兄・子世代ifチート能力を駆使して転生人生謳歌します!   作:八重歯

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50 こたつ最高!

 

 

ハロウィンの騒動も、11月に入りクィディッチのシーズンになれば話題に上がる事は無くなった。開幕戦はグリフィンドール対スリザリンであり、ハッフルパフはその後レイブンクローとの戦いだ。基本的に勝ったチームが優勝争いをする事になるのだが、いまホグワーツで囁かれている話題は例年と少し異なっている。

 

 

「聞いた!?あのハリー・ポッター、シーカーらしいぞ!」「え?一年生だろ?選手になれるのは二年生からだろ?」「かなり才能があって、マクゴナガルが規則を曲げたらしい」

 

 

──と。ハリーがシーカーである事は一応秘密だったのだが、どこから漏れたのかその噂はホグワーツ内でかなり広まっていた。

 

かなり才能があるらしいハリー・ポッターは、果たしてスリザリンに勝つことができるのか、という事に殆どの生徒が関心を寄せている。スリザリンチームも弱いチームではない。去年ハッフルパフが優勝杯を獲得するまでは何年も連続でスリザリンチームが優勝していたのだ。まあ、反則に片足突っ込んでるどころかどっぷりハマってるラフプレーや、試合前に対戦相手を呪い、戦力を削っているからかもしれないが。

 

 

開幕戦前日。ハリーにとってデビュー戦前日であるその日の昼間。

俺とセドリックは広い中庭に作ったかまくらの中に入っていた。

しっかりと分厚いマットを引いて、小さな炬燵──は、電気が通ってないが、それらしく魔法で火を入れて温め、机の上には蜜柑が入ったカゴ!どう見ても完璧な冬のスタイルであり、セドリックは周りからの視線に若干入るのは遠慮したがっていたが無理矢理連れ込んで炬燵もどきに座らせてみれば途端におとなしくなった。

雪は降っていない。寒さが厳しくなり冬に向かう中、俺が無性に炬燵に入りたくなっただけで、魔法でちゃっちゃと作ったのだ。

 

 

「あったかい……これ、イグルー?」

「イグルー?何それ」

「外国の氷の家だよ。何かの本で読んだことがあるんだ」

「いやいや、これはジャパニーズかまくら!」

「カマクラ?へえ。雪の中なのに寒くないし、この机に布団を組み合わせるの……最高にあったかい……」

「これは炬燵っていうんだ」

「コタツ……へえ……」

 

 

セドリックは机の上に頭を乗せ、半分眠りながらほわほわと答える。わかる。炬燵って何故か無性に眠くなるんだよな。……昔、炬燵で寝ちゃって朝起きたら身体中が痛くなったり風邪ひいた事あったなぁ。

 

なんて、前世のことを思い出してしみじみしながら蜜柑を食べていれば、「何してるの?」との声が入り口から聞こえ、ひょっこりとハリーが顔を覗かせた。

 

 

「温まってるんだ。入るか?」

「うん!うわーこれ、雪の家?これは机と……布団?あ、あったかい!」

「これはコタツって言うんだぜ」

 

 

ハリーはすぐに身を屈めて入ってきて俺の隣に座ったが、ロンとハーマイオニーは周りの好奇の視線に晒されるのは流石に恥ずかしいのかどうしようかと悩んでいた。

 

 

「おいで、ロン、ハーマイオニー」

「は、はい!」

「失礼します!」

 

 

手で招き、いつもより少し低い声を意識して誘ってみればロンとハーマイオニーは面白いほど顔を真っ赤に染めてさっと開いているスペースに座った。4人用の炬燵に5人は少々キツいため、指を鳴らしてかまくらと炬燵を拡張すればハーマイオニーは眼を輝かせ「凄い魔法ですね!」と歓声を上げる。

 

 

「ここ、すごーくあったかい。セドリックが寝ちゃうのもわかるなぁ……」

「本当に……」

 

 

ロンとハーマイオニーも炬燵の魅力にどっぷりハマったのか、幸せそうに蕩け切った声で呟く。

ハリーは暫く微睡んでいたが、「あ、」と小さく声を上げると肩にかけていたカバンの中からクィディッチ今昔、という本を引っ張り出した。

 

 

「ノア、これ読んだことある?」

「無いな。読書あんまり好きじゃないだよな」

「そっか、面白い本だよ?」

 

 

手を伸ばし、完全に寝こけているセドリックの形のいい頭の上にみかんを乗せ。その上に慎重にまたみかんを乗せながら答える。うーん、2つまでは余裕だ。しかしここからが勝負だな……。

 

ハリーはすぐに俺に本を勧めることを諦め、マットの上に寝転びながら本を読み、ロンとハーマイオニーは俺が積み上げていくみかんをハラハラしながら眺めていた。

 

