兄・子世代ifチート能力を駆使して転生人生謳歌します!   作:八重歯

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70 ロックハート

 

スプラウト先生から時間割を受け取り、去年とそこまで差がない授業量にほっとしつつ鞄の中に無造作に突っ込んだ。

 

 

「始めは呪文学だね、その次は闇の魔術に対する防衛術…昼から選択授業か……ロックハート先生の本……全部持っていかなきゃならないのか……」

 

 

基本的にどの授業も教科書は殆ど一冊。多くて二冊だが、ロックハートが用意させた本はなんと六冊である。間違いなく四年生が学ぶ闇の生物が出てくる自伝を全て購入させたのだろう。どの本も小説っぽくて──ぶっちゃけ参考になりそうにはなかったな、小説として読めばなろう系でそこそこ面白かったけど。

 

その大量の本も、俺は鞄に検査不可能拡大呪文をかけているから何冊突っ込んでも重くないが、普通の生徒は肩凝り半端なくなりそうだな。

 

 

「後で鞄に検査不可能拡大呪文かけてやるよ」

「本当?ありがとう、すっごく助かるよ」

「わざわざ毎日教科書入れ替えなくて済むから、かなり楽だぜ?」

 

 

持っていた鞄の口を開き見せてみれば、セドリックは興味深そうに覗き込んで「うわ」と小さな声で呟いた。

 

 

「……なんだか、教科書以外も色々見えるけど……クソ爆弾とか……」

「あぁ、フレッドとジョージから預かったやつだな。すっかり忘れてた」

「……たまには整理しなよ」

「またいつかなー」

 

 

そのいつかは一生来ないやつだよね。と言いたげなセドリックの視線をスルーし鞄を肩に掛けながらニヤリと笑えば、セドリックは大袈裟なまでにデカいため息をついた。

 

 

 

セドリックが今日使用する教科書を用意するために一度寮の自室に戻り、その後呪文学の教室へと向かった。

俺とすれ違った生徒たちは我先にと口々に挨拶をし、まだ俺の生の魅力に慣れていない一年生たちが茹蛸のように顔を染めその場に硬直する。これもまぁ、ここ数年は新年度の風物詩、とも言えるだろう。

 

俺を見たいが、話しかける勇気のない生徒たちは少し距離をとって俺の後ろに着いて歩き、大名行列のようになるがセドリックは一瞥はしたものの特に気にする事なく「そういや宿題ちゃんとしたの?」といつも通り俺に話しかける。

 

ノア・ゾグラフを見つけたいのなら人の多いところを探せ。というのはここホグワーツの常識であり、誰もが人だかりを見つけると「ノア・ゾグラフが近くにいるかも!」と浮き足立つものだ。

まぁ人だかりができるのなんて俺かフレッドとジョージの悪戯でやばいことになって通行止めされているかどちらかしかない。

 

ホグワーツでその事を知らないのは新一年生であり、彼らは驚きと俺を見れた喜びで興奮状態になりざわめきが一層激しくなった。

 

 

「いったい何事かな?」

 

 

そんな中、人をかき分け現れたのはターコイズブルーのローブが眩しいロックハートだった。彼に押し除けられた生徒は不服そうな顔でじろりとロックハートを睨んだがもちろんロックハートは気にしない。

 

 

「おや!ノアじゃないか!この間の私の写真会に来てくれた以来だね!」

 

 

ロックハートはぱっと表情を明るくさせ「私の写真会」の部分をやけに強調しつつ、白くて形のいい歯をキラリと見せながら笑う。

さすがロックハート。俺のマネージャーに牽制された程度では全く凹まず写真会での一件をめちゃくちゃポジティブに捉えている!

あーあの時も思ったけど、顔は正統派イケメンなんだよな、マジで。俺にはない大人の余裕に満ちた色気が確かにある。笑顔が暑苦しいけど。

 

 

「この前はゆっくり話す時間もなくて本当に申し訳なかった!私のお茶目なファン達が離してくれなくてね。私の部屋で紅茶でもどうかな?今日の昼休みもちろん空いているだろう?空いていなくてもこのギルデロイ・ロックハートと二人きりでお茶できる機会なんてなかなかないよ!そうだ!私の教科書は買っているね?サインをしてあげよう!」

 

 

ぺかーっと笑いながらべらべらとロックハートは喋り続け、セドリックはいきなりの事で目を丸くし、周りにいる生徒達は俺とロックハートを交互に見て唖然としている。

もしかして、ノア様はロックハート先生のファン……?という囁きがどこからともなく聞こえてきて、それを聞いたロックハートは期待通りの反応にご満悦なドヤ顔を見せた。

 

 

「さあ、出したまえ!なに、謙遜しなくていい!」と言わんばかりに片手を差し出しビックスマイルを見せるロックハート。このテンションで俺に話しかけることができる人ってめちゃくちゃ珍しいよな……。

……おもしれー男!

