兄・子世代ifチート能力を駆使して転生人生謳歌します!   作:八重歯

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107 ハロウィンの悪戯

 

 

 

ハロウィンが近づくと、大広間にはでかいカボチャがゴロゴロ転がされて、天井近くでは何百羽という蝙蝠がぱたぱたと羽ばたいていた。

この時期特有の甘い匂いとかぼちゃランタンのろうそくの匂いが混ざって、気持ちだけは自然と上がる。

 

それは俺だけじゃなくて、フレッドとジョージも同じだったらしい。

 

ハロウィン前日の夕食時、二人はわざわざハッフルパフの長机まで来て、俺の両脇にストンと座り込んだ。

 

 

「ノア、最近どうだ?」

「言うな、わかってるぜ。俺たちが大人しくしてて寂しいんだろ?」

 

 

二人が交互に口を開き、俺にどや顔を向けてくる。

糖蜜パイを食べていた俺はフォークを咥えたまま片眉を上げ、「で?」と促す。

 

声を潜めて笑いながら言うフレッドとジョージ。こいつらがこんな風に演技かかって言う時は絶対に碌でもないことをやろうとしている時の前振りだ。セドリックもそれを察して、巻き込まれたくないのか他人のふりしてるし。

 

 

「しかし、明日はハロウィンだ!」

「一年に一度、公的に悪戯が許される日である!」

「こんな日に勉強なんてしてられるか?」

「ノア、人生に必要なスパイスが足りてないだろ?」

「ゾンコでも売ってない最高のスパイスを仕入れに行くぞ?」

 

 

フレッドとジョージは俺の肩を組み、ニヤリと笑った。悪戯かあーまあ最近してなかったし、たまにはいいかもな。

 

 

「オーケー。何すればいい?」

 

 

俺も同じように笑い返し、声を潜めると、二人は顔を見合わせて「きた!」という顔をして、左右から俺の耳元へ顔を寄せる。

 

 

「──ってなわけだ、どうだ?」

 

 

左右から囁かれた計画は、馬鹿で、笑えるほど壮大だった。

その言葉に了解の意味で片手を挙げると、二人はハイタッチをして軽く口笛を吹いた。

セドリックが「やれやれ……」と肩をすくめるのが視界の端に見えた。

 

 

 

 

 

 

そしてハロウィン当日。

 

体を揺すられ、名前を呼ばれて唸り声を上げつつ目をうっすらと開ける。

まだ外は薄暗く、窓からの弱い朝陽が俺を覗き込むシリウスの輪郭をぼんやりと浮かび上がらせていた。

まだ朝じゃないだろ。俺は昨日も夜更かししてて、土曜日くらいもっと寝かせて欲しい……。

 

 

『ノア、起きろ』

『シリウス……散歩は、一人で行け……』

 

 

俺は眠い。それを示すために布団を頭の先まですっぽりとかぶって喉の奥で低く唸る。

 

 

『違う、この時間に起きないとダメなんだろう?昨日、起こしてくれって言ったじゃないか』

 

 

シリウスは布団を掘り、俺を引き摺り出そうと必死だ。

……ああ、そういえば、昨日フレッドとジョージと約束したんだっけ。悪戯一緒にするって……。

 

 

『後……』

『後?』

『……二時間……』

『寝すぎだ』

 

 

シリウスは呆れながら俺の上に乗っかってきた。ずしり、と体に重みがのしかかる。

大型犬の体重は洒落にならず、息がひゅっと抜ける。

「うぐ」と空気が潰れたような音が喉から出た。しばらくは布団を被ったまま耐えていたが、やはり重いし暑いしでもがきながら起き上がれば、シリウスが「やっと起きたか」と言うような呆れ混じりの目で俺を見下ろしていた。

 

 

『おはよう、ノア。こんな早くから何をするんだ?』

『ふぁあ──おはよ。悪戯だよ』

『悪戯?』

 

 

欠伸をこぼしながら指を振る。箪笥に入っていた服が飛び出てきて、手を伸ばしていたらパジャマが俺の体から離れていき、代わりに服が袖を通った。

シリウスは俺の着替えを見ないようにそっぽを向いていたが、少し居心地悪そうにそわそわとしていた。

 

 

『そ、フレッドとジョージと。よくあいつらと悪戯してるんだよ』

『へぇ……。楽しいか?』

『もちろん、学校生活を楽しむには、少しのスパイスは必要だろ?』

『確かにそうだ』

 

 

シリウスは深く同意し、面白そうに目を細め尻尾を振った。『ついてくるか?』と聞いてみたが、『いや。俺は散歩に行ってくる』と立ち上がった。

 

シリウスは一人で──一匹で──散歩に行くことに慣れてしまい、もうそれが定番になりつつある。勿論苦情が来たら辞めようと思っていたが、今の所生徒や職員からの苦情はない。シリウスはたまにミセス・ノリスを追いかけ回しているようで、フィルチからはぐちぐち言われるけどあいつの言葉は無視で良いだろう。

 

 

『散歩終わったら、いつもみたいに入り口の横で待ってろよ』

『わかった』

 

 

