兄・子世代ifチート能力を駆使して転生人生謳歌します!   作:八重歯

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18 魔法省

 

 

26日。俺はいつものようなラフなパーカーではなく、少々小綺麗に見える真っ白なシャツに黒い半ズボン、深い赤色の細いリボンネクタイをしめている。真っ白なニーハイソックスにはソックスガーターがつけられ、しっかりとサスペンダーでズボンがずれてこないようにしている。

靴は先の丸い焦茶色のロングブーツ。

王道ショタスタイルに、昨日ダーズリー家から貰った黒いジャケットを羽織る。まぁ少し大きいジャケットだけど、なんか彼氏のジャケットを借りている女の子に見えなくもない…甘辛系のファッションになった。──いや、詳しくは知らない適当だ。

 

 

待ち合わせの7時半時を時計が差した時、トントンと扉がノックされた。

玄関前で待機していた俺はすぐにドアノブを掴み、扉を開く。

 

 

「あ、セブルス先生。今日はよろしくお願いします」

「……ああ」

 

 

セブルス先生は、いつものように険しい顔で、いつものような真っ黒の服装だった。

少しくらいいつもと変えたら良いのに、とは思うが、まぁ俺も大体大きめパーカーかシャツだしな。シンプルイズベスト!なのだから人のことを言えない。

 

扉を閉めればセブルスはついてくるように顎で示し、すばやく周りを見渡しながら建物の影になるところに身を寄せるとそのまま俺の腕を掴みバシン、と姿くらましをした。

 

 

広がっていた空は一気に狭まり、左右に薄汚い壁が聳え立っている。どこかの路地裏なのだろう、セブルスは俺の腕を離すと何も言わずにさっさと歩き出した。路地裏を出た先の通りにはかなり見窄らしくシャッターが閉められた店が数軒並んでいる。

その隣にはゴミが溢れ真夏ならば蝿が沸いていただろう大型ゴミバケツが一つあった。

近くには、どう見ても利用者が滅多に居ないと思われる赤い古びた電話ボックスがある。

セブルスは内ポケットから紙を取り出し、その赤い電話ボックスを見つめて「おそらく、ここだ」と呟いた。

 

 

「ここ?」

「ああ…外来者用の入り口はこの電話ボックスのようだ」

「…もしかして、魔法省初めてきたんですか?」

「初めてではないが…当時は別の外来用入口を使った」

「へぇそうなんですか」

 

 

俺は扉に手をかけて電話ボックスの中に入る。四隅は錆びているし、中の壁や電話機の本体に沢山の下品な落書きがされてある。

 

 

セブルスも俺の後に続き中に入ったが、電話ボックスというものは1人用であり、2人で入るものではない。つまり、狭いからめちゃくちゃ密着する。

 

 

「ちょっ…セブルス先生、狭い…」

「…我慢したまえ」

 

 

俺はぴったりとセブルスの胸あたりに顔をくっつける形になってしまった。セブルスは俺越しに受話器を取ると、反対の手で紙を見ながらダイヤルを迷うことなく回す。

慣れた手つきだな?…あーそうか、セブルスって昔はマグル界で過ごしてたはずだし、電話の掛け方くらいわかるんだろう。

 

 

セブルスがダイヤルを回し終えると、受話器からではなく電話ボックスの天井から落ち着いた女性の声が降ってきた。

 

 

「魔法省へようこそ。お名前とご用件をおっしゃってください」

「…ホグワーツ教授、セブルス・スネイプだ。懲戒尋問に出廷するノア・ゾクラフの付き添いだ」

「ありがとうございます──外来の方は、バッジをお取りになり、ローブの胸につけてください」

 

 

かちゃかちゃと音がして、普通なら釣り銭が出てくるだろうコイン返却口から銀色の四角いバッジが二つ出てきた。

 

セブルスはすぐに手にとるとまじまじと見つめ、一つを自分の胸元に嫌そうにつけ、もう一つを俺に渡した。

 

 

「…ノア・ゾクラフ、懲戒尋問…?」

「魔法省への外来の方は、杖を登録しますので、守衛室にてセキュリティ・チェックを受けてください。守衛室はアトリウムの一番奥にございます」

 

 

バッジに書かれている文字をまじまじと見た後でサスペンダーのベルト部分にバッジをつけていると、また天井から女性の声が降ってくる。

全てのセリフを言い終わった途端、遅れて床ががたがたと揺れてゆっくりと地面に潜り始める。いきなり感じた浮遊感に、思わずセブルスの服に掴まったが、セブルスは何も言わなかった。

 

 

暫くは暗くてただ下へ下へ降りていく感覚しかなかったが、いきなりパッと足元が明るくなり、静かに電話ボックスの下降が止まった。

 

