兄・子世代ifチート能力を駆使して転生人生謳歌します!   作:八重歯

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52 占い学の乙女

 

 

 

「スネイプ先生はそんなことしない!」

「でも、僕たちは見たんだ。ハリーの箒にぶつぶつ呪いをかけていた。ずっと目を離さずにね」

「そうよ。私、たくさん勉強したから知っているの!あれは呪いよ、間違いないわ」

「し、しかし──スネイプ先生のローブを燃やして、目を離した後も数十秒は狂ったままだったと言ってなかったか?それはおかしいだろう!」

「それは──」 

「あのさあ。俺、帰っていい?」

「駄目だっ!」

「ここにいてっ!」

 

 

右側からドラコのセブルスへの援護、左側からハリー、ロン、ハーマイオニーのセブルスへの疑惑を聞いていた俺は、つい「帰りたい」と思ったがハリー達は俺を離す事はなさそうだ。

 

クィディッチの試合は基本的に土曜日に行われる。そのため今日は日曜日であり、授業はない。

試合の翌日、普通に朝ごはんを食べていた俺は必死な形相のハリー達に「こっちきて!」と言われ、引っ張られ、ついでにスリザリンテーブルにいたドラコもなんの説明もなく引っ張られた。

 

 

ハリー達は空き教室の中に入ると口々に昨日何があったのか──そして、ハロウィンの日にセブルスがケルベロスのいるあの廊下に入り負傷し、まだ足を引きずっているのだという事を話した。ドラコは唖然と話を聞いていたが、全て聴き終わった後に「ありえない!」とハリー達の考えを一蹴し怪訝な目で睨み、疑問点を言い返し──そして、今に繋がる、と。

 

どうも、ハリーとロンとハーマイオニーの中ではセブルスが怪しいのは確実らしい。それにフラッフィーに噛まれたのもハリーがロンとハーマイオニーに伝えてるし。ハーマイオニーは確かにタイムラグがあった事を気にしていたが、セブルス以外に怪しい人がいなかったのだろう。自分の違和感を押し殺しているように見えた。

 

 

「それは、多分箒の中に残っていた呪いが悪さをしたのよ。解呪してもすぐに効くわけではないって、本に書いてあったわ」

「だ、だが……何故、スネイプ先生がそんなことをする必要があるんだ?クィディッチに勝つためだとか、馬鹿なことを言うなよ」

「それは……たぶん、あのケルベロスは何かを守っていて、それでスネイプは盗もうとしたんだ。でもそれが失敗したって僕にバレたから口封じのためとか…?」

「おかしい。その場にはクィレルもいたんだろう?ならば、完全に隠さねばならないことでは無かったのだろう。確かにケルベロスの事をハリーに知られて逆上したのだろうとは思うが……」

「そうじゃなくても、スネイプは僕を嫌ってるし恨んでる!いっつも減点減点ばっかりだしね」

「だが……」

 

 

ドラコはそれでも納得いかず、言いかえそうと思い口を開いたが、ハリーがあまりにも苦い顔をしていて黙り込む。

ハリーとドラコは友達だ。友達が自分の意見に頷いてくれない事は──多分、この年齢の子どもたちにとっては重要なことなのだろう。

 

 

「ああ、君はいつも加点されてるもんね、ドラコ。君はスネイプのお気に入りだ!」

 

 

悪意を滲ませてからかうハリーに、流石にドラコは機嫌を損ね口をへの字に曲げた。──確かにスリザリン生であるドラコは減点なんてされた事はない。しかし、ハリーと違いドラコは授業に失敗する事はほとんどないのだ。

 

 

「そりゃそうさ。僕は薬をヘドロに変えないからなハリー!」

「なんだと?」

「そのままの意味さ」

「ストーーップ!君達が喧嘩してどうするのさ!しかも今は魔法薬学なんてどーでもいいんだよ。スネイプが悪いやつかどうか、だろ?馬鹿なのか?」

 

 

