兄・子世代ifチート能力を駆使して転生人生謳歌します! 作:八重歯
それからハリーは2日と開けず、俺にほぼ毎日会いに来ていた。
まぁもう魔法界に足を踏み入れたわけだし、もう秘密にしなくてもいいだろう。キラキラと目を輝かせながらホグワーツを心待ちにして色々魔法界の話をせがむハリーに、ホグワーツの事についてちょっとだけ話した。
動く階段や喋る絵画という魔法界ではごく普通の事もハリーはオーバーリアクションに驚き興奮して頬を赤らめる。
いやーこの目が曇らないようにしてあげたい、うん。
ついにここから原作が──ハリー・ポッターの物語がはじまる。
俺は色々考えた結果、なるべく原作を変えずに進行させ、尚且つハリポタキャラが死なないようにするために頑張ることにした。
世界の平和を考えれば、多分俺が分霊箱全部破壊してアルバニアの森に行ってヴォルデモートを殺すのが1番いいんだろう。ハリーは何も知らず、平穏な7年間を過ごす事ができる。
だけど、それをすると未来が変わりすぎて、将来生まれないキャラが出てきてしまうんだよなぁ。
特に、リーマスとトンクスの子供とか。あの2人はヴォルデモートが復活して不死鳥の騎士団が再結成されないと、恋人同時にはならない気がする。
っていうか、ハリーとジニーがくっつく事もないかもしれないし、そもそもハリーとロンがハーマイオニーと仲良くなるイベントが無くなったら──3人組じゃなくてずっと2人組になって、ハーマイオニーは孤独に過ごしてしまうかもしれない。
どのキャラもそうだけど、かなりの試練を乗り越えることにより吊り橋効果的な意味で惹かれ合い恋に落ちるからなぁ。
ま、全て原作沿いにするつもりは──ないんだけど。キャラの生死的な意味で。
9月1日、俺は先にキングズ・クロス駅の9番線のプラットホームでハリーを待っていた。ハリーには事前に「一緒に行こうよ、ホームで待ち合わせね!」と言われている。さてさて、ハリーはそろそろ来るだろう。っていうかちょっとギリギリだぞ。
そんな事を考えていたら、ちょうどバーノンに連れられてきたハリーが、ホグワーツ特急が着くプラットホームへの行き方がわからず、困惑しながら9番線のホームで右往左往しているのが見えた。
意地悪く笑っていたバーノンと別れたのを確認し、ひとり不安げにその場に佇むハリーに近付き、その背を叩く。
「や、ハリー」
「ノア!──ああ、良かった!人が多すぎて、会えないかと思ってた!僕、どうやって9と4分の3番線に行くかわからなくて……駅員さんに聞いてもそんなのないって馬鹿にされるし……」
「あーハグリッドは伝え忘れたんだな。心配するな、簡単だぜ?まぁ…ちょっとコツはいるけど」
不安そうにしていたハリーの表情はすぐに明るくなった。本当はここでウィーズリー家の子達と会うんだけど──あ、赤毛集団発見。
「「ノア!」」
「久しぶり、フレジョ。元気に悪戯してたか?」
すぐにその赤毛の集団と目が合い、その中からフレッドとジョージの2人が飛び出し、俺の左右に並ぶと満面の笑みで肩を組む。ハリーは目を瞬かせ、ちょっと嫌そうにすっと目を細めた。
「ノア、この人たちは?」
「俺の友達だ、どっちかがフレッドでどっちかがジョージだ」
「ノア!なんだよその言い方!」
「見分けつくだろう?酷いや!」
わざとらしく「しくしく」と口で言いながら嘆き、俺の肩にもたれかかる2人の重さで少し俺は背を曲げた。こいつら、2か月会わないだけでさらに身長伸びたな!羨ましい…いや、まぁ俺は完璧な男の娘だから低いのは仕方ないけど!
