兄・子世代ifチート能力を駆使して転生人生謳歌します!   作:八重歯

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45 呪われてますよ!

 

 

 

「聞いてよノア!スネイプ、あいつ最低だ!」

 

 

土曜日、校庭に出てセドリックとのんびりしているとめちゃくちゃ怒った顔で猛ダッシュでやってきたハリーは、芝生に座っていた俺に飛びかかりそのまま押し倒し、俺を抱きしめたままそう叫んだ。

 

隣でクィディッチの本を読んでいたセドリックはやや引き気味で飛び掛かってきたハリーを見下ろしている。

 

 

「おーおー、荒れてるなぁ。どうした?」

「アイツ!あの蝙蝠野郎!僕の事嫌ってるんだ!2点も減点されちゃった!しかも、すっごくどうでも良い事で!ドラコがグリフィンドールにキツイって言ってたけど、僕に対してはもう恨んでるんじゃないかってくらいだったよ!」

「はぁ…はぁ、ハリー、速すぎるよぉ…」

 

 

ハリーの怒りの咆哮が響く中、ぜいぜい言いながらロンが追いかけてきて、俺の隣に座り額に滲んだ汗を拭う。

ハリーの背中を叩けば、ハリーはムッツリとしたままとりあえず俺から離れて膝を抱え、ぶつぶつセブルスに文句を言い続けた。

 

 

「セブルス先生はなぁ、まぁグリフィンドールめちゃくちゃ嫌いだから仕方ないな」

「セブルス!?あんなやつ名前で呼んでるの!?」

「あの人、俺がホグワーツに居る間の後見人なんだよ、保護者代わりみたいな?」

「ええ……可哀想、最悪だね」

 

 

一度目の授業がよっぽどだったハリーは憎々しげに吐き捨てた。

 

 

「2点の減点なんて気にするなよ、俺なんて一年生の組分け終わった後で300点減点されたからな」

「さっ…300点?」

「あ、それ知ってる。ホグワーツ伝説の減点だったって聞いた」

 

 

呼吸を整えたロンは「それでもたくさん加点されて、寮杯はハッフルパフが取ったんでしょ?凄いよ!」と尊敬の眼差しで俺を見る。まぁ俺が大量加点を次々叩き出したのは事実だが、他のハッフルパフ生も俺に触発されたのか、かなり頑張ってたな、セドリックもかなり加点されてるし。

 

 

「減点されても、その後で加点されたらいいんだよ」

「加点なんて……僕、授業難しくてよくわからないし…」

「まだ学生生活始まって1週間だろ?自然と得意な授業とか出来てくるから心配するな」

「うん……でも、本当アイツ──」

「しっ!」

 

 

ハリーはまだセブルスの愚痴を言いたかったらしいが、ロンが慌てて唇に人差し指を当ててハリーの言葉を止めた。

ハリーは「何?」とロンを訝しげに見たけれど、その視線の先に、校庭に面しているすぐそばの渡り廊下を歩いているセブルスを見て口を閉じる。

 

 

「あ、セブルス先生だ。──セブルス先生!」

 

 

俺がセブルスに向かって割と大きめに声をかければ、ハリーとロンはあわあわとして、セドリックはいつもの事だと読書を再開させ、セブルスはチラリと俺を見てかなり嫌そうに眉を寄せた。

 

流石に呼んでもセブルスは足を止めるだけでこちらに近づく事はなく──いや、足を止めてくれた事はかなりの進歩かもしれない──俺はセブルスに駆け寄りつつローブについた土や雑草に向かって杖を振るいすっかり綺麗にした。

 

 

「なんだねゾグラフ」

「仕事とホグズミード行きの件で、俺に時間欲しいなーって。いつ行ったらいいですか?」

「……、…今日、7時以降に来い」

「はーい、よろしくお願いします」

 

 

セブルスは一瞬、俺の肩越しにハリーを見たが、何も言わずにくるりと踵を返し足早に俺から離れる。いつもと変わらぬ塩対応っぷりだ。まぁ、それでも一年目よりはややマシになってる──と、思いたい、うん。

