兄・子世代ifチート能力を駆使して転生人生謳歌します!   作:八重歯

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23 能力の有効性

 

 

ある日の土曜日。

俺はフレジョと共に校庭を横切り、禁じられた森の前に来ていた。

 

 

「マジで入るの?」

「この森には色んな薬草が生えているらしいんだ」

「俺たちの悪戯にぴったりの薬草があるかもしれない!お小遣いで買うのも…残念だけど、万年金欠の俺らには難しいからな」

 

 

様々な悪戯専門魔法道具を開発しているフレジョは、ついに禁じられた森に手を出す決意をしたらしい。前々から目をつけていて様子を伺っていたらしく、有効な魔法を覚えてからにしようと思っていたが、この前俺がめちゃくちゃすごい魔法使いだと知った2人は、俺さえいればどうにかなるだろうと考え──まぁつまり俺は2人のボディーガードである。

 

 

「この森に入るには障害がひとつある」

 

 

ぴっ、と人差し指を立て、演技かかった口調でフレッドが言う。その隣に並んだジョージも「ああ、俺たちが越えるべき新たな試練だ」と人差し指を立てていたが、吠える犬の声と、どたどたと走り寄ってきた地響きに気付くとと2人同時に指をそちらに向けた。

 

 

「「ハグリッドだ」」

「お前さんら!森は入っちゃならん!」

 

 

けたたましく吠えるファングと共に、顔を顰めてハグリッドが小屋からやってきた。

森番であるハグリッドはダンブルドアからの仕事を忠実にこなし、森を監視し、生徒が面白半分で入ることのないようにしている。

 

 

「お前さんら…ウィーズリー家の双子だな?チャーリーから悪戯好きの弟達が今年入ると聞いとったが…」

「はじめましてハグリッド!俺はフレッド・ウィーズリー」

「俺がジョージ・ウィーズリー!よろしく!」

「お、おう。よろしくな」

 

 

人懐っこいフレジョの笑顔に、ハグリッドは険しい表情を少し緩めた。そういやハグリッドはチャーリーと仲良しだって…なんか原作で見た気がする。動物にかけての熱意が凄いんだっけ?別寮だからチャーリーとかビルとかパーシーとかはまだ話したこと無いんだよなぁ。ちらって大広間で見た事はあるけど。

 

 

「そんでお前さんは……ノア・ゾグラフだな」

「ん?俺のこと知ってるんだ。よろしくなー」

「そりゃあ…まぁ、お前さんは目立つからな」

 

 

しかし、ハグリッドに俺の魅力はあんまり影響が無いのか、小さな俺を見下ろして少し笑うだけだった。

半分人間で、半分巨人のハグリッドには俺がどれだけ──世界一素晴らしい見た目だとしても、対象外なのかもな、色んな意味で。

 

 

「そんで…。この森に入っちゃならん事は知っとるだろ?早く学校に戻れ」

 

 

しっしっと手を払うハグリッドに、フレジョはつまらなさそうに文句を言いつつ、俺をチラチラと見る。

……俺にどうにかしろってことか!けどなぁ、ハグリッドはその他大勢みたいに「お願い♡」で聞いてくれるかどうか。半巨人って魔法効きにくいんだよな。

ま、試してみるか。

 

 

「…ハグリッド、少しだけ森に入っちゃダメかな?──お願い♡」

 

 

ハグリッドの腕をポンポンと叩きつつ、きゅるるんとした目で見上げてみた。

ハグリッドは一瞬目を見開き頬を染めたけど──お、脈アリ?──と思った頃にはぶんぶんと首を振って「ならん!」と思わず頷きそうになった考えを振り払うように叫んだ。

 

 

「ダメだ!そんな事しちゃあ…。ダンブルドア先生は、生徒が勝手に入ることを望まねぇ。森には──まぁ、危険な奴らもいるからな、俺ぁ…愉快だとは思うが──と、とにかく、ダメなもんはダメだ!」

 

 

危険、だと言う時にちょっと嫌そうに言うあたり、ハグリッドはマジで森に住んでいる魔獣の事を愉快な奴らだと思ってるなこれ、学生時代からアラゴグを飼うくらいだもんなぁ。かなり危険な魔法生物も、ハグリッドにとっては可愛いペットだと思ってそう。

 

ならば、そこを突けばハグリッドの攻略はできそうだ。

 

 

「ハグリッド、俺さー森の中にいる魔法生物に興味があるんだ。魔法生物、大好きだから」

「お前さんが…?」

「まぁね。この前森でコカトリスに会っ──」

「コ、コカトリスに会った?」

「──うわっ!」

 

 

