兄・子世代ifチート能力を駆使して転生人生謳歌します! 作:八重歯
クリスマス休暇が終わり、授業が開始された週の初めての土曜日。
俺とセドリックとフレッドとジョージの4人は試練の部屋を訪れていた。
「今日で全部クリアできるのかな」
「多分な、薬は出来上がったし。これで間違いなくスリザリンの試練はクリアできるはずだ」
「思ったより長かったなぁ」
「創立者殿はなかなかハードな試練ばかりだったな、まじで」
ジョージのしみじみと呟く声を聞きながら、俺はスリザリンの試練が待ち受けている扉の前に立った。
この先に向かうのは俺だけでいいだろう。この薬はかなりの劇薬だし、万が一彼らが触れたらちょっと洒落にならないことになってしまう。
「じゃあ、さくっとクリアしてくるから待っててくれ」
「頑張れよ!」
3人からの声援を受けつつ、俺は最後に残っていた扉を開いた。
他の部屋より少々狭く感じるその部屋には、入った時から100体のクリスタル──水晶の蛇の像が悠然と並んでいた。
床の上に所狭しと置かれたその像に一歩近づけば、何もない空間にふわりと銀色の文字が現れる。
──サラザール・スリザリンの試練
魔法薬を使用し正しき蛇を選択せよ──
銀色の文字はしばらく浮かんでいたが、スルスルと一箇所に集まり高さ30センチくらいの細長い台座を作る。
この台座の上に、正しい蛇の像を置けという事なのだろう。
俺は手始めに1番近くにあったクリスタル像を手に取る。つるりと滑らかでとぐろを巻いている蛇の像。かなり精巧な作りであり、よく見ると鱗の一枚一枚丁寧に彫られていて、透明でなければ生きているかと思うような不思議な艶かしさがある。
ポケットから小瓶を取り出し、指先でコルクをくるくると回し蓋を開ける。
そのまま像にかけようとして──。
「──これって、床に垂れたらどうなるんだ……?」
勿論手にかからないように注意はするが、あまり大量の薬をかけて、それが垂れて落ちた場合。床は──ホグワーツ城は無事なのだろうか。なんかめっちゃ魔法かかってるとかハーマイオニーが言ってなかったっけ……俺は読んだことはないけど、ホグワーツの歴史に書いてある。って、小説の中で言ってたよな?
そもそも、この部屋は魔法で隠されていた部屋だ。魔力を破壊し魔法を強制的に排除するその薬がこの城のどこかに付着する。……なんかやばい気がする。
傾きかけていた瓶を元に戻し像をそっと床の上に置いて、鞄の中を探って細いスポイトを取り出す。これは魔法薬の授業で使う、何の変哲もないただのスポイトだ。たぶん、これには魔力なんて込めれていないだろう、魔法道具ではないし。
そっと薬の中にスポイトを突っ込んでみたが、やはりスポイトは溶けて無くなる事はなかった。
そのままほんの僅かな雫分だけを吸い上げて、慎重にぽたり、と像に落とした。
蛇の頭の上に落ちた雫は、タバコのような細い紫煙をあげる。ぱきぱきじゅうじゅうと何かが溶ける──解けるような音がしたと思った瞬間、目の前にあった蛇の像は煙のように消えた。
床に変化はあるかと暫く見つめていたが、どうやらほんの僅かな雫では蛇の像を存在させていた魔法を消しただけで済んだようだ。──つまり、やっぱりこの像は魔法で増やされているものに間違いは無い。
「……これ、成功するまでやらなきゃならないのか……」
かなり神経の使う方法だったが仕方がない。
俺はその場に座り込み近くにある蛇の像を引き寄せると、一体ずつ雫を落としていった。
部屋の中にある蛇の像が一体、また一体と順調に消えていく中、ついに70体以上を消した時に薬をかけても消える事のない美しいままの像を見つけることが出来た。
「…これか……」
残った薬は後でこっそり処分しようと決め、しっかりと蓋をして内ポケットに入れる。
像に薬が付着したままの可能性があるため鞄の中から白い普通のタオルを取り出し、像に直接触れないように持ち上げた。そのままそっと──間違っても落とさないように──台座の上に置けば、向こうの景色が見えるような透明だった像は黒く染まり、その開いた目は金色に輝き始める。
