兄・子世代ifチート能力を駆使して転生人生謳歌します!   作:八重歯

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119 悪魔の気づき?

 

 週末のホグズミードは生徒達で溢れていた。特にハニーデュークスは人が多くて長居するには不向きだ。

 俺はどこに行っても目立つけど、ハニーデュークスの商品は俺がパッケージになっているものも多い。いつも以上に目立ってしまい、人が人を呼んでちょっとしたお祭り騒ぎになってしまう。

 

 目当てのお菓子をなんとか購入したセドリックは人に押されてシワがよったローブの裾を引っ張りながら苦笑した。

 

 

「ちょっと散歩しない?店内が熱くて……」

「人が少ない方がいいな。また叫びの屋敷に行くか?」

「うーん、そうだね。どこに行ってもノアがいるってわかれば大混雑だろうけど」

 

 

 セドリックは肩をすくめながら、人が少ないうちに、と足早に叫びの屋敷へ向かった。

 

 小高い丘をゆっくりと登る。風が吹いて心地いい中──突如、悲鳴が聞こえた。

 

 

「ぎゃあああっ!」

「っ!?な、なんだ?」

 

 

 セドリックは驚き咄嗟に杖を出す。

 叫び声と共に、ドタバタと走る音が聞こえ、死ぬ物狂いで走り、恐怖で顔を引き攣らせながらクラッブとゴイルが現れた。何故かクラッブとゴイルの二人は泥まみれである。

 

 

「ノ、ノノノノアさんっ!」

「首っ──ポッターの生首が!」

 

 

 半泣きになりながら俺とセドリックにそう叫び、二人はここにいると呪われるとでも思っているのか──まあ叫びの屋敷は呪われてるって言うのが売り文句だしなぁ。──二人はそのまま「早く逃げてくださいっ!」と叫びつつ、全力疾走していってしまった。

 

 俺とセドリックは顔を見合わせる。

 その場から逃げる事もなく、叫びの屋敷へ向かえば屋敷の垣根の側に蒼白な顔をしたロンと、額を押さえるドラコがいた。

 

 

「……なるほど」

 

 

 俺は彼らの様子で全てを察する。セドリックは首を傾げ「え?なにが?」と言ったが、セドリックにハリーがここに本当にいた。と言うとまたややこしい事になるし黙っていよう。

 

 多分、ハリーは忍びの地図を使いホグワーツの抜け道からホグズミードにやってきた。一応、透明マントを被ってきたんだろう。それでクラッブとゴイルにちょっかいをかけて、透明マントがズレ、それが『ポッターの生首』になったのか。

 

 

「……てっきりノアが連れてきたんだと思った」

 

 

 ドラコがため息を吐きながら呟く。

 ドラコも透明マントの存在は知っているし、クラッブとゴイルを隠れながらからかったのも、ハリーが生首になったのも、全て理解した上での呆れ混じりの視線だ。

 

 

「俺は何にもしてないぜ。隣に監督生様がいるからな」

「……えっ、ハリー。ここに居るの?」

 

 

 セドリックは信じ難い表情で眉を寄せる。俺は肩をすくめ、ドラコは再びため息をつき、ロンは焦ったように視線を彷徨わせた。

 

「俺は何も知らない」と俺、

「僕もだ」とドラコ。

「ぼ、僕も知らないよ?」とロン。

 

 明らかに挙動不審なロンに、セドリックが「ロン?」と声を低めて名を呼べば、ロンはびくりと肩を震わせ「し──知らない!」と叫びながら逃げ出した。

 

 残された俺たちは顔を見合わせ苦笑する。

 

 

「で、何があったの?」

「……クラッブとゴイルとここに来たら、ロンが居た。二人がロンを揶揄おうとしたら──二人に泥団子が飛んできたり、何か見えないものにぶつかったりした。それで、何も無いところにハリーの生首が現れて、あとは……」

 

 

 ドラコは逃げ出したゴイル達を追いかけるつもりは毛頭もないのか、垣根に背を預けながら何があったのが説明し、「あとは見ての通りだ」と言うように肩をすくめ首を振った。

 

 

「ハリーは許可されてないし、透明マントも吸魂鬼は効かないのに、どうやってここに来たんだろう……」

  

 

 セドリックが眉を寄せながら呟く。セドリックは監督生であり、優等生だ。とはいえ人からの伝聞で「ハリーの首がホグズミードにいた」と先生に報告するような真似はしない。……まあまあ校則を破ることに寛大だし。

 

 

「クラッブとゴイルは叫びの屋敷の恐怖のあまり幻覚を見た。──って事でいいんじゃね?」

 

 

