兄・子世代ifチート能力を駆使して転生人生謳歌します!   作:八重歯

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69 真っ赤な封筒

 

 

俺にとって四年目、原作で言うと秘密の部屋編がついに始まった。

いつものようにセドリックが居るコンパートメントに座り、白煙を出すホグワーツ特急に揺られ窓の外を流れていく景色を眺める。

 

 

「あれ、ハリーのところに行かなくていいの?」

「ああ、今年はいいんだ」

「ふーん?」

 

 

セドリックは不思議そうに首を傾げたが、深く突っ込んで聞くことはなく夏休み中に行った外国の話を楽しげにし始めた。

そう、今年はハリーが居るコンパートメントを探すことはないし、ハリーがここに来ることもないだろう。原作通りならば、ハリーとロンはホームに入ることができずに車でやってくる筈だ。

 

 

「──失礼しますっ!」

 

 

突然勢いよく扉が開き、頬を赤く染めたハーマイオニーが現れた。「おはようございます!」と上擦った声で元気よく挨拶をされ、セドリックは驚きながらも「お、おはよう」と返事をする。

 

 

「おはよ、ハーマイオニー。どうした?」

「あ、あの……ハリーとロン、見てませんか?」

「いや、ここには来てないな」

「そうですか……見当たらないんです。どこに行ったのかしら……ありがとうございました」

 

 

ハーマイオニーは俺の言葉に不安そうに眉を寄せたが、すぐに礼儀正しく頭を下げ扉を閉めた。

 

 

「……びっくりした」

「まあ、この汽車はかなり広いからなぁ」

 

 

彼女の嵐のような勢いにセドリックは目を瞬かせながら閉じられた扉を見つめる。

昨夜遅くまで夏休みの宿題に追われていた俺は欠伸を噛み殺しながら答えたが、俺が口を閉じる前に再び扉が開いた。

 

 

「ノア、おはよう!この前のサイン会ぶりだな!」

 

 

溌剌とした表情で現れたのはドラコであり、セドリックは小声で「また来た……」と呟いたが、その声が聞こえたのは俺だけだろう。

 

 

「ふぁ──あーそうだな、プレゼントありがとう、撮影につけていってるぜ?」

「なに?ほ、本当か?!」

「ああ、多分次の写真集には載るんじゃないか?」

「嬉しい!」

 

 

ドラコは頬を紅潮させ、嬉しそうに満面の笑みを見せながらコンパートメントの中を見回し、ふと意外そうな顔をした。

 

 

「なんだ、ハリーとロンはいないのか?てっきりここだと思っていたんだが……」

「ここには来てないぜ?」

「そうなのか……ロンに貸す雑誌を持ってきたのに……どこのコンパートメントにいるんだか……」

 

 

ドラコはハーマイオニーと同じようにぶつぶつ言いながら手に持っていた雑誌を胸に抱き、「探してくるよ、またな!」と言いハーマイオニーと同じくすぐに扉を閉めて出て行った。

ドラコが去った後、セドリックはまた誰かが来るのではないかと考えしばらく無言で扉を見つめていたが、誰も入ってくる気配がないとわかると肩にこめていた力を抜きため息を吐いた。

 

 

「……どこにいるんだろうね」

「……突然のノアクイーズ!!」

「は?」

 

 

指をパチンと鳴らし、目の前に○×クイズでお馴染みの早押しボタンとシルクハットを出現させる。ボタンをセドリックに押し付け、シルクハットを被せればセドリックはポカンとしたまま「何、何なの?」と狼狽えた。

 

 

「ここで問題!ハリーとロンはこのホグワーツ特急に乗っている?○か×か!ボタンを押してお答えください!」

「え……ま……まる?」

 

 

セドリックは手元の赤くて丸いボタンをポチりと押しながら答える。シルクハットから赤く点滅する丸印が現れ激しく自己主張する中、俺は──。

 

 

