兄・子世代ifチート能力を駆使して転生人生謳歌します! 作:八重歯
次の日、俺は久しぶりにハリーに引っ張られ空き教室の中へと連れ込まれていた。
その中には既にハーマイオニーとロンとドラコがいて、昨夜の罰則のせいかロン以外は顔色が悪い。
「ノア、昨日僕らが見たものが何かわかったんだ──」
切羽詰まった表情でハリーはフィレンツェから聞いた事を俺に話し出した。
ユニコーンの血が命を繋げるが口にした瞬間呪われる事、それを欲しているのはヴォルデモートであり、賢者の石を手に入れるまでの繋ぎであるという事。
それを狙っているセブルスがもう間も無くクィレルを唆し賢者の石の守りを暴き手に入れる。そして自分はヴォルデモートに殺される、それを他のケンタウルスは望んでいる──と、虚な目でつらつらと言うハリーに、ロン達は心配そうな目を向けていた。
「だから──だから、僕は──」
「ハリー」
虚空を見つめまだ何か言いかけていたハリーの言葉を遮り、両肩に手を置きその緑色の瞳を見つめる。ハリーはようやく俺の目を見て、一瞬泣き出しそうに目を揺らせた。
「俺たちがあの森で見たものは、フィレンツェが言うようにヴォルデモートなのかもしれない。だけどさ、それがどうした?」
「どう……って……」
「ケンタウルス一頭と、子ども二人に怖気付いて逃げ出したんだぜ?勝ち目がないと思うほど弱ってるんだ。ここにはダンブルドアもいる。他の先生達も。何にも心配することないさ」
「そうよ!ダンブルドアがいらっしゃるのよ?石とあなたに何かあるわけがないわ!」
ハーマイオニーは鬱々としたハリーを説得できそうな言葉に飛びつき、励ますようにその背を叩いた。ロンとドラコも口々に「大丈夫だ」「何もありゃしないさ」と言い励まし、ハリーは考え込むように黙っていたが暫くして頷いた。
「うん……確かに、そう、だね」
「そうよ!それに、石の心配よりもあなたはこの後の試験の心配をするべきだわ!」
試験のことなどすっかり忘れていたハリーは目を瞬かせ、そんなに呑気な考えで本当にいいのかと悩みつつ──それでも、少しだけ笑顔を見せて「確かにね」と呟く。
「ま、なんかやばかったら教えてくれよ。──じゃあな、試験頑張れよ!」
「うん、ノアもね」
今日から一週間は試験が続く。一年生はまだその試験の重さをあまり理解していないが学年が上がるにつれ重くのしかかる事になるのだ。──まあ、俺は実技は完璧だから平均より少しいい成績を納める事はできるだろう。
ハリー達と別れた俺は、試験が行われる部屋へ向かう。廊下を歩く生徒はまばらで、すでに後数十分後に行われる試験会場へと向かっているのだろう。
えーと。一番目は占い学だったな。適当にトレローニーとの仲を匂わすような予言を書けばあの女は大喜びで満点をくれるはずだ。
楽勝!だなんて思いながら動く階段を二段飛ばしで駆け上がり、長い廊下に出る。
ふと、廊下の端の暗がりで蹲っている人影を見つけて──なんとなく見なかったフリもできず駆け寄った。
「どーしたんですか?」
「っ……ノ、ノア……」
「わぁ。クィレル先生。顔色が世界記録レベルで悪いですねぇ」
その顔は蒼白を通り越して土気色であり、目は窪み濃い隈が現れ、こめかみからは汗が流れている。
少し前にちらって廊下で見た時よりも体調が悪そうだなぁ。セブルスにチクチク言われているからか?──あ、そうか。やっぱり昨日一滴もユニコーンの血を飲めなかったんだな。
「医務室連れて行きましょうか?」
「い、いや……だだ、だ、大丈夫だよ」
クィレルはズレかけていたターバンを押さえながら立ち上がるが、足はよろめいているし、体を支えないと倒れてしまうのか壁にもたれかかっている。
まさに死にかけている。ヴォルデモートを頭に寄生させるのってそんなにしんどいのか?あーいや、ユニコーンの血を飲めなくてヴォルデモートにめちゃくちゃ怒られのかなぁ肉体的罰と精神的罰的な意味で。
こうさせてしまったのは俺のせい──いや、この人の自業自得か?──な気もしたし、このまま無視しているとヴォルデモートが今すぐにでもユニコーンを襲うように命令しかねない。今日の夜には森に行ってユニコーンの生息地に保護魔法かけようと思ってるけど、その前に行かれるのはなぁ……ユニコーンが犠牲になるの、可哀想だし。
「これ、俺特製の栄養薬なんです。少しは元気出るかもしれませんよー?」
「いいいいや、大丈夫だ……」
「俺の魔法薬学の才能知りませんか?あのセブルス先生もベタ褒めするレベルなんですよ?ま、気休めかもしれませんけど」
渋るクィレルの手にポケットから取り出した小さな小瓶を乗せる。
クィレルはそれを押し返す力も無いのか、戸惑った目で俺を見下ろした。
「この前のゲームのお礼です」
「あ──」
「クィレル先生のー?」
「な、何──」
「ちょっといいとこ見てみたいー!ほらイッキ!イッキ!イッキ!イッキ!!」
「う……」
いつもより高い声で笑顔で手を叩く。暗い廊下に乾いた拍手の音と、やけにハイテンションな俺のコールが響くなか、流石に世界最強の美貌を持つ俺のイッキコールには抗えないのかクィレルは蓋を開けて目を閉じ、一気に薬を飲んだ。
「っ──う……こ、これは……?」
ぶるりと体を震わせたクィレルは、閉じていた目を開いて自分の手を呆然と見つめた。多分、今までの疲労感が嘘のように消えたのを実感しているのだろう。
「効果抜群でしょ?じゃ、俺試験なんで!」
「あ──あ、ありがとう」
遠くからチャイムの音が響き、それに突き動かされるようにして俺はその場から走り出す。後ろから小さなクィレルの感謝の言葉を聞いた俺は、軽く手を上げそれに答えた。