兄・子世代ifチート能力を駆使して転生人生謳歌します!   作:八重歯

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112 忍びの地図の行方

 

 

 十二月に入ればクリスマスムード一色になる。

 ホグワーツ城には巨大なもみの木、光る妖精入りのランプ、柊のリースなどが飾られ、誰もがクリスマスを心待ちにしていた。

 

 寮でも話題は休暇の予定ばかりで、セドリックとフレッドとジョージ、ドラコは実家に帰る組。ハリーとロン、ハーマイオニーはホグワーツに残る選択をした。

 

 

「ノアは今年もホグワーツで過ごすんだよね?」

「そのつもり。でも休暇中仕事があるんだよなぁ……」

 

 

 荷造り中のセドリックに声をかけられ、俺はベッドで寝転びながら気だるげに返事をする。

 

 学業がメインで仕事は休暇中しかできないため、俺の仕事先の事務所は短いクリスマス休暇でも、できれば仕事を進めたいらしい。

 

 

「この前写真集出したばっかりなのに?」

「なんか、今回は打ち合わせとインタビューとか言ってたな。保護者同伴だし、めんどくさそう……」

 

 

 正直、仕事自体は嫌いじゃない。チヤホヤされるのは悪くないし、魔法界の雑誌の表紙が俺の顔で埋まっていくのは爽快だ。

 だけど、休暇中家に帰れるなら楽だが、学生中はハリーとクリスマス休暇を過ごす、という約束──魔法契約を結んでいるから、それを優先しないとちょっとまずいことになる。一日くらいなら大丈夫、だと信じたい。移動が面倒だなぁ。

 

 

「無理しないでね。また、倒れるよ?」

「ちゃんと休むって。ほどほどに働いて、しっかり寝る」

「ほんとかなぁー」

「マジだって」

 

 

 じーっと俺を見るセドリックに苦笑すれば、「ほどほどにね」と念押しされてしまった。

 というか、今後のために魔力回復する薬を作り出さないとなぁ。多分、魔法使いの魔力は生命力に関わってそうだけど、心当たりあるのってユニコーンの血液か賢者の石の命の水くらいなんだよなぁ。賢者の石はもう壊したあとだし。魔力、生命力タンクといえば、大体が何かの命や血を使ったりするのがセオリーっちゃセオリーだけど。

 

 

「魔力を回復させる薬とか、知ってる?」

「うーん。聞いたことないなぁ……。レイブンクローの魔導書には載ってなかった?」

「あー、あの本。まだちゃんと見てないな」

 

 

 レイブンクローの知識が詰まった魔導書にはかなり危険な魔法がたくさん書かれていた。本はキャリーケースくらいの大きさなのに文字は文庫本の小説よりも小さいから、じっくり読むの大変なんだよな。……ページ数もやばいし。

 

 クリスマス休暇中、暇な時に読もう。

 

 そう考えながらカーテンの隙間から外を覗けば、窓の外は灰色の空に覆われ、ちらちらと雪が舞っていた。ホグワーツの冬はこれからが本番だ。

 

 

「今年はあまり寒くないといいな」

「……ホグズミード行き、寒そうだね。猛吹雪になないといいけど」

 

 

 ホグワーツ周辺は足が埋まるほど雪が積もる。幻想的な景色、ではあるけど猛吹雪になる日もあり、そんな時に外に出るのは自殺行為だ。

 俺がぼやけば、セドリックは笑って「温かいものでも食べに行こう」と答えた。

 

 クリスマス休暇前の最後の週末にはホグズミード行きが許され、誰もがクリスマスのプレゼントを探しに行こうと浮き足立っていた。

 俺は買いたいものはないけれど、セドリックと行って適当にぶらぶらする予定だ。

 

 とはいえ、目的がなくてもホグズミードは楽しい。寒さは厳しいが、街のきらめきや甘い匂い、温かい飲み物につられて、自然と足取りも軽くなる。そんな気分でいた矢先──ホグズミード行きの前夜、夕食を終え大広間から寮に帰る前にフレッドとジョージに呼び止められた。

 

 

「ノア、ちょっと相談があるんだ」

「今いいか?」

「いいけど、なんだ?」

「うーん、ここでは」

「監督生様が見ているところでは、ちょっと」

 

