兄・子世代ifチート能力を駆使して転生人生謳歌します! 作:八重歯
クィディッチシーズンがやってきた。
俺とセドリック、そしてフレッドとジョージの初試合であり、第一試合目はグリフィンドール対ハッフルパフだ。
寮チームの秘密兵器として俺のことは一応極秘、となっていたが、ハッフルパフの練習を見にきた人がすぐに俺の存在に気づきすぐにホグワーツ中に広まり、それは極秘でも何でもなくなってしまっている。
一応、キャプテンのナンシーは黙秘を続けていたが日を増すごとにハッフルパフの練習を観戦する者が多くなっていた。最早ハッフルパフ生だけではなく、最終的にはほぼ全生徒が見にきていたため、極秘でも何でもないだろう。
俺はセドリックと共に更衣室に向かい、他の選手が扉の前で待つ中さっさと着替える。
見られても減るもんでは無いのだが、着替えている時に俺のチラリズムを目撃した生徒は暫く鼻血が止まらなくなり気絶してプレイする事が不可能になってしまうため、ハッフルパフのチームメンバーはみんな俺の着替えを待つのだ。
まぁ、セドリックはもう1年以上俺と寝室が同じだし何度も着替えを見ているからちょっと気まずそうに頬を染めて目を逸らすだけですんでいる。
余談だが、俺は一般生徒が与えられているシャワールームを使う事が出来ず、特別に教師専用のシャワールームを使っている。
それも、勿論俺の裸体を他の生徒が見ることのないようにだ。
一年生の時、何の疑問も抱かず普通に脱いだ瞬間、脱衣所は沢山の人の血とあんまり直視したくない体液で汚れ大惨事になってしまったのだ。──まぁ、うん、特別措置も仕方がない。
俺が着替え終わると他のチームメンバーも入り、いそいそと着替え始める。
全員の準備が終わったところでナンシーがメンバーを集め円陣を組んだ。
「いいか?ノアの守備は鉄壁だ。しかし、油断は禁物。必ず得点につながる動きをすること。そして、セドリックはなるべく早くスニッチを見つけるんだ。──今年は最高のメンバーが集まった、私は、今年こそハッフルパフが優勝杯を取得すると確信している。……さあ、出陣だ」
ナンシーの声にメンバーはそれぞれ頷き握り拳を合わせ相棒の箒を手にしグラウンドへ続く扉へと向かった。
「セド、緊張してるのか?」
隣にいるセドリックの表情は固く、ぐっと口を結んでいて顔色も悪い。
セドリックは俺を見て眉を下げると「そりゃあね」と小声で呟いた。
「大丈夫さ、お前は最高のシーカーだ。後ろは俺が守るから、さっさと試合を終わらせちまえ」
いつもより丸まった背中を強めに叩けば、セドリックはぎこちない笑みを浮かべ、箒を持つ手に力を込め、強く頷いた。
グラウンドに出れば大歓声が空から降ってくるように聞こえ、観客席には無数の赤色と黄色の旗が踊る。割合で言えば黄色の旗が多く、スリザリン生らしき生徒も一生懸命手を伸ばし「ノア様ー!」なんて言いながら黄色い旗を振っている。
その声援に答え観客に向かって笑顔を見せ手を振れば、黄色い悲鳴が上がり何人かが気を失ったのか、蠢く頭の数がいくつか減ってしまった。
グリフィンドールの選手もグラウンドに登場し、その中には勿論フレッドとジョージもいた。
全選手が中央で待っていたフーチの周りに集まったところで、フーチが選手達を見回し口を開く。
「さあ、みなさん。正々堂々戦いましょう。──よーい──箒に乗って──」
箒に乗り、地面を強く踏み締める。
場の空気に当てられたのか、流石の俺も少し緊張していて心臓がドキドキと高鳴っていた。ああ、なんか、青春って感じ!
ピーーッ!!
