兄・子世代ifチート能力を駆使して転生人生謳歌します! 作:八重歯
実績解除。
トム・リドルが仲間に加わった!ただし裏切る可能性大。
と、頭の中にそんな文字が浮かんだのは言うまでもない。
勿論ヴォルは俺を信用したわけではないが、かと言って殺そうとすることもなく、とりあえず利用価値がありそうだし見張っておこう。という考えなのだろう。
あの後、俺たちはこの場で会ったこと、互いの思想に関しては他者に言いふらさないこと、明日から廊下とかですれ違っても今までと変わりなく過ごすこと、といくつか約束した。
まぁ、ジニーには俺と会った記憶なんてないはずだし、ヴォルにとっても都合がいいのだろう。トップモデルに暗い噂は御法度なんですと言えばヴォルも納得はしていたし。
ヴォルはバジルの目を覆っていた布がどーーも嫌なようで、俺が秘密の部屋から帰る時に布を消せば少し安心したような目をしていた。
バジルには、ヴォルと会う前にもしヴォルがなんか言ってきても従うふりをしろって言ったから大丈夫だろう。目はカラー鱗になっているし殺傷能力はない。
あれから時々、バジルが廊下や教室のそばのパイプを通って散歩している気配がした。『主は次いつくるだろうか』とか『なんだ小鼠、殺されたいのか』とか『腹が減った』とかの小さな独り言が聞こえてくることも度々ある。勿論その声を聞いても窓から吹き込む風の音か何かだと思っているのか、誰も何も気にしていない。
今まではあんまり人に知られないような所を通って、と俺が命令していたが、多分ヴォルは好きな所を通れ、と命令したのだろう。ま、別に死人が出なきゃなんだっていいけど。
十月になれば天気はあいにくの雨が多くなり、湿った冷たい空気が容赦なく窓の隙間から入り込んできた。
とんでもない土砂降りでも、クィディッチの練習はある。なぜならクィディッチの試合は雨天中止になることはなく、むしろ嵐でも行われる競技だからだ。
俺が所属しているハッフルパフチームも、勿論練習日に雨だったからといって中止になることはない。
「滝だろこれ」
「これは……流石に……」
更衣室の扉の先には滝か、バケツをひっくり返したのような大雨が降り、窓ガラスを容赦なく叩き、風も強く吹き込んできている。入り口はみるみるうちに水たまりができてしまい、クィディッチバカのセドリックとはいえ、やはり「うわぁ」と呟きながら引いた目をしていた。
他のチームメイトたちも、後ろでざわざわと心配そうに──かなり嫌そうにざわめいている。そりゃ、この大雨の中練習なんて誰だって嫌だ。
「何をしてるの?早く行くわよ!」
キャプテンのナンシーを除いて。
ナンシーは更衣室の奥からでかい箱を引き摺り出し、その中にごちゃごちゃと折り重なっている分厚いゴーグルをむんずと掴んだ。
「これがあれば大丈夫よ。ほら、さっさとする!」
ナンシーの声に、みんなは沈黙を返しつつ、不満は言わずに一人、また一人とゴーグルを掴んで灰色の世界へと飛び出していった。
「ぎゃーー!」「さむっ!つめたい!」「何にも見えない!」とか言う叫びが大粒の雨音の隙間から微かに聞こえ、そしてすぐに飲み込まれる。
キャプテンも含め、全員が滝行を受けにいってしまい、最後に残ったのは俺とセドリックの二人になった。
「はあ……よし、ノア、行こう」
「えぇー……雨よけ魔法って禁止だっけ?」
「試合中はダメだよ。勿論練習中は大丈夫だけど……でも、これも嵐の日の試合の練習みたいなものだから」
「はぁぁぁ……あ、試合が毎回晴天だったらこの練習はいらないよな?」
「え?まあ、そりゃあ……でも毎回晴天なんてなかなか無いと思うよ」
今までの試合は晴天、曇天、小雨とそこそこ天候には恵まれていたが、今後こんな感じの嵐の日に試合がないともかぎらない。それならば嵐の日の練習をすべきだろう。
「いや、今後俺が出る試合は全て晴天にする」
「え?……いやいや、さすがのノアでもそれは……」
セドリックは十分に俺の魔法の凄さを知っているが、それでも天候を操るなんてことはできないだろう、と苦笑した。
一歩外に近づく。吹き込んだ雨は俺に当たる事なく、雨よけ魔法により見えない何かに阻まれて跳ね返る。
ポケットに入れていた杖を出し、分厚い雨雲に向け蜘蛛の巣を払うようにぐるぐると回せば、どんよりとして動きの遅かった雨雲は杖の動きに合わせて一気に動き、千切れ、広がった。