「その子は?」
「ノアが言ってた、マグル界で出会った友達かい?」
「ああ、こっちは──」
「フレッド!ジョージ!早く行かないと汽車が出発しますよ!──まぁノア!!こんな所で会えるなんて!」
ハリーを紹介しようと思ったら、モリーが怒りながら俺たちの方を見て──すぐに俺の姿に気がつき、ぱっと頬を赤らめ嬉しそうに笑いアイドルにするように「きゃあ!」と手を振った。
「久しぶりですね、モリーさん」
「ええ!まさかノアと会えるなんて…!今度の休暇もぜひ遊びにいらして!孤児院の人たちは私が説得するから!──っと、ああ!出発までもう10分前だわ!もっと話していたいのに…!」
コロコロと表情を変えるモリーに、フレッドとジョージは顔を見合わせため息をつき、「じゃあ行ってくるね母さん」とモリーを軽くハグしてそのまま9番線と10番線の柵に向かって突撃した。
「ノア!今年はロンもホグワーツ生──1年生なの、仲良くしてくれると嬉しいわ」
「1年生か、よろしくなぁロン。……あ、この子俺の友達なんだけど、この子も1年生なんだよ」
俺は黙ったままのハリーを、顔を髪色のように真っ赤に染めてぽーっとした目で俺を見つめるロンの前に押しやった。
ハリーは少し笑って「よろしく」とロンに告げ、ロンはハッとした顔をして俺から視線を逸らすと──それでもチラチラ俺を見ていたが──「よろしく!」と笑顔を見せた。
おお、一年生なのにロンは俺と身長あんまり変わらないな。去年隠れ穴に遊びに行った時はクィディッチの試合観に行っていなかったんだよなぁ……うーん、かわいい!
「じゃあ、私が離れた場所でマグルの注意を引くわ。ノアは目立つものね…」
モリーは悪戯ってぽくウインクすると、顔を茹でタコのように真っ赤にして自分の背に隠れているジニーを引っ張りながら人混みの中に消えた。
「2人とも、俺の後に続いて来いよ?怖がらなくていいからな、痛みはないし、衝撃もないから」
俺がハリーとロンに言った直後、遠くから毎年恒例の何かをぶちまける音が聞こえ──俺を見ていたマグル達の視線が違う方向へ向いたのを確認し、すぐに2人に合図し柵の中へカートを押した。
少しすれば、ロンとハリーが同じように柵から現れた。
ハリーはぽかんとして真っ赤な列車と、沢山の鳥籠を持つ幼い魔法使いや魔女を見る。まさかこんなに同年代の魔法使いや魔女がいると思わなかったんだろうな。
その後にモリーがジニーと共に現れ、最後の別れを惜しむようにロンを抱きしめていた。
「さ、ハリー。別れの時は邪魔するもんじゃないから──先に汽車に乗ろうぜ」
「うん!」
ハリーはぱっと笑って、すぐに先を行き始めていた俺の隣に並ぶ。
最後尾の車両近くに空いているコンパートメントを見つけた俺たちは、とりあえず荷物を乗せようと重いトランクケースを持ち上げる。俺は魔法で軽くしているけれど、ハリーは勿論そんな魔法使えるわけもなく、顔を真っ赤にして頑張っていた。
「ハリー、貸してみ」
「え?か、かなり重いよ?」
汗まみれのハリーは俺の細い腕を見て、困ったような顔をしたが、ここは魔法界であり、これだけ近くに大人の魔法使いが沢山いるのなら、魔法を使ってもきっとバレる事はない。
すぐにハリーのトランクを撫でて重さ軽減魔法をかければ、ハリーはかなり力を込めていたようで、勢いよくトランクを汽車の戸口に突っ込んでしまった。
「あ、ありがとう。──今のも魔法?」
「ああ、使えると便利だぜ?」
自分のトランクにも魔法をかけ浮遊させれば、二つの大きなトランクは勝手にコンパートメントに入り、上にある棚に行儀よく収まった。
暫くすれば汽笛が鳴り、汽車はゆっくりと速度を上げる。ハリーの目はこれからの事をかなり期待しているのか、楽しげにキラキラと輝いていた。
「楽しみだなぁ、ホグワーツ!ノアと一緒に過ごせるなんて、夢みたい!」
「まぁ学年は違うから──」
あまり、一緒には居れないかも。と俺が言い終わる前にコンパートメントの扉が開き、疲れたような顔をしてロンが現れた。
「ここ、空いて──うわー!ノアがいる!えっ、ここ、ここ良いかな!?」
「俺はいいよ、ハリーは?」
「うん、いいよ」
「わー!ありがとう!」
ロンは顔を真っ赤にしながらハリーの隣に座り、口をぽかんと開けて俺を見ていたが、俺がにこりと笑いかければ耳から煙が出るんじゃ無いかと言うほどに首まで赤く染めた。
