兄・子世代ifチート能力を駆使して転生人生謳歌します! 作:八重歯
右にハリー、左にドラコに挟まれボージン・アンド・バークスの店を出た。ハリーは事故であの店に来てしまっただけでノクターン横丁がどんな場所か知らない。ダイアゴン横丁とは違いかなりやばそうな物が陳列されている店や露店を見て少し不安そうに眉を寄せる。
「ここ、ダイアゴン横丁と全然違うね」
「ああ……ノクターン横丁という」
ドラコは毒蝋燭の店の軒先に引っかかって揺れている古ぼけた木の看板を指差す。『
「ここ、本当は未成年が来るような場所じゃないんだ。人攫いとか浮浪者とかが多いし、売ってる物もヤバめなやつばっかだからなー」
「そうなの?じゃあ……ノアとドラコはどうしてあの店に?」
「あー……屋敷にある物の整理だ。僕の家は古くからあるだろう?その分曰く付きの物も多くて」
「俺は熱狂的で盲信的なファンから送られて来た呪いの品を売る為にな」
ドラコは言葉を濁したが、ハリーはマルフォイ家が闇に片足突っ込んでいた、という事は噂で知っていてもあまり気にしていないのか「へえ?」とどうでもよさそうに頷いた。
あ。薄暗い店内では気が付かなかったけどハリーの服めちゃくちゃ汚れてるなぁ。
「ルシウスさんがいる時にその汚れを清めればよかったな。大人が近くにいないと魔法使ったら面倒なことになるし……」
煙突飛行初体験だったハリーは着地に盛大に失敗し、服に煤が沢山ついていた。ハリーは俺に言われて初めて気がついたのか、手で煤を軽く払う。それでも取りきれない汚れに肩をすくめて苦笑した。
「そういえば、ハリー。どうして僕の手紙に返事をくれなかったんだ?マグルの奴らに奪われていたのか?」
埃やらゴミやらで汚れた路地を歩き、軒先に陳列されているよくわからない生き物のミイラを見ながらドラコが思い出したようにハリーに聞いた。
「え?ううん。なんかドビーっていう屋敷僕に止められてたんだ」
「ドビーが?」
「知ってるの?」
足を止め、怪訝な顔をするドラコにハリーはきょとんとして首を傾げる。
ドラコは困惑したまま「ああ、僕の家の屋敷僕だ」と頷いた。
「でも、僕はハリーに会いに行けなんて言ってないぞ。それに、手紙を止めろとも言ってない!」
「うん、ドビーは勝手に来たって言ってた。それで、その事で後で自分を罰しなきゃいけないって。僕をホグワーツに行かせないために、友達から手紙が来なければ忘れられたと思ってホグワーツに行きたくなくなるって考えたらしいよ。今年、ホグワーツで世にも恐ろしいことがある。罠があるから、って」
「……まさか、去年のような事がまた起きるんじゃないだろうな」
ドラコもハリーから本当は誰が犯人で、誰がその影に居たのかを聞いていたらしく、顔を蒼白にさせて引き攣らせた。ハリーは「うーん、ヴォルデモートじゃないみたい」とさらりと答えたが、その途端ドラコは喉の奥で声無き悲鳴をあげ、俺のローブをぐっと掴んだ。
「その名前を言うな!」
「あ、ごめんごめん」
「まぁ……何かあるにせよ、俺が学校にいる限り大丈夫だろ」
「そうだよね?僕もそう思ったからドビーにノアがいるところが一番安全じゃない?って言ったんだ。そうしたらドビーが──」
ハリーはドビーが何をしたのか。ドビーのせいで親戚にケーキをぶちまける濡れ衣を着せられ、魔法省から通告まで来たのだと不服そうにぼやいた。
「──まぁでも、あんまりドビーを責めないで。両耳をオーブンの蓋で挟まなきゃならないって言ってたし……君に秘密で来たんだろう?」
「ああ……まぁ手紙を隠すのはやりすぎだが、君を思ってのことなら……今回だけ何も知らなかったふりをする。しかし、ドビーはなぜ今年も何かがあるだなんて知っているんだ?」
「さあ?……ドビーって思い込みが激しそうだから、勘違いかもね」
ホグワーツには世界最強の魔法使いである俺と、ホグワーツを守るダンブルドアがいる。それに魔法界で生きていくことを決めたハリーにとって、マグル界──それもダーズリー家──で過ごすだなんて考えられないのだろう。友達がいて、なんだかんだ楽しく充実感があるホグワーツが自分のあるべき場所だと思っているハリーはあまり深刻に考えていないようだが、ドラコは少し表情を翳らせていた。
「今年も何かあったらすぐに俺に言えよ?」
俺の言葉にハリーとドラコは素直に頷いた。
えーと、今年はリドルの日記が出てきて、ジニーが操られて秘密の部屋を開いて、という流れだ。──本来は。
でもなぁ、バジリスク──もといバジルはすでに俺のペットだし、リドルの命令なんか聞きそうにないからなぁ。適当に従ってるフリしてろって言わないと、ややこしくなりそうだ。ジニーとハリーはこのイベントでちょっとだけ近づくわけだし。
あー若いリドル見たいなー。映画ではめちゃくちゃイケメンだったし、なんとかして実体化させてツーショット写真撮りたい!