ハグリッドは目をキラキラ輝かせ、俺の肩に大きな手をばしんと置いた。ハグリッドにとっては軽く手を置いたつもりでも、膝カックンされたかのようにがくんと体が下がる。

 

 

「あー。セブルス先生と罰則で森に入った時にな、なかなか素直な可愛いやつだった」

「そうだろう?アイツらは縄張りに近づかんかったら優しい奴らでなぁ…」

「うん、縄張りに入らなかったら人を傷付けないって言ってた」

「……言ってた?」

 

 

ハグリッドが怪訝な顔で俺を見下ろす。ハグリッドはほぼ真下を見ているし、俺の首もほぼ真上を見上げている。

く、首痛くなりそう。

 

 

「ああ、俺は知能がある生物なら何とでも話せるんだ。だから魔法生物とも話せるってわけ」

 

 

ハグリッドは俺の言葉にもじゃもじゃ髭の奥に隠された口をぽかんと開けて、目は零れ落ちそうなほど見開いた。

 

 

「そんな…事が……?」

「嘘だと思うなら、1匹連れて来てよ」

 

 

ニヤリと笑えば、ハグリッドは暫く黙った後、俺の肩から手を離し森に数歩近付く。

そのまま森に向かってピィーと指笛を吹いた。さて、誰を呼ぶつもりなんだろ。流石に──アラゴグを森の外には出さないだろう。多分、いや、そう信じたい。

 

 

少しすると森の奥から何かがこちらへ向かって来ているのだろう、木々の梢や茂みが擦れるざわざわとした音が聞こえて来た。

フレジョは一体何が来るのか、俺がまさか魔法生物とも話せるなんて思わなかったのか、ワクワクとした目で森の先を見ているが──流石に警戒しているのか、ちょっと森から離れた。

 

現れたのは、胴体から後は馬のようで、前は巨大な鳥のような大きな生き物だった。

 

 

「ヒッポグリフか」

「でっか!」

「うわ、爪が凄い」

 

 

ハグリッドの側に現れたのは、どう見てもヒッポグリフだ。ジョージはデカいって言うけど、うーん。映画で見た程の大きさは無い気がする。まだ幼体かもな、あの大きさになるのは5年後…な、わけだし。

 

ハグリッドはヒッポグリフに向かって頭を下げる。ヒッポグリフもまた、同じようにお辞儀をして、キラキラとした大きなオレンジ色の目でハグリッドを見つめ、くるくると甘えたような声を出しその大きな手に擦り付いた。

 

 

「お前さん、本当に魔法生物の言葉がわかるんなら……コイツの名前言ってみろや。…ヒッポグリフの生態は知っとるか?」

「うん、礼儀を持ってお辞儀するんだろ?」

 

 

ぶっちゃけ話さないでもハリポタファンのおれはこのヒッポグリフの名前を知っているが、何か話してからじゃ無いと怪しまれそうだな。

 

俺はヒッポグリフの前に立つ。ヒッポグリフはハグリッドの手に頭を擦り付けていたが、すぐに頭を起こすと、じっと俺を見つめる。

 

瞬きをせず、ヒッポグリフを見つめたままお辞儀をすれば、ヒッポグリフはすぐに前足を曲げて俺に頭を下げた。

 

 

「俺の名前はノア。君は?」

「僕、バックビーク!ハグリッドがつけてくれたんだよ」

「へぇ、良い名前だなぁ」

「そうでしょ!?」

 

 

ヒッポグリフ──もとい、バックビークはくるくると言葉にならない鳴き声を出し、俺の体に甘えるように頭を擦る。頭から首への羽を撫でれば、嬉しそうに大きな羽をばたつかせた。

 

 

「この子はバックビークっていう名前らしいな」

 

 

バックビークを撫でながらハグリッドを見れば、ハグリッドはつぶらな黒い目を瞬かせ、「本当に…言葉が分かるんか」と呟いた。

 

 

「コカトリスとも、不死鳥とも話せたからな。魔法ペットショップにいる動物とも話せたし…ま、多分どんな生き物とも話せる。知能のない虫は無理だけど。──ハグリッド、俺に楽しいやつら紹介してくれないか?」

「む……うぅむ……」

 

 

ハグリッドは唸り、どうしたものかと頬をぽりぽりと掻く。

俺の特殊能力を知って、他の魔法生物とも話せるのか気になっているけど、ダンブルドアとの約束を破るわけにはいかないという、二つの間で揺れているんだろう。

 

もう一押しかな、と思っていると、バックビークが俺のローブの袖を嘴でくいくいと引っ張った。

 

 

「ねぇ、ノア。ここに来る時に、森の奥に怪我をしてるユニコーンが居たよ」

「まじ?結構ひどい怪我だった?」

「うーん。わかんない。ハグリッドに伝えて?」

「オッケー」

 

