兄・子世代ifチート能力を駆使して転生人生謳歌します! 作:八重歯
「あーーーっ!!終わった!」
最後のテスト終了がした時、試験終了独特の解放感に俺は浸りながら腕をぐっと上に伸ばす。
歓声を上げたのは俺だけじゃなくて、至る所から「長かった!」「校庭に行こう!」など、明るい声が響く。
「ようやく終わったね。答え合わせする?」
「しない。んなもんしたってテストの結果は変わらないだろ?自由を楽しもうぜ!」
すぐに鞄の中に羽パンとインク壺を突っ込み立ち上がりった俺に、セドリックは苦笑しながら問題用紙を丁寧に丸め鞄の中に入れて頷いた。
まだ昼食までは時間もあり、俺とセドリックは時間を潰すために校庭に向かった。同じように解放感を一身に感じるために校庭に向かう人混みの中に、フレッドとジョージ、リーの三人を見つけて声をかければフレジョはパッと顔を輝かせ、リーは顔をポッと赤らめた。まだこいつ俺に慣れてないのか。
「さいっこうの気分だ!」
「今ならどんな悪戯をしても許される!」
「ああそうだ。どこに行く?」
「湖はどうだい?避暑に最高だろ?」
三人も答え合わせをするといった思考は微塵も持っていないようで、俺たちはそのまま五人になり暖かな日差しが降り注ぐ校庭を歩き、揺らめいて輝く湖の辺りまで向かった。
校庭の湖に住む巨大なイカは、いつもなら顔を出していないがこの暖かな日差しに誘われたのか浅瀬でのんびりと日向ぼっこをしている。なんとも平和な光景に俺とフレジョ顔を見合わせ、同時にニヤリと笑った。
「あのイカってなんか悪戯の材料に使えないかな?」
「吸盤はかなりくっつきそうだぜ」
「よし、誰が一番獲れるか競争だ!」
「おいおい無理はするなよ?」
「うーん、僕は遠慮しとくよ」
セドリックは近くの木陰に座り、本を取り出して読み出した。
俺とフレジョとリーは寝こけている巨大イカを起こさないように慎重に近づき、こっそりと足をくすぐってみたり、吸盤をどのように剥がせばいいのかと引っ張ってみたり。
灰色の巨大な足が不規則にピクピクと動くたびに俺たちは馬鹿みたいにはしゃぎ笑い転げた。なんて平和なんだろうか!
「これ千切ったら怒るよな?」
「ノア、やってみてよ」
「オッケー!」
杖を振り、近くに落ちていた枝をナイフに変えて試しにまだ小さな吸盤の根本にそっと差し込む。興味津々で見守っている三人は、イカの足がぴくりと動いた瞬間大きく後ろに飛び退いた。
「うわっ!」
「あ──暴れないな」
「意外といけるもんだな。……お、とれた。タコよりもなんかギザギザしてるし、一個一個が口みたいだな」
「本当だ」
イカとタコの吸盤の違いなんて気にした事が無かったが、こうして見てみるとかなり違いがある。なんていうか、ツルツルして張り付くっていうよりはギザギザの部分で捕まえるって感じなのかな?