そんな穏やかな休み時間は、外の気温のように冷たい声で突如終わりを告げた。

 

 

「……何をしているのかね」

「みかんを積み上げてます。一緒に乗せますか?」

 

 

入り口に立っていたのはセブルスであり、腕を組みして思い切り俺たちを見下ろし怪訝な顔──というより呆れ混じりの顔をしている。

 

 

「……校庭に私物を置く事は禁じられている。ハッフルパフ5点減点。……ポッター、図書館の本は校外に持ち出してはならん。よこしなさい。グリフィンドール5点減点」

 

 

ハリーは心から嫌そうに顔を歪め、ぶすっとした表情でセブルスに本を手渡す。

セブルスは満足したのか、ふんと鼻で冷たく笑うと、片脚を引き摺る不自然な動きで去っていった。

 

 

「くそっ!規則をでっち上げたんだ!」

「ハリー。規則はでっちあげれないわ。このコタツ?は最高だけど、仕方がないわね」

「ちぇっ……それにしても、あの脚はどうしたんだろう?」

 

 

ハリーは悔しそうにしていたが、本を没収されたことよりもセブルスが不自然に足を引き摺らせていることが気になったようだ。

 

 

「知るもんか、でもものすごく痛いといいよな」

「こらこら、そんなこと言っちゃだめだぜ?仮にも教師で、俺の一時後見人なんだから」

 

 

俺が困ったように笑いながら言えば、ロンは暖かさで赤くなっていた頬をさらに赤く染めてこくこくと頷いた。

 

 

「──さて、休み時間も終わるし、もうそろそろ移動しなきゃな」

 

 

俺の言葉にハリーたちは心から名残惜しそうに──誰だって炬燵から出るのは嫌だろう──しながら炬燵を出て、身を寒さで震わせながら校舎の中に走っていった。

 

 

「……おお、四つも……」

 

 

セドリックの頭にはみかんが四つ積み上げられていた。

こ、この奇跡的なバランスと、イケメンの上にみかんが四つも乗っているという面白さを俺だけが知るなんて勿体無い!

あーせめてフレッドとジョージに見せたいけど、呼びに行く時間はなさそうだよなぁ。

 

 

セドリックの近くにあった鞄を引き寄せ、中からカメラを取り出し、パシャリと一枚。

──よし、これでオッケー!

 

 

「セド、もう昼休み終わるぞ」

「んぇ?──ん、──うわっ、なんだ?」

 

 

もぞもぞと動いた瞬間、頭の上からみかんがポロポロとこぼれ落ちてきてセドリックは慌てて起き上がり不思議そうに辺りを見渡し、このみかんはどこから降ってきたのかと首を傾げる。

 

 

「はははっ!」

 

 

なんだかその様子がおかしくて笑いながら出てきていた写真をセドリックに見せれば、セドリックは暫し呆然とした後「ノア!」と怒ってしまった。

 

 

 

夕食後、いつものようにセドリックに宿題を見てもらうつもりだったが。頭の上にみかんを乗せられる事はかなり彼の中で屈辱だったらしく、「たまには自分でやったら?」と刺々しい声で冷ややかに言われてしまった。

普段怒らない人を怒らせると怖い、とよくいうため、すぐに心の底から謝れば──不機嫌そうではあったが、とりあえず許してくれた。

良かった!闇堕ちしたかと思った!なんかセドリックってプライド高くてすぐ闇堕ちするって噂をむかーし聞いたことがあるし。

 

 

「この宿題、図書館にある参考書の方がわかりやすいよ。まだ時間大丈夫だし……借りに行く?」

「んー。そうだな、ちょっと行ってくる──ああっ!セ、セドリックさんはお座りに!ぜひ、待っていてください!このノアめが持ってきますので!」

「……ノア」

「じょーだんだって。冗談!」

 

 

わざとらしくへりくだってみれば、セドリックは笑みを深め低い声で俺の名を呼んだ。その目が一切笑って無かったし、眉間に筋が走ったように見えるのはおそらく気のせいではないだろう。

フレッドとジョージならこういう冗談にノリノリになってくれるけど、セドリックは根が真面目なのか、あまりこういう冗談が好きではないようだ。

 

これ以上怒らせるのは得策ではないな、あまりからかいすぎて本気で嫌われるのは嫌だし。

寒い廊下に出て駆け足で図書館まで向かい、セドリックに言われた参考書を借りてすぐにハッフルパフ寮へと戻る廊下を早歩きで進む。

 

 

「あ、ノア!どうしたの?」

「今日はよく会うなぁハリー」

 

 

階段を降りていると、下から登ってきているハリーとばったり出会った。後ろにロンとハーマイオニーの姿は無く、ハリーが1人で行動しているなんてさらに珍しい。ここ数日はずっとロンとハーマイオニーと一緒だったもんな。たまに休み時間にドラコと話してるのは見かけてたけど。

