兄・子世代ifチート能力を駆使して転生人生謳歌します!   作:八重歯

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65 偶然集合

 

 

ボージン・アンド・バークスの店のガラス戸を押し開ければ、からん、と小さな来店者を告げる音が鳴った。

ショーケースにはノクターンの店らしく不気味な萎びた手やよくわからない生き物のミイラが陳列されていて、棚には埃や汚れがつき清潔とは言えない。

触れるだけで呪われる物もあるらしいし、じろじろと見るだけにしておきながら店内の奥へと行けば聞き覚えのある人の話し声が聞こえた。

 

 

「──父上!早く行こう!」

「時間までまだかなりあるだろう?そんなに早く行かなくとも──」

「でも、もう並んでる人がいたんだ!」

「今から並ぶと四時間はかかる。もう少し後にしなさい」

「ちぇっ──あっ!プレゼントは──」

「持ってきている」

 

 

そんな会話を聞きながら店の奥へ行けば、カウンター近くにドラコとルシウスがいた。ドラコはそわそわと落ち着きが無いし、ルシウスは呆れたような表情をして指先でトントンとカウンターを叩いている。

 

 

「やっぱドラコとルシウスさんかー」

「ノア!?こんなところで会えると思ってなかった!」

「ノア?……こんな店に?」

 

 

姿を見せればドラコはぱっと表情を明るくさせて俺に駆け寄る。犬の耳と尻尾が見えそうなほどの喜びっぷりに、つい微笑ましくて頭を撫でれば林檎のように頬を赤く染めた。

 

 

「そうだ!ノア、どうしてこんな店に?サイン会はまだ──まさか、時間が変更になったのか!?」

「え?いや、変更はないよ。この店に売りたいものがちょっとあってね」

「よかった……もしサイン会を逃したら五日は寝込むところだった……」

「サインが欲しいならわざわざ並ばなくても、いつでもあげるのに」

 

 

その他大勢とは違い、ドラコは好きなハリポタキャラだし可愛いし!と思って言ったが、その途端ドラコは紅潮していた顔をすっと真顔に変え「何もわかってない」と地の這うような声で呟いた。

 

 

「ノアは確かに友人だ。だが、モデルのノア・ゾグラフの一ファンとしてサイン会でサインを貰う。──これが何よりも重要なんだ!」

 

 

熱弁するドラコに少々ぽかんとしていたら、ルシウスも俺と同じ気持ちなのか困惑しながら小さくため息をついていた。

 

 

「それに!今回は100人限定の特別なブロマイド入りだろう?」

「そ……そうだったな」

「そうだ!今からどんなブロマイドなのか楽しみ──あっ!実物を見るまで秘密にしてくれ!そういえば、ファンの間ではホグワーツ入学前の写真ではないか?と囁かれているんだ。幼いノアもきっと最高級に愛らしくそれは天使のようなのだろう。──昔、僕を助けてくれた時も、僕は天使が現れたのかと思ったほどだ!」

「守護天使ノアかな?」

 

 

得意げになり、興奮気味にペラペラと話すドラコを置いて、ルシウスは自分の用事を済ませるべきだと判断したのかカウンターに置いてあるベルを鳴らし亭主を呼んだ。

 

 

「やあ、ボージン君」

「マルフォイ様、また、おいでいただきまして嬉しゅうございます。恐悦至極でございます。そして若様と──」

 

 

店主であるボージンは魔法薬材料店の店主と同じくらい老人で腰が曲がっていた。カウンターの奥に何か台があるのか、身長はそれほど低く無いように見える。脂っこい髪質のボージンが媚びが見え見えの口調でルシウスとドラコを見て、その後俺を見てピシリと媚びた笑いを固まらせた。

 

 

「ノ、ノア・ゾグラフ?な──なぜここに?」

 

 

ボージンは目に見えてうろたえ、両手を神経質そうにうごうごと動かした。その目は俺を見た後すぐに店内のあちこちを動く挙動不審っぷりであり、ルシウスも一体どうしたのだと怪訝な顔をして俺とボージンを見比べた。

 

なんでこんなに挙動不審なんだろう。と不思議に思ってちょっと開心術をかけてみれば──。

 

……なるほど!

 

 

「なぜって、曰く付きの物を売りにきたからですよー。なんか呪われてる物とかめちゃくちゃ綺麗だけど即死レベルのネックレスとか触れただけで気絶させる手袋とか数え切れないくらいプレゼントとして送られてきて。

いやぁ。こんな曰く付きのヤベーもん、一体俺の熱狂的なファンはどこで買ったんでしょうねぇ」

「さ、さてはて──」

 

 

鞄をカウンターの上に置き、口を開き中を見せればボージンは引き攣った愛想笑いを浮かべた。

勿論全てがこの店で購入されたわけではなさそうだが、かなりの数の呪われた貢物はこの店で俺の熱狂的なファンが購入したらしい。──ボージンに開心術をかけてわかった。

 

 

「このカウンターに全部並べきれないからさ。俺のサイン会が終わる四時までに見積もり出してくれますか?」

「も、勿論で──」

「サイン会だって!?」

 

 

突然、ボージンの声を遮るほどの叫びが店の奥から響いた。あれ、また聞き覚えのある声だ──ってそういえば今日か!!

