兄・子世代ifチート能力を駆使して転生人生謳歌します!   作:八重歯

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21 ヘルガ・ハッフルパフの試練

 

 

 

俺はまた試練の部屋に来ていた。

後ろにはフレジョと、そしてセドリックがついてきている。

初めてこの部屋を訪れた数週間後の土曜日の朝食後──つまり、先程──フレジョにもう一度探索しよう!と言われ、早速動く階段に向かった。

 

 

「どこに行くの?」

「んー?冒険かな?」

 

 

不思議そうな顔をするセドリックに笑いながらいえば、「僕も行きたい」と少年らしく目を輝かせていて──フレジョも特に拒絶しなかったし、俺たちは4人となりここまで来たと言うわけだ。

 

 

「こんな部屋があるなんて…父さんも何も言ってなかった……」

 

 

セドリックは呆然としながら部屋を見渡す。

五つの扉のうちの四つには、寮のシンボルである動物達のレリーフがある事から──セドリックも、この部屋がただの隠し部屋では無いのだと悟りちょっと不安そうに『試練の部屋』と書かれた文を読んでいた。

 

 

「さて、どの部屋から試す?」

「そうだなぁ。……まさか、ヤバい部屋じゃないよな?ホグワーツにあるくらいだし…」

「死ぬ、なんてことないよな?」

 

 

フレジョもセドリックの隣から大理石に彫られている文字と、四つの扉を比べて見ながら緊張した声を上げた。

 

 

「さー大丈夫だろ。守護魔法は既にかけてるから、よっぽどのことがない限り大丈夫さ」

 

 

この部屋に来るためにフレジョとセドリックを掴んだ時に、ついでにかなり強めの守護魔法はかけている。まぁ、どのレベルの魔法が防げるのか……初めてかけたからわからないな。

 

 

「…それぞれの寮に関係があるのなら……穴熊の扉から挑戦してみる?…ほら、なんとなく、簡単そうだし」

 

 

セドリックは右端の扉を指差した。

この試練を、ホグワーツ創設者が創り、それぞれの特色を反映しているのなら──たしかに、グリフィンドールとスリザリンはなんかヤバそうだし、レイブンクローは頭脳を使いそうだ。まぁ、ハッフルパフは……自身の寮だけど、ちょっと簡単そうというセドリックの気持ちもわかる。

 

 

ハッフルパフ寮は、全てを受け入れる。

勿論、嫌な事は嫌だし、相容れない存在がいる人もいるだろう。

それでも、人の家柄や血筋や頭脳で判断せず、誠実な者に対しては誠実に返す。

穏やかな者が多く、寮生同士で喧嘩もあまりないし、ほかの寮とのいざこざも少ない。──ま、他の寮より騒がしく目立つ生徒が居ないから、影が薄いってのも事実だな。俺以外は!

 

 

俺は持ち前の美貌なので、ハッフルパフの奇跡だとかなんだとか言われているらしいがよくわからん。

ホグワーツに来て数日でファンクラブがあるらしいが、うん、出来るだろうな!って思ってたから気にしない。俺を手に入れる為に暗躍する悪い集団では無さそうだし。

俺を陰ながら応援してくれる人がいるのはいい事だ。

 

 

 

「じゃあ、入るか」

 

 

俺の言葉に、フレジョとセドリックは頷きポケットから杖を出した。

 

穴熊のレリーフがある扉の取手にそっと触れる。……うん、17歳以下でも入れそうだ。あれはこの部屋に入る扉だけにかけられた魔法だったのだろう。

 

鍵もかかってなくて、軋んだような音を立てて扉は開く。

その先にあるのは、灰色の石床と、同じような無機質な壁がある、窓の無い部屋だった。空き教室、のような、そのくらいの広さで特別広いと言うわけでもない。──まぁ、隣の扉との間隔は近かったし、特別な魔法で別場所に繋がってるのは間違いなさそうだ。

 

 