「──デデーン!不正解!答えはバツでした!」

 

 

胸の前で腕をクロスし、大きくバツを作る。

セドリックはぽかんと口を開け、「本当に?」と呟いた。

 

 

 

 

 

 

その後ハリーとロンが俺がいるコンパートメントに現れることもなくホグワーツ特急は駅に着き停車し、生徒達は馬車に乗ってホグワーツへと向かった。

二年生以上の在校生達は一年生の組み分けを見るために各寮の席につき、マクゴナガルに先導され現れた初々しさが眩しい新入生を暖かい拍手で迎え入れる。

 

 

「……本当に特急に乗ってなくて──」

 

 

一年生の組み分けが終わった後、新学期の歓迎会が始まり空だった大皿に沢山の料理が現れた。マッシュポテトを食べながらセドリックはグリフィンドール生が座っているあたりを見ながら信じがたいと言うように呟く。

 

 

「──車で来るなんて」

 

 

呟きつつ食事の開始と共に配達のため飛び込んできたフクロウたちが落としていった夕刊預言者新聞に視線を落とす。

新聞の見出しには『空飛ぶフォード・アングリア、訝るマグル』と書かれ、空飛ぶ車を数人のマグルが目撃した事が淡々と書かれていた。

教師達は新聞を広げながらヒソヒソと囁き合い眉を寄せている。新聞を購読している複数人の生徒たちは持っていない周りの生徒に見せつつ、どこからか「これ、今いないハリー・ポッターとロン・ウィーズリーのことらしい」と言う噂話が聞こえてきた。

なぜこうも真に迫った噂が流れているのかというと、どうやら車の特徴を知ったフレッドとジョージが「家の車とそっくりだ!」と割とデカめの声で楽しそうに叫んだからだ。そこからは連想ゲームのようにウィーズリー家の車、不在のロン・ウィーズリーとハリー・ポッター、まさか二人は汽車に乗れず車できたのではないか?──と勘のいい生徒が推理し、それが広がった。まぁ途中でセブルスやマクゴナガル、ダンブルドアが厳しい表情をして居なくなった事も噂に真実味を出させた大きな原因の一つだろう。

 

デザートが生徒たちの腹の中に消えてしまっても、ハリーとロンは現れないままダンブルドア達が戻ってきた。ちらりとグリフィンドールの机を見れば、ハーマイオニーが顰めっ面をして空になった金皿を見下ろしている。……めっちゃ怒ってるし、心配してるなこれは。

 

ダンブルドアはハリーとロンが居ないことに何も発言はしなかった。机の上から空の皿や食べ残しが消えたあと、新しく配属された教師の紹介をして最後に毎度お馴染みのホグワーツの歌を歌い例年通りに新年度パーティが終わる。

 

それぞれの監督生に引率されながら寮に戻った後も、噂話好きな生徒達はこそこそと楽しげに話していた。

 

 

「もしセドが特急乗り逃したらどうする?」

「父さんにホグズミードまで送ってもらうか、フクロウ便を飛ばすかな、ノアは?」

「俺?そうだなぁ」

 

 

去年と同じ部屋で荷解きをしながら試しにセドリックに聞いてみれば当然のような賢い模範的な返答だった。俺がもし特急乗り逃したらそりゃもちろん姿現しで一発だけど。

 

 

「ま、俺も手紙送って迎えにきてもらうかな」

「流石のノアでも、そうだよね」

 

 

セドリックは俺がとんでもないことを言うのではないかと身構えていたが、自分と同じ常識的な回答に少し安堵して笑っていた。

 

 

 

ーーー

 

 

次の日、セドリックと共に大広間に行き、いつものように長机後方でサラダやフルーツを摘んでいると、ハリーとロン、そしてハーマイオニーの三人がやってきた。

 

 

「おはよう、ノア、セドリック」

「はよー」

「おはよう」

 

 

