兄・子世代ifチート能力を駆使して転生人生謳歌します!   作:八重歯

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80 分岐点?

 

土曜日の夜にコリンが襲われ、石になったという話は日曜日の昼間にはホグワーツ中に広まっていた。

コリンはマグル生まれであり、生徒達の中で不安と恐怖が静かに広まった。もしかして、本当にスリザリンの継承者が現れマグル生まれが襲われるのか、と誰もがこそこそと話し合い、それに憤る人、犯人を捕まえてみせると躍起になる人、怯えて仲間同士で固まって動く人、それぞれだった。

 

 

誰が継承者なのか。

きっと純血に誇りを持ち、それ以外を蔑み、マグル生まれを下等な者と考えている人だ。

ならばきっと、スリザリン生だ。

 

 

という噂が周り、スリザリン生はスリザリン生で疑心暗鬼になっている。

 

原作通りならば、スリザリン生だけはこの騒動も楽しいイベントのように考え、余裕をもっていた。だってスリザリンのほとんどが純血で常にマグル生まれ──穢れた血を馬鹿にしているから。

 

 

しかし、今このホグワーツには穢れた血でありながら全生徒を魅了している俺がいる。

 

 

ほとんど全員が俺のファンであり、穢れた血という言葉は俺に直接言わずとも、ホグワーツの中で禁忌の言葉になっている。勿論、本心では穢れた血を馬鹿にしている奴もいるだろうが、狭い子供の社会、ずっと寮生活の中で異論を唱えるのは難しいだろうな。

 

そんな中、だれが裏切り者なのだとスリザリン生達は互いに目を光らせ、誰もかれもが疑いの目で学友を見ている。

 

全生徒の中で微妙な疑心暗鬼の雰囲気が流れているが、犯人がいる可能性の高いスリザリン生はまた違うピリピリとした雰囲気だ。健全じゃない、とは思うが──まぁ今年限りだし。

 

 

俺をストーカーする過激親衛隊が増えていく中、俺はいつも通り夕食を食べにセドリックと大広間に行く。大広間へ向かう廊下では生徒達が肩を寄せ合い何人もが固まって足早に移動していた。

教師がいる場所が不安な生徒達が唯一安堵できる場所であり、休み中ともなれば職員室か、研究室か、食事の時の大広間にしか教師はいない。誰もが安心を求めていつもより早めに大広間へと向かっていた。

 

そんな中、大広間に続く扉の前で挙動不審なまでにそわそわとしていた二人組がいた。なぜ入らないのか、とすれ違う人たちは冷ややかな目で、「怪しい」とばかりに見ているからさらに挙動不審になっているのだろう。

 

 

「ノア!ちょ、ちょっと来て!」

「お腹減ったんだけど」

「少しだけだ!」

 

 

その二人組の一人であるハリーは俺と目が合うとすぐに飛び出し俺の腕を掴む。もう一人であるドラコも、青白い顔で俺の腕を掴み空き部屋へと行こうと引っ張った。

こうしてハリー達に引っ張られて行くのも何度目かであり、セドリックは驚きつつも「早めにしないとなくなるよ」と助言し、二人を止めることなく俺を見送った。

 

ってか、ハリーとドラコの二人って珍しいな。ロンとハーマイオニーは一緒じゃないんだ?

 

 

 

小部屋に入り、魔法でいつものように鍵を閉め防音魔法をかける。

ハリーは俺が魔法をかけ終わるまで黙っていたが、振り返った途端「どうした」と聞く前に勢いよく話しだした。

 

 

「ノア!もうコリンのこと聞いた?実は僕昨日医務室に泊まってて──ノア、お見舞いに来てくれると思ったのにそういえば来なかったね今度は来てよ?──それで、夜にドビーが来て……」

「ハリーが言うには、僕の家のハウスエルフのドビーがハリーが汽車に乗れないように細工したらしい。それに……昨日の試合、ブラッジャーがおかしな動きをしたらしいな?それも、ドビーが行ったとか……」

「僕をホグワーツから避難させたいって。独断だって言ってた。なんでも、また秘密の部屋が開かれたからって……」

「ノア、あり得ると思うか?ハウスエルフがこんなにも──こんなにも主人の命令から背くなんて、聞いたことあるか?僕はノアに誓って、昨日の試合にやましい事はしていない!それに、もし継承者の魔の手から避難させるのであればハリーではなくノアだろう?もちろん、ノアは凄い魔法使いだが……」

「あっ試合といえば!なんでノアはスリザリンのネクタイをしてたんだ?何で?僕のネクタイをつけてよ!」

「昨日ノアは僕を応援してくれていたんだ」

「じゃあ次の試合は僕のネクタイ渡すから!」

「ああ、スリザリン生のようなノアは最高だったなぁ」

「ず、ずるい!」

 

 

ハリーとドラコは感情のままぎゃいぎゃいと騒ぐ内に、内容がドビーと秘密の部屋の事から、俺のネクタイの事へと変わっている事に気付いていないようだった。

 

 

