兄・子世代ifチート能力を駆使して転生人生謳歌します! 作:八重歯
セドリックの一言にヒントをもらった俺は偶然を装って純血主義を掲げている一族の子どもたちに近づいた。確かに、純血主義のわりに俺のファンらしい奴が多いし、話しかけたら全身で喜びを表現してくれている。これは本気で彼らの思想なら変えれそうだな、と思い──数ヶ月かけて、ゆっくりと導いていった。
多分、あいつらは俺が手のひらでコロコロしたなんて思ってもないだろうな。バレないように気をつけたけど。
もしかしたら、あいつらの思想を変えたことで将来──苦しみ悩むこともあるかもしれない。信念とヴォルデモートの板挟みとかになって。ま、でもそれは仕方のないことだし。俺にとって数年後のドラコが生きやすかったら別にいいや。
……あーでも、ヴォルデモートの復活が確定したら、スリザリン生に閉心術を教えてほしいってセブルスに頼もうかな。
そうこうしている内にイースター休暇になり、試験に備えて山のように課題が出されてしまった。
さらに、差し迫った試験の重要性を強調するようにハッフルパフ寮の机の上には魔法界の職業を紹介する冊子やチラシなどが積み上げられた。
掲示板には『イースター休暇が明けた最初の週に寮監と短時間面接し、将来の職業について相談すること』と掲示が貼られ、五年生の誰もがそろそろ本格的に将来の職を考え始める。
寮全体がどこかそわそわしている。
誰もが将来に目を向ける中で、俺たちも例外ではなかった。
俺たち四人──セドリック、フレッド、ジョージ、そして俺は、例によって隠し部屋にこもって課題と格闘していた。もう山みたいに積まれたそれをなんとか崩しながら、当然のように話題は未来のことへと流れていった。
「みんなさ、将来の仕事とか……もう決めてる?」
口火を切ったのはセドリックだった。いつもの真面目な顔より、ほんの少し気を抜いた表情で。俺はというと、魔法薬学の課題に飽きて羽ペンをくるくる回しながら顔を上げた。
フレッドとジョージも休憩できるのならなんでもいいや、と思ったのか手を止め軽く腕を伸ばしながら「そうだなぁ」と呟いた。
「俺たち、二人で悪戯専門店を共同経営しようと思ってるんだ」
「ゾンコみたいな?」
「ゾンコよりも刺激的なやつさ」
フレッドとジョージはニヤリと笑う。セドリックは「悪戯専門店かぁ」と感慨深そうに呟き、頷いた。それ程驚かないのは、簡単にそれを想像できるからだろう。
「色々作っててさ、もう少し形になってきたらマーケティングするつもり」
「在学中にターゲット調査し放題だしな。生の声って貴重だぜ?」
実際、二人はゾンコで購入した悪戯グッズを改良したり、改悪したり。自ら悪戯に使えそうな魔法や道具を生み出しているのだ。商品化されそうなネタも山ほどあるのだろう。
「ノアとの写真の売り上げが安定してるしさ」
「ま、ホグズミードかダイアゴン横丁に店を出すなら──金は幾らあっても困らないんだけどな」
「あー。どっちも高そうだもんね。一等地だし」
セドリックは苦笑した。
二人は深く頷きながら、少し真剣な表情で俺を見る。
「だからさ、ノア」
「俺たちが店を出したら──ちょっと宣伝してくれないか?」
「宣伝、ねぇ。PR案件ってことか?言っておくが俺、高いぜ?」
俺はニヤリと笑い、ちょいちょいと二人を呼んだ。
身を乗り出して顔を近づける二人に、一年間ノア・ゾグラフを広告塔として起用する金額を伝える。
真剣な顔をしていた二人は「げっ」と小さく呻くと、難しい顔をして黙り込んでしまった。
「……パッケージ起用は?」
「内容によるけど──」
「……ああー……まだ現実的だな」
渋い顔はしつつも、商品のパッケージ起用ならばまだ払えなくもなさそうだ。と悩むフレッドとジョージ。
