兄・子世代ifチート能力を駆使して転生人生謳歌します!   作:八重歯

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152 二人の代表選手

 

 代表選手になり数日もすれば、生徒たちの興奮や、俺を応援する過度な声援も落ち着き出した。まあ、校舎内に「ハリーよりもノアが優勝してほしい」という空気が漂っていないわけではない、俺の方がファンが多いしそれは仕方がない。

 

 ハリーに嫌がらせを目論んでいた過激派にはこの美貌を駆使し、さりげなく悲しそうに見て心を痛めた演技をした。それとなく「ノアはハリーとフェアな試合を望んでいる」とフレッドとジョージを使って噂を流せば、過激派もハリーに手を出すことはなく、とりあえず見守る事にしたらしい。開心術でチェック済みだ。

 

 とはいえ、生徒のほとんどは原作のように「汚いぞポッター」のバッジ──ではなく、「ノア様応援団」と言う灰青色のバッジをつけている。……これも、生徒のほとんどが俺のファンだから仕方がない。

 誰が魔法をかけてつくったのか、「ノア様応援団」の文字が点滅したあとは、俺が現れてひらひらと手を振り、なんと投げキッスまでする仕様だ。

 投げキッスしたのは、たぶん昔の写真撮影だったと思うけど……どうやって今の俺の姿にしたんだろ。肖像画の魔法混ぜてるのか? それとも変化魔法の応用?

 

 無駄に出来のいい──熱狂的ファンが作るグッズはだいたいプロレベルなものが多い──それは、寮監のスプラウトも持っている。……さすがにローブにつけたりはしてないけど、時々ポケットから出してはぽーっと見つめている姿が目撃されている。

 スプラウトだけじゃなくてボーバトンとダームストロングの生徒も、つけはしないけどこっこりと持っていた。俺の魅力は世界各地に広まってるし出来のいいグッズだから、仕方がないな。

 

 

 ハリーは俺のバッジをつける生徒に囲まれてさぞ居心地悪いかな、と思って、ハーマイオニーと二人で廊下を歩くハリーを見つけ励まそうと声をかける。

 

 

「や、おはよー」

「おはよう、ノア」

「おはようございます」

 

 

 振り向いた途端、ハーマイオニーはぴんと背筋を伸ばし頬を赤く染めた。

 ハリーも嬉しそうにしたが、いつも通りの表情でめちゃくちゃ気落ちしている、という風ではない。

 ちょうど隣を派手に点滅するバッジをつけている生徒たちがこちらをチラチラ見ながら通り過ぎていき、ハリーもそれをなんとなく目で追っていたが……不思議と表情は変わらない。

 

 

「どうしたの?」

 

 

 俺の不思議そうな顔を見て、ハリーが首を傾げる。うーん、気にしてないなら改めて言わなくてもいいとは思うけど……。

 

 

「……いや、ほら。俺のバッジつけてる生徒が多いだろ? だから──」

「ああ! このバッジの写真、ノアが三年生の時のハロウィン商品のパッケージの時のポーズを、今の年齢に変化させてるよね。すっごく良いと思う!」

「──……んん? ハリー、お前も持ってるのか?」

 

 

 “この”という言葉と共にハリーが鞄の中に手を突っ込みごそごそと探りだした。まさか持ってるのか、と聞いてみればハリーは鞄を見ながら「うん」と気軽に頷く。

 

 ようやく見つかったのか、ハリーが腕を引き抜いた時、その手に上等そうな革袋を掴んでいて、そっと紐を緩めて掌の上に出されたバッジは──三つだった。

 

 

「三つも?」

「あれ、気付いてなかったんだ。これ三種類あるんだよ! 両手を振ってくれるやつと、ウインクしてくれるやつと、最後にペロって舌を出すやつ」

「……へ、へえ……」

 

 

 いやいや。

 手を振ったり投げキッスとかウインクはいい。今の見た目でしてもまあまあサマになる。

 舌ペロは男の娘な外見だから許されたんであって、今の美青年の俺がやったら痛々しいだろ!

 

 

──と思ったが。

 

 

「……いや、まあ美形は美形か……」

「もちろんだよ!」

 

 

 世界一の美形は何をやっても美形だ。

 普通の成人魔法使いがやったら痛々しいかわい子ぶったポーズも、完璧に美しくて神々しさすら感じる。

 

 感心していると、ハリーがそのバッジをまた丁寧に袋の中に戻しながら「そういえば」と俺を見た。

 

 

「昨日、シリ──えーと。パッドフッドに手紙を出したんだけど、何か届いてない?」

「手紙? ……なんで?」

 

 

 シリウスに手紙を出す用事なんかあったか、と首を傾げると、ハリーとハーマイオニーは驚いたように目を瞬かせた。

 

 

「ノアさん! まさかご家族に連絡してないんですか?」

「なんの?」

「なんのって……代表選手になったって事だよ!」

 

 

 二人の声が重なり合う。「信じられない!」という呆れと驚きが同じ色を帯びていた。

 ああ、そっか。普通はホグワーツの代表選手になれたなら、親に喜びの連絡するものか。

 まだ日刊預言者新聞では三校対抗試合の事が書かれてないから、クィレルとかは知らないよな。……メイソンにも一応伝えとくべきかな。もし代表選手だって世間に知られたら契約先がこぞってインタビューやタイアップを持ち込んできそうだし。

