兄・子世代ifチート能力を駆使して転生人生謳歌します! 作:八重歯
一年生の飛行訓練が今日あるらしい。
寮の掲示板に貼り出されていたお知らせを見たハッフルパフの一年生は目を輝かせ今日という日を楽しみにしていた。
魔法族の子であっても、十分な庭がなければマグルに見つからず箒を使って飛ぶ事は難しく、飛んだ事が無い子も多いらしい。
「ノア、今日の放課後にクィディッチの選抜があるよ」
「あー。そうか、今年も沢山応募があるんだろうなぁ」
「そうだね、ノアに近付きたい人は多いから」
大広間に向かいながらセドリックはそう言って笑う。ハッフルパフの選手であり、選抜試験を受けても間違いなくメンバー入りが間違いない俺と仲を深めたい生徒は多く、去年もそうだったがかなりのハッフルパフ生が選抜に参加したのだ。
俺が去年クィディッチの選手になってから、1人の選手が成績低下を理由に親からクィディッチ禁止を言い渡され泣く泣くチームを辞めて、その関係で再募集したときは……いやあ、あの人数はすごかった。
キャプテンのナンシーは人数の多さに喜びつつも、ろくに箒に乗れないにも関わらず名乗りを上げた者にはもう2度と立候補できないのでは無いかというレベルでこき下ろしていた。──いやー……クィディッチが関わったらあの人はマジで容赦ないからなぁ。
大広間でトーストを食べているとフクロウ便の時間がやってきて、沢山のフクロウが手紙や小包を配達していく。勿論俺には毎日のように小山ができるレベルの手紙や小包が届けられ、初めてそれを見る一年生は驚いていたが1週間が経った頃には見慣れた光景として気にする事はない。
そういや、飛行訓練の朝に何かあったような──と思い、ハリーがいるグリフィンドールの方を見れば、ちょうどネビルが何かフクロウから小包を受け取っているところだった。ああ、そうだった、あれは確か思い出し玉だ。
「ちょっと行ってくる」
セドリックに告げてグリフィンドールの方へ向かえば、俺が移動した事に気づきドラコもこちらへ向かってきた。
「ノア、おはよう」
「おはよう」
「グリフィンドールに行くのか?僕も行こう」
「ん?ああ、いいけど」
ドラコはぱっと嬉しそうに笑うと軽い足取りで俺の後ろをついてきた。俺はともかく、グリフィンドール生は「なんでスリザリンがいるんだ」というような冷たい目でドラコを睨んだが、俺の隣にいるドラコはちっとも気にせず──むしろ俺の隣にいることを自慢するように胸を逸らし薄く笑っていた。
「──何かを忘れているって事なんだけど」
ネビルが手のひらにある真っ赤な思い出し玉を見て首を傾げていると、ドラコが興味深そうにその思い出し玉をひょいっと掴んだ。
「か、返して──うわ!ノ、ノノノノア様!」
ネビルは思い出し玉を取られてすぐに恐々とドラコを見たが、俺がいる事に気付くとクィレル並みに吃り、思い出し玉のように顔を真っ赤にした。
「きみは?」
「ぼ、ぼ、ぼく、ネビル・ロングボトムです!あ、あ、ああなたのファンなんです!」
「ありがとうネビル」
「な、名前…!!そ、その笑顔はルーモス以上の輝きっ!!あ、あなたの目に僕だけが映って──うっ、僕、死んでもいい──」
ネビルは恍惚とした表情を浮かべるとそのまま机に突っ伏し気絶した。
周りのグリフィンドール生がネビルが気絶したのを見て小さく叫び、ハリーとロンとドラコが呆れたような目でネビルを見下ろす中、いざこざに気付いたマクゴナガルが教師陣のテーブルから素早くこちらへ駆け寄ってきた。
「どうしたんですか?」
「うーん、俺のファンだったみたいで、名前で呼んだら気絶しちゃいました」
「まあ……そんな事だろうと思いました」
マクゴナガルは大きくため息をつき、俺の隣にいるドラコをチラリと見たが彼が何かしたわけではないと分かると何も言わずに──気絶しぴくぴく痙攣しているネビルを蘇生する事なくその場から離れた。
