兄・子世代ifチート能力を駆使して転生人生謳歌します! 作:八重歯
変身術の授業が始まり十分ほど経った時に、見覚えのない下級生らしいハッフルパフ生が緊張した面持ちで教室の中に入ってきた。
マクゴナガルの厳しい視線に怯えつつも、背を屈めながら早歩きで教壇まで行き、マクゴナガルにこそこそと耳打ちをする。
なんだろ。なんかあったっけ?
何やら伝え終わった下級生は、俺をチラチラと見つつ耳まで赤く染めながら、また早歩きで出て行ってしまう。
全員の不思議そうな視線を受けたマグゴナガルは教科書を杖で軽く叩きながら俺を見た。
「ゾグラフ。代表選手達は今から写真撮影があるそうです。部屋はちょうどこの下の部屋、今すぐ向かいなさい。時間がかかるかもしれませんので、荷物も持っていきなさい」
「わかりました」
そんなのあったっけ。
と思ったが深く考える事はなく教科書やノートを片付ける。生徒たちの羨望の視線に軽く微笑みのサービスを返しながら、セドに「後で」と小声で伝え、言われた通り下の階の部屋へ向かった。
扉をノックし「失礼します」と言いながら開く。
その部屋は変身術の教室より狭かった。机は端の方に追いやられていて、真ん中に大きな空間ができている。
黒板の前にはビロードの布がかけられた机が三卓並べられ、奥には椅子が五脚並んでいた。
椅子に座る事なくあいた空間で立っていたフラーは、俺に気づくとパッと表情を明るくさせた。
「ノア! なんだか久しぶりですね」
フラーはブロンドの髪を手で払いながら、弾むような声音で言う。窓から差し込む光を受けてブロンドがキラキラと輝くが──いや、俺も負けてないからな。なんて小さな対抗心。
「そうか? ってフラー、どこのシャンプーつかってる? マジでサラサラだよな」
「わたし、フランスのものです。こっちにはないです」
「そうか。残念だな……」
手を伸ばし、そっと髪に触れる。……俺の髪より細いし、柔らかい感じだなあ。
手触りもいいし、これ維持するの大変そう。いいメーカーのやつなら取り寄せようかな……。
「ノ──ノア……」
「ん?」
「あ、あー……その……」
フラーのさらさら髪を触っていると、フラーが視線を彷徨わせしどろもどろに呟く。
真っ白な肌が淡く色づいているし、目は潤んでるし、耳やうなじまで真っ赤に──……はっ!!
「ごめん。女の子にするもんじゃないな!」
ぱっと手を離し、フラーと距離を取る。
フラーは恥ずかしそうに頬を押さえながら「い、いえ」と小さく首を振り、悩ましい目で俺を見上げる。
お、俺に惚れるなよ!?
フラーはビルと結婚するんだろ!? まあ、俺は少年少女の一目惚れを奪っても仕方がないレベルの美貌だけど、昔と違ってフラーも俺もいい歳で、もうなんか意味がかわってくるから!
髪を触ったのは、流石に無遠慮すぎた。
周りに年下多かったし、頭撫でたりよくしてたから──去年はシリウスの毛並み撫でるの癖になってたし……ついでに言えばフラーの髪の毛綺麗だったし! 変な意味はないんだ、まじで。
「シャンプーと、トリートメント、今度プレゼントします」
「え、いいのか?」
「はい。……その、ノアはどこのを使ってますか? こうかん、しましょう!」
フラーは目を輝かせ、期待を込めた目で俺を見る。
……いや、俺のこの天使の輪ありの艶髪は自前なんだよな。普通にホグワーツの風呂場にある備え付けのやつ使ってるし……。あ、でも家ではクィレルがなんか良い匂いのやつ俺専用で用意してたな。あれをおすすめしとこ。
「うん、いいぜ」
「! あ、ありがとうございます!」
第一印象は氷のように冷たいものだったフラーも、俺の前ではただの可愛い女生徒である。
フラーの妹の話を聞いていると、扉が開き、クラムが入ってきた。クラムも俺を見て、ほっと表情を緩める。
「ノア、フラー。こんにちは」
「やあ」
「こんにちは」
こんにちは、にはかなり遅い時間だったが、フラーも俺も気にしなかった。