薄汚れたノクターン横丁から明るい陽が差すダイアゴン横丁に出れば、ハリーとドラコはほっと胸を撫で下ろした。遠くには純白の大理石でできたグリンゴッツが見えていて、いつもより通行人が少ないとはいえやっぱりノクターン横丁と雰囲気は全く違う。
「ハリーはロン達と来たんだろ?俺と買い物する前に探さなくちゃなぁ」
「あ、そうだね。すっかり忘れてた」
「ロンと……グレンジャーとか?」
「ハーマイオニーとも待ち合わせしてるけど、ウィーズリーのみんなとだよ。僕、ウィーズリーさんの家に泊まってるんだ」
ハリーはようやくロン達の事を思い出しキョロキョロと辺りを見回す。人が少ないとはいえノクターン横丁よりは多く、この中で探すのは大変だろう。そう思いながらグリンゴッツへ向かう道をゆっくりと歩いていると高い場所から「ハリー!」と呼ぶ声が降ってきた。
「ハリー!ハリー!ここよ!」
視線を上げれば、グリンゴッツの白い階段の上にハーマイオニーが両手を振りアピールしながら立っていた。すぐに俺がいることに気づくとパッと顔を赤らめ、驚いたように目を見開く。
「ノアさん!?」
上擦ったハーマイオニーの声がグリンゴッツから俺を含め、ダイアゴン横丁を歩いていた人たちに響き渡る。
その途端、歩いていた人たちは同時に足を止めて「ノア・ゾグラフだって!?」「どこ!?」「ノア様!?」と口々に叫んだ。
ハーマイオニーは慌てて両手で口を押さえたが、ノア・ゾグラフがいるかもしれない。という興奮は一気に伝わってしまった。ドラコとハリーも、この後間違いなくすぐに俺が発見されてファンが押し寄せるだろう、と顔を引き攣らせたが──。
「──あれ?」
ハリーは近くにいる人が血走った目で辺りを見渡すだけで、俺の存在に全く気がついていないのだと知り不思議そうに首を傾げる。申し訳なさそうにしながらグリンゴッツの階段を駆け降りたハーマイオニーも、「いないじゃないか!」「ノア違いか?」という人々の声に困惑していた。
「どうして──」
「このサングラス、認識阻害魔法がかかってるんだ。俺の知り合い以外には気付かれにくいんだよ。……とは言っても、あんま大声で俺の名前を呼ばないようにな?」
サングラスのフレームを指で押し上げつつニヤリと笑えば、ハリー達は納得して頷いた。
ノアがいるかもしれない。というパニックも徐々に落ち着き、人々は足早にダイアゴン横丁の奥へと向かっていく。グリンゴッツの前は閑散とし、ウィーズリー家を探すにはちょうどいいだろう。
白い大理石でできた階段を数段登り、ハリーは遠くを見渡し──「あっ!いた!」と声を上げた。
指さす方を見てみれば、ダイアゴン横丁の奥からこちらに向かってロン、フレッド、ジョージ、パーシー、アーサーが必死な顔で走ってくるのが見える。
すぐに階段を降りれば、アーサーは息を切らし汗を流しながらハリーに駆け寄った。
「ハリー、せいぜい一つ向こうの火格子まで行きすぎたくらいであればと願っていたんだよ……おや、君は……」
額に浮かんだ汗を拭きつつ、アーサーはハリーの無事を確認しほっと表情を和らげた。その後隣で居心地悪そうにしているドラコを見て微妙に表情が強張る。
「ドラコ・マルフォイ……です。知ってると思いますが」
「あー……いや、まあ、そうだね。君のことはよく知っているよ。息子のロンとも、その──友人だそうだね」