 

 フレッドとジョージはセドリックを見て、わざとらしく難しい表情をして首を振る。セドリックは「また悪戯の相談?」と呆れつつ、悪戯の内容を聞いて巻き込まれるのもごめんだったのか、俺たちと別れ一人寮に向かった。

 

 俺を空き教室まで連れて行ったフレッドとジョージは、周りに誰もいない事を確認してから忍びの地図を取り出した。

 

 

「あのさ。この地図なんだけど……ハリーに譲ろうかと思って」

「確かにこの地図は悪戯に大いに役立つ。だけど── 便利すぎるんだよな、これ。悪戯する時のドキドキ感が半減する」

「スリルのない悪戯なんて、単なる作業だ。つまらない悪戯はしない、それが俺たちのポリシーだろ?」

 

 

 二人はそういって笑った。『俺たちの』の中に俺が含まれているのが不思議な感じがする。──実際、八割はあの二人が勝手にやってる悪戯だし。

 まあ、忍びの地図はフィルチの管理室から俺たち三人でとったものだ。二人で決めて、勝手にあげることはできなかったんだろうな。

 

 

「ほら、ハリーずっとホグズミードいけてないだろ?」

「その上、箒がぶっ壊れて……無理に笑ってるの、みんなわかってるしな。そんなハリーに最高なクリスマスプレゼントが必要だろ?」

「俺たち抜け道はもう暗記してるしな」

「うん、いいんじゃないか?」

 

 

 ハリーへの優しい気遣いを断る理由はない。忍びの地図……ぶっちゃけ俺も欲しいけど。めちゃくちゃ良いアイテムだし。

 二人は俺が頷くと、途端にほっと表情を和らげ嬉しそうに俺の肩を左右から組んだ。

 

 

「流石ノア!そう言ってくれると思ってたぜ」

「明日、ホグズミード行き一行がいなくなって、城が静かになってから渡そうと思ってるんだ」

「あー。俺、セドリックとホグズミード行く約束してるんだ。セドリックにはハリーにあげること、しばらく内緒にしたいんだろ?」

 

 

 セドリックも忍びの地図の存在は知っている。ただ、セドリックは性格的に「ホグズミードに行けないハリーに、ホグズミードの抜け道が書いてある地図を渡す」ことを良しとしないだろう。

 それがわかってるからこそ、二人はセドリック抜きでこの話をしているんだろうし。

 

 

「じゃあ、俺とジョージで渡しちゃっていいか?」

「ん、頼むわ」

 

 

 そう頷くと、二人は嬉しそうに肩の力を抜いて、満足げに笑った。

 

 

「よし、決まり!」

「明日は心置きなく悪戯じゃなくてクリスマス気分を満喫しようぜ」

 

 

 フレッドは腕をぱっと広げて空を仰ぎ、ジョージは隣で「たまには善人ムーブも悪くないな」と和やかに言っていた。

 

 

 空き教室の扉を開ければ、冷たい石造りの廊下に夜風がすうっと吹き込んでくる。城の中はまだクリスマスムードを楽しみたい恋人たちが柊の下や飾られたヤドリギの木で寄り添っていたりして、そこそこ人が多い。

 

 

「じゃあ明日、ゾンコで集合な!」

「ヒエビエ爆弾とビックリ風船確保しといてくれ」

「了解。早めにこいよー」

 

 

 そんな軽口を交わしながら階段を上り、途中でグリフィンドール塔への階段でフレッドとジョージは手を振った。

 

 

「じゃあな、ノア」

「いい夢見ろよー!」

 

 

 軽快に笑いながら二人は上がっていき、俺はその後ろ姿を眺めてから肩を軽くすくめて反対方向へ向かった。

 

 えーと、このホグズミード行きで、ハリーはシリウスと両親の関係を知るんだっけ?

