兄・子世代ifチート能力を駆使して転生人生謳歌します! 作:八重歯
「セブルス先生、後どれくらいですかー?」
「……もう少し待ちたまえ」
そうは言っても既に1時間は経過している。
俺は肌を刺す冷たい風に首をすくめ、ローブを体に強く巻きつけながら真っ暗な空に瞬く星々を見上げた。
雪が降り積もった雪のせいで、木々達は重そうに枝をしならせている。地面にも勿論雪があって、冷気が足元から体中に広がる。
つまり、めちゃくちゃ寒い!
俺のファンからクリスマスプレゼントとして貰ったもこもことしたマフラーと手袋と耳当てをつけ、魔法で暖かい炎を出現させているとはいえ、普通に寒い!セブルス先生よく素手で採取できるなぁ…。
クリスマス中にセブルス先生のお手を煩わせたのと、ホグズミードに姿現しをした事を黙認してくれたお礼として、前回の罰則のように俺は禁じられた森にセブルス先生といる。
今回の目的は、沢山雪が降った後の満月の夜にしか姿を見せないというなんか珍しい虫を採集することだ。その虫はこれまた珍しい花にしか集まらないため、まずはその花を見つける必要があった。
こんな大雪の中でその花を探す事がまず普通ならかなり難しいらしいが、それは一般人の話であって俺のような最強魔法使いには当てはまらない!
森に入って割とすぐに目当ての花と、それに集まる虫を探せたのはよかった。
ただ、セブルス先生は夢中になって花のそばに座り込みせっせと虫を採集し続けている。かれこれ、1時間このままだ。
「喋ってないと寝ちゃいそうなんで、まだかかるなら話し相手になってくれません?」
「……いいだろう」
「もし、100個の中から正解の1つだけを魔法薬を使って見つけ出せって言われたら──どの魔法薬が適任ですか?教えてほしいなー?」
セブルスは俺の質問に手を止めて、ちらりと視線だけを向けた。「いきなり何言ってるんだ」という懐疑的な目に「ただの学術的興味ですよ」と肩をすくめる。
サラザール・スリザリンの挑戦をクリアする為には、魔法薬が必要だが、どうも俺の知識では真に適任な薬が今想像している物であってるのか…いまいち自信がない。
スリザリンの挑戦の部屋の中には、100個の蛇のクリスタルが整然と並んでいた。
現れた銀の文字は『魔法薬を使用し正しき蛇を選択せよ』とだけ書かれていて、本物以外を双子の呪いかなんかで増やしているんだろうな。
それを見た時、幸運の水薬を作って運を無理矢理上げてクリアするんだと思っていた。実際、幸運の水薬は薬師でも作れない人がいるくらい難易度の高いものだし、挑戦に不足ない魔法薬だろう。
サラザール・スリザリンが魔法薬の権威者だというのは広く知られている。きっと間違いないと思っていたが──あの後幸運の水薬の作り方を図書館で調べた時に、幸運の水薬はサラザール・スリザリンが生きていた時代はまだ世に生まれていなかった薬だと知った。
それなら、きっと幸運の水薬ではない、別の方法があるのだろう。──いや、幸運の水薬でもいけそうだけど。
セブルスは俺から視線を外し、花弁に付いている白い虫をピンセットでそっと摘み出してしまう。無視か。──虫だけに。
「……前提として、その物は生物かね?」
「え?──いや、置物です。双子の呪いで増やして、本物がどれかわからない状況…と仮定して」
質問には答えてくれないかと思ったが、意外にも俺と話を続ける気はあるようだ。
「ならば──魔法の効果を無効にする薬がある」
「…解呪魔法の薬版って事ですか?」
そんなのあるんだ。と首を傾げれば、セブルスは俺を馬鹿にするように鼻で笑い、立ち上がった。
セブルスは虫を入れた小瓶を内ポケットに入れ、くるり、と俺と向かい合う。
いつも青白い指先は、雪の寒さで真っ赤になっていてなんかちょっと痛々しいなぁ。
「全く、違う」
「そうなんですか?」
「例えばだが──強い呪いの指輪があるとしよう。闇の魔力が籠る呪具はある程度場数を踏み──優れた魔法使いならば一目でわかる。だが、
「えっと…」
セブルス先生がいきなりペラペラ喋るから驚いてぶっちゃけあんまり聞いてなかったです!