写真撮影があるからか、クラムは赤いローブの上に黒い毛皮のコートを羽織っている。ホグワーツの城の中は暖房魔法、かなにかで温められているからか、暑いのだろう。額に滲んだ汗を拭き、写真撮影がすぐに始まらなさそうだと知るとコートを脱ぎ丁寧に畳んだ。
「ノア。明日の昼休み、空を飛びませんか? 僕、あー。クィディッチはしません、少し飛びたいんです」
「いいぜ、暇だし! 多分競技場空いてるだろうし──セドリックもいい?」
「もちろん。他に誰でも大丈夫です」
「ん。適当に声かける。一応俺の寮監に競技場使う事言っておくよ」
「はい! ありがとう!」
クィディッチのプロ選手であるクラムは、空を飛べない事でフラストレーションが溜まっているのだろう。ここはダームストロングでもないから勝手に競技場行ったりするわけにもいかないし。
後数時間で空が飛べるとわかると、クラムは目を細め子どものように嬉しそうに笑った。
「箒持ってきてる?」
「あります、船に」
「オーケー。……あ。そうだ、あのさ。俺の写真集のオフショット売ってるの知ってる?」
「もちろんです」
二人に向かって聞けば、クラムは大きく頷き、フラーも「購入してます」と即座に言った。
おお、それなら話は早そうだ。
「今年、一緒にいることがあると、オフショット写真に写っちゃうかもしれないんだ。雑誌掲載が嫌なら載せないようにする。雑誌掲載料は出るけど──」
「大丈夫だ」
「大丈夫です」
「──ありがとう」
食い気味に許可を出した二人に礼を言えば、二人ともなんて事はないと軽く笑った。
談笑していると──話題はそれぞれの学校や母国についてがほとんどで、対抗試合については触れなかった──バグマンと一人の魔女が入ってきた。
バグマンは俺たちに気付くと人当たりの良い笑みを浮かべ、旧友にあったかのような気楽さで手を挙げた。
「やあノア! それにクラム、フラーも元気──」
「まあまあ! ノア! 久しぶりね、元気だった?」
俺に弾むように近づいていたバグマンを押し退けた──バグマンはよろめきクラムの方へ倒れたが、クラムががっしりと支えた──のは、日刊預言者新聞の記者のリータ・スキーターだった。
派手な赤紫色のローブに、宝石で縁が飾られたメガネ、ワニ革のハンドバッグに真っ赤な爪。髪は記者らしく丁寧にセットされ巻かれていて、キツそうな顔とアンバランスで、どこかチグハグな印象を与える。
そんなリータは期待顔で俺を見る。まあ、リータはこのセ世界で初めて俺を取材しただけじゃなくて、その後も日刊預言者新聞で独占記事をまあまあ書いてる。俺専用新聞あるらしいし……。
リータは“ノア・ゾグラフに関する記事を曲解せず正確に書く”と“約束“してるから、俺にとってはある程度信頼している記者の一人、でもある。
中には俺のゴシップ記事で、たまたま撮影現場で一緒になったモデルとあることないこと書きまくってる下世話な記者もいるし。そんな奴らに比べたらマシ。──他の奴らへの記事は多分誇張表現しまくりだろうけど。
「お久しぶりです。──今回の記事、リータが書くんだ?」
「ええ、ええ! そうなの、今回もよろしくね」
リータはバチコンと俺にウインクをする。視界の端でクラムとフラーが嫌そうに表情を顰めるのが見えた。
「では早速──」とリータはワニ革の鞄から商売道具を取り出そうとしたが、バグマンがわざとらしく咳をこぼしたのを見て、片眉を上げて「なんだ」とばかりにバグマンを見て手を止めた。
「リータ、全員揃うまで待ってくれないかな」
「そうね……まあそうした方がいいでしょう」
リータ的には、俺の知名度と同等のハリーへの記事も長く書きたいのだろう。二つ返事で頷き身を引いた。
その時、扉が開きハリーが顔を覗かせた。
バグマンはハリーの登場に嬉しそうに「やっと来た!」と声を上げ、弾むように近づき、驚くハリーの腕を引き無理やり中央へ引っ張った。
「四人目の代表選手がようやく来た! なに、心配することはない。ほんの杖調べの儀式をするだけさ。他の審査員も間もなくくるだろう」
「杖調べ?」
