兄・子世代ifチート能力を駆使して転生人生謳歌します! 作:八重歯
翌日。
寮の得点を記録している砂時計の前を通った生徒は驚きのあまり二度見することになっただろう。
グリフィンドールが100点、ハッフルパフが50点、スリザリンが20点減っていたのだ。
その点数を見て騒ぐ連中を見つつ、俺は内心で胸を撫で下ろしていた。どうやらあの後、ちゃんとハリーとハーマイオニーも見つかったらしい。これでとりあえず原作通り禁じられた森での罰則が確定した。
俺が存在しているせいでクィレルが原作にない行動をしないとも限らないし、ハリーはもちろん他の子供たちを死なせるわけにはいかない──まぁ、俺が変に行動せずひっそり過ごせばいい話だが──何とか俺もその罰則についていけそうで本当によかった!
誰が100点も失わせたのだとグリフィンドール生は犯人探しに躍起になり、ハッフルパフ生はせっかく一位だったのにと蒼白な顔をして俺を見た。
「ノ、ノア様が頑張ってくださっていたのに……!」
「あー、俺が昨日減点されたんだよ。ごめんな?」
申し訳なさそうに笑って肩をすくめてみれば、砂時計の前にいたハッフルパフ生は顔を真っ赤に染めて千切れんばかりに首を振り「イ、イイエ!」と上擦った声で叫んだ。
ハッフルパフはスリザリンに首位を奪われ、二位になってしまったが、点差はそれ程広くない。今後スリザリンに大量加点がなければ十分に巻き返すことができるレベルだし、そもそもハッフルパフ生は俺に従順で文句は言わない。
ただ、グリフィンドールは別だった。
どこから漏れたのか、次の日にはハリーとハーマイオニーが減点されたと周知されていた。それを知っているのはドラコと俺だけだが、勿論俺たちは言っていない──まあ、多分、気落ちしている二人を見て噂が流れて、二人がその噂を否定しなかったからこそ真実だと広まったんだろうなぁ。
とはいえ、原作であったような学校にいる生徒──ロン以外──が敵になっているかというと、そうでもない。勿論ぐちぐちと文句を言うやつもいるが、それも寮杯を取りたかった一部のグリフィンドール生だけだ。
「や、ハリー、ハーマイオニー」
「ノア……」
「ノアさん……」
夕食の時間。大広間のグリフィンドール生がつく長机の一番後ろに落ち込みながら座っていたハリーとハーマイオニーに声を掛ければ、二人は一瞬表情を明るくさせたが、すぐに大きくため息をつき、表情を曇らせた。
「アレはうまくいったのか?」
「うん、大丈夫……」
「ああ……こんなに減点されてしまうなんて……」
「まだ挽回のチャンスはあるだろ?気にするなって、俺なんて初日で300点マイナスだぜ?」
軽く笑いながらハリーとハーマイオニーの肩を叩けば、ハリーは弱々しく微笑み、ハーマイオニーはカッと頬を赤らめ慌てふためいた。
「ノアも、50点のマイナスをこれ以上広げないために本気で真面目に宿題しなきゃね」
二人を励ましていると、いつの間にかセドリックが隣にきていて真面目に、のところをスタッカートでやけに強調しながら言い俺を横目で睨んだ。
「あー……月曜日提出は魔法薬学と天文学と?」
「魔法史!──まさか」
肩をすくめてニヤリと笑えば、セドリックは一瞬呆けた顔でポカンと口を開いたが、すぐにきつく唇を結ぶと俺の腕を掴み「図書館行くよ!」と言いながらずんずんと大広間の入り口へと向かった。
呆気に取られ俺とセドリックを見送るハリーとハーマイオニーの二人にひらひらと手を振りつつ、これから何時間も図書館で缶詰になるだろう事を予測して小さくため息をこぼしたのも仕方のない事だ。──いやまぁ自業自得とも言える。
試験前になればどうしても宿題の量は増えていく。五年生と七年生が受ける特別な試験もまた近く、図書館では必死な顔をして頭に知識を詰め込んでいく生徒で溢れていた。
俺はセドリックと──時々フレッドとジョージもいたが二人は基本最低限の宿題しかしていない──これ以上の減点を避け、加点を目指して宿題をこなしていた。
図書館や自室、隠し部屋でセドリックの監視の元黙々と宿題をこなし、試験を一週間前に控えた日には授業での加点が50点を超え、再びハッフルパフが首位になることができた。
「本当、なんで宿題が壊滅的なのか理解ができない……」
「感覚型なんだよ」
「普通は、理解してなきゃ魔法は出現しないんだ」
「俺様最強ですし?」
「知ってるけどさぁ」
朝、朝食を取るために大広間に向かいながらセドリックは俺のとりあえず再提出はギリギリなさそうな宿題をしかめっつらで見ながらぶつぶつと呟く。
「ここはもっとわかりやすく教えるべきだった」とか「あの本を見てこの理解度?」とか。セドリックは納得していないようだが俺としては未提出で無いだけで褒めて欲しいところだ。
寮の得点が記されている砂時計を見つつ、ハッフルパフ生が多いテーブルの後ろに座ってサンドイッチとサラダを食べているとフクロウ便の時間がやってくる。何百羽というフクロウが俺の前に小包や手紙を落としていくのは毎日の見慣れた光景であり、誰も驚くことはない。
そんな大量の手紙の一番上に、ホグワーツの紋章が記された手紙がふわり、と乗った。
「んー?……あー、罰則かぁ」
「どんな内容なんだい?」
宿題に追われていてすっかり罰則の事を忘れていたが、そういえばあったなぁと思いながら手紙を開く。セドリックもどんな罰則なのか気になるのか、俺の隣から覗き込んだ。
『──処罰は今夜十一時に行います。玄関ホールでミスター・フィルチが待っています。必ず行くように。スプラウト』
「夜十一時?……書取り罰則とかだと思ってた。そんな時間に何をするんだろう?」
「さぁな。……ってか夜抜け出した罰則なのに、夜にやらせるっておかしくねぇ?」
「……たしかに」
密かに思っていた事を呟けば、セドリックは不思議そうな顔で頷いた。