次第に雲は薄くなり、雨粒が小さくなっていく。灰色の視界が少しずつ明るさを取り戻し、チームメイト達の「晴れてきた!」という嬉しそうな声が聞こえてきた。
「よし。こんなもんかな?」
最後に杖を大きく右から左に振れば、残っていた薄雲も消え、空は晴天に変わり明るい太陽が地上を照らす。ピッチの芝生は跳ね上がった泥で茶色く汚れていたが、まぁいつか乾くだろう。
「よし、練習に行こうぜ!──なんだよ」
セドリックを見れば、青い空を見て目を見開いていた。セドリックは無言で空を見ていたが、ふっと息を吐き出すと「流石」と呟き、俺の肩をぽんと叩いた。
「試合の時も、頼んだよ?」
「勿論。濡れるのヤだし」
「……どこでこんな凄い魔法を学んだとか、色々聞きたいことはあるけどね」
「ああ……ほら、レイブンクローのあれ」
箒を担いで雨の匂いが残るピッチへと駆け出しながら言えば、セドリックは「ああ。あれね」と納得したように頷いていた。
レイブンクローからもらった魔導書にはかなりやばい魔法ばかり書かれていた。それこそ闇の魔法や、伝説級の魔法、今では禁じられている魔法などなど。その中に天候を変える魔法や雷を呼ぶ魔法、台風を起こす魔法などがあり、一度でもその魔法の存在を知っただけで使えてしまう俺は、鍛錬せずとも一発でそれらの魔法を使える。
まだまだ、使ったことのない魔法ばっかりだけど。
その後の練習は俺はいつも通りの無失点で終わり、他のチームメイトももうすぐ始まるクィディッチシーズンに向けての調節をかなり頑張っていた。今年こそ優勝したい、その気迫がキャプテンだけにではなく、全員に満ちている。
原作通りなら今年はクィディッチの試合が途中で中止になると知っている俺としては、めんど……複雑な気持ちでは、ある、うん。
着替え終わり、セドリックと共に更衣室から寮に向かっている最中、廊下の向こう側からハリー、ロン、ハーマイオニーの三人が何やら話し込みながら歩いてきた。ハリーは俺に気づいた途端パッと表情を明るくさせて小走りで駆け寄る。
「ノア!さっきの練習の時に雨が止んだのって、ノアの魔法でしょ?」
「ん?見に来てたのか……俺以外にいるわけないだろ?」
にやり、と笑って言えばハリーは「ほら!」と何故かドヤ顔で胸を逸らしハーマイオニーを見る。ハーマイオニーは俺を見て頬を染めつつ、驚いたように目を瞬かせ──やや疑いの目で俺を見た。
「まさか!天候を操る魔法はすっっごく難しいんですよ。熟練の魔法使いでもできないって本に書いてあったもの!」
「ハーマイオニー、ノアは世界一の魔法使いなんだ!昨日のグリフィンドールの練習中も晴れにしてもらったらよかったなぁ……」
「フレッドとジョージがノアはマジでやばいって言ってたけど……凄っ」
そういや、ハリーは俺が天候を操るところを2年前に見てるな。まだ少し疑ってるハーマイオニーに、ハリーは「どうだ」と言うように自慢げにしていたが、ふと思い出したように俺を見た。
「そうだ。ノア……その、よかったらハロウィーンの日にニックの絶命日パーティに──」
「絶対行かない」
被せ気味で断り、手でバツを作って見せる。
ハリーはぴたりと固まっていたが、捨てられた子犬のような悲しそうな顔をすると、「……駄目?」と小首を傾げた。
「無理」
「……ちぇっ!昔はすぐにいいよって言ってくれたのに。すっごく楽しいことかもしれないよ?生きている人で絶命日パーティに行けるなんて、珍しいらしいし……」
ハリーはつまらなさそうに口を尖らせ、ぐちぐちと文句をこぼす。
そりゃ、昔はハリーはちっちゃくて可愛かったから愛らしい我儘くらい叶えてあげた。何より当時唯一の好きなハリポタキャラだったし。
今はもう俺と身長そんなに変わらない少年になっちまったし、好きなキャラ山盛りだしなぁ……その表情はきかないぞ。
「絶命日パーティって?」
「ゴーストが死んだ日を祝うんだ。ま、有名なゴーストとは知り合いになれそうではあるけどな」
「へぇー」
絶命日パーティが何なのか知らないセドリックは少し興味がありそうだったが、ハリーの「セドリック、来る?」の言葉には残念そうに首を振っていた。
絶命日パーティは、生きてる人間からしたら最悪のパーティだしなぁ。……いや、まあ原作での有名シーンを見たく無いと言えば嘘になるけど、それでもなぁ。
「土産話を期待してるよ」
「わかった……」
ハリーは至極残念そうに頷き、ハーマイオニーとロンに慰められつつとぼとぼと大広場の方へと向かって行った。