 

「魔法省です。本日はご来省ありがとうございます」

 

 

女性の声と共に、電話ボックスの扉が開く。

 

 

「…ここが魔法省…」

 

 

いやーあと6.7年くらいたったら来るかな?と思ってたけど、まさかこんなに早くここに来ることになるとは思わなかったな。

 

 

長い豪華なホールがあり、沢山の暖炉が端に並んでいる。きっとこの暖炉を使い、いろいろな場所からやってきているのだろう。実際、絶えず魔法使いや魔女が現れている。

姿現しの音もそこかしこで聞こえるし…いやーこんなに大人の魔法使いとか魔女を見るのは初めてだ。

 

 

ホールの中程にあるいろいろな種族の像がある噴水は、きらきらと黄金色に輝き水を吐き出している。いやーこの像ってちょっと悪趣味だよなぁ、色んな種族に尊敬の眼差しを受けている魔法使いと魔女の像は…魔法族が一番強いって誇示してるみたいでちょっと悪趣味。

 

 

「守衛室…こっちだな、いくぞ」

「あ、待って!」

 

 

杖を登録するために、セブルスは守衛室に行くのだろう。ここまで人が多くて広い場所なら、迷子になってしまう!と慌てて先に行っていたセブルスに少し大きめに声をかけた。

 

 

俺の声はホール内によく響いたようで。ホールの一番奥にある黄金のゲートに向かっていた沢山の魔法使いや魔女がぴたりと止まり、一斉に振り向いた。

流石に、一方向に向かっていた人間たちがいきなり振り向く様はB級ホラー映画のようで、ちょっと怖い!

 

 

「……あ、待つのはセブルス先生だけです」

 

 

引き気味に否定したが、大人の魔法使いたちは俺を見たまま全く動かない。

後から来た魔法使いが怪訝な顔をして一体なんだと振り返り、俺を見て──同じように固まる。

 

 

「……えっと、皆さん遅刻しますよー?」

 

 

俺の言葉を聞いた群衆はハッとすると慌てて金色のゲートの方を向いたが、何度も途中で振り返ったり周りとぶつかったり、中央にある噴水に片足突っ込んだりする人がめちゃくちゃ多かった。

 

誰もが俺をもっと見ていたい気持ちと、仕事にいかなければならない気持ちの狭間で揺れているようだ。苦しそうな顔をしながらも心の声に背き金色のゲートをくぐるその姿は、まさに社畜!

社畜は魔法界でもマグル界でも変わらないんだな。

 

 

「うーん、社畜は大変だ」

「……守衛室にいくぞ」

「はーい」

 

 

俺はセブルスの声に従い、静かにその背中の後ろをついて行った。

 

 

 

 

守衛室に立ち寄り杖の登録を済ませた俺とセブルスは、他にどこかに立ち寄ることもなく5号法廷へ向かった。

途中沢山の人が俺を見て頬を真っ赤に染めて、羊皮紙の束や手に沢山持っていた何かガラクタのようなものをぶちまけたり、空いていない扉に激突していたけど仕方がない。

 

うーん。俺の美貌だけではなく、ちょっと服装もやりすぎたかな?法廷に出るから、なんとなくかしこまってる綺麗めの格好の方がいいかなぁって思ったけど。俺の美しく細く長い足がちょっと短めの半ズボンから伸びているからか、皆がまず俺の顔を見て、すらりとした足を見て、また顔を見て頬を染めている。

……いや、面白いけど。

 

 

 

「ここが5号法廷だ。…時刻10分前だな、入りたまえ」

「…え、セブルス先生は?」

「我輩は、入れない」

「…えー……まあ、仕方ないですね、行ってきます」  

 

 

へらりとセブルスに笑いかけて、俺は重い鉄製の取っ手を回し、中に入った。

  

 

想像以上に中は明るい、白い清潔そうな壁にはブラケットランプが掛けられていて、明るく法廷内を照らしている。

 

中央に飾り気のない椅子が一脚置かれ、その正面の少し高い位置にはベンチがあるけど──がらんとしていて、魔女1人しか居ない。

ちょっと拍子抜けだ、満員御礼かと思ってたけど、まぁうっかり魔法使っちゃった名も知らぬ子どもの法廷なんて、みんな興味ないかな?ハリー・ポッターじゃないしな。

 

 

 

「私は、アメリア・ボーンズです。その椅子にお座りなさい。──はじめてよろしいですか?」

「はい、よろしくお願いします」

 

 

俺はとりあえず椅子に座り、アメリアと名乗った魔女を見上げた。アメリアは目を何度か瞬き、俺を見て顔を赤く染めたがすぐに視線を一度手元に落とす。

 