 うーん、フレッドとジョージは善意のプレゼントのつもりだったけど、マジでとんだプレゼントになるよな。

 

 

 

 

 次の日、セドリックとフレッド、ジョージの三人とゾンコで買い物をした。フレッドとジョージは俺との写真出演料でゾンコの新商品を殆ど買い尽くし、三本の箒に行く事なくホクホク顔でホグワーツに戻った。

 

 あの二人は抜け道を把握しているし、ギリギリまでホグズミードを満喫するより、新しい悪戯道具を早く試したいのだろう。

 

 

「雪、降ってきたね!そろそろ三本の箒に行こうか」

「ああ、早くバタービールで暖まろうぜ」

 

 

 マフラーを口元まで上げ、足早に三本の箒へ向かう。舞い上がる雪と共に店の扉を押し開ければ、暖かい空気と肉の焼ける香ばしい匂いが出迎えた。途端に、腹が減る。

 

 

「なあ、少し食べて行こうぜ」

「うん、いいよ」

 

 

 ホグワーツで夕食はあるけど、甘いバタービールと塩辛いソーセージとか、最高の組み合わせなんだよなぁ。と考えながらカウンターの向こうにいるマダム・ロスメルタに注文しようと近づく。

 

 

「すみません。バタービール二つとソーセージ盛りを──」

 

 

 そう言いかけて、言葉を止める。

 カウンター越しにロスメルタと話していたのは、マクゴナガルとフリットウィック、ハグリッド、魔法大臣のファッジだった。

 彼らと目が合い、彼らも話していた言葉をぴたりと止めた。セドリックもホグズミードで先生たちと会ったのは初めてであり少し驚いている。

 

……そうだった!シリウスとジェームズの話、終わってたらいいけど。

 

 俺はさりげなく彼らの前のグラスを盗み見る。中身はすでに減っていて、飲み始めたばかりじゃないようだった。よかった!多分、大丈夫だろ。

 

 

「えーっと、こんばんは?先生たちもここに来るんですね」

「ええ、今日は私たちもオフなんです」

 

 

 マクゴナガルは淡々とほとんど残っていないギリーウォーターの残りを口に運ぶ。ハグリッドは一瞬動揺して目を泳がせながら、両手で抱えるようなジョッキをあおった。

 

 

「ノア・ゾグラフじゃないか!」と、弾むように声をあげたのはファッジであり、すぐに椅子から降りると頬を染め、でっぷりとした腹を揺らし満面の笑みで俺に近づいた。

 ファッジの一言で、俺に気付いていなかった客たちも「ノアだ!」「うわ!サインもらえるかな?」と色めき立つ。

 

 

「私はコーネリウス・ファッジ。知っているかね?」

「……はい、魔法大臣、ですよね?俺はノア・ゾグラフです。お会いできて光栄です」

 

 

 差し出された手を取り、営業用の笑顔を作ってにっこりと笑う。

 うん、この人と会うタイミング無かったけど、パイプ作っておきたかったんだよな。権力あるのはあるし。後々使えそう。

 

 ファッジは俺の一言に大変気をよくしたようで、周りに自慢するように胸を張りちらりと見渡しながら咳払いをした。

 

 

「一度君に会いたいと思っていたんだ。噂はよく聞くから──どうだね、一緒に?」

 

 

 ファッジは空いているカウンターの方を顎で指しながら、朗らかに、しかし馴れ馴れしく俺の肩を叩く。……いや、いいけどさ。ファッジも別に嫌いなキャラじゃないし?

 

 

「えっと……俺、友人と来てて」

 

 

 チラリと後ろを見る。後ろでセドリックは居心地悪そうにしていたが、魔法大臣の手前、目が合うと礼儀正しく頭を下げて、「セドリック・ディゴリーです」と挨拶をした。

 

 

「ああ、君も一緒に!」

「──コホン!」

 

 

 ファッジは気前よく誘ったが。その言葉を掻き消すようにわざとらしくマクゴナガルが咳をこぼした。

 

 

「コーネリウス。校長と食事なさるおつもりなら、そろそろ城に戻った方がいいのでは?」

 

 

 マクゴナガルが時計に視線を向けながら言う。ファッジは大袈裟なまでに残念そうに天を仰ぐと、やれやれと肩をすくめた。

 

 

「そうだった!──ノア、例の仕事の話は聞いたかね?」

「?……いえ、まだなにも」

「そうかそうか。また、すぐ会えるさ。楽しみにしているよ」

 

 

 もしかして、クリスマス休暇の時の仕事の打ち合わせって魔法大臣関係あるのか?……そんな仕事、ある?

