兄・子世代ifチート能力を駆使して転生人生謳歌します! 作:八重歯
めちゃくちゃびびった。
部屋でスクールから出された宿題してたら、目の前に三角座りした子どもがパッと現れた。
一瞬、死喰い人か、呪怨に出てくる少年かと思ったぞ!30才過ぎにして漏らすところだった!
誰だよ、この少年…お化けじゃないよな?…うん、影があるし人間だな。
音を立てないようにその子どもの前に立って、呟いた。
「──びっくりした」
姿表しか?いや、でもなーあれって難しいらしいし。俺は出来るけどさ。
多分魔力の暴走かな?幼い子どもにはありがちだって言うしなぁ。それにしても、俺の前に現れるなんて、ラッキーだな。
これが普通のマグルの前だったら面倒臭い事になってたぞ、見知らぬ少年よ。
少年は、パッと顔を上げて、ぽかんと小さな口を開いた。
おおー…可愛い子じゃん?なんか泣いてるけど、普通に美少年だな。大人になったらイケメンになりそうな予感がしてる!
…んん?なんか、ちょっと見覚えあるような…?
「…天使様…?」
「いや、俺はノア・ゾグラフ。…君は?」
「僕…僕…ハリー・ポッター…」
「ハリー・ポッター……」
ハリー・ポッター!?ハリーって、あの!?
ああ!よく見りゃ確かに!黒髪でくるくるの癖っ毛!目は綺麗な緑色!前髪の隙間から特徴的な稲妻形の傷痕がチラリズムしている!
ハリーは俺を見て頬を真っ赤に染めていた。
俺を見た衝撃で泣き止んだが、瞬きと同時にぽろりと一雫の唾が流れ落ちる。
俺はその涙を拭ってやり、まだ状況が飲み込めていないのか、俺の美貌に思考停止しているのか、熱烈な視線で俺を見たままのハリーに笑いかける。
「ハリー、いきなり現れてびっくりしたぞ?どうしたんだ?」
「え?……えっ、ここ、どこ?」
ハリーはようやく辺りを見渡し、直ぐにさっと顔色を変えた。
あ、不安げにするんじゃなくて「まずい」っていう表情だな。って事は、身の回りで不思議な事が起きた事はこれが初めてじゃ無いのか。
まぁ…魔法使いでも無い限り、いきなり離れた場所に現れる説明なんて出来ないけど、ハリーはまだ魔法なんて全く知らないしなぁ。
「ここは、シエル孤児院の、俺の部屋だ」
「…孤児院…?ぼ、僕…なんで、此処に…」
「うーん…」
「っ!!ご、ごめんなさいっ!
ハリーはまた泣きそうな顔になって身体を震わせる。
何度も謝り恐怖に顔を歪めるハリーの肩を優しくぽんぽんと叩いた。きっと、こういう力が出るたびにかなり──酷い目に遭っていたんだろう。
流石に、可哀想になってきた。美少年の泣き顔とか…ちょっとしか見たくない。うん、ちょっとは見たい。
「ごめんなさいっ!怒らないで、誰にも、言わないで!」
「怒ってないし、言わないよ。…ハリー、これは魔法だ」
ガタガタと震えるハリーに告げれば、ハリーはぴたりと震えを止め、小さな掠れた声で「魔法…?」と呟いた。
あ、言っちゃった。まぁ…いいか。だって可哀想だったしさ、震えすぎだろ。携帯のマナーモード並みに震えてたぞ。
「魔法…って…?絵本の中に出てくる、あの…?」
「ま、それに近いかな。…ハリー、此処にくる前、何を考えてた?」
「…ここから消えて…僕を助けて…守ってくれる人に、会いたい…って…」
それで、俺のところに来たのか。
その願いで俺のところに来るって事は、…ハリーを守るのが俺の役割なのか?チートの俺がハリー守るとか、ハリーの未来は輝かしいハッピーエンド確定じゃね?まぁ、ハリーって守られるんじゃなくて、原作通り進んで成長していってヒーローになった方がいい気がするけど。
「そっか。だから俺の前に現れたんだな。…ハリー、他にも…今まで、不思議な事があったんじゃないか?」
俺の言葉に、ハリーはおずおずと頷く。
まだ魔法なんてファンタジーをすぐに信じられないのか、不安そうに眉を下げていた。
「う、うん…切られた髪の毛が直ぐに伸びたり…別の場所にいっちゃったり…物が勝手に割れたり…」
「ぜーんぶ、魔法だ。んで、ハリーは魔法使いさ。…俺も魔法使いなんだよ」
指を振り、机の上にあったノートを近くに引き寄せる。
ハリーは驚きにただでさえ大きな目を見開いていたが──すぐに興奮したようなキラキラとした目で俺を見る。
「す、すごい!僕…僕だけが変じゃないの?」
「そうだ。…でもな、ハリー。この事は誰にも言っちゃダメなんだ。時が来るまで…11歳までは、秘密にしなきゃダメだし、魔法が使えない人の前でこの力を使おうとするのも、ダメなんだ」
「…?…どうして?」
「普通な人には使えない力があるなんてバレたら、捕まって解剖されちゃうかもしれないだろ?」
「解剖…そんなの、やだ…」
「な?だから、11歳になって…俺じゃない魔法使いが説明してくれるまでは、絶対に…俺とハリーだけの秘密だ。約束出来るか?」
ハリーは、ぽっと頬を赤らめたまま、すぐに頷いた。
「僕たちだけの約束……うん、約束する!」
「いい子だハリー!…なぁ、ところでハリーって何歳?」
「僕?6歳だよ。ノアは?」
「俺は8歳だ。……そっか、俺の方がお兄ちゃんだな!」
ハリーの二つ年上かぁ。
なんか幼いなーとは思ってたけど、同級生にはなれないな、残念!2歳年上ならフレジョとかセドリックと同学年だっけ?なら、まぁ学生生活楽しめそうだし、いいか。
ハリーは俺を見て、首をこてんと傾げた。
「お兄ちゃん…?お姉ちゃん、じゃなくて?」
「俺は男だ、女の子だと思った?」
「お、男の子なの?…女の子だと、思った…そんなぁ…」
ハリーは残念そうにため息をつき、目をうるうると潤ませる。
なんか、捨てられた子犬みたいで庇護欲が掻き立てられる!