 

バックビークからの伝言を伝えるべく、唸るハグリッドの腕を叩いた。

 

 

「ハグリッド、バックビークが森の奥に怪我してるユニコーンを見たって言ってる」

「何!?ほ、本当か!?いかん!すぐに手当てせんと…!周りに同種はおらんかったか?」

「バックビーク、周りに他のユニコーンはいたか?」

「ううん、いなかった」

「居なかったってさ」

 

 

ハグリッドは真剣な目をして頷くと、一度小屋に戻り弓矢やら何か大きな鞄を背負い、ファングを引き連れて戻ってきた。

 

 

「バックビーク、案内してくれるか?」

 

 

ハグリッドは足を曲げてバックビークに伝える。真剣な眼差しを受けて、バックビークはその言葉がわかったのか、くるくると鳴き声を上げて森の中へ先導した。

 

 

ハグリッドはその後を追いかけたが、すぐにくるりと俺たちの方を振り返る。

 

 

「森には入っちゃならねぇぞ!」

 

 

ちゃんと俺たちに忠告する事は忘れずに、それだけを言うとハグリッドはバックビークとファングと共に森の中へ向かう。

残された俺とフレジョはにっこり笑って手を振り見送った後。

 

 

「──さ、行こうか」

 

 

悪戯っぽく笑って森の中へ向かった。

 

 

「ノア、魔法生物とも話せるなんてなぁ」

「流石俺だろ?」

「いやーもう君に不可能は無いんじゃない?」

「世界最強の魔法使いってのも、本当なのかもね」

「まぁな。…あ、行くのはここまでだ。流石に奥に行ったのがハグリッドにバレたら厄介だろ?」

 

 

まだ森の入り口が少し見えるここならそれ程凶暴な魔法生物は来ないはず。フレジョは流石に奥まで行くつもりはなかったのか、頷くとすぐに木の根元や地面を見下ろし何か良い薬草が無いかと探し出した。

もう厳しい冬は終わりに向かっているとはいえ、地面にはうっすら雪が積もっているし普通にめちゃくちゃ寒い。どうせなら夏に来れば良いのに。

 

 

フレジョは俺の視界の範囲内で幾つかの薬草や生えていたキノコを無造作に採取し、ポケットの中に次々と入れた。

 

ぶっちゃけ俺は最高の知能を持ってるわけではないから、2人が採ったモノがどんな効果がある薬草とキノコなのかはわからない。まぁ、これから実験に使うなら危険かどうか、ちゃんと2人は調べるだろう。

 

 

「──よし!1回目にしてはたくさん採れたな!」

「ああ、部屋に戻って色々試してみようぜ」

 

 

フレジョは満足そうに言うと悪戯っぽく笑った。

 

 

「んじゃ、帰るか。2人だけで森入るんじゃねーぞ?」

「うん、わかった!」

「また来よう!」

 

 

俺たちはハグリッドが戻ってくる前に森を出て、フレジョはグリフィンドール寮へ、俺はハッフルパフ寮へ向かった。

 

 

 

 

その日の夜、大広間で晩御飯を食べた後ハグリッドに声をかけられ、本当に怪我をしたユニコーンが居たと教えられた。

どうやら他の魔法生物に襲われたわけではなく、好奇心旺盛な子どもユニコーンが群れからはぐれ、ちょっとした荊道を潜ってしまって身体中に細かい傷を負ったそうだ。その荊が絡みつき、抜け出すこともできず困っていたらしい。

 

 

 

「ノア、ちぃっと力を貸してくれんか?」

「ん?何すんの?」

「ユニコーンなんだがなぁ…かなり、警戒しとる。会ってやって欲しいんだが…」

「ああ、いいよ」

 

 

 

食後の紅茶を飲み立ち上がれば、セドリックも同じように立ち上がり俺の服の袖を引っ張った。

 

 

「ユニコーンがいるの?僕も見に行きたい!」

「おまえさんは…?」

「僕、セドリック・ディゴリー」

 

 

よろしく、とセドリックが人の良い笑顔を見せれば、ハグリッドはにこりと笑って頷いた。

ハグリッドに連れられて、すっかり暗くなった校庭を横切りハグリッドの小屋へ向かう。今日は晴天のようで無数の星や月が照らしているからか、ルーモスをしなくてもギリギリハグリッドの広い背中が見える。

 

 

「セドって、魔法生物好きなのか?」

「うん、ユニコーンってなかなか会えないしね」

 

 

ハグリッドの小屋の中は、雑然としていて几帳面な性格ではないのが一目でわかる。イタチの死骸が数体梁からぶらさがっていて、ユニコーンに会える喜びで目を輝かせていたセドリックは顔を引き攣らせ、一歩後ろに下がった。