ハリーは何気なくバグマンの手を振り払い、そっと俺のそばに立つ。聞きなれない単語に不安そうにしているが、不可解そうな顔をしているのはハリーだけではない。俺も写真撮影があるとしか聞いてなかったし、表情を見るに、フラーとクラムもそうらしい。
「ああ、君たちの杖が万全の機能を備えているかどうか、調べないといけないんだ。なにも問題がないように、とね。これからの課題には最も重要な道具だから。
専門家が今、上でダンブルドアと話している。それから写真を撮って、リータ・スキーターさんが日刊預言者新聞に記事を書くから、軽くインタビューをする」
バグマンはリータを指しながら言い、リータはにんまりと笑い胸を張りながら進みでる。
「儀式が始まる前に、ハリーとちょっとお話していいかしら? だって、最年少の代表選手でしょう? 少し、盛り上げるためにね?」
「いいとも!──彼はどうする?」
バグマンは俺の方を見る。リータは満面の笑みを少し強張らせたが、それも一瞬で「ノアは後で、個別でお願いしますわ」と流れるように言った。
……まあ、俺が関わるとリータ好みの”面白い記事”が書けないと思ったのだろう。俺の記事も書きたいが、ハリーとはまた別枠、といったところかな。
「また後でね、ノア。──さあ、行きましょう、ハリー!」
「え、あ──」
ハリーは困惑したままリータに腕を掴まれ、部屋から出て行ってしまった。
「ハリーのインタビューも、まあすぐに終わるだろう。君たちはこっち側に座って待っていてくれ。もうすぐ始まるからね」
バグマンは杖を振り、部屋の奥から椅子を四脚引っ張り出すと扉の近くに並べた。
優雅な動作でフラーが座り、俺を見て、隣の椅子をトントンと指先で叩く。……座れってことだろう。拒絶することもなく座れば、フラーは満足そうににっこりと笑った。
クラムも俺の隣に座り、畳んだ毛皮のコートを足の上に置く。暇そうに部屋の中をキョロキョロと見回しているし、フラーも写真撮影に備え、ポケットから手鏡を出すと入念にチェックしている。
うーん、確かに暇だ。
ってか杖調べとかインタビューとか写真撮影とか、代表選手が決まった初日にすればよかったのに。
俺はくるり、と手を回す。何もなかったところからカメラを取り出した。レンズを自分の方に向けて、ぐっと腕を前に伸ばす。
「フラー、クラム」
「ん?」
「なんですか?」
「笑って──さん、にー、いち!」
──パシャ。
白い光と共にシャッター音が響く。飛び出してきた写真に映る俺とフラーは完璧なキメ顔だったで優雅に手を振ったり髪を後ろに流したりしているが、クラムは驚いた顔で目を丸めぱちぱちと瞬きをしているだけだった。
「う……僕、写真、とくいじゃない」
「あ、そうなんだ? 撮らない方がいい?」
「……撮る」
クラムは気恥ずかしそうにしながらも俺と撮られることに嫌悪感はないらしい。ま、当然だな!
出てきた写真をフラーに「あげる」と渡せば、フラーは黄色い声をあげてぱたぱたと嬉しそうに足を動かしうっとりと写真を見つめ出した。
その間にクラムに近づく。クラムが息を呑み、また強張った表情になっているのを横目にもう一度写真を撮った。
「……お、今度はいい感じ」
今度の写真は、ぎこちなさはあれ、まだマシな写真だった。これもクラムに渡せば、クラムは嬉しそうに表情を綻ばせ、壊れ物を扱うようにな手つきでそっと丁寧に受け取った。
しばらくして、ダンブルドアに連れられて、ハリーとリータが戻ってきた。これでようやく全員が揃ったらしい。
少し前にカルカロフとマクシーム、そしてクラウチが姿を見せていて、バグマンの促しでビードロの布をかけた机の席へ腰を下ろしていた。あそこは審査員達が座る上座なのだろう。
その少し後に、新聞社のカメラマンらしき魔法使いと、オリバンダーが入ってくる。カメラマンは俺たちを次々に撮りながら、新聞の一面を思い浮かべているような顔をしていた。時折、机の向こうに座る教師たちにもレンズを向けていた。
オリバンダーはというと、俺たちを一瞥しただけで、特に感嘆も驚きも見せず、ひっそりと窓際へ近づいた。