「なんだか暑いね!」と言いながらパタパタと顔を手で仰いでいたが、気を紛らわせるように隣に座るハリーを見て手を差し出した。
「ちゃんと自己紹介してなかったよな?僕、ロナルド・ウィーズリー。みんな僕のことをロンって呼ぶよ、君は?」
「ハリー・ポッター。よろしく、ロン」
ハリーはハリーで、初めて同学年での友人になれるかもしれないロンと会えて嬉しいんだろう、にっこりと──なんかちょっと元気なさそうだけど笑ってその手を取った。
「ハリー・ポッター?…まさか、君…」
ロンはハリーと握手しながら前髪に隠されたハリーの額を見る。ハリーはきょとんとしたが、確かもう自分がかなり有名だって事は漏れ鍋に行って知ってる筈だ。
少し不思議そうにしたハリーだったが、すぐにその視線の意味に気づき、頷きながら額に手を当て前髪を上げた時、再びコンパートメントの扉が開く。
「おい、ロン。俺たち真ん中の車両あたりまで行くぜ。リー・ジョーダンがでっかいタランチュラ持って来てるんだ」
「…ウ。…わかった」
「ちゃんと自己紹介してなかったよな?俺はフレッド、フレッド・ウィーズリー」
「おれはジョージ・ウィーズリー。君は?」
「僕、ハリー・ポッター」
ちょうどロンに見せるためにハリーの手が前髪を払っていたため、特徴的な稲妻型の傷がよく見えていた。フレジョはぽかんとしたが──あまり深く聞く事はなくすぐに俺の方を見た。
「ノア、見に行こうぜ?」
「タランチュラなぁ……ま、セドも探したいし」
タランチュラはどうでも良かったけど、セドリックには会いたいし、ロンとハリーがここで交友深めるのに俺はきっと邪魔だろう。
すぐに立ち上がり扉に向かったが、ぐっと腕を掴まれてしまって少し驚いて振り返る。
「ハリー?どうした?」
「ノア、行っちゃうの?」
ハリーはここでは知り合いが居ないし、不安なんだろう。ぽんぽんと頭を撫でれば、ハリーはつまらなさそうに口を尖らせるだけで俺の腕を離そうとしなかった。
「ノアってハリー・ポッターと友達なんだ?」
「知らなかったな」
フレジョが驚きながらぽつりとつぶやく。
たしかに、俺はこの2年間一度もハリーの名前を出さなかった。この世界でハリーの名前は有名過ぎる、別に会っていて悪いことでは無いけど。色々突っ込まれて聞かれるのは面倒くさかった。
「俺のいる孤児院と、ハリーの住んでるところが近いから、昔からよく遊んでたんだよ。まぁ幼馴染みたいなもんかな?──ハリー、荷物はここにあるし、また戻ってくるから」
「……、…わかった」
ハリーは一度俺をぎゅっと強く抱きしめてから、名残惜しそうな目をして離した。
面食らったようなフレジョを連れて廊下に出れば、フレジョはちらりと先程までいたコンパートメントの扉を見て肩をすくめる。
「熱烈だな」
「ノアにハグするなんて、アイツなかなかの大物になるぜ?……あー、もう大物か」
「ハリーは昔からスキンシップ多いんだよなぁ」
リーのいるコンパートメントに向かっていると、すぐに扉が次々に開き「ノアさん!」「ノア様!お久しぶりです!」「写真集拝見しました!お元気でしたか?」などなど、目を輝かせ頬を赤く染めた生徒達が俺に手を振った。
まぁこれもいつものことだし特に気にせず適当に手を振りかえしていたら、少し先のコンパートメントの扉が勢いよく開いた。
「ノア!席取ってたのに来ないから…どこに行ってたんだい?」
セドリックがこっちこっち!と俺に向かって手を振る。
「あー。他のとこに居たんだ。ほら、今年は俺の幼馴染が来るって言ってただろ?」
「そういえばそうだね…」
「俺達、今からリーのタランチュラ見に行くんだけど、セドリックも行くか?」
「タランチュラ?うーん…興味ないかな」
「俺もタランチュラはいいや。リーによろしく言っといてくれ」
「えー、見に行かないのか?」
「だって蜘蛛って喋れないし、つまらん。それにホグワーツに着く前にリーが鼻血出して貧血になるだろ?」
ひらりとフレジョに手を振れば、2人は無理に引き止めることなくさっさとリーのいるところへ行った。
俺はセドリックがとっていたコンパートメントに入り普通に座ったが、セドリックは扉に手をかけたまま、なんか驚いたみたいな顔で俺を見下ろしていた。
