兄・子世代ifチート能力を駆使して転生人生謳歌します!   作:八重歯

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49 刺激的なハロウィン

 

 

ハロウィンの日の大広間には特別な飾り付けが施されていた。

ジャック・オー・ランタンの灯りが暗い夜を照らし、千匹を超える蝙蝠が飛び交い、いつもとは違う豪華な料理が現れる。

新学期の始まりの時と同じように金色の皿に乗せられた料理を生徒達が喜んで食べる中、クィレルが全速力で大広間に駆け込み息も絶え絶えにダンブルドアの元へと向かった。

ターバンが歪み、恐怖に引き攣った表情のクィレルに誰もが何事かと食事の手を止めて静まり返り、恐々と彼を見つめる。

 

 

「トロールが……地下室に……お知らせしなくてはと思って……」

 

 

喘ぎ喘ぎ言ったクィレルは、それだけを伝えるとその場でばったりと倒れ気絶する。下級生が悲鳴を上げ、大広間中に恐怖と混乱が広がる中、ダンブルドアは険しい表情を浮かべ立ち上がった。

 

杖を掲げ、その先から紫色の爆竹を何度か爆発させ混乱した生徒の注意を引く。騒がしかった生徒達は音に首を縮こまらせながらようやく静かになり、混乱した瞳でダンブルドアを見つめた。

 

 

「監督生よ。すぐさま自分の寮の生徒を引率して寮に帰るように」

 

 

いつもの茶目っ気たっぷりな声ではなく、低く真剣なダンブルドアの声に、すぐに監督生が立ち上がり自分の寮生達に向けて声を張り上げ統率を測る。トロールの凶暴性を知る生徒は勿論だが、マグル生まれの下級生でそれを知らない生徒も場の雰囲気で怯えきっているな。

 

 

「なんでトロールが……行こう、ノア」

「ああ……ホグワーツの警備は万全のはずなのにな」

 

 

俺とセドリックは監督生の後に続き色々なグループとすれ違いながら大広間の扉へと向かう。一度振り返ってみれば教師達は杖を持ち既に席から立って何処かへ向かうところだった。──きっと、トロールを捕まえに地下へと向かっているのだろう。ダンブルドアもいつの間にか姿を消していたが、彼だけではなく気絶したはずのクィレルの姿も無くなっていた。

 

 

大広間から各寮へ続く廊下は大混乱し、さまざまなカラーのネクタイが入れ混じっている。先を行くハッフルパフ生の集団の中に見覚えのある赤毛と、黒髪の後ろ姿が見えたがすぐにそれはいなくなった。──ハーマイオニーのところへ行ったんだろうか。

 

 

「セド、先に行っててくれ」

「えっ、でも──」

「俺がトロールなんかに負けると思うか?取り残されてる生徒がいないか見てくる」

「なら──僕も行──」

 

 

覚悟を決めた顔でセドリックが言いかけた時、隣を歩いていたハッフルパフの一年生がよろめきばたりと倒れた。

 

 

「大丈夫か!?──気絶してる、怖すぎたのかな……」

 

 

セドリックは慌てて倒れた少女を抱き起こす。幼さが残る少女の顔色は土気色をしていて、ぐったりと気を失ったまま動くことはない。

 

 

「多分、そうだろ。──その子を寮に届けてくれ」

「……わかった。気をつけて」

 

 

流石にこの少女を置いて行く事や抱えたまま俺について行くことは出来ないと判断し、セドリックは立ち上がると少女を抱え離れかけた集団の後を追った。

 

 

「──びっくりした。ついてくる気とは思わなかったな」

 

 

独りになった俺は()()()()()名も知らぬ少女に心の中で謝りつつ、自分に透明化の魔法をかけ4階へ──フラッフィーの元へと向かった。

 

……セドリックがついてきたらちょっと面倒な事になるからなぁ。

 

 

 

