兄・子世代ifチート能力を駆使して転生人生謳歌します!   作:八重歯

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39 予期せぬ号外

 

寒い冬が終わりに向かい、生徒たちが待ちに待ったイースター休暇がやってきた。

休暇、といっても家に帰る事は出来ないし、大量の宿題を出されるが、それでも毎日の授業が1週間半ほどないのだ。学生にとってこれほど嬉しい事はないだろう。

 

そんなイースター休暇の1日目、俺は魔法界にある芸能事務所を訪れていた。

 

 

「セブルス先生、たった数時間ですって」

「……」

「ダンブルドア先生の命令なら仕方ないですよ。ね?」

「……」

 

 

いつもの長く真っ黒なローブに身を包んでいるセブルスは俺が何と声をかけても無言を貫き、沢山の光虫で照らされているこの白い部屋の中ではかなりの場違い感がある。

 

そう、普通ならばイースター休暇はホグズミード行きを許可されている3年生以上を除き、外出することが出来ない。

しかしマネージャーがどうしても出て欲しいコンテストがある、とのことでダンブルドアに直談判したらしく──色々彼らの中で取り決めがあったようだが──こうして、後見人であるセブルスが付き添う事を条件に特別許可が降りたのだ。

勿論セブルスは面白くないし面倒なのだろう。ホグワーツから馬車で揺られている時もずっとむっつり不機嫌顔で黙り込んでいる。

 

 

こうなったら何を言っても機嫌を戻す事は俺にはできない。セブルスだって授業のない休日とはいえ、後数月先に控えている学年末テストの用意とか色々あったんだろうし。俺に出来る事はこのコンテストをさっさと終わらせる事だけだ。

 

メイクリストやスタイリストなど、沢山の人間が俺の周りを囲み、最高級のノア・ゾグラフを仕上げていく。彼らは一流であり、俺の魅力にくらりときたのは一瞬で仕事のスイッチが入ると誰も気絶する事なくテキパキと自分の仕事をこなしていた。

 

 

着ていた肌触りの良い白いバスローブを脱ぎ、パンツ一枚の格好になればすぐにスタイリストが杖を振り青く輝く衣裳を着せていく。テーマはなんだったかなぁ。なんかの童話モチーフだった気がするけど、忘れたや。

 

 

「完璧だ!さいっこうに素敵だよノア!」

「当然!このノア様だぜ?コンテスト優勝間違いなしだ!」

「ああ、優勝は確実だね。ノア以上の人なんて存在しないんだから!──さあ、スネイプさん。姿現しで会場へ向かいますよ!」

 

 

マネージャーは俺の仕上がりを見て勝利を確信したのか、自信満々に胸を逸らす。

壁に背を預けて黙り込んでいるセブルスの前に回って下から見上げれば、陰険そうな目をしたセブルスの目が僅かに見開かれた。

 

 

「──見惚れた?」

「……あいにく、中身を知っていれば見惚れる事など不可能だな」

「つまり、見た目だけは完璧って事ですね!ありがとうございます!」

 

 

セブルスの嫌味を無理矢理良いように解釈し、ローブの袖を掴む。嫌そうな顔はしているが振り払う事はなく、セブルスは俺のマネージャーからコンテスト会場の住所が書かれた紙を受け取り、俺だけに聞こえるような大きなため息をついて姿現しを行った。

 

 

 

 

コンテストの内容は割愛しよう。

俺が会場に一歩足を踏み入れた瞬間、空気が変わり誰もが俺にうっとりとした眼差しを向けていた。審査員や、ライバルですらも。

 

俺は『魔法使い・魔女国際モデルコンテスト』という魔法界では1番大きな大会で見事最優秀賞を受賞した。それも、12歳という最年少記録を叩き出したのだ。

まぁ、成人している魔法使いと魔女の誰よりも美しく、蠱惑的で、魅力的だったのだから当然の事だな!