 俺はドラコの隣に並び、叫びの館を見ながら軽く言う。ドラコは片眉を上げたが頷き、セドリックはまだ納得できていなかそうだったが、渋々頷いた。

 

 

「ドラコも、こうして話すのは久しぶりだな」

「ああ……そうだな」

「……なんか、疲れてる?」

 

 

 ドラコは薄く笑い、少しどんよりとした空を見上げて「そうだな」と呟く。

 うーん、顔色が悪いわけではないし、ハーマイオニーみたいに大量の宿題に追われているわけではないだろう。

 

 確か、そんなに選択科目は多くなかったはずだ。ドラコが精神的に追い詰められるような出来事なんて──あったか? と考えつつドラコの顔をじっと見ていると、ドラコは俺の視線に気づいて困ったように笑った。

 

 

「……僕はスリザリン生で、ハリー達はグリフィンドール生だ。……僕は、スリザリンの素晴らしさや、彼らの良さも十分理解している」

 

 

 十三歳が言うには大人びた、淡々とした言葉だった。セドリックはドラコが何を思っているのかすぐに察し、心配そうな顔で黙って聞いていた。

 

 

「この体に流れる血を、僕は誇りに思う。……だが、それは純血であれ、半純血であれ──マグル生まれであれ、同じはずだ。どの血にも、歴史があり、先祖達の想いがある。……だが……」

 

 

 ドラコはふっと頭を垂れ、肩をわずかにすくめるようにしてぬかるんだ地面を見下ろした。雪解けの水が茶色く靴の縁を染めても、彼は気にも留めず、足先で泥を静かにかき回していた。

 

 

「……スリザリン生で、同じ思想を持つ者はいない。純血の彼らは自分たちこそが優れていると疑わない。……僕はそれを否定することはできない。……たまに、窮屈になる時がある」

 

 

 疲れたように息を吐くドラコの前髪がはらりと流れた。

 ドラコが一年生の時に、純血主義は持っていないと俺に言ってくれた。それは、俺に出会った事がきっかけであり、ハリー達と仲が深まるにつれその想いが強くなったのだろう。

 でも、ドラコはマルフォイ家の唯一の男子だ。親のことも好きで、スリザリンの奴らのことも好き、ハリーや俺のことも勿論好きなドラコは、色々苦しいんだろうな。

 友達が友達の悪口言ってるようなもんだしなぁ。

 ドラコが無言で足元の泥をぴちゃぴちゃと跳ねさせている音だけがなっていた。セドリックもなんと声をかけていいのかわからないようで、言葉を詰まらせている。何を言っても、ドラコの現状を大きく変えることは不可能だしなぁ。

 ……あと数年後もっとやばくなるしなぁ。

 

 

「ドラコ。もし耐えられなくなったら、いつでも俺に言えよ?」

「……」

 

 

 ドラコが俺を見上げる。長いまつ毛がふる、と一度だけ震え不安げな目を隠した。

 

 

「俺は、お前が少しでも楽になるなら──世界征服だってしてもいいんだぜ?」

 

 

 半分本気、半分冗談で言えばドラコは目を見開いて驚き、「素晴らしい世界になるだろうな」と言って笑った。

 

 

「ノアが頂点……魔法大臣か?」

「政治はなぁ。俺そんなに頭いいわけでも無いし。──でも、俺は人の心を動かすの、世界一得意だから」

 

 

 割と、本気で俺が目指す──そこそこ平和なエンディングはそれだったりする。

まだしっかり考えてはいないけど、俺の影響力──魔力をもってすれば、民衆の心なんて簡単に擽れるし。

 

 

「ありがとう、ノア」

 

 

 そう言って笑って、ドラコは顔を上げて遠くに見えるホグワーツ城を目を細めて見つめていた。

 ドラコは完全には元気になっていないが、それでも幾分か気は紛れたようだ。

 

 

「……そういえばさ。スリザリンでノアとかマグル生まれの扱いってどうなってるの?」

 

 

 セドリックは垣根に手をかけながら、ふと思いついたようにそう言った。

 俺の扱い?と首を傾げていると、ドラコは少し考えて口を開く。

 

 

「まあ、今までよりはマグル生まれに対する差別は軽減している、と思う。みんなノアがマグル生まれだと知りながら憧れ、惹かれることを止められない」

「あの蔑称も禁忌扱いだし、スリザリンにもノアのファン多いもんね」

 

 

 セドリックが納得して頷く。確かに穢れた血って言ってる人ほとんどいないもんな。廊下とかでも、スリザリン生がマグル生まれにちょっかいかけて呪ったりとか──そういえば見たことないし。たまたま、俺の前でしてないだけかもしれないけど。

