兄・子世代ifチート能力を駆使して転生人生謳歌します! 作:八重歯
クリスマス当日。
俺は部屋の中に次々と配達されるプレゼントの山から、セドリックやドラコ、フレッドとジョージ、ハリーといった交友のある人のものだけ選別し袋を開けた。
──ドラコからは豪華すぎるブローチ、セドリックからは実用性抜群の魔法ノート、ハリーからは俺の顔がドンと載ったパッケージのお菓子。そしてフレッドとジョージからは……開けた瞬間爆発する未来しか見えない。はい、即封印。
「何しようかなー誰もいないと暇すぎる……」
友人たちのプレゼントを開けたら、そのあとは暇になりベッドの上に寝転がった。
同じようにベッドに寝ていたシリウスは顔を上げ『ハリーたちのところに行かないのか?』と期待するように聞いた。
『うーん……だって、ヒッポグリフの事調べるのもう飽きたし』
『……』
ハリーはずっと、ヒッポグリフが人を怪我させてしまったが裁判で無罪となった例がないか探している。とはいえ、魔法生物の──それも亜人系ではなく、言葉が通じない生き物の地位は低く、勝訴する確率は低い。
まあ、いくら子供が余計な事言ったのが悪いとはいえ、怪我させたら何らかしらの処分は必要だよなぁ。処刑はやりすぎだと思うから減刑されたらいいけど。
本当は、ハリーたちには無理でも俺の力を使えばヒッポグリフの件をうやむやにはできるだろう。それにはコネと、知名度と、金が必要で俺は何と全て持っているのだ。
とはいえ、ここでヒッポグリフを無罪にしてしまえばいろいろ未来が変わる。原作をそのまま続けるためには必要なんだよなぁ……。
いやー、悩むところだ。
本当はピーター・ペティグリューも無視しないで捕獲してもいいんだけど。そうすると……ヴォルデモート復活しなさそうだし。復活してくれないと、それはそれでややこしいんだよな。……原作が崩れると未来が読めなくなる。下手したら別の悲劇が起きるし、俺が介入するラインは慎重に選ばないと。せめてヴォルデモート復活して、リーマスとトンクスが恋に落ちるまでは続けないと駄目だ。
『なら、宿題はしないのか?もう休みは半分終わったぞ』
『……はぁー。シリウス、わかってねぇな』
シリウスに向かってため息を吐き、やれやれと首を振る。シリウスはカレンダーを見た後、犬の姿にしては器用に片眉を上げた。
『クリスマス休暇だぜ?休むべきだろ』
『……あの山積みの課題は?』
『大丈夫、俺にはセドリックっていう便利──優しい親友がいるんだ』
『……』
初日に机の上に置かれたまま触れていない宿題の山を見て、シリウスは沈黙した。
いや、いいんだよ。セドリックはなんだかんだ手伝ってくれるし!怒りつつもちゃんと見てくれるし!
そうして俺は昼までシリウスとだらだらしながら過ごしていた。
今日はクリスマスメニューだから、昼食から二、三時間は食べ続けてそのまま夕方にデザート食べて終了のパターンのはず。
流石にシリウスは連れていけないから、談話室に置いておこう。
大広間に入れば、各寮の長机は壁に立てかけられ、広間の中央にテーブルが一つ、食器が十二人分用意されていた。
ダンブルドア、マクゴナガル、セブルス、スプラウト、フリットウィックの五人の先生と管理人のフィルチがすでに座っていた。先生たちの服装は、休暇中だからかクリスマスだからか──ちょっとおしゃれな服になっている。
マクゴナガルは綺麗な猫のブローチをつけていて、スプラウトは桃色のショールを巻いている。フリットウィックもピカピカ光るリボン型ネクタイをしていて、フィルチもちょっとカビ臭いけど燕尾服だし。
ま、セブルスの服は変わらないけど。