 

 

俺は水晶で出来た最優秀賞の盾と賞金1000ガリオンの小切手、そして沢山の名刺を手に入れ、マネージャー──いや、事務所は大手ブランドと次々と契約することが出来た。事務所的にはこれ以上ない結果だったし、その後の受賞パーティーは未成年を理由に辞退する事ができたから、なんとか夕飯までにはホグワーツに戻る事ができるだろう。

いつものラフな格好に着替え、ホグズミード駅からホグワーツまで馬車で揺られる。

 

セブルスは相変わらず沈黙しているが、来た時よりも表情に嫌悪感は無いのはあと少しでホグワーツに着くからだろうか。

 

 

「セブルス先生、今日はありがとうございました」

「……ダンブルドアの命令だ。次は無いと思え」

「まぁ特例ですしね。お礼は何が良いですか?今度希少な材料を適当に持っていけばいいですかね?」

 

 

セブルスはこの日初めてまともに俺の目を見た。もはや刻まれている眉間の皺がさらに深くなる様子に首を傾げれば、セブルスは重いため息を吐くとポケットからハンカチを出し、ぽいっと俺の膝の上に投げた。

 

 

「化粧が残っている、その不恰好なものをホグワーツに着く前に落としたまえ」

「え?あー、適当に取りすぎたかなぁ……」

 

 

セブルスってハンカチとか持ってるのか。それも見た目とは裏腹に清潔そうな白いハンカチ。うーん、似合わない!

 

とは言わず、とりあえず馬車の窓にうっすらと映る顔を見ながらそれらしい場所を拭いてみた。

 

 

「取れました?」

「……寄越せ」

「はぁい。──んんっ」

 

 

ハンカチを渡せば、かなり強い力でゴシゴシと口元を拭かれた。俺に恨みでもあるのか!と聞きたくなるが、聞いたところで「思い当たる節があるだろう」と嘲笑われるだけだろう。

 

乱雑な手つきに文句を言わず黙っていれば、暫くしてセブルスの手が離れた。そこには唇を彩っていた淡いピンク色が移っていて──さらにセブルスが持っていなさそうなハンカチになってしまった。

 

 

「ありがとうございました。ヒリヒリするけど」

「……ふん」

 

 

セブルスはハンカチに向かって杖を振るい、口紅の汚れをさっぱりと消すとまたポケットの中に突っ込んだ。

 

 

 

 

 

「ただいまー」

「あれ、思ったより早かったね」

 

 

ハッフルパフ寮にある自室に戻れば、夕食までの時間を自習勉強に当てていたセドリックが教科書から顔を上げた。

 

 

「受賞パーティは欠席したんだ。セブルス先生の機嫌が最低だったからさ」

「受賞パーティ、ってことはやっぱり優勝したんだね、おめでとう!」

「おう、最優秀賞だぜ!ほら、記念の盾と賞金1000ガリオンと名刺だ!」

 

 

ポケットの中からトランプの枚数ほどある数々の名刺を掴みベッドの上にばら撒く。セドリックは興味深そうに目についたものを拾い上げては「うわっ、このブランド僕でも知ってる」と驚愕の声を出す。

 

 

「魔法界にある全てのファッション誌の表紙を飾るのも、時間の問題だな」

「うーん……本当にあり得そうだね」

 

 

魔法界のファッションセンスは少々マグル界生まれマグル界育ちの俺としては二度見してしまうような服装ばかりだが、かといって着こなせない俺では無い。たとえネオンのようにギラついていても、模様が立体的に飛び出していようとも、剥製がついていようとも、どんな服でも俺が着れば完璧にぴたりとハマるのだ。

 

 

「あ!ここ、クィディッチ選手がよく使ってるメーカーだ。うわぁ……公式のグローブか……」

「ほら、俺がここでクィディッチの選手してるってのがどこからか漏れたみたいでさ。その繋がりでクィディッチ用品店からも声がかかったんだ」

「へぇ!凄いね」

「ユニフォームはチームによって違うけど、グローブとかゴーグルは自由だろ?俺が身に付けてるだけで話題性になるんだってさ」

「うわー……ここ、妖女シスターズの事務所だ…」

「あーなんか、俺の歌を作りたいって言ってたな」

「ハニーデュークスからも……」

「パッケージに使いたいって案件だったかな?」

「……魔法界がノア一色になりそうだね」

 