タオルは魔法で燃やし──燃やすことが出来るのか少し心配だったが、しっかりと燃えてくれた。ただし、俺が火を消す前に勝手に消えたが。きっとこれは薬の効能だろう──まじまじとバジリスクによく似た蛇の像を見る。
それは暫く色を持っていたが、次第に水に溶けるように薄くなっていき、また元の水晶の像に戻った。
気がつかなかったが部屋にあと30体ほど残っていた像はいつの間にか消えていて、残されたのは台座の上にある蛇の像のみだ。
おそらく、クリアだったのだろう。
「…なんつーか。盛り上がらねぇなあ」
めちゃくちゃ面倒くさくて、俺じゃなければ試験の中で最も難易度の高い試験だっただろう。しかし方法はまあまあ地味であり、他の3つの試練をクリアした時ほどの感動は薄い。
普通の人なら、この薬を作るまでにとんでもない金と時間と運が必要であり、クリアした時の喜びと達成感は半端なかったんだろうなと思いながらその蛇の像を手に取り軽くぽんと上に投げた。
「あ、おかえり!どうだった?」
「余裕余裕!」
スリザリンの試練の扉を開け、3人が待つ部屋に戻ればすぐにセドリック達が駆け寄って来た。成功の証である水晶の蛇の像を見せれば、3人は目を輝かせ興奮したように「やった!」「おめでとう!」「全部クリアだ!」と叫びそれぞれ握った拳をぶつけ合う。
「じゃあ、これを台座に置いて──」
俺は大理石の台座の前に立ち、最後に残っていた窪みに蛇の像を納めた。
ごくり、と3人の誰かが固唾を飲む音が聞こえる。俺たちは自然と部屋の中央奥にある一際大きな扉を見つめた。
──かちゃり
それは微かな音だった。
何の変哲もない、ただ鍵が開錠されただけの小さな音。
俺たちは顔を見合わせすぐにその扉に駆け寄る。俺が1番初めに両扉の取手に手を伸ばしたが、セドリック達は緊張と興奮に満ちた表情で見つめるだけでなにも言わなかった。
両手でしっかりと取っ手を持ち、押し上げる。見た目の厳かな雰囲気とは異なり驚くほど軽く扉は開いた。
「──これは──」
薄暗い先ほどの部屋とは違い、その部屋は煌々とした灯りに照らされた明るく暖かい。
部屋の広さは一つの教室分ほどだろう。壁を隠すように本棚があり、沢山の本が収められていた。部屋の奥には芸術品かと思うほどの彫刻が熟されているマントルピースがあり、その真ん中には暖炉が温かな火を燃やしている。部屋の中には談話室のような──しかし、どうみてもかなり高級品で貴族の家にしかなさそうなソファやローテーブル。キャビネットがどっしりと置かれている。足裏から伝わる感触が柔らかいのは、おそらく毛足の長い灰色のシャギーラグがあるからだろう。
埃や汚れはなく、澄んだ空気が漂う部屋に、セドリック達は「うわぁ…」と感嘆の声を漏らした。
「この部屋が、クリアした後のお宝?」
「居心地は良さそうだけどね」
フレッドは少し期待はずれだったのかつまらなさそうな声をあげた。確かにあんな面倒で難易度の高い試練を四つもクリアした報酬がただの豪華な部屋なのは少々物足りないと思ってしまうのも頷ける。
俺たちはとりあえず豪華な真紅色のソファに座り、部屋の中をキョロキョロと見回した。
「談話室より豪華なのは豪華だね」
「試練にクリアしたのは僕たちが初めてなのかな?他にもこの部屋を知ってる人はいるのかなあ」
「うーん、まぁいい隠れ家にはなるな。フィルチから逃げる時の」
たしかに隠れ家にはなるかもしれない。ただ必要の部屋の存在を知っている俺からしてみれば、あまり二つの部屋に差はないような気がして不満げなため息をこぼしてしまった。
「でもさあ、俺はもっとなんか凄いものが──
「──ここは、謂わばサービスのようなものだからな」
低く喉の奥で笑うような声が聞こえ、俺たちは一斉に声のした方を振り返った。
「あらまあ。まさか、こんなにも若いなんて。何年の時が経っているのかはわからないけど、凄いわねぇ」
「……おかしいですね。間違いなく未成年は入れないようにしたのですが」
「未来には、私たちがまだ知り得ない魔法がある、ということだろうな。若いものが才能に溢れ優秀な未来は、私たちの望んでいた未来だ!」
「……ふん、まぁ私の薬を作るほどだ。優秀でなければおかしい」