俺は生徒の中では一番早く到着したらしく、先生たちの視線を受けたまま少し、どこに座ろうか悩む。
「えーと。……セブルス先生、となりいいですか?」
セブルスが端っこだったし、ハリー達はセブルスの隣に座りたくないだろう。そう思ってセブルスの答えを待たずに椅子を引いて座る。セブルスは俺を見下ろし、ふん、と鼻を鳴らしたが拒絶はしなかった。
少しして緊張した表情でグリフィンドールの名も知らぬ一年生二人が体を縮こめながら端っこに座り、また少ししてハリー、ハーマイオニー、ロンの三人がやってきた。
ハリー達もいつもと違う様子に驚いていたようだったが、すぐにハリーが飛びつくようにして俺の隣に座り、その隣にロン、ハーマイオニーの順で座った。
「メリークリスマス!これだけしかいないのだから、寮のテーブルを使うのはいかにも愚かに見えたのでのう。──さあ、クラッカーを!」
ダンブルドアは上機嫌にはしゃぎながら大きな銀色のクラッカーの紐の端をセブルスに差し出した。セブルスは渋々受け取って引っ張り、大砲のようなバーン!という轟音が響き火薬の強い匂いと共にハゲタカの剥製が乗った大きな魔女の三角帽子が現れた。
ハリー達はボガートの件──リーマスの授業でセブルスの姿になったボガートが、ハゲタカの帽子を被り緑のドレスを着た姿に変身した件だ──を思い出したのか、必死に笑いそうになるのを堪えていた。
セブルスは嫌な顔をしてダンブルドアに三角帽子を押しやる。ダンブルドアは自分がかぶっていた三角帽子を脱ぐと、嬉々としてそのハゲタカのものを被った。
俺達も一つずつ渡された馬鹿でかいクラッカーの紐を引っ張り、至る所で破裂音が鳴る。ハツカネズミやウサギや鳥やお菓子や飴、変わり種三角帽子──色々なものがぶちまけられる中、俺のからはクリスマスツリーを模した三角帽子が出てきた。
ダンブルドアがキラキラした目で見つめてきたし、まあハゲタカよりはマシだと思い、かぶる。途端にダンブルドアは満足げににっこりと笑った。
「さあ、どんどん食べましょうぞ!」
ダンブルドアの促しで、皆が豪華なクリスマスメニューに手を伸ばす。ローストビーフに、七面鳥、ローストポテト、ヨークシャープディング、太いソーセージ、臓物スープ、フィッシュアンドチップス、サラダ──などなど。飲み物も、いつもはないホットワインやスパークリングもある。酒なんて長く飲んでない。ちょっと飲んでみたい。……少しくらいならバレないかな?
俺がホットワインの大きな陶器ポットに手を伸ばしかけた時、大広間の扉が開いた。
全員の視線を受けたのはトレローニーであり、トレローニーは眼鏡の奥の目を伏せてすーっと滑るように机に近づく。クリスマスらしく、スパンコールのついた緑のドレスを着ていて、目を上げると俺を見て──なんか目配せしてきたけど気付かないふりしよう。
「シビル、これは珍しい!」とダンブルドアは驚きつつも喜びながら立ち上がった。うん、たしかにここでトレローニー見るのは初めてだ。
「校長先生、私、水晶玉を見ておりまして。私も驚きましたわ。一人で昼食を取るという、いつもの私を捨て、みなさまとご一緒する姿が見えましたの。運命が私を促しているのを拒むことができまして? 私、取り急ぎ、塔を離れましたのでございますが、遅れまして、ごめんあそばせ……」
「それは、それは。椅子をご用意せねばのう」
ダンブルドアは目を輝かせたまま杖を振り、椅子を描いた。空中に描かれた銀色に輝く椅子は、数秒間くるくると回転し、セブルスとマクゴナガルの間にストンと落ちる。
……へーあんな呪文あるんだ。法則を無視してるわけじゃなくて、空気を椅子に変換してるのかな?それとも転移魔法?