 

ハリーとロンとセドリックのところに戻れば、ハリーは苦虫を噛み潰したような顔で離れていくセブルスの後ろ姿を睨んでいた。

 

 

「よく普通に話せるね」

「俺はハッフルパフ生だからな、セドも普通に話せるだろ?」

「え?──まぁ、厳しい先生なのは確かだけどね。質問しにいけば普通に答えてくれるし…」

「僕、絶対好きになれない」

 

 

顰めっ面をして言うハリーに、俺とセドリックは苦笑するしかなかった。

 

ま、セブルスがハリーに対してデレる事は死ぬまで無い。いや、まあ、死んでもデレなさそうだし──死なせるつもりは無いけど。

 

 

 

その日の7時前、俺はセブルスの研究室の前に立ちトントンと扉をノックした。

 

 

「ノア・ゾグラフです」

「入りたまえ」

「失礼しまーす」

 

 

セブルスは部屋の奥にある机に向かい、何やら周りに羊皮紙や本をたくさん浮かばせながら羽ペンを走らせていた。

 

 

「先生、これがホグズミード行きの許可証と、こっちが仕事の契約の件で、保護者のサインが必要なものです」

 

 

セブルスは手元に視線を落としたまま、無言で俺に向かって手を差し出す。その手に数枚の書類を渡せば、何も言わずにサラサラとサインをして、すぐに俺に突き返した。

一応、保護者なのに俺の仕事に関してはかなりどうでも良いのか内容をちっとも確認するつもりがないようだ。

 

 

「用が終わったのなら、出て行きたまえ」

「えー。今日はプレゼントがあるんですけど。先生が紅茶をいれてお喋りしてくれたらなぁ」

 

 

セブルスはぴたりと手を止めて、初めて俺の目をきちんと見た。眉間に深い皺を刻んでいたが、面倒臭そうにため息をついて羽ペンを置くと、杖に持ち替え軽く振った。

 

何も無かった空間に小さな机と、飾り気のない肘掛け椅子が二脚と、ティーセットが現れる。

 

俺のプレゼントがどんなものか理解しているセブルスは、嫌がりながらも忙しくない時はわりとこうしてお茶に付き合ってくれる。

 

 

「ありがとうございます、先生のいれる紅茶、好きなんですよね」

「……戯言はいい」

 

 

とかいいつつ、ちゃんと対面する椅子に座るあたり、本当この人は憎まれ口を無くせばそこそこ人気出そうなのになぁ。いや、それをするとセブルス・スネイプじゃなくなるか?

 

 

「はい、これが本日のプレゼントです!」

 

 

俺はくるりと手のひらを回し、花束っぽく包んだ薬草や動物の骨、乾涸びた動物の死骸を出現させセブルスに渡した。

どれもこれも、かなりレアなものばかりで市場にはあまり出ないし、出たとしてもかなり高値だからきっと喜ぶだろう。

 

 

「…どこで、これらを手に入れた?」

「ほら、貢物としてファンから送られてくるでしょ?俺は使い道がないんであげます」

 

 

セブルスの好感度を上げる作戦は続いている。ってか、将来的にある程度俺に心を開いてくれないと疑心暗鬼なこの人を救えなくなってしまう。

モデル活動を始めて、すぐに「好きな科目は魔法薬学で珍しい材料集めてます!」とインタビューに答えれば、あとは面白いように世界中から珍しいものが届けられた。

 

ま、貰ったものを他人にあげるのはちょっと無礼かもしれないけど。見知らぬファンはそんな事気付かないだろうし。セブルスは警戒しながらも俺が持つ材料の魅力に抗えないようだ。

 

 

「……ノア、君が持っていても、宝の持ち腐れにはならんだろう」

 

 

セブルスはまじまじと珍しい植物などを見ながら呟く。名前で呼んでくれる、ということはかなり上機嫌な証拠だ。

 