入ってきた扉の前に立っていたのは、見覚えのある2人の魔法使いと2人の魔女だった。
彼らの肖像画はホグワーツの校長室近くの廊下に飾ってある。ただ、他の肖像画と違い彼らは動くことも、話すことも無い。そこにいた人たちが今、俺たちの目の前で見定めるような眼差しを向けていた。
「──おいおい。これは夢か?」
「じゃなきゃマボロシだな」
「……う、嘘だ。──まさか、貴方達は……」
セドリックの震える声に、4人は楽しげに笑うと胸を張り俺たちを見下ろす。
「私はゴドリック・グリフィンドール」そう答えたのは赤毛とたっぷりとした髭を持つ体格のいい、緑色の目をした男だった。
「私はロウェナ・レイブンクロー」そう答えたのは長く美しい黒髪のほっそりとした色の白い気の強そうな女だった。
「私はヘルガ・ハッフルパフ」そう答えたのはふわふわとした栗毛のややふっくらとした柔和な笑みを浮かべる女だった。
「私はサラザール・スリザリン」そう答えたのは灰色の髪に灰色の目、青白い顔をした痩せた男だった。
「創立者勢揃いじゃねぇか……なに、まさかラスボス?創立者を倒さなきゃクリア出来ないとかそういうやつ?」
よくある試練を超えた先に真の試練がある展開か!いやいや流石に4人と戦うとか俺はともかくセドリック達には不可能すぎる。もし一度にかかって来られたら3人まとめて守りながらの戦闘になる。大丈夫だとは思うけど創立者の力は未知数だ。
セドリックとフレッドとジョージは嫌な予感にゆっくりと立ち上がりじりじりと彼らから距離をとりポケットに入れていた杖を握ったが、それを見てゴドリック・グリフィンドールは豪快に笑った。
「はっはっは!──いやいや、諸君らと決闘したいのはやまやまだが、私たちはただの思念体で有り言葉を交わすことは出来るが杖は愚か、剣を交えることも出来ん」
「ラスボス…?妙な響きですね。新しい魔法が生まれているのでしょうか…」
「愚かにもこの餓鬼は私たちを倒せると思っているかのような物言いだな」
グリフィンドールは笑っていたが、レイブンクローとスリザリンは怪訝な顔をしていた。──ああ、そうか1000年前の人にラスボスなんて言葉伝わらないか。スリザリンの言葉は無視しよう。倒せますよなんて本当のことを言ったらややこしくなりそうだし。
「私たちはこのホグワーツを創立した後、
四つの試練を作り、最初に合格した者の前に姿を現すように思念を残したの。──だから、あまり長時間存在する事はできないわ。……さて、ゴドリック、サラザール、ロウェナ、いうことは言わないと魔法が消えてしまうわよ」
「おお、そうであったな」
ハッフルパフに言われたグリフィンドールはたっぷりとした髭を撫でた後、手を下から上へと動かした。
ふわり、とやわらかな風が地面から湧き起こり、部屋の中央の床が隆起してシャギーラグと同じ色をした30センチほどの丸いホグワーツの紋章がふわりと浮かび上がり、俺たちの前に漂いぴたりと止まった。
「杖をそれに当てなさい。そうすればこの城にあるどのような扉でも、この場所に繋がるようになります。方法は簡単です、ただ、この部屋の事を考えながら扉を杖先で円を描くように撫でる。それだけで契約は完了します。──ただし、あの四つの試練をクリアしなければこの部屋に入室することは叶わず、他者が踏み入れた場合すぐに弾き出されます。この城の何処かに」
レイブンクローが指先をくるりと回しこの部屋への行き方を説明した。
城にある扉ならばどこでも繋がることが出来る魔法。──たしかに、それならわざわざ動く階段を飛び越えなくても済むし、フィルチやミセス・ノリスからよく逃げているフレッドとジョージはかなり使うことになるだろう。
俺がポケットから杖を出し紋章に押し当てる。セドリック達に視線を向ければ、彼らは頷き俺と同じように杖先で紋章に触れた。
赤、緑、青、黄色の光の粒が紋章からふわりと舞い上がりくるくると杖に吸い込まれていく。特に杖が熱くなるとか、何か別の意志を感じることなどなく契約はスムーズに完了した。
「うむ。これでお主達はこの部屋の使用者となった。置かれているものは好きに使えば良いが──まぁ、せいぜい賢く有意義に使う事だな」
