兄・子世代ifチート能力を駆使して転生人生謳歌します! 作:八重歯
クリスマス休暇が明けて数日後。ついにグリフィンドールとハッフルパフのクィディッチの試合……つまり、決勝戦がやってきた。
大広間に入った瞬間、ハッフルパフ生だけじゃなく、全ての寮の生徒達が俺を囲み、紅潮した頬と興奮した顔で「頑張ってください!」と口々に激励を飛ばす。
自分の寮を応援するのが普通だが、彼らはクィディッチのファンである前に、俺の熱烈なファンなのだ。
「今日も無失点目指すからな」
「わー!期待してますっ!」
「見てください、ノア様の旗を作りました!」
グリフィンドール生の女子集団が、他の生徒を押し退け俺の前に現れ見せたのは大きな旗であり、点滅するそれには「ノア様最高!」「ノア様こっち見て♡」「投げキッスして♡」の文字が踊り、アイドルのコンサートでファンが持つうちわのようである。
「ありがとう、応援よろしく」
一番先頭にいた女の子の頭をぽん、とひと撫でして通り過ぎれば女の子は恍惚とした表情を浮かべ気絶した。
「勝てるかな……」
昼食の席に座りながら、セドリックは珍しく弱気な言葉をぽつりと呟いた。自分でもその思いが口から出るとは思わなかったのか、俺の視線に気づくと気まずそうに苦笑する。
「まあ、ハリーはすごい才能がある。それは間違いないな」
「うん……」
「自分を信じろ、セド。お前は十分練習して努力してきた」
「そうだね……」
浮かない顔のセドリックに、俺はにやりと悪戯っぽく笑って両手を広げた。
「もし負けて、泣いちゃったら俺の胸を貸してやるぜ?」
セドリックはきょとんとしていたが、力なく笑うと「予約しとくね」と呟いた。
落ち着いたのかスープを飲み始めたセドリックを見ながら、俺もサンドイッチを食べる。このあとすぐに試合が控えているし、あまり大量に食べすぎると気持ち悪くなるから少しだけにしよう。
この試合の結果は多分、史実通り進むのなら負けるのだろう。たしかグリフィンドールは優勝したはず。どんな試合だったかは覚えていないけど──この世界には俺がいる、試合結果が変わる事だってあるだろう。
いやぁ、でもハリーに誰よりも才能があるのはマジなんだよなぁ。
「ノア、今日は負けないから!」
「どっちも応援しているからな」
サンドイッチを食べているとハリーとロンとハーマイオニー、そしてドラコがやってきた。
ドラコはスリザリン生だし、決勝戦にはあまり関係がない。グリフィンドールを応援するスリザリン生なんてドラコくらいだろうが、彼らの中にあるのは友情だからそんな事気にしないのだろう。
「えー?ドラコ、俺だけを応援してくれないのか?」
ちょっと悪戯心がむくりと湧いてきて、揶揄うように言いドラコの頬を指先で撫でてみればドラコは顔を真っ赤にして息を呑んだ。
「──すまないハリー。僕はノアの応援をする。ノア、がんばれ!グリフィンドールなんてぶっ潰せ!」
「はあ?酷くない?」
「ロンと、ハーマイオニーは俺の応援をしてくれないのかな?」
びくりと肩を震わせた2人に、悲しそうに微笑みかけてみればロンとハーマイオニーはあわあわと面白いくらい慌て、首をぶんぶんと振った。
「ノアを応援するよ!グリフィンドールには勝って欲しいけど、うん!ノア頑張って!」
「勿論ですノア様!勝利をその手に収めてください!」
「……酷いアウェイだ」
ハリーはころりと意見を変えた三人を見て苦い顔をして呟く。
ロン達は「だってノアに言われたら断れないし」と悪そびれなく言い、さらにハリーの機嫌は急降下した。
「冗談だって。勿論ロン達もそれはわかってるさ、なぁ?」
「うん、そうだよ」
「ええ、勿論」
「当然だろう」
「……どう見ても嘘だ」
膨れっ面をしたハリーを見てけらけらと笑えば、絶対にハッフルパフに──いや、俺に負けてたまるかと闘志を燃やしていた。
ーーー
決勝戦は全校生徒が観戦しに来ているのか、観客席は超満員だった。生徒達が振る応援旗の黄色と緋色と灰青色の三色が混じり、珍しく晴れた青い空の下綺麗な模様を描いている。
ハッフルパフ生ではない生徒の殆どが黄色の旗と、そしてどこの寮の色でもない灰青色の旗を持っていた。灰青は、ノアの瞳の色でありホグワーツで灰青といえばノアを指す。
その多さからハッフルパフを応援しているわけではなくノア個人を応援している生徒の──いや、熱狂的ファンの多さと、ノアがどれほどホグワーツ生を魅了しているかがわかるだろう。
「ノア様!ノア様!」と試合が始まる前からノアの名前を叫ぶファンの歓声が飛び交い、選手達がグラウンドに入場した途端、黄色い叫び声が至る所から上がる。
ハリーは太陽の下で選手の服を着て、一層輝いているように見えるノアを眩しそうに見つめた。どの選手も試合前は緊張しているが、ノアはいつもの自信たっぷりな笑顔を見せ観客に手を振り余裕の表情を見せている。
ハリーは、更衣室でキャプテンであるウッドに言われたことを思い出し、強くニンバス2000の柄を握った。