 

「そりゃ、どんな魔法薬も作れる俺ですけどね?でも自由に調合できないし、マグルの孤児院でぐるぐる大鍋かき混ぜるわけにもいかないでしょう?」

「それも、そうだな」

 

 

プレゼントの種類を調べていたセブルスはいつもより穏やかな表情で少し笑うと早速薬草棚へと向かい、テキパキと新しい瓶にそれらを片付けた。

おお、セブルスの見下してない微笑はレアだな。

 

 

「…ノア、君はポッターと──親しいのかね」

「ん?ああ、幼馴染みたいなもんですね、孤児院とハリーの住んでるところが近いんで、入学前からよく遊んでたんです」

「……そうか」

「ハリー、2点減点されたってショック受けてましたよ。まぁ俺は300点減点されたから気にするなって慰めときましたけど」

 

 

紅茶を飲みつつ答えれば、セブルスは何とも微妙な表情で振り返る。

あの大量減点は俺の伝説として今でもたまに話題に上がっているらしい。内容としては減点に凹む子を慰める時や、俺の凄さを讃える時だとか。

フレジョの2人が笑いながら教えてくれた時には俺は苦笑いしか返せなかったなぁ。

 

セブルスは自分でハリーの事を話題に出しておきながら、それ以上何も言うつもりはないのか無言で椅子に座ると紅茶を飲んだ。

 

 

本当、つくづく面倒くさい立ち位置にいる人だよなぁ。

 

 

 

 

セブルスと少しだけティータイムを過ごした後、俺はハッフルパフ寮へ続く廊下を歩いていた。動く階段を無理やり停止させふと下を見てみれば、突然動きを止めた階段によろめく人影を発見する。

 

 

「あ、クィレル先生」

「や、やあ……ノア」

 

 

よろめき手摺に体を預けていたクィレルは少しずれてしまったターバンを慌てて手で押さえながら俺を見上げる。

2階分ほど下にいるクィレルの元に向かうために手摺から身を乗り出せば、クィレルは小さく息を飲み目を見開いた。

 

 

「危な──」

「自分に浮遊魔法くらいかけれますよ」

 

 

ふわり、と音を立てずクィレルの前に立てば、クィレルは驚愕したままぽかんと口を開けた。──うーん、クィレルの後頭部からなんかいやーな圧を感じる。

 

 

「授業以外でま、ま、魔法を使うのは──」

「まあまあ。ところでクィレル先生?お土産は買ってきてくれましたか?」

 

 

俺との約束は破ることができない、破ると死ぬ。クィレルがこうして無事生きているということは、俺との約束であるマグルのゲームを大量に買ってくるという約束は果たしてくれたのだろう。いやーよかった!うっかり殺しちゃうところだった。

 

 

「あ、ああ、買ってきているよ。──だが、私は──」

「もうマグル学の教師じゃないですもんねぇ……」

「そ、そ、そうだ。私にはもう──不必要なものだから、その──ここでは出来ないが、持って帰るかい?」

「え!やった!」

 

 

マグルの機械はホグワーツ城内で正常に動かない。しかし、マグル学の教室は授業で機械を使うことがあり機械が狂わないよう特別な空間になっている。今クィレルはマグル学の教師ではなく、好きに教室内に行くことができないのは仕方のないことだ。後頭部にマグル嫌いのヴォルデモートがいるし、とてもじゃないがマグルに関わることなんてする度胸はないのだろう。

 

 

「い、いまから取りにくるかい?私の自室にあるんだが……」

「そうですね、忘れないうちに取りに行きましょうか。──あ、俺が魅力的だからって襲っちゃダメですよ」

 

 

悪戯っぽく下から見上げてみれば、クィレルは青白い顔を桃色に染めて見に見えて狼狽え「そ、そそそそんなことしない」といつもより多く吃っていた。

 

