まっただけでその表情に大きな変化はない。……いや、眉間の皺が薄くなったし、少しずつ俺に慣れてきてる?
研究室は、薬草独特の香りが漂っていて、前きたよりも臭いがきつい。
調合台に真鍮製の大きな鍋が置かれ、壁には薬草や材料が入った瓶が整然と並び、セブルスの几帳面さがよくわかる。
「あ。薬の調合中だったんですね、すみません邪魔しちゃって」
臭いがキツイはずだ。
鍋の中にはヘドロのような薬が入っていて、青い煙がふわりと上がっていた。
一見するとどうみても失敗作の薬だが、セブルスが薬を失敗するわけがない。多分、これで正解なんだろう。
何の薬作ってたんだろう。と思って調合台に近づく。机の上には難しそうな作り方が書いた古びた本と、幾つかの材料のあまりが置かれたままだった。
……あれ、勝手に見るなとか言われるかなって思ってたけど、セブルスは扉に背を預けて腕組みして俺を見てるだけで止めたりしない。その目は何かを期待しているようにも、見える。
「えーと。これはトリカブト……オーロラの露草……黒紫水晶の雫……太陽石……日輪鬼の眼球……」
俺が薬草や素材マニアなわけではない。
どれも俺がセブルスに日頃のお礼と称してあげたものばかりだからわかっただけだ。他にも何かの毛や草があったが、それはあまりに細かく切り刻まれていてわからなかった。
……ってか、あれ。
「これ、脱狼薬ですか?」
確か材料のラインナップこんな感じだった気がする。と聞いてみれば、セブルスは僅かに目を見張り、口先を緩めた。
ああ、そうか。もう直ぐ満月だしリーマスの薬なんだろう。うーん、俺がわかる材料で考えても本当やばい金額するよな、この薬。作り方もなんかややこしかったはずだし。
「そういえば、脱狼薬って肉体的な変化は止められないんですよね?」
「……そうだ」
「人狼が生まれ持ってのものじゃなくて、病気と考えたら完治できそうですけどねぇ。精神より抑制ができるなら、肉体も不可能ではないのでは?」
オーロラの露草を摘みながら言えば、セブルスは鼻で小馬鹿にしたように笑った。セブルスはゆったりとした足取りで近づき、黒い液体が入った瓶の縁を指先でなぞりながら、視線をこちらへ向ける。
「薬というものは、思いつきや祈りだけで作れるものではない。確かな理論と完成までの道筋が必要だ」
「……ま、そうですよね。適当にぽいぽい材料いれて出来上がったら苦労しませんもんね」
この世に存在し、作り方を知ったものなら俺は適当にぽいぽいするだけで完成してしまうが、流石に全く未知の薬は作れないだろう。──多分、作ろうと思ったことないからわからないけど。
うーん、リーマスのためにいつか薬作ってあげたいんだよなぁ。
「……それで、報告とは何だ」
「ああ、そうそう。俺、養父ができたんです」
「……何?」
「パパができたんです」
「……」
セブルスは怪訝な顔をしつつも、何も口出しはしなかった。俺の養父が誰なのか気にはなるが、それを口に出すのは俺の事を気にしている気がして、嫌なんだろう。
「保護者同伴の仕事とか今までセブルス先生が来てくれてたでしょう?もう、大丈夫です。今までありがとうございました」
「……そうか」
セブルスは肩の荷が降りた事で、多少ホッとしたのかその口調は柔らかかった。
今までお世話になったお礼に、と鞄から魔法薬で使えるレア素材や高級素材を出せば、セブルスは何も言わずに受け取った。
「おかげでホグワーツで困ることはなかったです。ほんと、助かりました」
笑って頭を下げると、セブルスは目を逸らし、短く息を吐いた。
「……そうか」
声が低くて掠れていた。──この人も、俺に振り回されるのは大変だったんだろうな。
「じゃあ、またいい薬草手に入ったら薬草持ってきますね」
手を振ると、セブルスは早速机に向かい、材料を丁寧に分けていた。それでも手を止めて、机の端を指で叩きながら「ああ」とだけ返す。その横顔はいつも通りの不機嫌さに戻っていたけど、少しだけ穏やかに見えた。
完璧な脱狼薬って作れないのかな。薬じゃなくても、呪いを解いたりする魔法とか。ちょっと人狼について調べてみようかな。
そう思いながら、俺は階段を駆け上がった。