この光景は、毎年──いや、週に一度はあるありふれた光景なのだ。
「ドラコ、それは?」
「思い出し玉だ。何かを忘れていると赤く光るんだ。──持ってみるか?」
「うん、ネビル気絶してるし──少しくらいいいかな」
ビー玉くらいのその玉を持ってみたが、やっぱり玉は赤くなる事もなく白い煙のようなものが詰まっているように見えるだけだ。
「ネビル、おい、しっかりしろよ」
「うーん……」
ロンに肩を押されたネビルは呻き声を上げて体を起こし、俺を見るとまた気絶しそうなほど体を硬らせたが、俺が持つ思い出し玉を見ると口をあんぐりと開いた。
「そ、そ、それ──」
「ごめん、ちょっと借りてた」
「い、いいんです!あっ、ちょっと待ってください!」
ネビルはぶんぶんと首を振っていたが慌てて鞄の中からお菓子が入っている袋を取り出し、中身を鞄の中にぶちまけるとその袋の口を震える手で開いた。
「こ、こ、この中に──」
「ここ?」
袋の中にぽとんと落とせば、ネビルは感極まった表情でしっかりと袋の口を閉め、袋越しに宝石を見つめるような目で思い出し玉を見た。
「ノア様が触った思い出し玉……!もう2度と触らない!か、家宝にします!」
「ネビル、きみ、ちょっとやばいぞ」
ロンの引き気味の言葉にハリーとドラコは同意し頷いた。
「ここで食べてもいいかな?」
「も、もちろんです!うわぁこれって夢じゃないよね?僕存在してるよね?ノア様もここにいるよね?」
「落ち着け」
そわそわとしているネビルの隣に座ればきっとネビルはまた気絶しかねないし、俺が使ったフォークとかをこっそり収集しそうだから俺はハリーの隣に座り、ドラコは少し迷った後俺の隣にちょこんと座った。
グリフィンドールカラーの中にハッフルパフとスリザリンがいるなんて、かなりレアな光景であり、嫌がる人だっているだろう。
だがそれの中心に俺がいるとわかれば誰も口出しする事はない。──だって、ノア・ゾグラフ様だし?
「ノア、今日僕らは飛行訓練があるんだ。箒に乗るコツとかある?」
「コツかぁ……怖がらないことかな」
箒に乗ったことがないハリーは不安そうにしながらトーストをもそもそと食べ、ロンとドラコは小声でプロクィディッチチームの話題に花を咲かせていた。
「ま、なんとかなるって」
「そうかなぁ……」
「そうか、君は箒に乗った事が無いんだな。仕方がない、僕が教えてあげよう」
自分の箒の腕に自信があるドラコは胸を逸らしてハリーに言ったが、ハリーはむすりとしたまま首を振った。
「……お気遣いどーも。でも教わるならノアがいい」
「何?僕も教わりたい」
「僕も!」
ハリーの言葉にドラコとロンも続き、期待のこもった目で俺を見つめる。俺は確かに一流のキーパーであり、飛行術も誰よりも上手いが人に教えるのは苦手なんだよなぁ。
「飛行術は本人の才能と努力に左右されるから、教える事なんて少ないけど──ま、いつかな」
俺の言葉にハリー達は嬉しそうに笑った。
──これ、どう考えてもハリーとドラコは決闘しそうにないな……。たしか今日の飛行訓練で色々あって決闘する事になるはずだったのにどうなるんだろ。
不透明な未来に少し不安にはなったが、その事について十分考える暇もなく始業10分前を知らせるチャイムが鳴ってしまい、俺たちはそれぞれ授業を受けるために立ち上がった。
大広間を出る時一度振り返って見れば、ネビルが俺が使ったコップをさっとカバンの中に入れているのが見えた気がしたが──。まあ、大広間の食器は時間が経てば消えるし、いいか。
その日の放課後、クィディッチの選抜試験を問題無くクリアした俺とセドリックは去年と同じポジションにつくことになった。ビーターの1人が卒業したため、少しだけメンバーが変わったがそれほど大きな変化は無くチームワークが取れているメンバーのまま今年も迎えられるのは良いことだろう。