リータは部屋の隅に移動し、ハリーは苛立ちと困惑を滲ませ、むっとした表情でクラムの隣─けど空いていた一つの席に座った。
審査員席に座ったダンブルドアは、長くたっぷりとした髭を撫でながら俺たち代表選手に話しかけた。
「さて。オリバンダーさんをご紹介しましょうかの? 試合に先立ち、皆の杖が良い状態かどうかを調べ、確認してくださるのじゃ」
紹介されたオリバンダーは、前に部屋の中央の空間に静かに進みでると、俺達を見て軽く頭を下げる。
「マドモアゼル・デラクール。まずあなたから、こちらに来てくださらんか?」
フラーは軽やかに立ち上がり、オリバンダーのそばに行き杖を渡す。
持ち手がくるりと曲がっていて指を引っ掛けやすそうな杖だ。俺からは何の木を使ってるかなんてわからない、確か芯はヴィーラの髪の毛だっけ。フラーの祖母がヴィーラなんだよな。
「ふぅーむ……そうじゃな……二十四センチ、しなりにくい……紫檀……芯には──おお、なんと──」
「ヴィーラの髪の毛です。私のお祖母様のものです」
フラーはヴィーラの血が混じっている事が誇りであるかのように胸を張り、髪を後ろに流した。
「そうじゃな。わしはヴィーラの髪を使用したことはないが……わしの見るところ、少々気まぐれな杖になるようじゃ……しかし、人それぞれじゃし、あなたに合っておるなら……」
オリバンダーは杖に指を走らせ、傷や凹凸を丁寧に調べた。最後に杖を振り花を咲かせ、問題なく使えている事を確認し深く頷く。
「よし、上々の状態じゃ」
杖先から溢れ出ていた花を摘み取り、杖と一緒にフラーに手渡しながら言う。受け取ったフラーはどこか安堵したように表情を柔らげた。
「ゾグラフさん、次はあなたじゃ」
次は俺か。
立ち上がり、フラーと入れ替わり中央に歩み出る。
ポケットに入れていた真っ白の杖を渡せば、オリバンダーは指先で杖を撫でながら「この杖は、わしが作ったものじゃな?」と声に熱を込めた。
「はい、そうです」
「おお、そうじゃ……よく覚えておる。きみにぴったりの杖はなかなか見つからず……きみのように美しい杖ならば、と思うて試したんじゃったな?」
「そうでしたね」
そう。
俺の杖はなかなか決まらなかった。
この杖を決めるまでに何本試したか覚えてないけど、オリバンダーの店内は扮装地帯みたいになったことだけは確かだ。
「……ヤマナラシの木、軸は神水仙の花弁、34センチ、良質でしなりが良い……神水仙は入手するのが難しい……池の主に飲み込まれそうになったのが昨日の事のようじゃ」
ぶつぶつと呟きながら調べていたオリバンダーは、フラーと同じように簡単な魔法を使う。杖から飛び出た銀色の花びらがひらひらと俺の周りに舞った。
「ふむ、最高の状態じゃ」そう言ってにっこりと笑ったオリバンダーは俺に杖を渡す。俺は軽く頭を下げて受け取り、椅子に戻った。
次にクラム、ハリーと順番に杖を調べて行った。全員の杖に大きな問題は見つからず、儀式の杖調べは滞りなく終わった。
これ、杖の状態が良いかどうか調べるっていうよりも、何か不正はないか調べてたのかもな。これから対抗試合が行われるわけだし。
オリバンダーが部屋の中央から窓際まで下がったのを見て、ダンブルドアが審査員の机からたちあがり、にこやかに微笑んだ。
「みんな、ごくろうじゃった。──さて、次は写真撮影じゃ」
待ってましたとばかりにカメラマンが部屋の隅から進み出す。審査員達も部屋の中央に進み出て、誰がどこに立つか、はカメラマンとリータが指示を出した。
「じゃあゾグラフさんとデラクールさんが中央で──」とカメラマンが言いかけたが、すぐにリータが「ノアとハリーの方がいいわ」と口を挟んだ。結局、俺が中央で左右にハリーとフラー、フラーの隣にクラム、という配置になり、後ろに審査員が立った。……巨大なマクシームだけは画角の問題で座って撮影する事になったが。
その後に個人写真を何枚か撮り──圧倒的に俺とハリーの量が多かった──杖調べよりも時間がかかった写真撮影が終わった後、リータのインタビューになった。