俺とシリウスはまだ寝息を立てているセドリックを起こさないように部屋を抜け、談話室を通って階段を降りた。

 

談話室はいつものように明るく、暖炉の火が燃えていた。薪の様子を見る限り、先ほど火がつけられたばかりなのだろう。まだ談話室内は肌寒く、温まりきるまでまだ時間がかかりそうだった。壁にある壁掛け時計は五時半を指していて、フレッドとジョージから言われた時間を少し、過ぎていた。

 

 

『じゃあまたな、シリウス』

 

 

シリウスとハッフルパフ寮の手前で別れる。シリウスは尻尾を一振りし、足音をなるべく立てないようにして廊下を走り、薄暗い世界に溶けるようにしていってしまった。

流石にもう見回りの教師はいないだろう。──とは思いつつも、ゆっくりと歩き待ち合わせの大広間前まで向かう。

 

 

 

ハッフルパフ寮は大広間と近いから、二分も歩けば着く。

すでにフレッドとジョージが待っていて、俺を見つけるなり、「遅い!」と声を揃えた。

 

 

「悪い、ちょっと寝坊した。でもまだ余裕あるだろ?」

 

 

二人に両脇を固められながら肩をすくめて笑うと、双子は「ああ、大丈夫だ」とあっさり頷く。その目は悪戯を楽しむ準備万端の光でキラキラしていた。

 

 

「よし、じゃあ──悪戯開始だ」

 

 

大広間の扉を押し開けた瞬間、ただの朝だった空気が一変した。

 

 

「行くぞ、ノア」

「ホグワーツ史上最高のハロウィンにしてやろうぜ」

「最悪の間違いじゃないか?」

 

 

俺たちは顔を見合わせ、ニヤリと笑った。

 

 

 

 

ーーー

 

 

 

大広間に足を踏み入れた生徒は、ぽかんと口を開けて立ち止まっていた。

 

昨日まで地面にしっかりと足をつけていたカボチャは狂ったように大広間中を跳ね回り、ゾンビの幻影が天井を走り、壁に並ぶ鎧がハロウィンソングを歌っていた。

さらに窓の外は何故か不気味な墓場の景色が広がり、外の景色を反映させているはずの天井は新月の夜を映し出していた。天井近くにはカラフルな金平糖が星のように輝いていて、時々流れ星となって落ちてきていた。

 

 

これはいつもより張り切ったハロウィンの飾りなのか、と生徒たちは跳ね回るカボチャを必死に避けながら自身の寮の長机に向かう。

いつもは朝食がずらりと並んでいる長机だったが、今日は「EAT ME」とかかれた人型のクッキーが机の上を楽しげに踊っていた。

 

「今年のハロウィンは凝ってるなぁ」なんて言いながら、何人かの生徒がクッキーを掴み、パクリと食べる。

 

その瞬間──。

 

「わああっ!」「きゃああっ!?」「な、なんだ!?」

 

生徒達の驚愕の叫びが響いた。大広間に入る前だった生徒たちは顔を見合わせなにがあったのかと急いで扉を開け──中に巨人族ほどに大きくなった生徒を見て、目を見開き顔を引き攣らせた。

 

これは、張り切ったハロウィンではない。

その証拠に大広間にやってきた教師たちは、昨夜との変わりように一瞬唖然とし、巨大になった生徒たちをなんとか元の大きさに戻そうとしていた。

 

混乱と興奮の波が大広間を覆っていく最中、突如、教師達の高卓の真上で蝙蝠が集まり大きな渦を作った。

それは黒い繭のようになり、キイキイと不吉な鳴き声の不協和音が響く。誰もが、それを不安げに見上げた。

高速で旋回する蝙蝠の大群は、ぐぐぐ、と密度を高めていく。それが最高潮を迎えた瞬間──ポップコーンのように弾けた。

 

 

「トリックオアトリート!」

「お菓子をくれても悪戯するぜ!」

 

 

蝙蝠が弾けた中から現れたのは、箒に跨るノアとフレッドとジョージだった。

三人は顔を見合わせニヤリと笑う。いきなりの事で動けない生徒や教師陣に向かってノアは杖を向け、鋭く右から左へ払った。

 

杖の動きに合わせ、闇の姿を纏った獅子、大蛇、巨大穴熊、大鷲が飛び出し大広間を縦横無尽に駆け回る。不運にも追いかけられてしまった生徒はパニックになりぎゃあぎゃあと叫び逃げ惑った。

 

 

「ゾグラフ!」

「ウィーズリー!!」

 

 

スプラウトとマクゴナガルの怒号が飛んだが、ノア達はケラケラと楽しそうに笑うだけだった。

 

 

 

 

数分後。

大広間近くの廊下で、ノアとフレッドとジョージは箒を片手に持ったまま寮監に囲まれて説教されていた。

しかし、俯き加減の三人の顔に反省の色はない。

 

 

「……で、次はいつやる?」とフレッドが小声で囁き、「悪戯は計画的に、だな」とジョージが返す。

 

ノアは寮監にバレないよう肩を震わせながら、笑いを堪えきれず口角を上げた。

 

「またやろうぜ」の言葉に、フレッドとジョージは楽しげに目を細めた。

 

 

 

 

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