「じゃあ、僕と結婚できないの?」
「はい?」
「僕と、結婚」
「あー…俺は男だからなぁ」
「そんなぁ…」
がっくり、とハリーは肩を落とした。
いやいや、結婚って。
まだ出会って数分なんだけど?
あーでも、6歳…6歳って日本でいう年長組さんか?
まだ「大きくなったら何々君と結婚するー!」とか何にも考えないで無邪気に言える年齢か?俺が幼稚園児の時ってどんなんだったかなぁ…さすがにぼんやりとしか覚えてないけど、クラスの半分の女子と結婚するって思ってたような…。
「ま、ハリー。結婚は無理でも友達にはなれるさ!」
「友達…僕に、友達…?」
「ああ、友達になろうぜ、ハリー!」
「うん!!」
ハリーは満面の笑みでにっこりと笑った。
うう、幼いハリークソ可愛い。こんな可愛い子を虐められるなんて正気じゃない!
手を差し出せば、ハリーはしっかりと握った。子どもらしい小さな手だな。…あれ。何か血ついてね?
「あっ!ご、ごめん、僕…血が…!」
「気にすんな。…どっか怪我してるのか?」
「う、うん。…頭…石が入った雪玉、ぶつけられて…」
「ひでぇな…」
ハリーは慌てて俺の手を離すとポケットから皺くちゃのハンカチ出して、懸命に俺の手を拭いた。固まりかけていた血はぽろぽろ俺の手から剥がれ落ちて、ハリーは泣きそうだった表情をほっと緩める。
いや、床にいっぱい落ちたけど。…幼いハリーはとりあえず手が綺麗になればいいんだろうな。その血の行方はあんま気にしてなさそうだ。
「どこが痛い?」
「ここ…」
ハリーが指差した箇所の髪を掻き分けてみれば、デカいたんこぶと血が滲んでる箇所がある。もう血は止まってるけど、めちゃくちゃ痛かっただろうなぁ。
軽く撫でて治癒すれば、ハリーは驚いたように頭を撫でて「治ってる!!」と叫んだ。
「これも、魔法なの?」
「ああ、秘密だぜ?」
「うわぁ!ノアってすごいや!僕も出来るようになるかなぁ?」
「魔法を学べばな」
「学ぶ…僕が行く学校で、魔法なんて学べるかなぁ…?」
ハリーは心配そうに呟く。
マグルの学校では、間違いなく学べないだろうな。まぁ、11歳になったらホグワーツに行く事になって…治癒魔法って学べたっけ?ヒーラーがいるくらいだから、まぁ、どっかで学ぶかな?