ハリーは少し疲れたような顔をしながら俺とセドリックに挨拶をして、そのまま近くの席に座る。ハーマイオニーとロンも同じように挨拶をしたあとその隣に座り──って待て。

 

 

「ハリー、向こうに行かなくてもいいのか?」

「え?だってノアと食べたいし」

 

 

むしろ、今までそんな事を聞いてこなかったのにどうして?とハリーは不思議そうにしながら近くのオートミールが入ったボウルとミルク瓶を引き寄せる。

基本的に四台ある長机はそれぞれの寮生で分けられていて、彼らは俺とは違うグリフィンドール寮だ。新一年生はネクタイの色が違うことに少しだけ不思議そうにはしているが、まぁ深く気にしてはいない。……だが。

 

 

「ほら、一日目はマクゴナガル先生が時間割配るはずだろ?」

「あー……まあいいや、食べてから行くよ。それより昨日のことなんだけど──」

 

 

ハリーは教師達が座っているテーブルをちらりと見たあと、声を潜めながら昨日何があったのかを話し始めた。ハーマイオニーはまだ二人が車に乗ってホグワーツへ来たことが許せないのか不服そうな顔でソーセージを食べている。セドリックは噂の話と、彼らが話す内容にそれほど大きな差が無いことに少し驚きながらも苦笑しつつ耳を傾ける。

……いや、ぶっちゃけいいんだよ。時間割はどうでも。それよりも大きな問題があるが、これを知っているのは俺だけだ。……今は。

 

どうしたもんかなぁ。と思いながら林檎を齧っていると、ふくろう便の時間が訪れ何百というふくろうの群が羽音を響かせながら天井ギリギリを旋回する。

これだけの大群のふくろう便を見た新一年生は歓声と驚愕の声を上げながら目を輝かせ、二年生以上は特に気にすることなく目の前に落ちてきた手紙や小包、新聞を見る。

俺の前に事務所検閲済みのファンレターや小包が次々と届けられる中、大きな灰色の塊がハーマイオニーのそばの水差しの中に落下し、周りにミルクが飛び散った。──やっぱこの流れは変わらないよな!

 

 

「エロール!」

 

 

ロンはミルクの中にぷかぷかと浮かぶ灰色の塊を摘み上げ、心配そうにローブの袖でごしごしと拭いたが──その嘴が咥えている赤い封筒を見てぴたりと手を止めた。

 

 

「大変だ……」

「大丈夫よ、まだ生きてるわ」

 

 

ハーマイオニーはエロールの羽が動いているのを見て、元気づけようとロンにそう言ったが、ロンの目は赤い封筒に釘付けであり蒼白な顔をしている。

セドリックは食べかけていたサンドイッチを口の中に突っ込み、俺の袖を引く。その目は心を読まなくとも「早く逃げよう」と必死に伝えていた。

 

 

「ロンがんばれ」

「うっ……」

「何?ただの手紙でしょ?」

 

 

俺の励ましにロンは情けない顔で呻き、エロールの嘴から赤い封筒を受け取る。ハリーは何をそんなに怖がっているのか、と不思議そうにしながら赤い封筒を見た。

 

 

「それは吼えメールっていう手紙で──よし、ロン、ハリーにどんな手紙か教えてやれ」

 

 

ぽん、とロンの肩を叩けばロンの青い顔は少し桃色になったが、封筒に目を落とすとすぐにまた青くなる。

セドリックと目配せをして席を立ち、ついでにスプラウト先生から時間割を受け取ろうと教師達が座っている前方へ向かった途端──。

 

 

「──車を盗み出すだなんて退校処分になってもあたりまえです!」

 

 

爆発音と共にモリーの何百倍に拡大された怒号が響き渡り、大広間中に広がったその爆音は窓や天井をびりびりと揺らした。

 

 

「うわっ!──流石に近距離では聞けないね」

「鼓膜が爆発するからな」

 

 

肩をすくめながら言うセドリックに、同感だと頷いた。

 

 

 

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