アーサーは「友人」と言う言葉を初めて使ったのではないかというほどぎこちなく言い、ドラコも自分の父親とロンの父親が犬猿の仲だと知っているのか、気まずそうに視線を逸らす。
なんとも言えない沈黙が一瞬落ちたが、後ろから走り寄ってきたロンは全く気づかず──気にせず、かな?──アーサーを押しのけドラコに「久しぶり!」と声をかけた。
「ドラコ!なあなあこの前の試合見た?雑誌は?僕雑誌買い逃したんだけど、持ってたら今度ホグワーツに持って来てくれない?」
「あ──ああ、わかった」
「やった!絶対だからな?」
空気を読まないロンの発言に毒気を抜かれたような顔をしたのはアーサーとドラコの二人であり、彼らはちらりと視線を交わし──何も言わなかったが、少しだけ肩の力が抜けたようだった。
「とにかく、見つかってよかった!どこから出たんだい?」
「えーと。……ノア、どこだっけ?」
何の店だっけ?とハリーは首を傾げ隣にいる俺を見た。
その途端、アーサーはぐるりと俺の方に首を向け初めてノア・ゾグラフがこの場にいることに気づく──あ、そうか。遠目で見たことはあっても初対面か。去年遊びに行った時いなかったもんなぁ。
「ノ──」
「お口チャックしましょー」
右手で空気を摘むようにして、そのまま右に引く。アーサーは見えない何かに口を縫い付けられて口を閉ざし、慌てて自分の口元を弄っていた。
「俺の名は小さな声で。認識阻害魔法の効果が薄れるので──ね?」
自分の唇に人差し指を当て、にっこりと微笑めばアーサーは目を瞬かせ髪色のように頬を染め頷いた。
多分この中で俺の存在に気が付けなかったのはアーサーだけだな。後から合流するモリーとジニーとはすでに会ったことあるし、多分ここまでの反応はないと思いたい。うん。
魔法を解除すれば、アーサーは未成年の俺が無言呪文を使い的確に口消し魔法を使ったことに驚きつつ、唇をもにもにと指先で揉んでいた。
「俺はハリーとボージン・アンド・バークスの店でたまたま会ったんです。まぁドラコともですけどね」
「何?でもあの店は──」
「まあまあ、違法店っていうわけじゃないですし。──あ、あれモリーさんとジニーじゃないですか?」
確かにやばい物は売っているが、一応ボージン・アンド・バークスは違法店ではない。それに、またルシウス関係のことをほじくり出してドラコとの間に微妙な空気が流れたらこっちが気まずいし何気なくアーサーの気を逸らした。
ダイアゴン横丁の曲がり角の向こう側から、モリーがジニーの手を引き飛び跳ねるように走ってくるのが見え、そちらを指差せばアーサーはすぐに話を止めモリーに向かって手を振った。
「ああ、ハリー……見つかってよかったわ!」
モリーはハンドバッグから大きなはたきを取り出し、取りきれてなかったハリーの煤を払い始めた。その間に暖炉に落ちた衝撃で歪んだであろう眼鏡をちょいと指先で突き修復すれば、ハリーは驚きと喜びが混じった顔で「ありがとう!」とモリーと俺に言う。
ま、大人がこれだけいれば魔法使っても大丈夫だし。……なんかパーシーとハーマイオニーは怪訝な顔してるけど。
「まぁ!ノアまで!久しぶりね。今年はお泊まり会ができなくてとても残念だわ」
「仕事が忙しくて。また遊びに行かせてくださいね」
「ええもちろん!」
モリーは胸の前で手を叩き、明るい表情で何度も頷く。その後ろでジニーは誰よりも顔を真っ赤に染め、もじもじとしながら俺を見つめていた。あーやっぱ可愛いなぁ!美少女の片鱗がある!