フーチの銀の笛が高らかに鳴った。
その瞬間選手達は空に駆け上がり、高く、さらに高く空を飛ぶ。
俺はすぐに自分の守るべきゴールの側へ向かい、少し先でクァッフルが次々と選手の間を行き交うのをじっと見ていた。
うーん、全体的な動きだと、やっぱグリフィンドールの選手の方がうまいな。ナンシーも頑張ってるけど、グリフィンドールのチェイサーがめちゃくちゃ上手い。というか、チームの全体的な動きが速いし意欲的だな。
ハッフルパフ側も頑張ってるけど、今ひとつ調子が上がりきっていない。
ゴールに向かって投げられたクァッフルを余裕で捕まえナンシーに投げ渡していると歓声と共に実況者のリーの声が響き渡っていた。
「──蝶か?ヴィーラか?いや、ノア・ゾグラフです!グリフィンドールからの攻撃を難なく防ぎました!華麗すぎる!美しさが止まることを知りません!入手した情報によると、ノアはシーカー希望だったようですがあまりの美しさに見惚れてしまい他の選手がノックアウトされ練習不可となったようです、凄いですね──またノアが防ぎました!まさに、鉄壁の守護神!」
ノア様!ノア様!──なんて歓声に笑顔で手を振り、再びゴールに迫っていたグリフィンドールのチェイサーにウインクをすれば、彼は顔を真っ赤にしてあらぬ方向にクァッフルを投げるミスをしてしまい、すぐにナンシーがクァッフルを獲得した。
何分も互いに得点を奪えないまま試合が続く。俺の守りは勿論完璧だが、かといってチェイサー達はグリフィンドールの選手に翻弄されうまく得点に繋げる事ができていない。
「──1番動きが良かったやつは俺とツーショット!サインキスマーク入りだ!」
ゴールに飛び込んできたクァッフルを弾き返しながらチームメンバーに叫べば、彼らは一瞬箒から落下しかけたがすぐにしがみつき姿勢を低くすると先ほどとは比べ物にならない必死さで貪欲にプレイし始めた。
「ノアのサインキスマーク入りツーショット写真だって!?それは俺が最高の実況をしても貰えるものなのでしょうか──」
「ジョーダン!!」
「失礼しました先生、しかしノアには本気で検討して欲しいものです!──おおっと!あれはハッフルパフのチェイサー、ダン・ルーシェル選手!彼は積極性にやや難ありの選手でしたが──ごらんください!驚異的な貪欲さ!必ずゴールしてみせるという気迫がここまで届いています!──グリフィンドールのキーパー、ウッド選手、止められるか!?──どうだ?──ああっと!ゴール!!ハッフルパフ先取点!!」
ハッフルパフの爆発的な大歓声が響く。
ゴールを決めたダンはガッツポーズをして雄叫びをあげ、俺をチラリと見て嬉しそうに破顔した。
ダンに負けられないとばかりに他の選手達も突き進むブラッジャーを恐れることなく貪欲に勝利を──いや、俺のご褒美を──目指した。
「動きました!!新シーカーのセドリック・ディゴリーです!まさかスニッチを見つけたのか!?──グリフィンドールのシーカー、エリック選手も後を追う!──おおっと危ない!ブラッジャーが両シーカーに襲い掛かりましたがフレッドかジョージが見事防ぎました!──さあ、どっちも速い、速い!!──いいぞ!頑張れ!──スニッチを掴んだのは──」
2人のシーカーが急降下し、キラキラと輝く黄金のスニッチに手を伸ばす、ほぼ同時に何かを掴むような手の動きをして、転がるように地面に降り立った。
歓声とどよめきが響き、観客は背伸びをしてどちらが勝ったのか見ようとしている。
先に立ち上がったのは──セドリックだった。
「セドリック!セドリック・ディゴリーです!ハッフルパフ、170対0で勝ちました!」
セドリックは泥だらけの顔に満面の笑みを浮かべ、手に握りしめているスニッチを観客に向けて掲げる。歓声と足を踏み鳴らす音が響く中、試合が終わり選手達はそれぞれの健闘を讃えつつグラウンドに降りてきた。
「ノア!やった!」
「よく掴めたなぁ、お疲れ様!」
「みんな、凄くいい動きだったわ!私たちの勝ちよ!」
チームメンバーは興奮と感激で目に涙を溜めるナンシーに背を叩かれ頭をがしがしと撫でられ、少しむず痒そうにしていたが嬉しそうに笑い合い、勝利の余韻に浸った。
「キャプテン、今日1番の功績者は?」
ナンシーに聞けば、ナンシーはぐるりと選手達を見回し「そうね、みんな最高だったけど場の流れを変えたのはやっぱりダンかしら」と答えた。
ハッフルパフ5年生のダンは、顔を真っ赤にして照れたように頭を掻く。たしかにダンの得点から流れが変わり動きもよくなっていた。──俺のご褒美パワーだとしてもだ。
「よし、おめでとう、ダン!」
「あ、ありが──」
手をくるりと回転させ、カメラを出現させ、30センチは軽く俺よりも身長が高いダンの胸元を掴み無理やり頭を下ろさせると、そのまま体を密着して腕を伸ばしパシャリ、とシャッターを押した。
「──いい写真だ。あとは──こうして──」
再び手を回しペンと色付きリップを出現させてさらさらとサインを書き──モデルになった時に練習させられたのだ──唇にリップを塗り、そのまま写真に口付けた。
「はい、ご褒美!」
完成したキスマークサイン付きツーショット写真を渡せば、ダンはぽかんと口を開いていたがすぐに顔どころか皮膚全てを真っ赤に染めへなへなとその場に崩れた。
俺の行動を見ていた何人かが「羨ましい!」「リップになりたい!」と叫び、帰りかけていた観客達も野次を飛ばす中、俺は少し乱れていた髪をさらりと後ろに流して観客に向けて投げキッスを送り手を振った。
「これからもハッフルパフチームを応援よろしく♡」
俺の投げキッスが向かった先にいた観客達は必死にそれを──何もないのだが──つかもうと手を伸ばし、ドミノ倒しのようにばたばたと崩れていく。
「うわぁ……」
「医務室は大繁盛だな」
「死者が出ないといいけど」
セドリックとフレッドとジョージが死屍累々とした光景を見て引き気味に呟いた。