 

感心してるのか呆れてるのか微妙な声音でセドリックは言うと、散らばっている名刺を一纏めにして机の上に置いた。

 

 

 

その後、夕食を取りに大広間に行き、いつもと変わらない時間を過ごす。俺が日中居なかった事に気づいた人は少ないだろう。今日が授業日ならともかく、イースター休暇、それも1日目だ。

続く連休にワクワクしてうっかり夜更かしをしてしまい、食事の時くらいしか寮から出てこなかった生徒も少なくないはずだ。

 

 

今日のコンテストのためにちょっと肉やフライ系を控えていたため、その反動で大きなステーキ肉を自分の皿に持って齧り付く。うーん、やっぱ肉最高!

最近我慢していたデザートも、暫くは腹いっぱい食えるはず!

 

コッテリとした料理を制限なく食べる幸せは言うまでもない。まだこの体は若いから胃もたれなんて悲しい事にはならないで済むのがありがたい。

 

 

「──あれ、フクロウ便だ、珍しいな」

 

 

突如バサバサとフクロウが飛び込んできた。通常は朝に配達されるが、緊急の用事などであれば別の時間帯に配達される事もある。しかしそれは滅多にない事であり──さらに、飛び込んできたフクロウの数は一羽や二羽ではなかった。

 

その異質さに気づいた生徒達は食事の手を止め不安げに空を飛び交うフクロウを見上げざわざわと囁き合う。

持っているのは新聞らしいものだった。号外として出される新聞は凶報である事が多く、魔法界で何か大きな事故か事件でも起こったのだろうかと誰もが答えを求めるように不安げに視線をうろつかせた。

教師達も険しい表情をして自分の目の前に降りてきたフクロウから日刊預言者新聞の号外を受け取り、開く。

 

号外として配られるものは、日刊預言者新聞を購読していなくとも無造作に配られるため読むことが出来る。セドリックはすぐに手を伸ばしフクロウを引き寄せると、足につかんでいる新聞を一部抜き取った。

 

 

「事件か?」

「待って──」

 

 

机の上にある皿やゴブレットを押し退け、セドリックは新聞を広げて置く。しかし、目に飛び込んできた写真にその先の言葉を無くして息を呑んだ。

 

 

『ノア・ゾグラフ。最年少で魔法使い・魔女国際モデルコンテスト優秀賞受賞!』という馬鹿でかくて点滅している見出しとともに、コンテストの様子が写し出され頭に優勝者の印である王冠を乗せられている俺の写真があった。

 

凶報どころか吉報でもなく、まさか俺の受賞が号外になるとは思わなかったが、日刊預言者新聞の号外を手に入れる事ができた生徒はホグワーツが揺れるほどの大歓声を上げ、残念ながら号外を入手し損ねた者は嘆き悲しみ地団駄を踏んだ。

 

料理そっちのけでそこかしこで号外をめぐる喧嘩が勃発し、唖然としていた教師達は慌てて受け持つ寮生の元へと飛んでいった。

 

至るところで「減点!」の声が聞こえる中、教師陣のテーブルに座るダンブルドアは、新聞一枚で乱闘が起こってしまった事に大きくため息をつき、立ち上がると杖を空に向け爆竹のような音を鳴らす。

 

 

「静まれ!──さあ、料理が冷めてしまう。早く食べなさい、ほれほれ」

 

 

ダンブルドアは音で生徒たちの注意を引き、一瞬鎮まりかえった生徒たちだったが、納得がいかないのか口々にぶちぶちと文句を言った。

幸運にも号外を入手できた者は自慢げに見せびらかし、手に入れ損ねた者は男女関係なく乱暴な動作で椅子に座り込む。教師の前で大勢の生徒が殴り合い掴み合い杖を出しての喧嘩だなんて前代未聞だろう。

 

 

「……たしかに事件だな」

「……ホグワーツの歴史に残る大量減点事件だね」

 

 

俺の言葉にセドリックはきちんと新聞を折り畳み、大切そうに鞄の中に入れながら頷いた。

 

 

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