数ヶ月前に来た扉の前に立ち、耳をつければ緊迫した話し声とフラッフィーの唸り声が聞こえる。

そっと扉を開け中に入れば、脚を噛まれ血を流すセブルスと、部屋の隅で震えるクィレル、今まさにセブルスを噛み殺そうと歯を噛み鳴らすフラッフィーが居た。

セブルスは杖をフラッフィーに向けているが、攻撃をする事はない。──そうか、フラッフィーは賢者の石を守るためにここにいる。殺そうと思えばできるはずだが、石の守りの一つを殺す事が出来ないのか。

 

 

「くっ──」

「ひぃいっ!」

 

 

「フラッフィー、駄目だ」

 

 

前足を曲げ、セブルスに飛び掛かろうとしていたフラッフィーは俺の声を聞き耳をピクリと動かすとキョロキョロと辺りを見渡す。

すぐに透明化魔法を解き、セブルスとフラッフィーの間に立てば、フラッフィーは迷うようにぐるぐると唸り、そしてその場にちょこんと座った。

 

 

「ノアぁ…」

「僕たち守らなきゃ……」

「侵入者は噛み殺さないと……」

「この人はダメだ」

「うーん……あっちは?」

「あっちは、()()駄目」

 

 

フラッフィーの頭はそれぞれ俺とセブルスとクィレルを暫く見ていたが、ぺたんと耳を垂らすと3つの頭全てが俺の方へ向き首を垂れるように頭を下げた。

 

 

「ノア、君がそう言うなら」

「いい子だ」

 

 

真ん中のフラッフィーの頭を撫でつつ、セブルスとクィレルを見る。セブルスは俺が魔法生物と話せる事や、ケルベロスよりも厄介な魔法生物を使役させていた事を知っているためそれほど驚いていないが、苦い表情で俺を睨みつけていた。

クィレルは今、目の前で起こったことが信じられないのか愕然として言葉を無くしている。その目がいつもより鋭いのは──おそらく、彼の本性が垣間見えているからだろう。

 

 

「さて、セブルス先生、クィレル先生。ここにはトロールは居ないですよ」

「……何故ここにいる」

「セブルス先生が全力疾走してるのが見えて、気になってこっそりつけてました。セブルス先生の全力疾走とかレアすぎでしょ?ちょうど良いタイミングだったようですね」

「ケ、ケ、ケルベロスと話が──そんな、馬鹿な──」

「知能さえあればどんな生き物とも話せるんですよ。……さて、トロールのところに行きますよ。倒さなきゃいけないし、誰にホグワーツまで連れてこられたか聞かなきゃ」

 

 

にっこりとクィレルに笑いながら言えば、クィレルは顔を引き攣らせ握りしめていた杖をぴくりと動かした。

迷っているのだろう、ここで俺を殺した方がいいのではないかと。だがここにはセブルスがいる。彼が見ている中で俺を殺すことなんて出来ない──きっと頭の中は混乱してぐちゃぐちゃなんだろうな。

 

 

「ふん、教師の真似事をするとは偉くなったものだな。トロールは我々教師が撃退する。──必要ならば、ダンブルドアが後で呼ぶだろう。一刻も早く寮に戻りたまえ」

「……はぁい」

 

 

厳しいセブルスの声に、これ以上食い下がる事は難しそうだ、とフラッフィーから離れる。

ひょいと杖を振れば杖先から白い光が溢れ、それは一本の筋になり扉の中央に吸い込まれた。

 

 

「この光の先にトロールがいるはずです。急いだ方がいい気がしますね、なんだか嫌な予感がするので」

「ま、ま、まちなさい。独りでは危険だ、送っていこう」

 

 

扉を開け寮へ戻ろうとしていた俺をクィレルが飛び止めたが、俺は笑顔のまま首を振った。

 

 

「俺、世界最強の魔法使いなので心配には及びませんよ。ぜひ、セブルス先生と一緒にトロールを捕まえに行ってください」

「だが──」

「行くぞ」

 

 

クィレルは引き下がろうとしたが、セブルスからの疑い深い目で見られ──渋々と言ったように白い光が指す方へと向かうセブルスの後を追った。

 