あんな魔法があれば何でも好きに出せるし、便利そうだから後で使えるか試してみよ。
トレローニーはすーっとセブルスとマクゴナガルの間に近づいたが、テーブルを見回し座っている人数を確認すると小さく「あっ」と悲鳴を漏らし、怯えるように胸の前で指を組んだ。
「校長先生、私、とても座れませんわ! 私がテーブルに着けば、十三人になってしまいます! こんな不吉な数はありませんわ! お忘れになってはいけません。十三人が食事をともにするとき、最初に席を立つ者が最初に死ぬのですわ!」
「シビル、その危険を冒しましょう。かまわずお座りなさい。七面鳥が冷えきってしまいますよ」
マクゴナガルは占い学を信じていない。イライラとした口調でトレローニーに座るように促した。
先生やハリー達の目がトレローニーに向いている間に、そっとホットワインを引き寄せる。
ゴブレットに並々と注ぎ、バレないうちに一口。
「──うまっ」
小さく呟く。これ、アルコール度数かなり低くないか?甘めのワインで、なんかシナモンみたいな味もする。後からアルコールが鼻から抜けるように感じられるだけで、全然軽い軽い!いやー前世、というか。この世界に来る前はよく飲んでたもんなぁ。久しぶりに飲むと、めちゃくちゃ美味い。
マクゴナガルとトレローニーは互いに仲が良くないのか、冷戦のような冷ややかな言い合いを続けている。リーマスが不在だと気づいたトレローニーが聞けば、マクゴナガルは「占いでご存じだったのでは?」と冷やかし。それに対してトレローニーは「知っていました。残念ながらルーピン先生は長くないですね」と答える。
先生同士の言い合いなど滅多に見れるものではなく、ハリー達は食事もそこそこにぽかんとしながらそれを見ていた。一方セブルス達は何度か経験済みなのか素知らぬ顔をしてクリスマスメニューに舌鼓を打っている。
最終的にダンブルドアが二人の言い合いに割って入って止めるまでそれは続いていた。
酒が旨すぎるっ!
口の中でほんのりと甘さが広がり、胃の奥までぽかぽかと温かくなる頃、ふと顔を上げれば、同じように頬を赤く染めたスプラウト先生と目が合った。
「そういえばノア、休暇中もお仕事だったのよね?」
ほんのり頬を火照らせたまま、スプラウト先生が陽気に笑いかけてくる。
「また写真集の撮影かしら?」
「えーと……詳しくは言えないんですけど、来年のとあるイベントに出演することになって。それの契約と、雑誌のインタビューと──ついでにいくつか写真も撮ってきました」
「まぁ、凄いじゃないの! 楽しみにしてるわ。月刊魔女の表紙……あれ、毎月ノアじゃない?」
スプラウト先生がくすくすと笑い、周りの先生達に賛同を求める。俺の話題にマクゴナガルとトレローニーの間に流れていた気まずい空気も一段と和やかになった。
「ありがたいことに、おかげさまで売れ行きも右肩上がりみたいです」
苦笑交じりに肩を竦めれば、隣のフリットウィック先生が椅子の上でぴょんと背伸びし、小さな手をひらひら振りながら元気よく声を上げた。
「私もハニーデュークスで見かけたよ、君の新しいパッケージ! 棚一面がノアで埋め尽くされていた!」
「ありがとうございます、フリットウィック先生」
つい笑みがこぼれる。先生達もハニーデュークスとか行くんだな、なんかちょっとくすぐったい気持ちだ。
「それに──確か、一流クィディッチ用品ともコラボレーションしていませんでしたか?」
マクゴナガル先生が、静かに杯を置きながら問いかける。その目が、普段よりわずかに柔らかい。やっぱり、クィディッチが絡むと先生も食いつきが違う。
「はい。あれも良い反響をいただいてます。実は、また新しいコラボ案件の話も来ていて……」
「ふふ、相変わらず大人気なのね、ノア。あなたのような若者が魔法界の顔になってくれて頼もしいわ」
スプラウト先生が目尻を下げて頷き、フリットウィックは満足げにグラスを掲げる。トレローニーはいつもよりうっとりと俺を見て、マクゴナガル先生は静かにうなずきつつ、その視線の奥で何かを評価するような色を浮かべていた。
普段は厳しい先生たちも、こうして普通に会話を交わしてくれると──やっぱり嬉しいもんだ。俺はゆるりとグラスを回しながら、改めてにっこりと微笑んだ。
「ありがとうございます。これからも、魔法界のためにしっかり働かせてもらいます」
知名度は上げてて損はない。
それに、俺のようなマグル生まれの孤児は余計に、だ。あと二、三年後のために俺の地位を不動のものにしなきゃな。
「なら、今後も何かと後見人の付き添いが必要になるかもしれませんね──ねえ、セブルス?」