「ま、その辺は後で教えてやるよ。…その前にさ、ハリーの家ってどこ?」
「あ…サレー州の、リトル・ウィンジィング…プリベット通りの、4番地だよ。僕の家じゃなくて、いとこの家だけど…」
「へえ?近いな。とりあえず家に行こうか」
ハリポタファンの俺でも、流石にハリーの家までは覚えてなかったけど、めちゃくちゃ近いな。この孤児院もリトル・ウィンジィングにあるし。なんか聞き覚えあるなって思ってたのはそういう事だったのか。
ジャケットを羽織った後、ハリーの手を取ってこっそり部屋から抜け出す。
遠くで子どもたちの声が聞こえるな、…バレないうちに出た方がいいな。この孤児院、来訪者になーんか厳しいし。俺はすぐに誘拐されかけたり変質者と会うから外出禁止されてるし。
素早く玄関まで向かい、そっと扉を開ける。…うん、大丈夫だ。誰にも見られずに出れそう。
無事に外に出た俺は、プリベット通りに向かう。たしか2キロくらい先だったかな?徒歩30分くらい…だろ。めちゃくちゃご近所さんだな。
歩くのはちょっと大変だけど、まぁ仕方ない。
「あそこ、孤児院なんでしょ?…僕も此処で暮らせないかなぁ…僕も、パパとママいなくて…いとこの家に住んでるんだ」
「うーん。でも、ハリーはいとこがいるんだろ?あそこは完璧身寄りのない子しか住めないからなぁ」
ハリーは俺の隣に並び、後ろを振り返りながら羨ましそうに言った。よほど、いとこの家が嫌なんだろうなぁ。
あくまで保護者がいるのなら、多分行政かなんかが許可しないだろう。
ハリーは少し慌てたように「ごめん」と言った。
「何が?」
「その…ノア、孤児院で暮らしてるんでしょ?」
「ああ…気にしてないから、大丈夫」
齢六歳にして、他者の気持ちを考えられる優しいハリー少年である。
あの孤児院に住んでいる、と言う事は、まぁ俺は天涯孤独の身でもあった。この世界に来るための運命なのか、どうなのか。ワクワクしながら転生し、目を覚ましてみれば──ノア・ゾグラフの両親は強盗に殺されていて俺は殺人現場の真ん中に血まみれで突っ立っていた。草ァ!
それからあれよあれよという間に孤児院に暮らすことになり、早3年。ここが本当にハリー・ポッターの世界なのかどうなのか、ぶっちゃけわからなかった。
魔法は使える。だが、メインキャラに会うイベントが3年もなかったのだ。ここはマグル界であり、魔法界の情報なんて微塵も入って来なかったしなぁ。
「僕の、パパとママも死んじゃったんだ。…自動車事故で、僕は1歳だったから…なにも、覚えてなくて…」
「そっか、俺は3年前に強盗に親が殺された」
「えっ…そ、そんな、…ごめん、僕…」
「あー…気にするな、うん。もう吹っ切れてる」
吹っ切れてるってか、俺に取っては他人だったからぶっちゃけそんなに悲しくは無かった。申し訳ない、とは思うけど。
その後は道をゆっくり歩きつつ、ハリーのいとこのダドリーがどれだけ酷い子どもなのか、叔父と叔母が虐待一歩手前の辛いことをするのかをハリーは嫌そうな顔でぽつぽつ話した。
今まで誰にも話す事が出来なかったのか、一度話し出したハリーの口からは止まる事なく不満や悲しみが溢れている。
6歳にしてまぁ…可哀想な子だよな。主人公に悲劇や試練はつきものだが。
いやーでも、ダーズリー家の事を考えたら…急に赤ちゃんが玄関前に置かれてて、それも保険証とか資金も何もなくて引き取る事になったのも、まぁ不憫だよなって思う。
ペチュニアとリリーは縁を切ってた、らしいし。
俺は子育てなんて勿論した事ないけど、子ども1人育てるのって大変でお金もかかるだろうし。急に1歳の赤ちゃんがもう1人増えて、大変だったんだろうなぁ。…ま、かといってハリーを冷遇していいわけではないけど。
「僕、早くあんな家出たいよ…」
「うーん。でも、ハリー。ご飯を食べられて、雨を凌げる家があるのは幸せな事だぜ?」
「…だって…だって、おじさんやおばさんは、僕に車洗ったり、掃除したり、ご飯作れっていうし…ダドリーは何もしなくていいのに…服はおさがりしかないし…」
ハリーは不満げに頬を膨らませる。
同じ歳のダドリーがしていないのに、自分だけがそれをしなければならないのが嫌なんだろうな。まぁ、実子といとこの差だろう。
家事かー。
「俺も孤児院で家事くらいはしてるぜ?服も、みんなおさがりさ」
「え…そうなの?」
「子どもの数が多いし、世話をしてもらってるからさ。出来る事は自分でする。それが金を持たない俺たちの恩返しの方法なんだよ。ご飯だって、おもちゃだって、服だって…タダでもらえるわけじゃないだろう?」
「…あ…そうだ…そうだね」
6歳には難しいかな?と思ったが、ハリーは真剣な顔で頷いた。
鼻水垂らしてるその辺のガキよりは、多分ハリーは賢い。
俺の言ってる言葉の意味がわかったのか、ちょっと眉を寄せながら考え込んでいた。
「
「対価…?」
「あー…お金がないから、その分、手伝いとかで返すんだよ」
「そっか…うん、…そうだよね。僕…ダドリーが何にもしなくて怒られないから…何で僕だけって思ってたんだ、ずるいって…でも、僕は…おばさんたちの子どもじゃないから…」
「辛くても、仕方ないさ。…でも、ハリー。それをすぐに受け入れられるお前は賢くて、素直な心を持ついい子だ」
ハリーのくしゃくしゃの頭を撫でれば、ハリーは顔を上げて照れたように微笑んだ。
……激かわ!
ちなみにハリーの家に行くまでに変質者2人に出会ったが、変質者の足を魔法で掬って転倒させて難を逃れた。
中身30歳超えてる俺が男の汚いブツを見てもなんとも思わないけど、ハリーに見せるのは可哀想だからな。