俺はテーブルにあったクッキーをつまみつつ、背もたれに肘を預けて余裕の笑みを浮かべる。
「ノア・ゾグラフは、イギリスの顔だぜ? それに俺を使いたいって企業は山ほどいる。年々ギャラも跳ね上がっててさ。ちなみに俺、今までアンバサダー契約もイメージキャラ契約もしたことない。一社と契約しちゃうと、他は無理になるだろ? だから各社が待遇競い合ってんの」
完全に黙りこむ双フレッドとジョージ。
セドリックも俺と二人を交互に見て、「……すご」と引き気味に呟いた。
部屋にしんと沈黙が落ちたところで、俺は満面の笑みで、ちょっとだけ声を弾ませる。
「ま、世界一のモデルのノア・ゾグラフじゃなくて──お前らの友達、ノアとしてなら」
「うん」
「俺の願いをひとつ叶えてくれるんなら、やってもいいぜ?」
「えっ!?」
「まじで!?」
身を乗り出し、素っ頓狂な声を上げる二人。なんだかそんな二人の表情が面白くて声を上げて笑えば、二人は目を瞬かせた。
俺は咳払いを一つすると、両肘をテーブルにつけ、組んだ手の上に顎を落とした。口元は隠れていたが、目だけでじっと見つめて、わざとらしく深刻そうな顔を作る。
フレッドとジョージは一度ニヤリと笑ったあと、同じようにわざとらしい程の真剣な顔を作った。
「……俺さ、卒業したら、ちょっとした組織を作ろうと思ってるんだ」
「組織?」
「ワォ。なんか、怪しい響き」
俺は笑って、少しだけ声を低くした。
「仲間を集めたいんだ。優秀で信頼できて──それで、強くて、楽しくて、そういう人たちの集まり。で、お前らもそこに入ってほしい。フレッドとジョージだけじゃなくて、セドも」
「いいぜ?」
「問題ないな」
フレッドとジョージは即答だった。拍子抜けするくらい。
俺があまりにお遊びのような雰囲気を出しているからかもしれないが、それにしても即答すぎないか?
二人は笑いながら、お互いの肩をぽんと叩き合った。
その時、セドリックが小さく咳払いをした。
「ノア、それって……どんな同盟なの?」
真っ直ぐな目だった。おふざけでも、お遊びでも無い、セドリックらしい真剣な目。
俺は少しだけ視線を逸らして、天井を仰いで考えるふりをした。
「うーん、そうだなあ……」
その間に、言葉を選ぶ。
全部は言わない。まだ、ヴォルデモートは復活していないし、戦争は始まっていないから。──でも、何も言わないわけにはいかない。
「──『マグル生まれの地位を上げよう同盟』みたいなもんかな」
そう言ってから、俺はふっと笑った。
ふざけてるようで、どこか本気の笑い。
双子が「なんだそりゃ」と肩を揺らして笑い、セドリックは少し目を見開くと、すぐに「いいね」と笑った。
「セドリックは将来どうするんだ?」
ジョージがセドリックに聞いた。
セドリックは確か、クィディッチ関係の仕事をしたいって言ってたよな。
セドリックは「うーん」と少し言葉を濁した。
「前まではクィディッチ関係の仕事に就きたいと思ってたんだけどね……でも今はちょっと考え中。何でも選べるように勉強しておこうって感じかな」
セドリックは苦笑しながら魔法薬学の教科書を撫でた。──へえ、意外だな。優等生のセドリックはもう将来の夢決まってると思ってた。
フレッドとジョージも意外そうな顔をしていたが、流石に将来の話を茶化す事はなく「まだ後二年もあるしな」と軽く笑ってセドリックの肩を叩いた。
「ノアはこのままモデルだろ?」と聞くフレッドに「そうだな。暫くはそのつもり」と答える。
正直、もう一生働かなくてもいいくらいの金はある。けど、原作が完結するまでは一応世界的美少年の看板は下ろさないでおこうと思ってる。知名度とコネは資産だ──敵より先に使いこなせば武器になるし、な。
それから暫く雑談した後、セドリックの「そろそろ課題進めようか」の一言で、俺たちは再び課題と格闘する事になった。