スリザリンが低い声で言い、本棚に収められている本を指差した。あの本は間違いなく彼らが集めたものだ。1000年前の魔法、それが現代でどれだけ通用するのか、どれほど流通しているのかはわからないが──世界で最も力があり偉大だと言われていた4人の遺物だ。法整備が進む今現代ではなかなかヤバいものもあるのだろう。
「この部屋がサービスっていうのは?」
「試練を通過した者は、誰であれこの部屋を使用することが出来る。それとは別に、初めて合格した者へ私たちはそれぞれ秘宝を遺した。──さて、私の試練を突破した者は誰だ?」
グリフィンドールが俺たちを見回す。実体ではない、らしいがなかなかの存在感と威圧感にセドリックは縮こまりながら手を少し上げ「僕、です」と囁いた。
「ほう、──ふむ。己に打ち勝つ事ができるのは、己の弱さを知る者。その弱さを克服し者への祝福として、獄炎獣のローブを授けよう」
グリフィンドールが両手を前に突き出せば、床から吐き出されるように外側が夜の闇のように黒く、中は真紅色をした絹のようなローブが現れ、恐々と手を伸ばすセドリックの腕の中にふわりと落ちた。
「私たちが世界から消えていたとしても、おそらくこのローブは世に二つと無いものだろう。どんな魔法も斬撃も通さぬ、自分で身につけるも良し、護りたい者へ羽織らせるも良し。裏返して着れば──一時的に極炎獣の魔力を借り、他者を寄せ付けぬ力を得るだろう。使いどきには気をつけたまえ。力に溺れ身を焦がし、護たい者を葬り耐え難い苦痛を味わうことになりかねん」
「う、うわ──あ、ありがとうございます!」
セドリックの手は震えていたが、しっかりとローブを抱きしめ、半分夢心地のようなふわふわとした表情でグリフィンドールとローブを見つめていた。
「さて、私の試練を突破した者は誰ですか?」
「あ、俺です」
レイブンクローは片眉を上げ俺を見下ろしていたが、少し頬を赤く染めると「あなたのような愛らし──いえ、可愛らしい──美しい者が、魔法の才に恵まれていたことは喜ばしい事です」と少々つっかえながら言った。
「あなたのような幼き者が無言魔法を正確に使用するなど、私は思いもしませんでした。──魔法や知恵に終焉はありません。あなたの計り知れぬ知識と、そして他者に比類なき鍛錬を祝福し、あなたに叡智の魔導書を授けましょう」
レイブンクローが右手を上げれば、それに呼応し再び床か隆起し、中から大きな古本が現れた。知恵を持つものを好むレイブンクローらしい祝福に、俺は少し笑いながら両手で抱えなければならないほどの本を受け取った。
「私の全てを、そこに記載しています。あなたの手に渡った瞬間、その本はあなたにしか開けません。さらに鍛錬し、世に叡智は世界を震撼させる事を知らしめるのですよ」
「はい。…ありがとうございます」
五泊六日用旅行ケースくらいの大きさの魔導書は俺の手のひらよりも分厚いが重さは不思議と感じなかった。後で読もうと鞄の中に突っ込めば、レイブンクローは期待していた反応ではなかったのか少々残念そうな顔をしていた。
「さて、私の試練に合格したのは?」
「俺たちさ!」
「2人でクリアしたんだ!」
ハッフルパフの言葉に待ってましたとばかりたフレッドとジョージが手を高く上げた。
ハッフルパフは我が子を見る母のような優しい目で2人を見て「あらまあ」と楽しげに微笑む。
「自分を害しようとする者への寛容の心を持ち──しかし、自分と周りを護るために容赦なく無力化する術は、何よりも難しく尊い事です。護り、害する。近いようで遠い至高の矛盾した精神を持つあなた達には辺獄の鏡を授けましょう」
ハッフルパフが両手を広げれば、床が盛り上がり大きな姿見鏡が2枚向かい合うようにして表れた。
フレッドとジョージはあまりの大きさと名前の不吉さにどう扱えばいいのか分からず、厚さはあまり無いが自立している鏡を困惑して見ていた。
「その鏡は2枚でひとつ。図らずもあなたたちのようね。その鏡の裏側を撫でれば、掌に収まるほどに折り畳まれるわ」
「──おっ、本当だ」