 ドラコは頷き、垣根に腕を乗せ俺を見つめる。

 

 

「ああ。だが──多分、ノアは別格なんだ。血統とか、歴史とか、そんなもの、ノアの前ではどうでもいいと思ってしまう。全てを捨ててでも、近づきたいと……」

 

 

 掠れたその言葉は、少し危険な色を見せていた。ぼんやりとした目で俺を見つめていたが、セドリックが「ドラコ?」と心配そうに囁き、その肩を揺すった途端、びくりと体を跳ねさせ、瞬きを繰り返した。まるで夢から醒めたように顔を振る。

 

 

「と、とにかく。ノアはマグル生まれの中でも特別なんだ。マグル生まれを毛嫌いする人たちも、ノアは別だと言っている」

「なるほどなぁ」

 

 

 俺の存在でマグル生まれの地位が爆上がりするわけではないか。少しはマシになったとはいえ、スリザリンの連中は色々親に言われてるのかな。

 なかなか難しい問題だな、と思っていると、何かを考えていたセドリックは「それってさ」と呟いた。

 セドリックは、たまたま思いついた言葉が口に出てしまった。と言うような表情で目を瞬く。

 

 

「その子達も、ドラコみたいに親や周りに遠慮して表立って『血統なんて関係ない』って言えないだけで、本当はどうでもいいと思ってたりしないの?」

「……え?」

「……だってさ、本当の純血主義なら、ノアがどれだけ格好よくても、拒絶するはずじゃない?」

 

 

 セドリックは当然のようにさらりと言った。

 

 

「ノアだけ別だなんて──それ、変だよ」

 

 

 まさに、晴天の霹靂。目から鱗。

 と言うように、ドラコは目と口をぽかんと開けていた。

 確かに、純血主義──というか、ドラコみたいに自分の生まれに誇りがある者は多いだろう。その上で、俺がいる事によりマグル生まれでも純血でも、別にいいか、と考えるようになってもおかしくない……か?

 

 ルシウスとかは、やっぱ俺がマグル生まれだと知ると若干気まずそうだったりよそよそしかったりするもんな。大人だから表立って態度に出さないだけで、心から俺を許さないし踏み込めさせない雰囲気がある。

 ナルシッサは、あれは俺の顔ファンだな。

 

 今はヴォルデモートがいない、その脅威を知らない世代だもんな。

 親達の意見は違っていても、今の世代の子どもたちは芸能活動とか歌手とか、まあゴシップな話は大好きだし、女子なんか特に流行に乗り遅れまいとよく雑誌開いてる。

 その雑誌の表紙はほとんど俺で、俺が着ている服が世界のトレンドになり、俺の発言で莫大な金や思想が動く。──それくらいの影響力はあるんだよな。

 

 

「聞いてみたら?意外と……同じ考えの子、多いと思うよ。スリザリンの子で、ノアと距離取ってる子、見たことないし」

「そんな──まさか──そんなふうに考えたこと、なかった」

 

 

 ドラコの声は、ひどく小さかった。

 かなり動揺しているが、それでも目の中に微かな希望が見えている。

 

 

 今はまだヴォルデモートが世界にいない。

 ただ、来年の終わりには復活する予定だし──その後、ドラコの精神的ストレスがやばくなりそうだな、と心配はしていた。

 だが、もしドラコ以外に、ドラコのようにマグル生まれを許容するスリザリン生の純血の子がいたら。

 きっと、その事実はこの先のドラコの支えになるだろう。

 

 

……今までその考えはなかった。ドラコ以外のスリザリンキャラに興味なくて交流する気もなかったし。俺にとって、他の奴らはその他大勢でしかなかった。

 でも、確かに──今、その子達の思想をこちら側に引き込んでいたら、未来は大きく変わるんじゃないか?

 ドラコは孤独ではなくなるし、それに──。

 

 純血主義でなくなれば、ヴォルデモートの考えに陶酔することはない。

 親に言われるがまま、死の恐怖に怯えて死喰い人になったとしても、たとえ表向きは純血主義だと見せるとしても。ホグワーツという狭い世界では同じ思想を持ち、強い絆で結ばれていれば……彼らは俺たちと──ハリー達と、同じ方向を見て、同じ敵を持つ。

 

 将来、ホグワーツでの戦いが起きてしまった時。スリザリン生も杖を持ち戦うことができる。

 

──そんな想像もしなかった未来が、来るかもしれない?

 

 

「……セド、お前ってやっぱ最高だ」

「え?……ありがとう?」

 

 

 にやり、と笑った俺にセドリックは不思議そうにしながら礼を言った。

 

 

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