「今年もクィディッチ優勝杯を獲れたらいいね」
「まあ、なんとかなるだろ」
──いや、ハリーがシーカーになるのなら、どうなるかわからないな。シーカーがスニッチを取得して試合が終わるというルール上、例え得点していても最後に大逆転されてしまう可能性は充分にあるし。
「やあノア、セドリック!」
「今年も選手になれたかい?」
「勿論」
「当然だな」
クィディッチ競技場を出るとすぐ待ち構えていたフレッドとジョージが現れた。
2人はいつもよりもハイテンションであり、何かを言いたくてたまらないといったようにうずうずとしている。
「ハッフルパフチームは最高のキーパーであるノアと──」
「確かな才能を持つセドリックがいるのは確かだ」
いきなり畏まり俺達を褒めるフレジョに、セドリックは嬉しさよりも──今までの付き合いから怪訝な顔をして2人を見て片眉を上げた。フレジョがこうして何かを演じるかのように話すときは大抵良くない事を言われるのだと、セドリックは十分理解しているのだ。
「残念ながらグリフィンドールは負け続きであり、去年は君たちハッフルパフが勝った」
「しかし、今年のグリフィンドールは一味違うぞ!」
「……そっちの選抜は明日のはずだよね?」
クィディッチの選手として敵の内部情勢はかなり気になるのだろう。セドリックは他のチームの選抜の日程を俺と違ってきちんと把握していて不思議そうに首を傾げる。選抜後に彼らがこういうのならまだ話はわかるが、その前に高らかに宣言するということは──選抜の前に良い選手が見つかったということだ。
「今日、一年生の飛行訓練だったな。……良い動きのやつがいたんだろ」
俺の言葉にフレジョはニヤリと悪そうに笑うと、「それは試合でのお楽しみ!」と声を揃えた。
フレジョは誰が新しく選手になったかを秘密にし、俺たちの仲でも言うことは無かった。
しかし、夕食を終え談話室に戻ろうと思った俺を呼び止めたハリーは興奮した表情で俺の手を引き空き教室に連れ込むと、フレジョが黙っていたこと──自分がクィディッチのシーカーになれたことをあっさりと伝えた。
飛行訓練が始まり、箒に乗れた者が恐々浮遊しているとパニックになったネビルが箒に振り回されてしまったらしい。その時ネビルが胸ポケットに入れていた袋入り思い出し玉がぽろりと落ちてしまい、ハリーはネビルの大切な物だからと、落下したそれを追いかけ見事キャッチした。
その場面をたまたま目撃したマクゴナガルに連れて行かれ──そして、クィディッチでシーカーとして選手になる事になったという。
俺が知っている話とは少々違っていたが、ハリーは無事シーカーになれたようだ。
「僕、来週から練習に参加するんだ!あ、これ誰にも言わないでね、ロンとドラコには言ったけど、ウッドは秘密にしたいんだって」
「俺に言ってよかったのか?一応、敵チームだぜ?」
「え?だってノアに隠し事なんてしたくないから」
当然の事だと明るく笑うハリーの目は一点の曇りもなく輝いていた。
「そうだ、今日ロンとドラコとホグワーツを探検するんだけど、ノアも来ない?」
9月も半分を過ぎれば、授業や宿題の多さにも慣れ始め余裕が出てきた一年生はそろそろ広大なホグワーツ城を探検しだす時期になる。ハリーがロンだけでなく、ドラコとも探検しに行くなんてかなり意外だが俺が知らないところで交流を深めたのだろう。
「探検かーいいねぇ、何時?」
「10時だよ」
「校則違反する気満々の時間だな」
「うん、ドラコが見せたいものがあるんだけど今日の夜じゃないとだめなんだってさ。……ノアは少しの減点なんて気にしない──よね?」
年頃の少年らしくニヤリと悪戯っぽく笑うハリーに、俺は同じように笑い頷いた。