俺たち全員が入り、扉を閉めれば目の前に銀色の文字が浮かび上がった。

 

 

──ヘルガ・ハッフルパフの試練

      戦闘不能にせよ。──

 

 

 

「……戦闘不能、って事は、やっぱ闘い系だな」

「ど、どうしよう。僕そんなに…有効な魔法はまだ…知らない…」

「俺達はとりあえず爆弾持ってきた」

「ああ…効けばいいけどな」

 

 

セドリックはさっと顔色を変え、フレジョはポケットから数々の爆弾を取り出した。成程、なんかフレジョの準備に時間かかってんなって思ってたけど、忍びの地図を使ってゾンコで色んな爆弾を買ってたのか。

 

 

「俺がいるから大丈夫」

 

 

しかし、我最強魔法使いぞ?

戦闘不能にするなんて簡単だ。とりあえず杖を前に出して待っていれば──灰色の石床の隙間から、黒い液体のようなものがどぷりと溢れ、ぐにゃぐにゃと蠢き無数の魔法生物らしい姿に変わった。

 

 

らしい、というのは、目の前に現れたものはどう見ても正しい魔法生物ではない。なんか影っぽいな。

その影達は唸り声を上げ、牙らしき黒々したものを剥き出しにしながら俺たちに襲いかかった。俺の後ろでフレジョとセドリックが小さく息を呑む。

 

 

 

「とりあえず、全部倒してみるか。お前たちは下がってろ」

「え、ノア──」

激しく燃え上がれ(インセンディオ・トリア)

 

 

杖先から真紅の焔が吹き出し、そのまま左右に薙げば沢山の影は不協和音に似たつん裂く悲鳴を上げ焔に巻かれた。

 

 

「うわっ!あ、あちち!!」

「何これ!?」

「す、凄い…!」

 

 

俺の後ろにいるフレジョとセドリックはあまりの熱に数歩下がり、起こった熱風により一気に汗を吹き出し悲鳴を上げる。

た、たしかに狭い部屋でやる魔法じゃないな!?まじで熱い!!

 

 

一気にサウナ状態になってしまったため、すぐに杖を振り焔を消す。黒い魔法生物達はその場に崩れぷすぷすと黒煙を上げた。──うん、倒せたな。

 

 

「まぁこれで戦闘不能には──」

 

 

これでクリアだろ。そう思ったが、突如部屋に『ブッブー』というなんとも気の抜けた音が響き──。

 

 

「──うおっ!?」

「うわぁ!?」

 

 

ぐんっ、と見えない何かに俺たちは勢いよく押し戻され、いつの間にか開いていた扉の外へ投げ出され、思いっきりひっくり返ってしまった。

 

 

「っ…な、なんだ?」

「し、尻が…割れたよ!」

「3つになっちゃった!」

「なんか、ダメだったのかな…?」

 

 

尻を押さえてもんどり打つフレジョと、腰あたりを押さえて体を起こすセドリック。俺も思いっきり後頭部を打ち付けて、目の前を星がチカチカ光ってしまった。

俺の防御魔法でも効かない?悪意のある攻撃は弾くはずだから、ただ押し戻しただけだったのか?

 

俺たちは痛む体を押さえながら立ち上がり、閉まっている穴熊の扉を見つめる。

 

 

「戦闘不能にした筈だ…制限時間でもあるのか?」

「…そうかも、もう一回チャレンジする?」

 

 

もっと早く攻撃すべきだったのかもしれないな。

俺はセドリックの声に頷き、もう一度扉を開けた。

 

先程と同じ銀色の文字が浮かび上がり、石床から黒い物体が現れる。形を作った瞬間に、俺は切り裂き魔法を使い全てを真っ二つにした。

 

 

──ブッブー

 

 

 

「また!?──うわっ!!」

 

 

プロテゴを張っても、そのプロテゴごと思い切り押されて即退場。今度は尻餅をつく事は無かったけど、再び扉は音を立てて閉じてしまった。

 

 

その後5回ほど魔法を変えて挑戦したが、全て跳ね返され強制退場させられてしまった。

何が悪いんだ?戦闘不能にしてるのに!