「いいか、ポッター。プレッシャーをかけるわけじゃないが、この試合こそとにかく早くスニッチを掴んで欲しいんだ。向こうのキーパーのノアは……めちゃくちゃうまい。今まで見たどの選手より──プロの選手並みのうまさで、今までだれも得点をとった事がないんだ。俺たちが勝つには、君がスニッチを掴むしかない」
そう、ウッドに鬼気迫るギラついた目で言われたハリーは緊張と責任感で胃がキリキリと痛む気がしたが、なんとかその痛みを考えないようにし、他の選手達と共に整列した。
「うわっ、セブルス先生が審判やるの?レアすぎるだろ……!カメラカメラ──」
「ゾグラフ。退場処分をお望みかね」
箒を持ち、首から銀のホイッスルをかけたセブルスを見てノアはすぐにカメラを取り出そうとしたが、低いセブルスの一声につまらなさそうに口を尖らせた。
写真はたくさんの生徒が撮っているだろう。整列しているだけで至る所からフラッシュがたかれているのがハリーにはわかっていた。しかし、その写真に収まるのは間違いなくノア・ゾグラフただ1人であり他の人など見切れているか霞んでいる事だろう。
セブルスの審判姿というノアしか喜ばない光景は、残念ながら誰も写真に収める事はないだろう。──セブルスにとっては幸運かもしれないが。
「両キャプテン、前へ」
セブルスの指示に、両チームのキャプテンが一歩前に出て握手をする。自他ともにクィディッチ馬鹿であると認められているウッドとナンシーは闘志を目に燃やし「負けないぜ」「今年も、勝つわ」と強く手を握り合った。
高いホイッスルの音が響き、選手達は空へと駆け上がる。
「さあ!試合が開始されました!グリフィンドール対ハッフルパフです!やはり注目すべきはノア・ゾグラフ選手ですね、ええ、去年よりも美しさに磨きがかかっています。モデルとなったノアのファンサービスに期待しているのは私だけではないはずで──」
「ジョーダン!」
ノア贔屓が強いリーの実況をマクゴナガルがすぐに咎めた。リーは「失礼しました」と言いつつも、期待を込めてノアを見つめ、その視線を受けたノアはゴール前から観客に向かって花のような笑顔で手を振り、投げキッスを送った。
「ノアの投げキッスによりみるみるうちに生徒が気絶していきます!す、すごい──屍の山です!ノアは魔法を使わずに人を無力化することができるのか!?いや、ノアそのものが魔法のようなもので──」
「いい加減にしなさい!」
「失礼しました。えーと。──おっ、ブラッジャーをジョージが打ち返しました。ああ!危うくスネイプ教授の眉間にミラクルヒットするところでしたが、スネイプ教授、難なくかわした!スネイプ教授、意外と動けるようですね。──おっと?スネイプ教授とジョージが話し合っているぞ?──これは──ペナルティー・シュートです!ハッフルパフにペナルティー・シュートのチャンス。もしや、スネイプ教授もノアのファンなのか?いつもよりハッフルパフ優位な気が──んん?少し待ってください──ペナルティー・シュート取り消しです!どうやら試合続行するようです。いったい何だったのでしょうか?」
ノアは低い位置にいるセブルスを見下ろし小さく笑う。
間違いなくセブルスはグリフィンドールに勝たせたくないのだろう。しかし、ハッフルパフを優遇すればリーが「ノアのファンなのか?」と実況するためそうする事も出来ないのだ。
その後セブルスはグリフィンドールの選手が心配していたほど、ハッフルパフ贔屓の判決を下す事なく試合が進む。
ノアはゴールに向かってきたクァッフルを味方のチェイサーに投げ渡した。
上空の高いところではハリーとセドリックが互いを牽制し合いながら旋回している。
果たしてどちらが先に動くのか、ノアが空を見上げたその時、ハリーが突如弾丸のように急降下した。
「動いたのはハリー選手です!」
リーの熱がこもった実況が響く。
ハリーは素晴らしい急降下を見せ、観客は息を呑み大歓声を上げた。すぐにセドリックも遥か下方に輝くスニッチを見つけ追いかけるが──間に合わない。
空中で向きを変えたセブルスの両脇を掠めるようにハリーとセドリックが通り過ぎ、そして──ハリーは急降下を止め意気揚々と手を掲げる。その手にはしっかりと黄金のスニッチが掴まれていて、セドリックは悔しそうに顔を歪ませ、そのまま地上へ降り立った。
「試合終了!150対20でグリフィンドールの勝利です!前代未聞でしょう、たった5分足らずの試合でした、ハリー選手がやりました!!」
リーの歓声と共に、グリフィンドールの選手達が次々とグランドに降りてきた。誰もが喜びを爆発させ、肩を組みハリーの素晴らしさを褒め称える。
観客は──ノアの熱狂的ファンであっても、ハリーの素晴らしいプレイを褒め、手を叩いた。
ノアは呆然とするハッフルパフの選手達を通り過ぎ、1人ポツンとグランドに突っ立っているセドリックの元へ舞い降りる。
「俺のここ、空いてるぜ?」
「──うっ……」
両手を広げ茶目っ気たっぷりに笑うノアを見て、セドリックは顔をくしゃくしゃに歪め、ノア近寄るとその華奢な肩に額を押し付け体を震わせる。
ノアは自分より頭ひとつ分は高いセドリックの頭をポンポンと優しく叩いた。