 

その声を聞いてドラコとルシウスは驚いて振り返る。店の商品棚の奥から血相を変えて現れたハリーを見たドラコは「ハリー?」と信じられないが嬉しそうに呟き、ルシウスはハリー突然の登場に呆気に取られている。

 

 

「ハリー、なんでこんなところにいるんだ?まさか、ノアと待ち合わせしたのか?」

「違うよ。そうだったらよかったんだけど、煙突ネットワーク?かなにかで咽せちゃってさっきこの奥の暖炉に出たんだ。ロン達とダイアゴン横丁に行くつもりで──ってそんなことはどうでもいい!ノア!?サイン会ってなに!?聞いてないんだけど!」

 

 

ドラコにここに来てしまった経緯を説明していたハリーだったが、すぐに俺に向き合うと必死な顔で俺に詰め寄る。

いや、サイン会って別に……みんな知ってると──ああ、ハリーはマグル界で過ごしてるし、情報なんて入ってこないか。

 

 

「あー実は今日新しい写真集の販売を記念してサイン会があるんだよ」

「新しい写真集はもうホグワーツにいるときに予約したからいいんだけど、サイン会があるだなんて知らなかった……それって並んだら誰でもサインもらえる?それともお金積んだらいい?僕、お金だけはあるんだ!」

「残念だったなハリー。日刊預言者新聞ノア・ゾグラフ特別バージョンにしかサイン会の詳細は無く、抽選権はついていないんだ。しかし、僕は勿論購読者でこの抽選にも当たった!!そのために何十部も新聞を購入したぞ!」

 

 

ドラコは胸を逸らし、自慢げに胸ポケットから灰青色のチケットを取り出した。特別な魔法がかけられているのか、見る角度によって微妙に俺の姿が見える。全体的にラメっぽくてキラキラってしてるなぁ。……ってか日刊預言者新聞ノア・ゾグラフ特別バージョンって初耳なんだが?

日刊預言者新聞で、俺の特別ページを作るとは聞いてたけど……ページどころの問題じゃなくない?

 

 

「うっ……羨ましいっ!僕も定期購読する!」

「その方がいい。ノアのグッズや写真集、掲載している雑誌などの情報が最も集まっているからな」

「……本物に聞けばなんだって教えてやるぜ?」

「それはまた別問題だ」

「それはまた別問題だよ」

「……そっかぁー」

 

 

真剣な顔をするドラコとハリーに、俺はとりあえず頷いておいた。

ルシウスは確か、立ち入り調査があるから館にあるやばい物を売りに来たんだよな?早くその話をしたいけど、ハリーと俺がいる前ではちょっとその話はできないなーって感じか。

 

 

「ハリー、ダイアゴン横丁まで送っていこうか?俺もどうせ新学期に必要なもの買いに行く予定だし」

「わぁ!行く行く!まさかノアと買い物できると思ってなかったや!」

「何!?父上、僕も行っていい?」

「……わかった。一時間後、書店で待ち合わせよう。くれぐれも迷子にならないように」

「もう子どもじゃないから大丈夫だ!」

 

 

ルシウスはハリーと仲良くするドラコを見て満足そうに微笑み、内ポケットから金貨が入っているだろう袋を──かなりチャリチャリしてて重そうだ──手渡した。

ハリーは魔法界での英雄であり、そんな有名人と寮が異なるとはいえ友人である事は彼にとって安堵する事なんだろうな。まぁ、今後のとこ考えるとやばそうだけど。主にメンタルが。

 

 

「ノア。問題ないとは思うが……ノクターン横丁から出るまで、しっかりドラコの事を頼むよ」

「はぁい、任せてくださいね!」

 

 

ダイアゴン横丁とこの店はそう遠くないが、それでも子どもたちだけで歩くには治安が悪すぎる。俺がまだホグワーツ入学前に人攫いを簡単に退けたことを知っているからこそ、ルシウスは俺がいれば大丈夫だとある程度信頼している。

多分、ドラコは家で俺のホグワーツでの数々の伝説を伝えているだろうし。

 

 

かなり想定外だったが、こうして俺とドラコとハリーは一緒にショッピングをすることになってしまった。

……あれ?確かこの後ウィーズリー家と一悶着なかった?

 

 

 

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