 

 

「──よし!じゃあ次は俺たちが!」

「この最強クソ爆弾ネオの威力、思い知れ!」

 

 

何度も失敗した俺の代わりに、両手に沢山の改造したクソ爆弾を持ったフレジョが、扉を押し開け中に入る。

俺とセドリックはその後に入り、何かあったら直ぐに対処できるよう杖を持った。

 

 

再び、銀色の文字と黒い魔法生物達が現れる。なんか獅子のような馬のような大型の魔法生物に、小さい野うさぎのような魔法生物もいる。フレジョはチラリと視線を交わし、ジリジリと近付いてくる影達に向かって沢山の改造クソ爆弾を勢いよく投げた。

 

 

「「喰らえ!!」」

「……ゔっ!──お、おええっ!!」

「ぐっ!!く、くさっ!!」

 

 

臭いどころじゃない凶悪な悪臭に、俺とセドリックは鼻を押さえ一気にドアの前まで下がった。刺激臭に目が痛いし吐き気がする!胃液が上がってきそうな臭いに、俺はセドリックと俺の顔を覆うように泡頭呪文を唱えた。

 

 

こ、こへは…(こ、これは…)

やはすひる!!(やばすぎる!)

 

 

フレジョも自分達が作った改造クソ爆弾の威力がここまでとは思わなかったのか、鼻を押さえゲホゲホとえずく。そりゃ、こんな広くない空間でやれば自爆するのは仕方ない。

影達も、あまりの悪臭にその場に倒れピクピクと痙攣したり、頭──いや、鼻か?鼻あたりを前足で掻いているような動きをしていた。

 

この影が魔法生物そのものの性質を写しているのだとしたら、動物って人間よりも嗅覚は優れている筈だし──かなり、効いただろう。

 

 

刺激臭に目を潤ませ、床に蹲りながらオエオエ言っているフレジョの顔にも泡頭呪文をかけてやれば、フレジョは目を擦りながら何度も深呼吸し「生き返ったー!」と叫んでいた。

 

 

影達は皆ぐったりと倒れ、その瞬間、黒い影はふっと空気に溶けるようにして薄くなり、消えてしまい。──部屋の中央に水晶で出来た穴熊の置物がことり、と現れた。

 

 

「…あれ?」

「え?勝ったの?──あれで?」

 

 

呆然とフレジョは呟き、部屋の中央に鎮座する穴熊の置物を見下ろす。

 

 

「…何の差だったんだ……?」

 

 

確かに強烈な悪臭で戦闘不能にはしてたけど、俺だって魔法を使って戦闘不能にしていた。魔法を使うのが禁止されていたのか?──いや、まさか…。

 

ジョージは恐る恐る穴熊の置物に近づき、杖先でツンツンと突いたけれど何も起こらないのを見るとそっと掌ほどの大きさの置物を掴んだ。

 

 

「──もしかして」

 

 

暫く黙っていたセドリックは、顎に手を当てぽつりと呟く。

 

 

「…怪我をさせず、戦闘不能にしなければならなかった……とか?ノアの魔法はどれも…致命傷を与えるものでしょ?」

「致命傷ってか…まぁ、生物なら死んでたな」

「フレッドとジョージは悪臭で無力化したから……殺してはいない。もし、この試練を本当にヘルガ・ハッフルパフが作ったのなら──ハッフルパフの特徴は慈愛と寛容が含まれるから…相手が僕たちに悪意を持っていても、殺しちゃダメだったんだよ」

「……なるほど」

 

 

 

魔法の使用禁止よりも、その方がまだ納得できる。

って事は、攻撃魔法じゃなくて眠らせる魔法をとか使えば直ぐにクリア出来たのかもしれない。魔法生物に魔法は効きにくい──との通説は、俺には当てはまらないし。

 