フレッドがすぐに裏に周り指先で撫でてみれば、鏡は折り紙のようにパタパタと折り畳まれ、ポケットに収まる程度に小さくなった。
「その鏡の奥にはこの世であり、この世では無い世界が広がっているの。無数にある世界の中の一つがね。──その世界を自由に行き来し、出入りする事が出来る。どんな距離も、どんな防御魔法も受け付けない。行き来できる代わりに、鏡を閉ざして終えば抜け出すことも不可能だわ。何を入れても劣化せず、その時の状態が保たれる。食べ物でも、道具でも──生き物でもね。その鏡をただの収納道具として使うのか、それとも害する者の牢獄にするのか……それは、あなた達が決めることよ」
「ワォ」
「すっげぇ」
フレッドとジョージは自分の手のひらに乗っている鏡を畏怖の目で見つめていたが、しっかりとポケットの中に入れていた。
「私の試練を──薬を正確に調合したのは誰だ?」
「それも、俺です」
「ふむ。──バジリスクの雫をどこで手に入れた?」
「どこって、地下に眠ってるバジリスクを起こしてペットにしてちょっと採取しました」
俺の言葉にスリザリンは驚き目を見開いたが、すぐに喉の奥でくつくつと笑う。
「そうか。お前も蛇語を扱えるのだな。ならば──間違いなく私の血を引き継いでいるのだろう。見目麗しく優秀で才ある者が血縁だとは──なかなか未来は私の期待通りになっているようだ」
スリザリンは嬉しそうに頷き灰色の髭を撫でているが、俺は蛇語だけではなくどんな生き物とも話す事が出来るし、むしろあなたの嫌っているマグル生まれだが──余計な事を言ってスリザリンの祝福をもらえないのは嫌だし、とりあえずへらりと笑っておいた。
「知識と才能を煮詰め限りない至高な技を手にした者よ。世界を揺るがす事が出来る薬を些細なことで使用するその度胸と覚悟。何よりも魔法薬の才能を祝福し、
スリザリンが手を差し出し、隆起した床から黒いシンプルなガラス瓶が現れた。
手に取ってみれば、ただの瓶であり、蓋も同じようにガラス製出来ている。
「その中にいれたものは、何であっても無味無臭へと変化する。勿論薬の効能は微塵たりとも変化せず、ただ嗅覚と味覚を欺く。ただの苦い良薬を無味無臭にするのか、はたまた、一滴で死に至らしめる劇薬を変化させるのか──どちらにせよ、有意義に使用する事を望む」
「へぇ……ありがとうございます」
魔法界にある薬というものはなかなか味がやばいものが多い。極一部の薬だけが無味無臭だが、殆どがその薬を飲む事が拷問だと言える味なのだ。
それが、無味無臭になる。薬を飲む分にはめちゃくちゃ便利だし、普通に暗殺にも使えるなコレ。──変化させる毒の種類を考えたら、自殺と思わせることも難しくないだろう。
「よし。全て渡ったな。──もう、残り時間も少ないようだ。何か聞きたいことはあるか?」
グリフィンドールは自分の体を見下ろしゆっくりと告げる。4人の体の輪郭は薄ぼんやりとしていて、少しずつ背後の景色が見えるようになっていた。
おそらく、創立者と話すことは未来永劫叶わない事になるのだろう。彼らは1000年も前の、過去の存在だ。こんな事のために自分の思念を後世に残した彼らはきっと、本当にこのホグワーツを創ったことを誇りに思っていたのだろう。
「何故、ホグワーツを創ったのですか?」
もしかしたら、ホグワーツの歴史に書いてあるのかもしれない。過去の4人に聞くべき事では無かったのかもしれないが、俺が今目の前にいる彼らから直接聞きたいのは、その事だった。
4人は意外そうな目をしたが、すぐに優しく微笑む。
「未来の幼き光の導き手となるために」
そう、4人は声を揃えて告げると、銀色の光の残滓へと変わり空気に溶けて消えてしまった。
しん、と静まり返る部屋の中、俺たちは顔を見合わせ同時にへらりと笑った。
「創立者と話したとか、こんな事誰が信じるだろうね」
「そんな事言われたら夢だろうなって思うな」
「ああ、違いない。創立者のファンか?って聞くな」
「レアな体験だったなー」
俺たちが受け取った物は、レアすぎるというか、子どもに持たせるには危険すぎるものだ。だからこそ、本来なら未成年が挑戦出来ない試練だったのだろう。