──なんて言ったら一生口きいてもらえなさそうだから、深く考えるふりをする。えーと、なんて言ってたっけ?
それにしても、セブルスめちゃくちゃ上機嫌だなぁ。目当ての虫が沢山取れて嬉しいのか、雄弁だしなんか…授業中みたいにちゃんと教えてくれる。
「つまり。──俺は呪いでもなんでも解ける、万能解呪魔法があると思っていたんですけど、そんなのは無くて…呪いによって解呪方法は違うから…どんな呪いや魔法がかけられているか調べるのが大変…と、いう事ですか?」
「そうだ。──しかし、とある劇薬を使用すれば、どのような呪いでも例外なく解かれる。──無効化する。……呪いだけでなく、魔法器具に垂らせば貴重な魔法器具でも、壊れる。……魔力を破壊する薬と言い換えられるだろう」
そんなとんでもない魔法薬をたかだか双子の呪いで増えたクリスタルにぶちまけていい物なのだろうか。もったいなくねぇ?魔法さえ使っていいなら簡単なのになぁ。──いや、だからこその挑戦か?そんなに貴重な薬を躊躇いなく使う事が出来るかどうか──目的のためならば、手段を選ばない狡猾さ……?いや、狡猾は関係ないな。スリザリンの気質ってなんだっけ。
その魔法薬がどれだけ貴重で調合が難しいかはわからないけど、セブルス先生の言い方的にかなり難しいんじゃないかな?
「なんていう薬なんですか?」
「戻解薬という──禁じられた魔法薬の一種であり、通常の教科書には記載されていない」
「へぇ、禁書棚とかにあったりします?」
セブルスは暫く俺の真意を読み取ろうとじっと俺の目を見ていたが、「なぜ知りたいのだね」と、今更呟いた。
「やだなぁ学術的興味ですよ!──ちなみに、幸運の水薬をつかって、100個の中から1つを選ぶのは可能ですか?間違えると大怪我をすると仮定して」
「……いや、幸運の水薬ならば──誤ったものを選んでも怪我をしない、という結果になる可能性が高いだろう」
「…成程…」
確かに、セブルスの言う通りかも。
運を激上げしても、正しいものを選択できるとは限らないかもしれない。
幸運の水薬よりも、その戻解薬とかいうやつを使った方が確実だろうな。薬師であるセブルスが言うのだから間違いない。
……それで、多分禁書棚にその薬の作り方が書かれた本があるのだろう。
「…その薬、持ってたりします?」
「……戻解薬は、製造も所有も認められていない。厳罰の対象になる」
「そっかぁ」
「そもそも、使用する材料も手に入れるのが困難であり、製造に成功したのは──製作者であるサラザール・スリザリン本人を含め数人しか居ない」
「……へー…」
いや、これビンゴじゃん!
呪いを無条件で解けるなんて、めちゃくちゃ便利そうだけどなんで厳罰の対象なんだろうなぁ。ちょっと調べてみようかな。
「ありがとうセブルス先生!…あ、もう虫はいいんですか?」
にっこりと笑えばセブルスは小さく頷いた。
その夜、早速俺は自身の体に認識阻害──というより、透明化の魔法をかけて夜の図書館へと忍び込んだ。
アロホモラ一つで禁書棚のカギが開くなんて、不用心過ぎるよなぁと思いながら無数の本を見上げる。
どの本に目当ての魔法薬が書かれているのかわからないから、適当に薬について書かれている本を数冊選び、呪いがかかってない事を確認してパラパラと捲る。
「戻解薬…戻解薬……。──あ、これか」
制作期間は1ヶ月。満月から満月まで。
効能は魔力の除去──ああ、そうか、呪いも素を辿れば魔力の塊みたいなものだもんな。セブルスが言ってた魔力の破壊ってこういうことか。
物に対する呪いを解くだけではなく、魔法使いに使用すれば即死する毒になってしまうらしい。それで、扱いが難しくて禁じられてるのか。
なんか複雑そうな製造方法に、見たことも無い材料が並んでいる。
問題は材料をどうやって集めるか、だな。禁じられた森かセブルスの個人薬草棚とかにあれば、ちょっとパチるんだけど。
俺は本を辺りを見回し──誰も見てないのは確実だけど、一応──そっとローブの中に本を隠した。