 

「とりあえず、ヘルガ・ハッフルパフの試練はクリアだ!」

「イェーイ!」

 

 

フレッドとジョージは手を上げ、パチンと打ち鳴らす。にっこりと満面の笑みで俺たちのところまで戻ってきたフレッドとジョージは、俺たちにも手を上げていて。

 

 

「──やったな!」

「凄いね!」

 

 

俺とセドリックは、パチン、とフレッドとジョージと手を合わせた。

 

 

 

扉を抜け元の場所に戻り、フレッドが台の上に──とりあえず扉と同じ場所にある右端の窪みに穴熊の像を置いた。

 

特に、部屋の中に変化は無く、何か凄い仕掛けを期待していた俺たちはちょっと拍子抜けしてしまった。

 

 

「あと、三つ集めないとダメなんだろうね」

「…どうする?一度、どの部屋も覗いてみる?」

「そうだな…」

 

 

セドリックとジョージの声に、俺は少し考える。

 

 

「──よし、俺がちょっと見てくるから、3人はここで待ってて」

「えっ、大丈夫?」

「多分、失格ならさっきみたいに帰されるだけだと思う。流石に創立者達は生徒を殺すつもりは無さそうだしな」

 

 

不安そうな声をするフレッドに手を振り、俺はとりあえずその隣にある蛇のレリーフが付いている扉を開けた。

 

 

 

俺はそれぞれの部屋を見て、ハッフルパフの試練の時のように現れた銀色の文字を読み──とりあえず戻ってきた。失格か成功かをしなければ扉は開かないかと思ったが、そう言うわけではなく扉の出入りは自由……つまり、途中棄権は有りだとわかった。

 

 

「どうだった?」

「うーん…」

 

 

全てを見てきた俺に、3人が不安げな表情の中に興奮を滲ませて聞く。

 

 

「レイブンクローとスリザリンの試練は、俺しか無理だな。グリフィンドールの試練は……多分、フレッドかジョージか、セドリックがやらなきゃダメだ。俺にクリアする事は出来ない」

 

 

断言する俺に、3人は驚き──俺の説明を聞いて納得した。

 

 

「──確かに。…スリザリンの試練、かなり時間がかかるだろうね…えっと…僕も詳しくは知らないけど、一年だっけ、半年だっけ?」

「実物なんて見た事ないな」

「クィディッチで使用禁止ってことしか知らないや」

「それはどうにかなるとして。問題はグリフィンドールの試練だな」

 

 

俺がクリアする事ができない試練。

危険なものになる可能性があり、手出しする事も失格になるのなら──ちょっと一年生の3人には荷が重すぎる。

 

 

「グリフィンドールの試練は、僕がやるよ。…フレッドとジョージは、ハッフルパフの試練をクリアしたし」

 

 

セドリックが真剣な目で俺たちを見回す。

試練の内容を聞いて、何か策があるのか──それとも、ただ単に一つくらいは自分でクリアしたいという男の意地、なのかもしれない。

死ぬ事はないけど、怪我くらいはするだろう。試練が終われば治癒魔法で治す事は出来るけど、こんな子どもにやらせていいのかなぁ…。

 

 

「大丈夫か?」

「大丈夫。僕に秘策があるから、任せて!」

 

 

セドリックは自信があるのか、大きく頷きにっこりと笑った。

俺とフレジョは顔を見合わせ、そこまで言うのなら任せてみようか、と頷く。

 

──まぁ、無理なら何度か挑戦して作戦を立て直せばいいか。

 

 

「でも、今直ぐは無理かな。ちょっと準備しないといけないから」

 

 

セドリックは困ったように笑い、肩をすくめた。それなら、取り敢えず今日は一度戻って、セドリックの準備が出来たらまたここを訪れよう。

 

そう決めて、俺たちは部屋の外に出た。

 

 

 

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