クィレルの自室って何があるんだろう、後頭部とお話しするために大きな鏡でもあるのかなぁと思いながらクィレルの後をついていく。

……ターバンでぐるぐる巻きにされて、ヴォルデモートは息苦しくないのかな、蒸し蒸ししそうだし、普通に居心地悪そうだな……。

 

 

 

クィレルの自室は防衛術の教室の近くにあった。基本的に教師は受け持つ学科の近くに自室が用意されているんだろう、教室には研究室が併設されている事が多いし、その方が便利なんだろうなぁ。

 

 

「す、座って待っていてくれ」

「はーい」

 

 

クィレルの自室はほとんど私物が無かった。ニンニクが吊るされてたり、妙なお香を焚いているのか変な臭いはするが、ヴォルデモートを隠すために必要なもの以外では必要最低限の家具と、本棚が一つ。あとはやっぱり大きな姿見があるだけだ。

 

指示された肘掛け椅子に座り、部屋の奥に置いてあるトランクを探るクィレルの背中を見る。

 

 

「クィレル先生」

「な、何だね」

「一年の旅は有意義でした?」

「そ──そうだね、ああ、有意義だったよ。まあ…きゅ、吸血鬼はお、恐ろしいものだったけれど」

「なるほど。吸血鬼に呪われでもしたんですか?」

「い、いや……そうではないが…?」

 

 

ゲームのソフトと本体が入っているらしい紙袋を手に持ったクィレルは不思議そうに首を傾げながら振り返った。

俺はそれを受け取りつつ、クィレルの右腕をぐっと掴み笑う。

 

 

「そうなんですか?なら気がついてないんだ。クィレル先生、闇の魔法がかけられてますよ」

「な──」

 

 

目に見えて動揺するクィレルだが、一瞬その視線を探るように鋭利なものにかえて俺を射抜いた。彼の被っていた仮面がわずかに剥がれたが、すぐにまた恐々とした神経質そうな目とおどおどとした態度になりやんわりと俺の手を離す。

 

 

「まさか──そ、そ、そんな恐ろしい事を言わないでくれ」

「本当なんですけどねぇ。今ならなんと!呪いにめちゃくちゃ効く水薬が298ガリオン!大変お得ですよ!」

「あ、いや、いらないかな……あ、あ、後で調べるよ。曲がりにも……私は闇の魔術に対する防衛術の、きょ、教師だからね……」

 

 

クィレルは胸の前で手を組みそわそわと動かす。うーん、やっぱり後頭部にヴォルデモートが居るし、マインドコントロールされてるクィレルは俺に助けなんか求めないか。多分、今はまだヴォルデモートに従う事が栄誉な事だと思っているんだろう。

 

 

「そうですか、まぁ。──そうですね、もしどうしようもなくなったら俺が助けてあげますよ」

「き、君が?」

「ええ、あなたの恐怖も、憂いも、全て払ってあげます。──俺はその気になれば闇の魔法生物でも魅力して従わせる事ができますし、どんな呪いでも解くことだってできる世界最強の美しい魔法使いなんですよ」

 

 

俺の言葉をクィレルは冗談としてとったのだろう。曖昧に笑うとわざとらしく壁にかけられている時計に視線を向けた。

 

 

「も、もう遅い。寮に帰らないと、げ、減点しなければならなくなる」

「そうですね。──クィレル先生、これ、ありがとうございました」

 

 

紙袋を抱えて立ち上がれば、クィレルは俺に手を出す事なく扉まで見送った。

この後ヴォルデモートは俺がどういう存在かを聞くのだろうか、まだクィレルは俺が本当に世界最強の魔法使いだと信じてないだろうし──世界最高の美貌を持つただの少年だと、説明するだけかもしれない。

 

 

月明かりに照らされた廊下を歩き、紙袋の中を覗き込めばその中にはクィレルが俺のために集めた沢山のゲームが入っていた。

 

 

「……クィレルは助けられないかなー」

 

 

俺の呟きは、誰にも届く事なく静かな廊下に溶けて消えた。

 

 

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