売り言葉に買い言葉で火花を散らせかけたハリーとドラコの間にロンが立ち、2人を無理やり離し心の底から呆れ切った視線を向ける。おお、ロンが仲裁するなんて意外だな、兄弟が多くて喧嘩を宥めるのになれているのかもしれないな。

 

ハリーとドラコは少し気まずそうに肩をすくめた後、喉の奥で「言いすぎた」「僕も、ごめん」と呟き言う。なんとなく気まずそうな雰囲気の中、ハリーが「ノアはどう思う?」お題の矛先を俺に向けた。

 

 

「僕は、スネイプが僕の箒を呪って口封じをしようとしたんだと思う。禁じられた廊下に隠してあるものを盗みたがってるんだと考えてるんだけど」

 

 

その考えは見事に外れているが、本当の黒幕のことを考えるとハリー達にクィレルの存在を伝えるわけにはいかない。もし、クィレルを怪しんでしまえば何かの拍子で知ってはいけないことを知り、消されかねない。

 

 

「さー。俺にはさっぱり」

「……本当に?」

 

 

肩をすくめて両手を上げて降参のポーズをとったが、ハリーは胡散臭いものを見つめる目で俺をじとりと睨む。本当かと言われれば嘘だが、これは必要な嘘だろう。

 

 

「さっぱりだけどさ、もし俺が本気でハリーを口封じのために殺そうとするなら、箒の事故に見せかけるんじゃなくてもっと自然に殺すけどな」

「え?」

「セブルス先生は薬のエキスパートだろ?少しずつ衰弱させ、自然死を装うことは難しくないはずだ。わざわざ人の目につくところで──誰かが振り返れば、自分が呪ってるとバレてしまうなんて愚かなことするかな?するなら、もっと隠れて呪うんじゃないかとは思う。だからまぁ……セブルス先生じゃない、別の誰かじゃないかな」

「そうだ!スネイプ先生がそんなミス犯すわけないだろう!ハリー、君を嫌っているのは事実だと僕も思うが、そんな下手な殺しを計画する人には思えないな。間違いなく完全犯罪を企てるタイプだ」

 

 

ドラコは俺の言葉を聞いて水を得た魚のように喜び胸を逸らしたが、ロンとハーマイオニーは複雑そうな表情で「それっていつか本当に殺しそうってことでは……?」と考えていた。

 

 

「まあ、セブルス先生には気をつけるってことでいいんじゃね?」

「うーん……」

「あ!そうだわ。ノアさん。ニコラス・フラメルってご存知ですか?どうやらその人があの場所に関係してるらしくて。多分その人に関わる何かを隠しているんだと思うんですけど……」

 

 

ハーマイオニーは昨日ハグリッドが口を滑らせたニコラス・フラメルについて簡単に説明した。ハリーはドラコにも「知ってる?」と聞いたが、ドラコは暫く黙って首を振った。

 

 

「さあ、俺って最強の魔法使いだけど、勉強嫌いだから──じゃあ、俺この後授業があるから、またな」

 

 

さらりと嘘をつき、扉の方へと向かう。ニコラス・フラメルについて有力な情報を得られなかったハリー達はみんなで図書館に探しに行こうと頭を突き合わせ話し合っていた。

 

 

「ハリー」

「え?何?」

「怪我がなくてよかった」

「……!うん!」

 

 

扉に手をかけ、振り返りながら言えばハリーは嬉しそうに破顔し頷く。ひらりとみんなに手を振り、占い学を受けるために北塔へ向かった。普通に行くと遠くて階段の数も引くほどあってめちゃくちゃ疲れるが、忍びの地図には抜け道がしっかりと記載されていたため、俺はこっそりと占い学近くへの抜け道を使用した。

 

抜け道の肖像画から出れば、ちょうど通ったばかりだったのかフレッドとジョージとばったり会う。彼らも占い学を受講していてこの授業は珍しく、グリフィンドールとの合同授業だった。

 

 

「おはようノア」

「おはよう。新しい災難は考えてきたか?」

「もうネタ切れ気味」

「とりあえず今週も足の骨を折ることにするよ」

 

 