 

「……タイミングとしては間違いないはず。あとはハリー達の無事を確認しなきゃな……」

 

 

俺が居るせいで何か不都合なことが起こり、ハリーとロンがトロールを倒せなくなっても困る。大きなイベントしか覚えていないしどうしても後手になってしまうが、ここで彼らの無事を確認しなきゃ明日の朝まで不安を抱えることになっちゃうし。

 

 

「セブルスもやばそうだったしなー……俺が現れてなきゃどうなってたんだろう」

 

 

透明化の魔法をかけ足音を消し、俺は白い光が案内する方へすぐに駆け出した。

それは女子トイレに続き、女子トイレが近づくにつれ何かを砕く破壊音やトロールの唸り声が大きくなる。トイレがある廊下にたどり着いた時に一際大きな音が聞こえ、マクゴナガルとセブルスとクィレルが開け放たれたままの扉に飛び込んでいくのが見えた。

 

トイレの中には入らず、扉近くに立ち耳をすませれば静かな怒りを滲ませハリーとロンとハーマイオニーを咎めるマクゴナガルの声が聞こえた。──よかった、ハリー達は無事のようだ。

 

 

彼らが無事なら俺がこれ以上ここに居る必要は無いだろう。俺はすぐにその場を離れ、静かな廊下を歩きハッフルパフ寮へと向かった。

 

 

談話室は人で溢れ、トロールの侵入で中断していたハロウィンパーティの続きをしていた。届けられたのだろう料理を食べ、異様に明るく賑わっているのは少しでも恐怖を紛らわしたいのだろうか。

 

 

「遅かったね」

「そうか?」

 

 

セドリックは扉の近くで俺を待っていて、俺に怪我一つ無いのを見てほっと表情を緩める。俺の力を知っているセドリックは不安には思っていなかったものの、やっぱり少しは心配だったらしい。

 

 

「それで、迷子はいたの?」

「2人ほど。ちゃんと届けたぜ」

 

 

人で賑わう中央に行き、カボチャパイを摘んで食べながら言えばセドリックは本当に迷子がいたのか、と驚きつつ「良かった」と呟いた。セドリックの考える迷子では無かっただろうが、流石にそれを伝えると面倒な事になるから黙っておこう。

 

ハッフルパフ生が和気藹々と料理を食べていると扉が開き、みんなを安心させるためにっこりと笑ったスプラウトが現れた。

 

 

「トロールの脅威は去りました。パーティの続きは──ここでする方がいいようですね、夜更かしをしないようにするのですよ」

 

 

寮監の言葉に歓声が上がり、ようやく無事を確認できた何人かが「きっとダンブルドアが倒したんだ」とこそこそと囁き合う。美味しいかぼちゃジュースを飲んでいると生徒達の無事を一人一人確認していたスプラウトが俺に目を留め、「こっちに来なさい」と無言で手招きをした。

 

 

「何ですか?」

「ダンブルドア校長がお呼びです」

「──はぁい」

 

 

スプラウトは俺の耳元で囁くと、いったい何をしでかしたのかと困惑気味に俺を見る。その視線からスプラウトには何も説明がなかったのだとわかった。まぁ、トロールを尋問するか、あの部屋にいた意味を聞かれるのだろうな。

 

心配そうに俺とスプラウトをちらちらと見ていたセドリックに手を振り、俺はスプラウトの後をついて校長室へと向かった。

 

 

 

校長室ではダンブルドアとセブルスがいて、俺を送り届けたスプラウトは何か言いたげな視線をダンブルドアに送ったが──ここに残る事を許されず退室した。

 

 

「──さて、ノア。そこに座ってくれるかのう」

 

 

ダンブルドアは杖を一振りし、クリーム色のソファを出現させる。ふかふかとした座り心地の良いソファに座り校長席に座るダンブルドアと、その後ろで影のように控えているセブルスを見上げる。

 

 