さて、どうしたら学校を辞めずに済むかなぁ…。杖を折られても、魔法は使えるから良いとして、やっぱこの世界を楽しむためにはホグワーツにいる事が重要だ。

 

 

 

「懲戒尋問、12月26日開廷。未成年魔法使いの妥当な制限に関する法令の違反事件。被告人、ノア・ゾクラフ。住所サリー州、リトル・ウィンジィング、サーグル通り12番地シエル孤児院。尋問官アメリア・ボーンズ──」

 

 

突然、ガチャリと扉が開く音がした。アメリアは言葉を止めて視線を上げる。まさかセブルスが心配になって入ってくれたのかな?と思ったが、全然知らない魔法使いがぺこりと頭を下げながら正面のベンチに座った。

あー、観客かな?法廷って好きに見て良いって聞いた事がある気がする。

 

 

「…被告人罪状は以下のとおり。被告人は魔法省から複数回、同様の咎にて──」

 

 

ガチャリ。

また、知らない魔女が2人こそこそ話しながら入ってきてベンチに座った。

 

 

「──あー…警告状を受け取っており、被告人は行動が──」

 

 

 

ガチャリ。

今度は二人組の魔法使いが現れた。

 

 

 

「…被告人は行動が違法であると十分に認識し、熟知しながら、意図的に──」

 

 

ガチャリ。

今度もまた知らない魔法使いがコソコソと入ってきた。

一度しまった扉はすぐに開き、また3人の魔法使いが入ってきてベンチに座る。

 

 

「ごほんっ!…えー…どこまで読んだかしら」

「熟知しながら、意図的に…まででしたよ」

 

 

何度も扉が開き、その度に言葉を止めていたアメリアはどこまで罪状を読んでいたのかわからなくなってしまったようで、小声で伝える。

 

 

 

「そうそう。…意図的に12月18日から24日までにシエル孤児院にて姿現し、プリペッド通り4番地の公園にて姿くらましを行った。これは1875年制定の未成年魔法使いの妥当な制限に関する法令C項の違反に当たります。被告人はノア・ゾクラフ、住所は先ほどの通りで間違いないですね?」

「はい」

 

 

アメリアが言っている途中で何度も扉が開き魔法使いが次々と入室したが、アメリアはもう視線を上げることなく紙を見たまま早口に罪状を読み上げた。

 

30人ほどが座れるだろうベンチはすでに埋まっていて、遅れてきた魔法使い達は立ち見している。こそこそと「美しい…」「こっちを見て」「あり得ない美貌だ…」などなど沢山の声が上がり、アメリアは少し苛つきながら机を手で叩いた。

 

 

「静粛に!静粛にお願いします!」

 

 

強い言葉に、ようやく群衆達は静まり返ったが、熱を帯びた目で俺を見る事は止めない。

 

 

「被告人は、魔法省からの警告を再三無視しました。相違はありませんか?」

「あります」

 

 

群衆が一気に騒めいたが、再びアメリアが「静粛に!」と叫びなんとか静まり返る。

アメリアは俺を見下ろし、静かな目で「なんですか?」と問いかけた。

 

 

「魔法省からの手紙は届いていましたが、中を確認していません。…その、俺は…ご覧の通り、沢山の人に…あー…見られることがあって、沢山の知らない人からの手紙を受け取るのですが…」

「…魔法省からの手紙は、貴方の机にひとつだけ置かれていた筈ですが」

「はい…ですが、俺は…よく、中に…その……せ…精液、とか、血とかが入っている手紙を受け取っていて…ホグワーツでも、たくさんの知らない上級生から愛の呪いがかかった手紙も届いて……差出人の名前が書かれていない手紙は、中を見ないようにしているんです。孤児院の養母からもそうするように指示されていて…その、てっきり魔法省の名を騙った手紙だと…」

「…まぁ…それは…」

 

 

精液、とか愛の呪い、とかの部分でちょっと恥ずかしくて言いにくそうにどもってみる。

アメリアは気の毒そうな目をしながら、熱を帯びた目をしている群衆を見回した。

うん、嘘は言っていない!