視線がパチリと合えばジニーは慌ててモリーの背中に隠れてしまったが、今年ジニーも入学するしもうちょっと仲良くなれるといいなー。
その後、ハリーはウィーズリー家のみんなと一緒にグリンゴッツへ金をおろしに行くことになり、俺とドラコとハーマイオニーという今までなかった組み合わせの三人が取り残された。
まあすぐにまた合流するんだけど。
「ドラコとハーマイオニーは、夏休み中どうだった?」
「え?えーと、家族でイタリアに旅行に行きました!すごく街並みが綺麗で、料理も美味しくて……!」
「僕はロシアにクィディッチの試合観戦に行ったんだ。凄かったぞ!」
話題のきっかけを与えてやれば、ドラコとハーマイオニーは口々に何を経験したのか楽しそうに話し出す。二人の出す雰囲気はまだぎこちなく、友人、とは言えないかもしれないがそれでもドラコはマグル生まれであるハーマイオニーがそばに居ても汚物を見るような目で見つめることはなく、一人の魔女として見ていた。……このままみんな仲良くホグワーツ卒業できたらいいんだけどなぁ。
「ノアはずっと仕事か?」
「そうだな。まだ明日からもあるしなぁ……住んでるところがマグルの孤児院だろ?門限があってさ。特別な理由がないと外泊はできないからまとまって仕事をこなせないのが面倒だったなぁ」
ダーズリー家に近く、ハリーと気軽に会うことができるからあの孤児院で暮らし続けているが、流石に魔法界での仕事との両立が難しくなってきている。
長時間孤児院から出る自由時間もそれほど長くはないし。かと言って孤児院の人たちには俺がモデルをしている事を知らない。あくまで、芸能人養成学校に通っていると思っているんだ。
「魔法界の孤児院に移ればいい!そうすれば僕も会いに行きやすいし──そうだ!僕の家に養子に来るのはどうだ?部屋は余りまくっているからな!」
ドラコは名案だ!と言うように目を輝かせ手を叩く。
確かに孤児院にいる子供たちの半数は養子にもらわれていく。しかし俺を養子にするにはかなりのハードルが高くほぼ毎日誰かしらが名乗りをあげる手紙を送るが、孤児院の職員は一度も頷いていない。──まあ、俺が美しすぎるから仕方ないな!ただの子どもとしてじゃなくて恋人として来て欲しい人ばかりだし!
でも──。
「マルフォイ家の養子?」
「そうだとも!」
マルフォイ家の養子。
広大な敷地と潤沢な資金と確かな家柄。そしてさらに俺を手籠にしようという欲も──多分無い。
何より魔法界であり、大人さえいれば好きに魔法使えるしモデルだってことも知ってるから融通が効く。
それに、俺はどう足掻いてもハリーよりも先に卒業してしまって、その後の原作の流れを把握するのが難しい。だが、マルフォイ家なら──ヴォルデモートが復活した後、拠点になるし陰でドラコを護ることだって可能だ。
「……有りだな」
深く考えずにぽつりと呟いた途端、ハーマイオニーはぱかりと口を開け驚愕し、ドラコは頬を真っ赤に染めて興奮して叫んだ。
「ほ、本当か!?ならすぐに父上と母上に会いに行こう。説得してみせる!必ず!」
「いや、まぁ流石に今日明日ってのは無理だから……まぁ、聞いてみてくれよ」
「絶対の絶対に説得する!!」
ドラコは俺の手を両手で強く握り、強い決意を固めた眼差しで見つめる。
マルフォイ家の養子かー……。
「んじゃ、俺の事はお兄様って呼べよ?」
冗談半分、本気半分でドラコにそう言えば、頭から火が出るんじゃないかというほど──耳や首元まで赤く染めて、震える口を開いた。
「ノ……ノア兄様……」
「……プレイみたいだな」
恥じらいと緊張で潤んだ目を向けるドラコ。思わず本音が溢れればハーマイオニーは「ノアさん!」と顔を真っ赤にして非難めいた声で叫び、ドラコは恍惚とした表情で「ノアが僕の兄様に……」と半分妄想の世界に落ちていた。
いや、まあ俺の魅力が最高級だとしても。流石にどこの血が混じっているかわからない俺を養子に入れるだなんて、ルシウスとナルシッサは良しとしないだろう。
……多分。