「ノア。いくつか聞かねばならぬことがあるようじゃ。──何故、あの部屋に来たのかね?」

「セブルス先生が全力疾走していたので、ちょっと気になってついていきました」

「……ケルベロスを従えることができるとは、真かの?」

「従えるというか、仲良くなれるだけですよ」

「──何を考えているのかね?」

 

 

ダンブルドアは目を細め低い声で問いかけた。うーん、やっぱりファーストコンタクトが怪しすぎたからか、まだ完全に警戒心が解かれているわけじゃなさそうだ。去年まではこうして探ってくる事も無かったのに──ハリーが入学したからかな。

 

 

「何も。ただ平和に今年が終わればいいなって思ってるだけですよ」

「ノア、君に遠回しに聞いても無駄なようじゃ。何も招き入れておらんかね?」

「やだなぁ。──招き入れたのはそっちでは?」

 

 

足を組み替え、にこりと微笑めばダンブルドアは青い目を細めて俺をじっと観察する。

開心術をかけているのかもしれないが、ダンブルドア程度の開心術なんて簡単に防ぐ事ができるし──見られたところで俺の言葉に嘘はない。

 

この人は、間違いなくクィレルの後頭部にヴォルデモートがいると気づいているはずだ。知っていてハリーと対峙させるために教師として招き入れたのはそっちだろう。流石に見張っているだろうが、よくもまあ人様の子どもを預かっているのにそんなことが出来るよなぁとも、思う。うん。

 

 

「トロールを尋問するために呼ばれたと思ってましたよ。トロールとも話せると思いますし」

「……トロールは、クィレル先生が処理したのじゃ。気絶から目覚めてしまい、無効化するためにのう」

「……へー、残念ですねぇ」

 

 

ふわりと欠伸を噛み殺す。クィレルはトロールと話せるかもしれない俺の存在を知り、悪事が露見する事を恐れ殺してしまったのだろう。あの場に残ったのがクィレルだけならば、その言葉を否定する証拠は残されていないに違いない。

 

 

ダンブルドアもセブルスも黙り込んだままで無言の圧力をかけてくる。おそらくダンブルドアはクィレルを疑っているが、かといって俺を無視する事は出来ないのだろう。そんなに怪しい事してないんだけどなぁ。セブルスを助けるためだったわけだし、むしろ感謝して欲しいぐらいだ!

疑っているのはわかるがもう時間も遅くて眠いし、早く終わらせてベッドにダイブしたい。

 

 

「じゃあ──ひとつだけ」

 

 

俺はダンブルドアに向けて人差し指を立てる。この人やセブルスを無理矢理俺の思うがままにする事は、多分俺ならできるんだろう。けれど──2人は好きなキャラだし。思想を大きく曲げたくはない。

 

 

「ひとつだけ、あなたと約束を──契約を、結びます。俺への望みは何ですか?」

 

 

ダンブルドアは俺の言葉に少し眼を見開き、青い綺麗な目で見つめた。側に控えているセブルスは胡散臭そうな目で俺を見下ろしている。

 

 

「──そうじゃな。ノア・ゾグラフ。君への望みは──」

 

 

ダンブルドアは真剣な眼差しで俺を射抜き、その言葉の真意を探っていたが──暫くしてゆっくりと口を開き、微かに微笑んだ。

 

 

「──ただ、友人達と学生生活を有意義に過ごし、輝く宝物にしてほしい」

「……それが、願い?」

「勿論だとも。君だけではない。全ての子どもたちに等しく叶えて欲しい願いじゃ」

 

 

てっきり嘘をつくなとか、ヴォルデモート側につくなと言われると思っていた。──この人は、俺を疑っていても、あくまで人の善性や愛を信じる、アルバス・ダンブルドアなんだ。

 

 

「──わかりました、約束は守りますよ」

 

 

俺は眼を擦りながら立ち上がり、ぐっと伸びをする。帰ってもいいのか、という意味を込めて扉を見れば、ダンブルドアは頷き扉の方へ手を広げた。

 

 

俺はしんとした廊下を歩き、欠伸を溢しながら窓の向こうに輝く満月を見上げた。

 

 

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