兄・子世代ifチート能力を駆使して転生人生謳歌します! 作:八重歯
63 予期せぬ訪問者
「どうか、どうか頷いてはいただけませんでしょうか?」
「えー」
「これも、全てハリー・ポッターのためなのです!ハリー・ポッターはホグワーツに行ってはいけません。ハリー・ポッターは安全な場所にいなければなりません!」
「一番安全な場所って、俺がいるところだろ?」
「それがホグワーツなら、ダメです!危険すぎます!どうか、夏休み中ハリー・ポッターと会わないとおっしゃってください!」
俺のベッドの真ん前の床に額をつけ、さめざめと泣き叫ぶ声が耳を突き刺す。つまり、なかなかにうるさい。あー、口封じ魔法使いたいけど、魔法省から警告受けてるんだよなぁ。
目の前に居るのはぼろぼろの服──いや、布を纏った
どうやらドビーはハリーの周りについても調べたらしく、俺がハリーを夏休み中無視すればハリーはきっとショックを受けてホグワーツに行かないだろう。と、まじで思っている。
「なんで夏休みに会っちゃだめなんだ?」
「あなた様に忘れられたと思って、きっとハリー・ポッターはホグワーツに行かないからです!」
「ドビー、あのさ。俺が行かなかったらハリーはここに来ると思うぜ?歩ける距離だし、ハリーは暇してるだろうし」
「それは──それは──その、いないフリを……」
「んなことしたら毎日来るぞ、間違いなく。ってかハリーなら窓から侵入するくらいはやるな」
「う、ううーっ!」
ドビーは頭を椅子の脚にガンガンと打ちつけだしてしまった。どうすればハリーを止められるのかという気持ちとハウスエルフが人の行動に指図していいのかという葛藤に苛まれているのか一分に一回はこうして自分を罰している。
「それにな、俺が夏休み中は仕事が忙しいから会えないって言ったらハリーは俺に会うにはホグワーツしかない!って考えるだろ」
「っ……ドビーめは……ど、どうすれば……」
「それは自分で考えろ。俺はドビーの主人じゃないからな」
「ううーっ!」
バッサリと切り捨てたら、ドビーはその大きな目からポロポロと涙を流し、来た時と同じようにバシンと姿を消した。
ホグワーツにハリーが行くことを阻止したい気持ちはわかるが、俺がホグワーツに居る限りドビーの企みはうまくいかない。そもそも、えーと……ロンが確か連れ出すんだよな。
騒ぎ続けたドビーに、ペットであるシロが「ようやく消えたのか」とばかりに籠の中で羽を広げる。おやつをポイと投げ渡せばシロは見事空中でキャッチして啄んだ。
「ま、今年の夏休みなかなかハリーと会えないのは事実だし、それは伝えないとなぁ──っと」
指を振り手っ取り早くハリーの元へ姿現しをしわうとしたが、ギリギリのところで止め、ぐっと拳を握る。ちらりと窓を見るが魔法省からの手紙が舞い込んでくることはなく──ほっと胸を撫で下ろした。
休暇中魔法使っちゃダメなんだよなぁ。めんどくさすぎる!
未成年は休暇中魔法を使えばすぐにバレてしまう。また魔法省に行って手続きをするのはめちゃくちゃ面倒だし、付き添い人になるセブルスがブチ切れそうだ。
ハリーと気軽に会える距離だからこの孤児院に住むのは楽なんだけど、やっぱ魔法使えないのは不便だよなぁ。
そう考えると、やっぱマグル生まれってスタートから出遅れてる感は否めないよな。魔法使いの家に生まれてれば、親がちょっと法律破る事を黙認する人なら魔法使い放題だし。
面倒だったが、魔法を使わずに紙とペンを探し出し、ハリーにモデルの仕事が立て込んでるから休み中あんまり会えないかも。と書いて封筒の中に入れた。
「──よし。これをハリーに届けてくれ。シロならハウスエルフの妨害なんて突破できるよな?」
「当然です」
鳥籠を開ければシロは大きな羽を広げ窓枠に乗り、嘴に封筒を咥えて恭しく頭を下げた。人差し指で喉元を撫でれば、シロは嬉しそうに目を細めてそのまま青い空へと飛び立った。
「んーっ……えーと、事務所へは……こっちのポートキーだったな」
すでにイギリスで俺のことを知らない人は殆どいないほどのトップモデルになった俺だが、活動できる時間は限られている。ホグワーツが全寮制でない普通の学校ならば学校が終わってから写真撮りに行ったり営業したりできるけど、俺がモデル活動できるのは休暇中に限られているのだ。
夏休みは殆ど仕事だとマネージャーは言っていたし、俺も別に拒否感はない。何よりこの最高級の美貌を持つノア・ゾグラフという存在を知らない人がいるだなんて可哀想すぎる!人生損していると言っても過言ではない。
……それに、めちゃくちゃ金入ってくるし。金はいくらあっても困らないからなぁ。
手のひらで古びた羽ペンをくるくると回しつつ、壁にかけられている時計を見る。うん、後数秒で事務所へのポートキーが作動するはずだ。
少しの間待った後、ぐっと体が羽ペンに引き込まれるような感覚になり──俺は遠く離れた事務所へと姿を表した。
魔法界で一般的な芸能事務所がどんな作りなのか知らないけど、見た目で言うと本当に普通のオフィスビルの一部屋、といった部屋だ。
まあそこら中で紙や写真が飛んでたり衣装が右から左にひらひらしていることを除けばだが。
「あっ!!お、おはようございます、ノアさん!」
俺が現れたことに気づき、従業員の一人が声を上擦らせながら叫びそのまま机の角に思いっきり足をぶつけて手に持っていた紙の束をぶちまけた。
ざわざわとしていた事務所内は一瞬静まり返ったが、すぐに先ほどとは違う黄色い悲鳴やら「わぁ!ノア様ー!」だとか「うっいきなりは心臓に悪い!」とかいう声がそこかしこから響く。
「おはよーみんな」
俺のマネージャーいる?──と続くはずの言葉は、俺の笑顔を見た人の悲鳴と鼻血やらで遮られてしまった。
悶絶し気絶した何人かはギリギリ意識を保った同僚だか先輩だかに魔法をかけられて浮遊させられ、部屋の隅に並べられていく。
いやーまあ、確かに俺の魅力は日を増すごとに増量中だからな!
「ノア!おはよう。早速だけど学校が始まるまでの仕事の話をしてもいいかな?」
倒れた人には見向きもせず、部屋の奥からマネージャーが現れて部屋の奥にある俺専用の控室を指差した。
「うん、そのつもりで来たからな」
「最高の二ヶ月間にしようね!」
「おう、頼むぜ?メイソン」
「ヒッポグリフに乗ったつもりで任せて!」
俺のマネージャー──メイソン・キャンベルは、丸眼鏡の奥で自信満々な笑顔を見せ、胸を張った。