 

 

「…被告人は、本当に姿現しと、姿くらましをしたのですか?」

「はい。…それも、俺は外に出たら…その、不審者に連れ去られる事が良くあるので…初めて、魔法を使ったのも、6歳ごろ知らない人に連れ去られそうになって…逃げているうちに…姿くらましが出来るようになっていました。その時はこの力が…姿現しや、姿くらましだとは知らなかったのですが…」

「…それは…。…しかし、17歳未満の者は、学校の外で魔法を使ってはいけないと…知っていたでしょう?」

「はい…すみません。マグルに見られずに外を出て、友達と遊ぶためにはこうするしかなくて…」

 

 

精一杯申し訳なさそうに、不安げなうるうるとした目でアメリアを見つめれば、アメリアはかなり、迷っているように見えた。

本当に姿現しと姿くらましをたった11.12歳の子どもが正確に自在に出来るなんて、信じられないのかもしれない。

 

 

「…俺…外に出たら、間違いなく…その、連れ去られそうになるので…。…逃げるために…身を守るための魔法を、入学前も使っていました…それも、今後ダメですか…?クリスマス休暇はともかく、夏休みの二ヶ月間、俺は外に出ることを許されませんか?魔法を使うこと以外で…身を守る術が俺にはありません…」

「…保護者が、いるでしょう?」

「…俺は、孤児院で暮らしてます。養母は…忙しい人なので…」

「…しかし、特例を作ることなど…」

「……なら、夏休みに…俺は行方不明になるでしょうね…マグルの手によって、薄暗い地下に幽閉されて…そのまま、何日も、弄ばれる事に…なるんですね…」

 

 

これほどの大人の魔法使いがいれば、こっそり魔法を使ってもバレないはず!

最後のダメ押しに、俺は自分に催涙魔法をかけ、美しく大きな瞳からはらはらと涙を流し、自分の体を抱きしめて震えてみた。

 

 

俺が涙を流した途端、轟々とした野次が飛び交う。アメリアは慌てて群衆を見て「静粛に!静粛に!」と叫ぶが、俺が弄ばれる──それも、間違いなく性的な意味で──事を理解した彼らの怒りは止まらない。

 

 

「わかりました!今後の件は、今私の一存で決める事は出来ません!後日、再考します!…今回の件、被告人ノア・ゾクラフを無罪放免とする事に賛成の者は挙手をお願いします!」

 

 

有らん限りの声を張り上げたアメリアが叫べば、群衆は全員高く手を上げた。

これだけ人がいるんだ、彼らにも挙手させねばならなかったのだろう。

 

 

──計算通り!!

 

 

「…わかりました。被告人ノア・ゾクラフを無罪とします!」

 

 

わっと歓声と共に拍手が上がる中、俺は催涙魔法を止めて目を擦り、儚く彼らに微笑みかけた。

 

 

思いつきの計画だが、上手くいって良かった!

俺の美貌の凄さは、この群衆の熱狂ぶりが証明してくれている。仕事をサボってるのか、就業時間になっていないのかはわからないが、名も知らぬ魔法使い達が俺を見るためにここに来た段階で、俺はこの見た目を武器にしてアメリアの同情を誘うようにしてみた。

ちょっと健気て守りたくなるような少年を演じてみれば、まぁ見事騙されてくれた。

 

いや…ほら、嘘は言ってない。本音も言ってないけど。

 

 

「…ありがとうございます…!」

 

 

俺の美しい微笑みを見た者は胸を押さえてその場に気絶する。うんうん、俺の美貌はこれだけで武器だなマジで。

 

 

計画通り、俺は無罪となり、そのままアメリアに深く頭を下げて立ち上がった。るんるんとする気持ちを抑えて、なるべく健気な子どもに見えるように扉に向かう。

気絶していない人達はすぐに立ち上がり俺の後にぞろぞろと続いてきた。

 

 

「…お仕事、頑張ってくださいね?応援しています!」

 

 

くるりと振り返り、後ろについてきている彼らに向かって無邪気な笑顔を見せれば、彼らは顔を真っ赤にしてこくこくと何度も頷いた。

 

俺に魅了された人達が俺を捕まえようとする前にさっさと扉を開けて、少し離れたところで待っていたセブルスの元に駆け寄る。

 

 

「終わったのか」

「うん、お待たせ!ちょっとエレベーター乗っちゃいましょう。ここで立ち止まってたら捕まっちゃうから」

「何…?」

 

 

セブルスは俺が現れた扉を怪訝に見たが、押し合いへし合いしながら扉の奥でつっかえている人集りを見て「その方が良さそうだな」と低く呟いた。

 

 

エレベーターに乗り、すぐに玄関ホールに戻った俺はすぐにセブルスの腕に掴まって孤児院の俺の部屋に姿くらましをした。──流石に、セブルスはもう俺が姿くらましや、姿現しをする事に何も言わなかった。

 

その後俺は無罪だったことを伝えて杖を返してもらった。セブルスはそれを聞くとすぐに姿くらましをしてどこかに消えてしまった。

お茶くらい飲んでいけば良いのに、と思ったけど、セブルスもホグワーツに居残らなければならないとはいえ、休暇中だ。何か用事とかあるのかもしれないな。

 

 

「魔法使う許可貰えればいいけどなぁ」

 

 

俺はぽつりと呟きベッドに後ろ向きにダイブした。

 

 

 

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