 

 

「あー。ハリー、俺のことも手紙に書いたのか?」

「うん。僕が……自分で入れてないのに選手になったってことと、ノアも選手だって書いたよ」

「じゃあいいや。伝わってるだろ」

「うーん……それもそうだね」

 

 

 ハリーは俺の“家族”が誰かを知っているから、「ノアが気にしないならいいか」と頷くが、ハーマイオニーは視線を彷徨わせ、眉を下げ、おずおずと口を開いた。

 

 

「あの……ノアさんから言った方が、お義父さん喜ぶんじゃないですか?」

 

 

 その言葉にハリーは見るからに嫌そうに眉を寄せ唇を引き結ぶ。ハーマイオニーは俺の義父が誰かを知らないから、善意でこう言ってくれてるんだろう。

 

 

「うーん。まあ、考えとく」

「はい、絶対喜ぶと思います」

 

 

 ハーマイオニーは頬を赤く染め、真剣な顔で何度も頷いていたから、ハリーの不機嫌そうな表情には気が付かなかった。

 

 

 

 

 早めに変身術の教室へ向かい、壁を背にしてその場にしゃがみ込む。

 

 鞄をさぐって羊皮紙と羽ペンを出し、羽で顎を撫でつつ真っ白な羊皮紙を見下ろす。

 三校対抗試合の代表選手になった事と、ちょっとギリギリ犯罪じゃない方法で誕生日を誤魔化した事も書かないとな。事務所から出てる俺のプロフィールは一月十一日になってるし。それの違いに突っ込むファンは多そうだ。ホグワーツと同じく、親が物心つく前に殺されて孤児院暮らしだったから明確な誕生日がわからなかった、誕生日イベント系はこのまま一月十一日にする。──他に何か書く事あったかな。

 

 鞄を魔法で板にして、手紙を書いていると、ふっと視界に影が落ちた。

 

 

「何してるんだい?」

「ん?」

 

 

 顔を上げると、セドリックが不思議そうに立っていた。廊下の向こうでは数占い学を終えた生徒たちが教室から出てくるところだった。

 

 

「手紙。事務所に選手になった事伝えておいた方がいいかなって思ってさ」

「え、言ってなかったの? とっくに言ったと思ってた……」

 

 

 意外そうに眉を上げると、セドリックは鞄を持ち直し、俺の隣に腰を下ろした。

 視線は手紙には向けず、鞄の中を探って変身術宿題を取り出す。もう何度も見直したはずの宿題を、また確かめている。

 

 

「教室の中、入ろうぜ」

 

 

 しゃがみ込んでたら腰が痛いし。

 魔法を解除して鞄に戻し、書きかけの手紙をくるくると丸めて入れる。立ち上がって腰に手を当ててぐっと伸ばせば、セドリックはぱちり、と一度瞬きをして俺を見上げた。

 

 

「あれ。誰か待ってるんじゃないの?」

 

 

 その言葉に、思わず笑ってしまった。

 手を差し出せば、セドリックは少し驚いた顔をしたあと、素直に手を取った。

 

 

「お前以外に誰がいるんだよ」

「え? あ、そっか……」

 

 

 立ち上がったセドリックは、一瞬だけ繋いだ手を見下ろした。照れくさそうに、けれどどこか楽しげに笑ってから、ぱっと離す。

 

 

「ノアって、意外と友達少ないよね」

「そうか?」

「うん。ハッフルパフでは、僕だけじゃない?」

「え? あー……」

 

 

 そう言われてみれば。

 クィディッチチームメンバーとかは、まあ顔を合わせれば少しは話すけど、そのぐらいだ。他の同級生にしてもそのレベルだし、原作でもハッフルパフ生ってあんまり……目立ってなかったからなあ……仲良くなりたいって思う奴もいないし。

 

 

「他も、フレッドとジョージくらいじゃない? ハリー達はまた別としてさ。よく考えたら、ノアが素で話してるのってあんまり見たことない。いつも“モデルのノア”でしょ?」

「……そう言われれば、そうかもな」

 

 

 思わず苦笑した。無意識に作り笑いしてるのは自覚してる。あんまり他のやつと仲良くなる気もないし、この学年で“こいつと友達になりたい”って思うやつもいないんだよな。

 

 

「……そういうセドも、俺以外友達いるのか?」

「うーん。授業で話したり、ペア組んだりはするけど……本当に気楽に話せるのはノアだけかな」

 

 

 セドリックはあっさりと言うと、柔らかく微笑んだ。

 廊下の奥から生徒の笑い声が響いているのを聞きながら、俺は肩をすくめる。

 

 

「ま、だいたい同じ部屋の奴らで固まってるしな」

「それもそうだね」

 

 

 セドリックはくすっと笑って、扉に手をかける。開けながら、ふと振り返ってきた。

 

 

「……ノアと二人部屋でよかったよ」

 

 

 わざとからかうみたいな口ぶりだけど、目は冗談だけじゃない感じだった。

 どういう意味か聞こうとして──やめた。

 

 俺は黙って肩をすくめ、セドリックの後ろをついて扉をくぐった。

 

 

 

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