イカの吸盤をとり出した俺たちをセドリックは少し引いた目で見ながら、鞄の中にあったカメラでいくつか写真を撮っていた。
「あ、そうだフレッド、ジョージ」
「なんだい?」
しばらくしてブチギレた巨大イカがその長い足を使い大暴れしてしまったため、俺たちは湖を離れ中庭に向かっていた。
クィディッチのことで熱く語り合っているリーとセドリックの後ろを歩いていたフレッドとジョージに声をかければ、同時に同じ顔が振り向き同じように首を傾げる。
「あのさ、地図貸してくれないか?」
「ああ──ほい」
「失くさないようにな」
フレッドが鞄の奥に手を突っ込み、中から古ぼけた羊皮紙に見える忍びの地図を取り出す。受け取った俺はジョージに「無くさねーよ」と言いながらポケットの中に押し込んだ。
「抜け出すのかい?」
「んーまあちょっとな」
明言を避ける俺に、フレジョは不思議そうな顔をしたが特に深く尋ねることはなくすぐにリーとセドリックのクィディッチ談義の中に混ざった。
そろそろ、だと思うんだよな。
試験の後だってことは覚えてるけど、今日だったか、明日だったか?流石に日までは覚えていない。
そろそろ、クィレルがダンブルドアを騙して学校から離れさせて、賢者の石を手に入れようとするはずだ。
俺がいなくても問題なく進むかもしれないし、ハリーはなんとかして俺に賢者の石を護りに行くことを伝えるかもしれない。
だが、ハッフルパフとグリフィンドールではどうしても会いたい時に会ず、俺に伝えられない可能性の方が高いだろう。
ならば、この地図を使ってハリー達の動きを見張るのが一番手っ取り早い。
何事もなく原作通り終わりますように、そう心の中で念じながら俺もクィディッチの話で盛り上がる中に混じった。
ーーー
「──あ」
その日の夜遅く、寝る前に地図のチェックをしておこうと開いた俺は見回りの教師しかいない廊下で塊になって動く複数の名前を見つけた。
ハリーとロンとハーマイオニーの名前は仲良く四階の廊下へと一直線に進んでいる。
やっぱ俺には言えなかったか。試験中は初日に会ったきりだったもんなぁ。ドラコが居ないのは、俺と同じで寮が違うからかな?
隣のベッドを見れば、カーテンが引かれその奥で月明かりに照らされうっすらと人影が見える。セドリックは夜遅くまで試験勉強をしていたし、もうすでに寝てしまっているようだ。まあ俺もいつもこの時間はもう寝ているんだけど。
「……行くか」
小さく欠伸を噛み殺しながら、自分の体に透明化魔法をかけてそっとベッドを抜け出した。
途中でゴーストやピーブズに出会ったが、彼らは俺の姿に気づく事なくふわふわと通り過ぎた。
問題の扉はきっちりと閉じられていて、躊躇う事なく開ければ中にはフラッフィーがその大きな体を丸めながら座っていて、勝手に開いた扉を不思議そうに見つめていた。
フラッフィーは俺を襲う事はないが、今フラッフィーに構う時間はない。透明になったままで後ろ側にある扉へ向かい、踵で軽く蹴る。
パタン、と開いた扉の奥は深い闇であり──一瞬躊躇したがすぐに飛び込んだ。
悪魔の罠、と呼ばれる植物も簡単にクリアし、そのまま奥へ続く一本道を歩く。
ハリー達と会うかと思ったが彼らもサクサクと侵入者避けをクリアしているらしく、沢山の鍵が飛び交う場所にもハリー達の姿は無かった。
魔法で鍵がかかっている扉を強行突破し、そろりと中を見れば今まさにチェスの試合中であるハリーとロンとハーマイオニーの姿がある。
奥には扉があり──チェスなら問題なく原作通りロンがクリアするだろう。
先回りしておこうと、その先の扉にある扉もまた、無理矢理開けた。
「あれ?気絶してねぇじゃん」
その部屋は悪臭で満たされ、中央には巨大なトロールが仁王立ちしている。ひくひくと鼻を動かしている様子からここに侵入者が来たとはわかったのかもしれないが、その姿が見えず馬鹿みたいに視線を彷徨わせていた。
うーん、ハリーとハーマイオニーには荷が重いかなぁ?無駄に怪我するのも可哀想だし。やっぱ見に来て正解だったなぁ。
指を振り、一瞬でトロールを昏倒させた俺はその奥に続く扉を開けた。
「あーセブルスのなんかややこしい罠……論理なんて俺には無理」
沢山の瓶の横に置かれている巻紙を見る事なく、黒い炎に近づく。うーん、この炎の原理がいまいちわからない。多分、正解の魔法薬はこの炎を無効化するほどの強力な防御がある薬か、炎に耐性をつけるのかな?
「また今度セブルスに聞こうかなー」
まあ、ダンブルドアも薬を飲まずにここを通過したはずだ。あの瓶の中身はどれも一口分くらいしか残されてなかったし。
ダンブルドアにできるのなら、俺にできないわけがない。──腕を横に薙ぎ、炎を無理矢理退かせてその奥へと進みながら呟く。
その奥は一本道であり、扉もなにもなかった。足音を立てず進めば広い空間があり、薄暗い部屋は沢山の蝋燭で照らされ、中央にはみぞの鏡があり──そのそばにクィレルが居た。