 

 

「ロックハートせんせ!先生の本にサインじゃなくて、ロックハート先生の写真にサインして欲しいなぁ」

「な──」

 

 

可愛く上目遣いでお願いし、にこっと笑いかけてみれば一瞬ロックハートは頬を染め驚いたような顔になったがすぐに歓喜に満ちた笑顔で辺りを見回し、「このギルデロイ・ロックハートはノア・ゾグラフにも一目置かれているのだ!」と言わんばかりに背筋を伸ばし自慢げな顔をした。

 

 

「あ、ああ!もちろん!私の写真を買ってくれたんだね?何枚でも書こうとも!」

「ううん。写真は持ってないんで──今から撮りたくて!」

「へ?」

 

 

ロックハートと距離を取るために二歩ほど下がり杖を軽く振る。きょとんとしているロックハートの後ろに真紅の布地と金の装飾が眩しい王座椅子が現れ、彼のターコイズブルーのローブは漆黒の色に変わる。

俺の制服もそれっぽくシックな黒い服に変化させ、手をくるりと回して出現させたカメラをぽかんとしているセドリックに投げ渡した。

 

 

「ロックハート先生、王座に座って!ロックハート先生は綺麗な髪色なんだから、ターコイズブルーよりもシックな服の方が映えますよ!体は──おお、意外と鍛えてますね!」

「ノ、ノア?な、なにが──」

「写真集とか出してませんでしたっけ?世の中の女性はこういう写真が大好きなんですよ」

「も──もちろん知っているとも!しかし私の魅力に当てられて女性達が夢中になり過ぎてしまうからね。ああ!そこの幼い君──そう君だ。気をしっかりもってくれたまえ!」

 

 

周囲へのアピールをしつつ王座に無理やり座らされたロックハートは、やや表情を引き攣らせながらも主導権は渡さないとばかりに足を組みドヤ顔を決める。ソロ写真ならそれもいいけど、せっかく取るならムード系でしょ!

 

 

「ロックハート先生、普通に座ってください。んで、肘置き使って顎か頬に手を添えて──そうそう、ちょっとローブはだけさせましょ。チラ見せ鎖骨大事!あと、顔は爽やか系じゃなくてちょいワル系を作ってくださいね。ロックハート先生ならいけるいける!……んで、俺はここ!」

 

 

どこぞの悪の帝王のようにふんぞり返り悪い顔をしたロックハート。空いている肘置きに腰掛け隠れボスのショタのような顔で微笑む俺。

 

 

「セド!いい感じに撮ってくれ!」

「え……えぇ……わかった……」

 

 

セドリックは混乱しながらも頷きパシャパシャと何度もシャッターを押す。

チラリと横を見れば満更でもない表情でロックハートはカメラに向かって悪い顔をしたり、時々ポーズを変えてさりげなく俺の腰に手を回したり。──流石、ポーズとるの慣れてるな。

 

 

「さすがロックハート先生、慣れてますねぇ」

「君ほどではないけどね、ノア!本業は物書きなんだが、なぜか写真を撮ってくれとせがむファンが多くて。私も困ってはいるのだけどいたいけなファンの期待に応えないわけにはいかないだろう?」

「はは!いい性格してるねぇロックハート先生」

 

 

この人の本心は当然のように全く別物で自分が一番だと思い込んでいる。──いや、美しさや知名度では俺に負ける、としっかりと認めてはいるものの、ジャンルとニーズが違うのだと本気で思っているようだ。

 

そうこうしている内に遠くの方で授業開始を告げるチャイムが鳴り、俺とロックハートの写真撮影を見ていた生徒達は慌てて蜘蛛の子を散らすように廊下を走り去る。

セドリックも不安げな顔でカメラを下ろし「遅刻するよ!」と俺たちに近づいてきた。

確かに呪文学だし、一発目から遅刻は怒られそうだなぁ。ちょっと悪ノリしすぎてしまったようだ。

王座を消し、服を元に戻しながら写真を受け取ろう──としたが、さっと横からロックハートが掠め取ってきた。

 

 

「さて、写真写真……ああ!とってもいい写真だ!一枚もらえないかな?引き伸ばして部屋に飾っても?それと、遅刻は心配しなくても大丈夫だよ。私がこの写真の裏に一筆書いて差し上げよう!」

 

 

ロックハートはポケットに入っていたペンで写真の後ろに「このギルデロイ・ロックハートのために彼らは時間を少々過ぎてしまいましたが問題ありませんね?」と書き、表にサラサラとサインを書いた。

何も言えないでいるセドリックの手にその写真を押し付け、俺に向かって完璧なウインクを投げたロックハートは今にもスキップしそうなほど上機嫌な足取りで去っていった。

 

 

「……すごい先生だね」

「俺は嫌いじゃないけどなぁ。明るくて面白いし」

「ノアみたいな人だね」

「え?俺って側から見たらあんな感じ?」

「たまに何言ってるのかわからないところとか。テンションの高さとかが似てるかな」

 

 

セドリックは即答したが、俺は何とも複雑な心境だった。

いやいや、俺は自分に自信満々で何よりも誰よりも最高最強ですけど、流石にロックハートみたいじゃない──はずだ。

 

 

 

 

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