 首を傾げていると、ファッジは残りの酒を一気に飲み干し、俺の肩を軽く叩いて先生たちと一緒に店を出て行った。

 

 扉が開き、舞い込んだ細かい雪片の冷たさを頬に感じながらセドリックと顔を見合わせる。

 

 

「……魔法大臣直々の仕事ってなんだろ」

「……もしかして、闇祓いスカウト?」

「まさか、まだ卒業前だぜ?」

 

 

 軽く肩をすくめながら、先生たちが居なくなった席に座り、改めてロスメルタにバタービール二つとソーセージ盛りを注文した。

 

 

 

 甘いバタービールとソーセージを摘んでいると、暫く俺とセドリックを囲むようにウロウロしていた客がついに我慢できず「あのっ」と話しかけた。

 

 

「ノアくん!君のファンなんだ、いつも写真集を持ち歩いてる。よ、よかったらサインをくれないかな?」

 

 

 振り返れば、一人の魔法使いが顔を真っ赤に染め、俺の写真集を差し出しながら上擦った震える声でそう言った。目があった瞬間、声にならない悲鳴を上げびくりと肩を跳ねさせていた。

 ま、ファンサービスは大事だしな。

 

 

「もちろん。あなたの名前は?」

「ジョ、ジョセフ・テイラー!」

「オーケー」

 

 

 手をぐるりと回し、サイン用の羽ペンを出現させると受け取った写真集にサインを書く。「ジョセフ・テイラーさんへ」と記名するのも忘れない。ほら、転売対策?──ま、俺のサインを転売するやつなんていないだろうけど。

 

 そうこうしていると、「私も!」「こっちにも!」と次々とサインをねだられてしまう。テキパキとファンをさばいていると、カウンターからロスメルタも期待と熱がこもった目で「店に飾りたいの、あれにもサインをくださらない?」とカウンターの奥にある、店のシンボルの三本の箒に視線を送った。

 箒の柄部分にサインをして──ちょっと金色に輝くように魔法もかけた──もう店の客は大体終わったかな、と思ったが、扉の外からも人影が見え始めていた。

 窓際の客が何やら外に向かって呼び込み始めて──「三本の箒にノアがいる!」という声があちこちに響き渡る。

 

 セドリックと目が合った瞬間、同じ思考が通じたのか、苦笑しながら首を振ってた。

 

 

「……出ようか」

 

 

 立ち上がってセドリックの手首をとる。

 背後から「ノアさんお話しましょう!」「待ってください!」と声が上がったが、セドリックに迷惑かけてまでファンサービスを続ける気はない。もう、バタービールとソーセージも無くなったことだし。

 

 

 扉を押し開けて外に飛び出す。セドリックは俺に手を引かれるまま、少し驚きの中で楽しそうに目を細めていた。

 

 

「ノア様ー!」と、ファンの叫びが響く。

 振り返って駆け寄ろうとするファン達を見れば、彼らは息を詰めて足を止めた。

 

 

「悪いな、また今度」

 

 

 俺は悪戯っぽく笑い、ローブを翻しながら腕を強く引く。バランスを崩したセドリックは息を飲み俺の胸の中に飛び込んだ。その瞬間姿眩ましの世界が回る感覚がしたかと思うと──周囲の喧騒はふっと消え、冷たい風と白い雪が静かに頬を撫でた。

 

 移動した先はホグズミードの端っこにある小高い丘。柵の向こう側には叫びの館があり、こんな夜には観光スポットとはいえ不気味で誰もいない。

 セドリックを放せば、セドリックは少しよろめき周りを見渡して、驚き半分、呆れ半分の表情で俺を見た。

 

 

「姿現しまでできるんだ……」

「まあな。ほら、変態さんに追いかけられる人生だから」

 

 

 冗談めかして肩をすくめれば、セドリックは一瞬ぽかんとした後、半ば呆れたまま笑った。

 

 

「納得しちゃうのが怖いよ」

「だろ?」

 

 

  遠くの方でホグワーツの城の明かりがぼんやりと灯っているのを見ながら、俺とセドリックはゆっくりと丘を降りて行った。

 

 

 

 

 

 

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