マクゴナガルがわずかに口角を上げ、トレローニーを挟んだ先にいるセブルスをちらりと見やった。マクゴナガルの目は明らかにからかいの色を帯びている。
セブルスは無言で眉をわずかに動かし、俺の方へ視線を流す。その目は静かに問いかけていた──「言うのか?」と。
そうか、先生達の中ではセブルスしか俺に養父ができたこと知らないのか。他に伝えてないし──ダンブルドアは知ってそうだけど。
「あ、セブルス先生はもう後見人じゃなくなったんです。俺──夏季休暇の頭に、養子に貰われました」
食卓に緩く笑い混じりの言葉が落ちた瞬間、空気が一拍止まる。
「……えっ?」
「まぁ……!」
「……なんですって?」
予想以上の食いつきに、俺は笑いがこぼれた。先生方が一斉に目を見開き、あからさまに驚いている。
「ノアに養父が……?」
スプラウト先生が手を止めたままぽつりと呟く。その声音には、驚きだけじゃなく、若干の警戒心と──心配も混ざっていた。目がしきりに俺の顔と髪と、首元までさりげなく泳ぐ。たぶん、何か余計な心配をしている。
まあ、その気持ちは痛いほどわかる。
「その養父は……大丈夫なのかしら?」
妙な含みを持たせた問いかけだった。
マクゴナガル達も同じように神妙な顔をしていて、何だかおかしくて俺は少しだけ肩を揺らして笑った。
「もちろん、大丈夫です」
いつも通りに笑顔を作って返すと、先生たちは互いに顔を見合わせた。スプラウトは小声で「ノアがそう言うなら……」と呟き、マクゴナガルは心配しつつも頷いた。フリットウィックだけは興味津々に首をかしげて「そのうち養父さんにも会えるのかな?」と呟いていた。
セブルスは何も言わなかったが、横目で俺を一度だけ見て、小さく鼻を鳴らした。その沈黙は、どこか「勝手にしろ」とでも言いたげで、少しだけ面白かった。
その後の食事は、マクゴナガルとトレローニーも冷ややかな言い合いをする事なく、皆が美味しい食事を堪能していた。
食後のデザートや紅茶を飲み終わり、そろそろ解散の雰囲気が漂う中、一番初めに立ち上がったのはクラッカーから出た派手な三角帽子を被っていたハリーとロンであり、二人が立ち上がった瞬間、「待ってました」とばかりにトレローニーが大きな悲鳴をあげた。
「あなたたち! どちらが先に席を離れましたの? どちらが?」
和やかなムードが一転、ロンは肩をすくませ「わかんない」と困ったようにハリーを見た。
ハリーもどちらかが先に立ったなんてわからず、それを気にすることもなく肩をすくめる。
「どちらでも大して変わりはないでしょう。外に斧を持った極悪人が待ち構えていて、玄関ホールに最初に足を踏み入れた者を殺すとでもいうなら別ですが」
マクゴナガルが冷たく言う。その言葉にハリーとロンが小さく笑い、トレローニーは眉を吊り上げ侮辱されたという顔をしたが、それ以上反論はしなかった。
さて、俺もそろそろ帰ろうかな、いい感じにアルコール入ったし、もうぐっすり寝れそう。
ハーマイオニーはマクゴナガルに用があるらしく、俺はハリーとロンと一緒に大広間を出た。玄関ホールを出て、互いに満たされた腹を撫でながら手を振る。
俺は欠伸をこぼしながら一人っきりのハッフルパフ寮に行き、談話室で休むことなく自室に向かった。
扉を開ければベッドで寝転んでいたシリウスが「散歩か?」と顔を上げる。
『散歩はまた明日』
『クリスマスの特別ディナーは?』
枕を抱きしめもごもごと言えば、シリウスは悲しそうに言いながら俺の背中に前脚を乗せた。微かな重みで唸り、やめろと首を振るがシリウスは体重をかけ続ける。
『重いって……』
『ノア、せめてシャワーを浴びてこないと』
『めんど……』
枕に顔を埋めたまま答えれば、シリウスは俺の肩上に顔を突っ込み起こそうとぐりぐりとしてきた。──くすぐったい!
チクチクとした毛の感覚に首をすくめ身を捩っていると、シリウスが『ん?』と言いながらふんふん匂いを嗅いできた。
『ノア、酒を飲んでいるのか?』
『んんー?……うん、少し』
『……それにしてはかなりアルコールの匂いがするが』
『犬だからじゃね?』
顔をずらし、シリウスの顎を撫でながら笑う。シリウスは俺が飲酒してもうるさく言うことはなく──ため息はついていたが──俺が動きそうにないとわかると、諦めてベッドから飛び降りた。
『来年のクリスマスディナーは期待しているぞ』
『……検討しとく』
シリウスの朝晩のご飯は自動で屋敷僕が用意してくれる事になっているし、飢えることはない。クリスマスの特別ディナーは諦めてくれ。また今度チキン買ってくるから──。
そう思いながら、俺はほろ酔い気分で意識を手放した。