暖炉の前で毛玉のついた灰色の毛布の上で寝ていたファングが顔を上げ、客人の訪れに大興奮し、尻尾をちぎれんばかりに振りながら俺の元に駆け寄り飛びかかろうとしてきた。

 

 

「おすわり」

 

 

流石に涎まみれにはなりたくない。

少し強めに言えば、ファングは前脚でブレーキを掛け、ぴたりと目の前で止まるとお行儀良くおすわりをした。

 

 

「おー。グッボーイ!」

 

 

ファングは大きな声で「いい子!!」と一声叫び、期待を込めて俺を見上げていた、とりあえず、頭を軽く撫でてやり、小屋の奥へ向かったハグリッドの元へ向かう。

 

 

「ユニコーンだ…うわぁ…綺麗だね…!」

 

 

セドリックは初めて見たユニコーンに嬉しそうに声を弾ませた。

純白ではない、うっすら灰色がかった子どもユニコーンは清潔そうなタオルと、沢山の干草の上に座っている。

だがハグリッドが近付くとその目に警戒の色を滲ませ、これ以上来るなと威嚇していた。

身体中に細かい傷があり、銀色の血が固まり、灰色の毛にこびりついている。特に酷いのは後脚だな、多分荊が絡みついた時に抜け出そうと暴れたんだろう。

 

 

「まだ子どもだけどな、大人になりかけて…人間の男に対して警戒しとるんだ。怪我のせいもあるかもしれん…手当てもろくにさせてくれん」

 

 

ハグリッドは心配そうにユニコーンを見つめ、しゃがんで手をゆっくりと差し出すが、ユニコーンはすぐに身を引いて唸ってしまう。子どもユニコーンは好奇心旺盛で男でもそれ程嫌っていないというが、流石に群れから離れて怪我してる状況では警戒心を緩める事はないんだろう。

 

 

「触らないで!何するの!?私を、かえして!」

 

 

ユニコーンはひどく心細そうな声で叫んでいる。ハグリッドは「おお、無理するな!」と慌てたが、ユニコーンは怯えたような目を向け、逃げるように足を動かす。逃げ出さないのは、足の怪我のせいなんだろう。

 

 

「落ち着け、この男はお前の怪我を治したいだけだから」

「っ…!?あ、あなた、言葉が…?」

「うん、分かるよ。…この男はハグリッド、俺はノア、奥にいるのがセドリック。…怪我を治したらすぐに群れに返してやるから」

 

 

ユニコーンはまだ不安そうな顔をしていたけど、俺が話せると分かると警戒の色を少し緩めた。ちらちらと俺とユニコーンを見るハグリッドの体を叩き、変われとジェスチャーで告げ、ユニコーンの前に立つ。

そっと手を差し出せば、ユニコーンは暫く俺の目を見つめた後、ゆっくりとその手に頬を擦り付けた。

 

ユニコーンはまだ抱えられそうなほど小さい。優しく持ち上げれば、ユニコーンはくるくると甘えたような声をあげ、その暖かな体を俺に委ねた。

 

 

「…ノア…ユニコーンと話せるのかい?」

「ユニコーンというか、俺ってどんな生き物とも話せるんだよ」

「え…そ、そんな魔法使い、聞いたことない…」

 

 

セドリックは驚きつつ、目を閉じて微睡むユニコーンと俺を呆然と見る。

ユニコーンを抱いたままセドリックに「撫でてみれば?今落ち着いてるし」と言えば、セドリックはおずおずと手を差し出し、柔らかなユニコーンの背を撫でた。

 

 

「ハグリッド、とりあえず怪我さえ治れば群れには返してやるって伝えてるから」

「おお、悪いな。…お前さん、本当にどんな魔法生物とも話せるんだなぁ…いい才能だ」

 

 

ハグリッドは羨ましそうに呟き、棚の中から手のひらに収まる程度の小さな瓶を取り出す。中には白いとろりとした物が入っていて、指先でそれを掬うとユニコーンの足にちょんちょんとつけた。

ユニコーンはぴくりと体を震わせたけれど、俺に抱かれているからなのか、逃げ出そうとはしない。

 

 

「薬だ。すーぐよくなるからな」

「薬だってさ」

「…わかった…」

 

 

ユニコーンは小さく頷く。

またタオルと干草の上に乗せれば、ユニコーンは薬のついた前脚を気にかけていたが、舐めとったりタオルに擦り付ける事はなかった。

 

その後俺とセドリックはハグリッドから紅茶を勧められ、でかいカップに入った紅茶と、めちゃくちゃ硬いロックチョコケーキを食べた。

 

 

 

 

 

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