「……で?結局何が言いたいんだ?」

「え?えーっと……大丈夫だと思うけど、ノアも気をつけた方がいいって言おうと思って……」

 

 

俺が聞けば、必死にネクタイの話をしていたハリーは何とか話題を元に戻し、心配そうに俺を見る。

ドラコも、「大丈夫だとは思うが」と言うがその顔は不安そうだった。

 

 

「ドラコにスリザリン生で怪しい人がいないか探ってもらってるんだけどいないみたいで……」

「今スリザリン生は、後継者がどうとかいうよりも……誰が影でノアを傷付けようとしているのかと疑心暗鬼になり、皆がよそよそしい。まぁ……僕としては、身内にそんな考えを持つものが未だにいるとは思いたくはないが」

「なるほどねぇ……」

 

 

ハリー達はドラコと一緒に後継者探しをする事にしたようだ。

……って事はだ、もしかしてマートルのトイレでポリジュース薬作ってないのか?ハリー達とバッタリあったら面倒だと思って最近あのトイレ行ってなかったんだけどな。

 

 

「なんでドラコのハウスエルフが知ってるんだろうね……新学期が始まる前から……ずっと前からホグワーツでこの事件が起こるってわかってたみたいだ……」

「それは……」

 

 

ハリーは心の底から不思議そうに首を傾げながらドラコを見る。ドラコはしばらくハリーの目を見ていたが、みるみる内に顔色を悪くすると口先を引き攣らせ叫んだ。

 

 

「僕じゃない!」

「え?」

「僕じゃ──違う!ノア、本当に僕じゃない!」

「んん?」

 

 

きょとん、とする俺はハリーと顔を見合わせる。

ドラコはクィディッチの試合前以上に顔色を悪くすると、大きな目に涙を溜め、よろよろと後ろに下がった。

 

 

「僕は後継者じゃない!」

 

 

ドラコの悲鳴まじりの叫びに、ハリーは怪訝な顔で片眉を器用に上げた。

 

 

「なに当たり前のこと言ってるんだい?」

「──え、」

「後継者はマグル生まれをナントカの血って思って、ホグワーツから追い出そうとしてるんだろ?君がそんな事思うわけないじゃないか!ノアの事をこんなにも考えているのに!」

「ハ、ハリー……」

 

 

その言葉にドラコは安堵し、肩に入っていた力を抜いた。涙が薄らと溜まる目元を恥ずかしそうに拭きながら、ハリーから微塵も疑われていないという事に心の底から嬉しく思っているようだ。

ハリーはハリーで「なに馬鹿なこと言ってんの」とか軽く思ってそうだが、それはマグルの元で育ったハリーだからそう思うだけで、魔法界のマルフォイ家を知っていたら多分、そう思わないだろう。

俺への感情、それすらもフェイクだと考える奴は多そうだ。

 

 

「……もしかして、ハーマイオニーとロンが微妙に君に対してぎこちないのって」

「ドビーが何かを知っているのは間違いない。それなら、僕のことを疑ってもおかしくはない」

「そんな!あの二人にしっかりと言わないと!──って、どうしたの?ノア」

「いやぁ……」

 

 

ハリーとドラコが俺を見る。

原作ではあり得なかった友情をしかと見て感激してる俺。「よかったな!」という気持ち半分「良いもん見た!」という気持ち半分でにやけそうになるのをグッと堪えていたからか、口先が変に上がってしまった。

 

 

「めちゃくちゃ幸せな世界線って感じ……」

「えぇ?」

「……かなり最悪だぞ?」

 

 

今のハリーとドラコにはわからないだろう。

──いや、きっと誰にもわからない、この幸福感を噛み締めることが出来るのは、俺だけだ。

 

 

 

ハリーとドラコは帰る前にもう一度俺に「気をつけて」と言い、辺りに注意しながら廊下を走っていった。大広間に行かないのは、きっとどこかで待機しているハーマイオニーとロンと合流するためだろう。

 

 

「ほんと、幸せな世界だなぁ」

 

 

独り言を呟きながら、噛み締める。

できたら、卒業まで──卒業した後も、彼らの幸せが続いてほしい。

俺が手に届く範囲の、死んでしまうはずの命を助けたいし、好きなキャラの幸福を守れたらなぁ。

 

 

「……今年度だけじゃなくて、来年度の結末も考えとかないとなぁ……」

 

 

かなりめんどくさそうだが、俺のそこそこの苦労の代わりに幸せになるキャラが多いのなら、まあ少しくらいは頑張ろうかな。

なんて考えながら、存在しない三年後の未来を見たい相手の元へと向かった。

 

 

「何だったの?」

「んー。決意と警告みたいな?」

「君は守られなくても何とかなりそうだけどね。誰よりも最強なんでしょ?」

「世界一の魔法使いだからな」 

「はいはい、世界一の魔法使い様は食べ方も世界一な事で!」

 

 

ミートパイに齧り付きながら言えば、セドリックは呆れるように肩をすくめ、少し笑った。

 

 

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