 

 

「職員室に行こうと思って。その、スネイプに本を返してもらおうと……」

「なるほど。がんばれ」

 

 

そういえばそんな流れがあったような気がするが、それほど記憶に残っていないという事は大した事じゃないんだろう。──多分。

階段をそのまま降りようとしたら、ハリーは驚き何故か傷付いたような眼をして俺を見つめ、ぱしっと手を取った。

 

 

「着いてきてくれないの?」

「職員室に用はないしなぁ……宿題しなきゃダメだし」

「……」

「……」

「……着いてきてほしいな」

「……えー……まあ、いいけど。返してもらえなかったらすぐ諦めろよ?」

 

 

ため息をつきそう言えば、ハリーは目に見えて嬉しそうに笑った。

 

そのまま俺は回れ右をして階段を登り、近くにある職員室へ向かう。ハリーは緊張した顔をしていたが、すぐに扉をノックした。──しかし、入室を許可する声は無く、帰ってきたのは無音だった。

 

 

「誰もいないのかな?……スネイプが本を置きっぱなしにしてたらいいんだけど」

 

 

ハリーはそう言いながらそっと職員室の扉を引いた。しかしハリーよ。セブルスが本が無くなってる事に気づいたらめちゃくちゃ怒ると思うぞ。

 

無人かと思われた職員室にはセブルスとクィレルがいて、セブルスはガウンを膝までたくしあげていた。うわーすっげえ青白いし細い。怪我云々よりも蹴ったらすぐ折れそうだな。

 

 

セブルスの青白く細い脚は血だらけになり、生々しい傷跡が露出している。あーフラッフィーに噛まれたところだな。魔法生物からの怪我って治りにくいって、なんか魔法生物飼育学でいってた気がするなぁ。

 

 

「忌々しいやつだ。三つの頭に同時に注意するなんてできるか?」

 

 

セブルスが悪態をつき、嫌そうに顔を歪めた。あまり痛そうじゃないのは、鎮痛薬で誤魔化しているんだろう。

クィレルは傷を見るのも悍ましいのか、蒼白な顔でびくびくと震えながらセブルスに包帯を渡す。

ハリーはこれは見てはいけない場面なのだと思ったのかそっと扉を閉めようとした──が、残念ながらセブルスは動く扉に気付き、隙間から顔を覗かせるハリーを見て顔色を変えた。

 

 

「ポッター!ゾグラフ!」

「本を返してもらえたらと思って」

「出ていけ、失せろ!」

 

 

セブルスは額に青筋を立てて怒鳴る。すぐに傷口を隠したところを見ると、やはり知られたく無かったのだろう。

ハリーはセブルスのあまりの剣幕にごくりと唾を飲み、何度も頷くとすぐに走っていった。

ハリーの背中を見ていた俺は視線をセブルスの足元に移動する。うーん、あんなに酷い怪我だったっけ?……なんか白っぽい骨が見えたような気がする……包帯だけでなんとかなるものには見えない。

 

 

「聞こえなかったか?さっさと出て行け」

「あーちょっと待ってくださいねー」

 

 

脅すような低い声だったが、とりあえずセブルスの声を無視して職員室に入り、そのままセブルスに近づく。セブルスはハリーが去った時には椅子に座り直していたから、立っているのも辛いんだろう。痛みはなくとも神経がやられてたらうまく立てないはずだし。

 

クィレルはおどおどとしながら俺とセブルスを見比べているが、何も口出しはせず貝のように黙り込んでいた。

 

 

「その脚だけ治しておきましょうか。授業で立ち続けるのも辛そうだし」

 

 

ちょっと背を曲げてセブルスの怪我をした方の脚に手を伸ばし、脛あたりを人差し指でさっと撫でる。撫でた瞬間セブルスは嫌そうに──おそらく反射的に脚を引いたが、次の瞬間にははっと息を呑んだ。

 

セブルスはガウンの上から自分の足を撫でる。本来なら傷口の凹凸や、やや湿った感触がしただろうその箇所は、なんの引っかかりもなくすっと指で撫でることが出来たようだ。

 

 

「……何故──」

「さて。じゃあさっさと出て行きます」

 

 

肩をすくめ、俺は何か言いたげなセブルスと呆然としているクィレルに軽く頭を下げて職員室を出た。

誰もいない廊下で止まり、冷たい壁に近づき背中を預ける。

 

 

「……怪我治すの、疲れる……」

 

 

額にじんわりと浮かんだ汗を手の甲で拭きながら、俺は小さくため息をついた。

治癒魔法って、そういやハリポタでそんなに出てこないもんなぁ。魔法薬が有能すぎるからかもしれないが。うーん、人を癒す魔法はこれからよく使う事になるだろうし。この倦怠感にもなれなきゃな。

 

 

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