「さて、じゃあまずはノア・ゾグラフ選手から──」
とリータが目を爛々と輝かせ興奮を滲ませながら言った時、授業終了のチャイムが鳴り響く。
遠くから、生徒達のざわめきや扉を開閉する音が響く中、リータはダンブルドアが何かを言う前にくるりとダンブルドアに向き合う。
「すぐに、手短にいたしますわ」
「よろしく頼みますぞ。──もう夕食の時間じゃから、食いっぱぐれることのないようにのう」
ダンブルドアも、インタビューを無しにするつもりはないらしい。リータが満足げに頷き早速カバンの中から羽ペンやノートを取り出す中、ダンブルドアは他の審査員達を引き連れて部屋から出て行ってしまった。
残された俺たち四人はちらり、と顔を見合わせ肩をすくめながら、とりあえず椅子に座り直す。
「さて、ノア・ゾグラフ選手。ホグワーツの代表にハリー・ポッターも選ばれましたが、それについてどう思いましたか?」
眼鏡越しのリータの目がきらりと光る。カメラマンが色々な角度から俺の写真を撮りまくるが、インタビュー慣れしている俺は気にする事なくリータと向き合った。
「課題は危険なものだと聞いているので、まあ……少し心配はしてます。ハリーは俺の友達で、幼馴染なので。怪我しなかったらいいなと思いますね」
「幼馴染? ハリー、そうなの?」
リータは“こんな良いネタは無い”とばかりにノートに忙しなく文字を書き連ね、ハリーを見た。ハリーは何枚も写真を撮られ、少し緊張した面持ちで頷く。
「えーと。はい」
「ノアと戦う事についてはどう思う? 幼馴染として戦える?」
「えーと……どんな課題なのかわかりませんが、ノアよりもすごい魔法使いなんていないので……もし戦う事になったら絶対──あー……多分、勝てないかな……」
弱気なハリーに、リータは片眉を上げ、じっと表情を観察した。嘘は言っていなさそう、と感じたのだろう。でもその内容が“読者受け”しなさそうで、書き方に悩んでいるのだ。
リータには、俺との“約束”があるから嘘はかけない。多少盛れるとしても、だ。
「大切な幼馴染とは戦えないのね? それに、ノアは世界的に有名なモデルだし? 怪我をさせるわけにはいかないって考えてる?」
「えーと。……あーうん、そう……それもあるかもしれません」
インタビュー慣れしてないハリーは、「えーと」を多様し、しどろもどろに応えた。そのあやふやな答えに、リータはどこか満足そうに口先を引き上げる。まあ、あやふやな答えの方が十分な“色”をつけやすいから、だろう。
「ノア、あなたは世界的なモデルとして、すでに十分な名声がありますね。──つまり、三校対抗試合にでなくても十分魅力的だということですが──その上で、なぜ立候補をしたのですか?」
リータの目が再び俺を見る。
「そりゃあ──」
セドリックを死なせないため。
だけど、それを知っているのは俺だけでいい。
「──世界一勇敢で優秀な魔法使い、という名声も欲しくなったんですよ」
足を組み、完璧な笑顔を見せる。
リータが息を呑み、カメラマンが狂ったようにシャッターを切り、ハリーとフラーとクラムが感嘆の息を漏らした。
「俺は、世界一美しくて最強の魔法使いなんです。──ここ、絶対使ってくださいね」
俺に見惚れて手を止めてしまったリータに、茶目っけたっぷりな笑顔で言えば、我に帰ったリータは何度も頷き「え、ええ! もちろんよ」と言いながら羽ペンを走らせる。
クラムとフラーもハリーと同じように俺と戦う事についてどう思うかを聞かれ、それぞれ「光栄に思います」や「がんばります」と当たり障りなく応えていた。
それぞれのインタビューが終わり、リータは書き連ねたノートをペラペラとめくり、満足げに頷くと「いいでしょう」と切り上げる。
「それでは、ノア、ハリー──あとのお二人も──新聞を楽しみにしていてね」
早く帰って記事をまとめたくて仕方がないのか、リータは早足で歩きながらそういうと、扉を開ける。部屋から出る時に俺に手をひらひらと振ってから、カメラマンと共に出て行った。