「どうした?」
「え。……いやその友達のところに戻るのかなって──」
「ああ…後で戻るよ、荷物も置いてるし。まぁでも一年目のコンパートメントは出会いの場だろ?一生の友達に出会えるかもしれないしさ。──お邪魔虫は退散ってね」
ニヤリと笑えば、セドリックは「ま、たしかにね」と笑った。
暫くは夏休みにあった楽しい出来事をセドリックから聞いていた。途中からいつの間にかクィディッチの話題になり、セドリックは目を輝かせながら推しチームがどれだけ素晴らしい戦術を使っていたかを教えてくれた。
そうこうしているうちに昼になり、車内販売の魔女が沢山お菓子や軽食を乗せたカートを押しながらコンコンと扉を叩いた。
「車内販売よ、何か入りませんか?」
「…あ、俺財布向こうに置いて来てるわ」
「じゃあ僕が買うよ。何がいい?」
「んー。かぼちゃパイと、蛙チョコと、アセロラジュースで!」
セドリックはすぐにポケットから金貨の入っている袋を取り出し俺の分と、自分の昼食を買った。
にっこりと笑って車内販売の魔女はすぐに次のコンパートメントへ向かい、セドリックは空いている席に買ったものを置いた。
「いくらだった?」
「えーと…1シックルと5クヌート」
「オッケー、後で払うから」
かぼちゃパイの包みを剥がし、食べていれば「別にいいのに」とセドリックは笑った。
まぁそこまで大きな金額では無いが、奢られすぎるのも嫌だし、何より俺はある程度金持ってるし。
手のひらほどのサイズのかぼちゃパイを食べ終わり、活きのいい蛙チョコを口の中に放り込みつつ、カードを取り出した。
「──うわ」
「どうしたの?」
カードを見て怪訝な声を出した俺に、セドリックは首を傾げる。
俺は無言で蛙チョコのオマケカードをセドリックに手渡した。
「──は?」
セドリックは食べていたサンドイッチを口から落としてしまったが、気がついていないのかカードを穴が開くほど見つめた後、ゆっくりと俺を見た。
「何これ」
「最近のお仕事、蛙チョコのカード撮影だったんだよ。レアだって言ってたけど、1発で当たるなんてなぁ……レアじゃなかったのかな」
魔法界でモデルの仕事をしている俺は、魔法界で最も美しい魔法使いとして蛙チョコのカードに乗ることが決まった。
様々な輝かしい経歴を持つ魔法使いが並ぶ中、美しさだけで…未成年で在学中の俺がそこに入るのはなんかちょっと違和感があって嫌だったが、かなりいい値段の仕事だったから、つい承諾してしまった。
蛙チョコ運営会社社長が俺の熱狂的大ファンらしいけど、本当に俺がおまけカードの中にいるのを見るとちょっと軽率に仕事を引き受けすぎたかな、とも思う。
「ノア・ゾグラフ。ホグワーツ在校、ハッフルパフ生。類をみない美貌により一年足らずで魔法界のトップモデルに君臨し、魔法界を魅了している。1990年、最年少で魔法使い・魔女国際モデル大会最優秀賞受賞。好きな食べ物はチョコレート。欲しいものは珍しい魔法薬の材料。──うわぁ…」
「いや、音読するなよ恥ずかしい…」
セドリックが裏面に書いてあった俺の説明文を読んだ。なんとまぁ中身のない薄っぺらい説明文で、普通に恥ずかしい。
「…これ、欲しいな」
「ええ…まぁ、いいけど…」
セドリックは嬉しそうに「ありがとう」と言ってカバンの中に俺のカードを入れたが、本物は目の前にいるのになぁ。…セドリックって、カードコレクターだったのかな、まったく気が付かなかったけど。
アセロラジュースを飲み干し、ぺっちゃんこになったパックを潰し、ついでにかぼちゃパイの包やらのゴミを魔法で燃やして消せば、セドリックは少し目を見開いたけど特に気にする事はない。
俺が年齢よりかなり凄い魔法を使える事をセドリックは知っていて、いちいち突っ込んでも驚いてもいられないのだろう。
「金、取ってくる」
「え?ホグワーツについてからでいいよ?」
「忘れちゃいそうだしさ、ちょっとハリーの様子も気になるし」
「…ハリー?」
立ち上がりコンパートメントの扉に手をかけ、「まさか…」と息を飲むセドリックににやりと笑いながら扉を開けた。
「ああ、俺の幼馴染、かの有名なハリー・ポッターなんだ」
「…ええ!?」
セドリックの驚愕の声を聞きながら、俺は廊下へと出てハリー達がいるコンパートメントに向かった。