占い学のトレローニーは災難な予知を好む。悲惨であればあるほど彼女は興奮し、可哀想なものを見る目で生徒達を見つめる悪癖がある。そのため毎週出される1週間分の占いの宿題は、大体悲惨なことばかり書けば合格点を得られるのだ。──俺以外は。

 

 

「さーて。今日はどんな方法でノアを誘惑するのか楽しみだな」

「ああ、先週は毎晩9時にトレローニーの自室に行かなきゃ俺に災難が起こるみたいだったからな」

「トレローニーの自室に行くことがまさに災難だ」

「ははっ!違いない」

 

 

そう。俺は何故か悲惨な未来ではなく、トレローニーとの未来ばかり占われるのだ。つまり彼女は俺に心底魅了されてしまい、どうにかしてくっつきたいらしい。

生徒と教師という禁断愛だが、それすらもトレローニーを興奮させる要因なのだろう。まあ、彼女の思惑は今のところ実を結んでいないが。

 

フレッドとジョージと楽しく話しながら占い学の教室に向かう。天井に伸びる銀色の梯子はすでに降りていて、何人かの生徒が足を滑らせないように慎重に登っていた。

 

 

俺たちも梯子を登り、沢山の丸机と不揃いな椅子が並ぶ教室の1番後ろを陣取る。

授業開始のチャイムが鳴った途端、教室の奥から滑るようにトレローニーが現れ、すぐに俺を見てうっとりとした熱がこもった目を向けた。

 

 

「さあ。今日も俗世から離れ、未来の神秘の帳を覗きましょう」

 

 

ゆったりとした言葉と共に授業が開始された。ずっと紅茶の滓を読む授業が続いていて、最近この甘ったるい紅茶の匂いを嗅いだだけでやる気が削がれてしまうのはおそらく俺だけではないだろう。

 

 

「さあ、紅茶のカップをとって、2人1組になってくださいな。──では、今回私の助手として、お手伝いをお願いするのは……そうね、ノア、こちらにいらして?」

 

 

教室中の気の毒そうな視線が俺に向けられる。今回は、と言っているが今回も、の間違いであり、俺は毎回助手として呼ばれて近い距離で指導を受ける羽目になるのだ。

 

ため息をついて立ち上がれば、フレッドとジョージは「頑張れよ」と小声で俺に囁いた。しかし、その声音がどう聞いても楽しげなのは、この状況を誰よりも愉快に思っているからだろう。

 

 

皆に紅茶が行き渡り、火傷しそうなほど熱い紅茶を飲みそれぞれが滓を読む──のは、真面目な生徒や、トレローニーを崇拝している夢見がちな生徒だけで、ほとんどの生徒は滓を見ることなく適当に羊皮紙に「犬」「本」「十字架」など、書き始めた。

 

 

「さて、ノア──さあ、私が淹れた紅茶、お飲みになって?」

「はい」

 

 

こっそり魔法で冷ました紅茶を飲み、滓の入ったカップを回し水気を切る。そしてまじまじと滓を見てみるが、茶色のふやけたものがたくさんあるようにしか見えない。

 

 

「さて、何が見えますの?」

「えーと。猫ですかね。うーん、あとはなんだか……あー……石?」

「私が見てみましょうね」

 

 

俺が全てを読む前にトレローニーはさっとカップを取り、色々な角度で滓を眺めた。少しするとハッと何かに気づいたような表情をし、口を手で押さえる。

 

 

「薔薇……太陽……鳩……が見えますわ。その意味はおわかりかしら?」

「えーと、なんでしたっけ?」

「薔薇は愛を、太陽は大きな幸福と身近な女性を、鳩は結びつきを示しています。──つまり、あなたは近いうちに身近の女性と──この太陽はかなり大きく見えますから、年上の女性と恋に落ちるのですわ」

 

 

トレローニーが熱っぽく囁くが、俺には全くわからない。「へえそうなんですか」とさらりとかわせば、トレローニーは少女のように頬を膨らませた。くっ!そのあざといポーズをしていいのは可愛い女の子か俺だけだぞ!!

 

 

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