兄・子世代ifチート能力を駆使して転生人生謳歌します!   作:八重歯

81 / 180
81 トム・リドルファンクラブ

 

フレッドとジョージに忍びの地図を借りて、マートルのトイレを調べる。

忍びの地図、めちゃくちゃ便利だよなぁ。これ、普通に作りたい。……作り方明かされてないんだよなぁ……調べてわからなかったら来年聞いて作ればいいか。

 

 

トイレは無人で、マートルも散歩に出掛けているのか居ない。

昼休み、寮の談話室で宿題をしているセドリックと離れ一人でマートルのトイレの前まで来て、立ち止まる。

セドリックは俺が一人で出歩いても止める事はない。どうせ親衛隊が見守っているのだし、と気にしていないのだろう。

 

ま、俺にとっちゃ親衛隊を巻くのなんて簡単すぎるんだけどな!

 

 

マートルのトイレ前でフラフラしてるのなんて誰にも見られたくはない。ってか普通に女子トイレに居るのがバレたら気まずすぎる。

 

女子トイレへと続く扉を開け、鍵を──いや、もし誰か来て鍵のことが知られたら面倒だし、そのままでいいや。扉は沢山あるし、誰か来たら試練の部屋に逃げればいい。

 

相変わらずの陰気くさく、黴臭いトイレはしん、と静まり返っていた。トイレの個室一つ一つを確認すれば、一つだけ鍵がかかっていて開かない扉があった。

もう一度、忍びの地図を見たがトイレには俺の名前しかなく、誰かが使用中というわけでもない。

 

鍵の部分をとん、と指で叩く。かちり、と解錠する小さな音が響き、扉は抵抗する事なく開いた。

途端にむっとした薬草っぽい青臭い匂いが鼻を刺し、「う、」と呻きながら眉を寄せる。

 

 

「ポリジュース薬、作ってはいるのか……」

 

 

トイレの中には弱火でコトコト煮込まれている大きな鍋が一つ置かれていた。勝手に匙がかき回しているのを見ると、ハーマイオニーがなんか魔法をかけているのだろう。

 

原作では、後継者だと狙いをつけたドラコから自分が後継者だという証言を得るためにハリーとロンがスリザリン生に変身し、侵入していた。

今ドラコはハリーの味方で、ドラコがスリザリン生を探るって言ってたからてっきりポリジュース薬作ってないのかと思ってたけどな。……全員で何かを聞きに行くのか?

 

 

「ま、いいか」

 

 

ポリジュース薬の流れは、あってもなくてもどうって事がない。確かセブルスの授業中に薬品をいくつか盗みに入るイベントと、ハーマイオニーが猫になってしまうイベントが発生するだけだったはずだし。

 

ハリー達が俺にポリジュース薬の事をあえて黙っているのか、ただ単に話すタイミングが無いだけなのかはわからないな。……ポリジュースの材料、普通に俺に言ってくれたらあげるのになぁ。

 

鞄の中に無造作に放り込んだ中に、確かポリジュース薬の材料は一式揃っていたはずだ。それ以上のレア素材だってあるし。

 

そう思いながら、個室の扉を閉め、入った時と同じように魔法で鍵をかける。

帰る前にもう一度地図をチェックしようと思い地図を広げていると、ふとすぐそばの廊下に一人の名前がある事に気付く。

 

その名前はトイレの前を通過し素早い動きで戻ってくると、さっとトイレに入った。

同時に、トイレの扉が開く音がする。──その音に隠してこっそりと指を鳴らし魔法をかけた。

 

 

「や、ヴォル」

「ノア……」

 

 

現れたのはヴォル──見た目はジニーである──だった。

フードを深く被っているせいか鼻くらいまで隠れていてパッと見は誰かわからないけれど。ヴォルは素早く辺りを見渡し俺だけしかいない事を確認し、フードを外した。

 

 

「部屋に行くつもりですか?」

「ん?そうだな、バジルと最近会ってないし。何してるのかなって思って」

「そうですか。……バジリスクに、何かをさせるのでは?」

「親衛隊がなかなか離してくれなくてね。今日も一人になるの大変だったんだぜ?」

 

 

肩をすくめ、残念そうに言えばヴォルは興味なさそうに「そうですか」と答えた。ここにヴォルが来たということは、またバジリスクに誰かを襲わせるつもりだろう。……あれ?そんなハイペースだったっけ?

 

ヴォルは洗面台に向かい、蛇口に彫られている蛇の箇所を見つめ秘密の部屋への道を開けようとした。

 

が、開いた口からは何の言葉も出なかった。

数秒蛇口を睨むように見ていたヴォルはポケットから杖を出し、自分に向ける。

 

何をするんだろ、と思っている間にヴォルの──ジニーの髪は赤色から黒色に変わっていく。全ての髪が黒くなる前に、ヴォルはさっとフードを深く被った。

それと同時に、近くのトイレから水が逆流するようなゴポゴポという音が聞こえ、便器は溢れた水と共に、マートルを吐き出した。

 

マートルはすぐにトイレに誰かいる事に気付き、嫌そうな顔をしたが──マートルをからかいにきた誰かだと思ったのだろう──俺だと気付くと、ころっと表情を変えた。

 

 

「まぁああ!ノアじゃない、どうしたの?こんなところに?あっあっ!私に会いに来たのねっ?」

 

 

マートルは俺に気付くと猫撫で声でそう言い、目と鼻の先まで飛んできて流し目で瞬きを繰り返す。

 

 

「私はマートルよ。でも、あなただけと・く・べ・つ・に!マリーって呼んでもいいわ!」

「うーん。マートルって呼ぶ事にするよ」

「んもぅ!つれないところも素敵っ」

 

 

マートルの愛称がマリーだなんて初耳だ。

マートルは語尾にハートがついてそうなくらい甘い声でくねくねとしながら俺の周りを飛び、ちょんと俺の肩あたりを触れては「きゃあ!」と黄色い声をあげていた。触れられないはずだが、触れてるような気がして嬉しいのだろう。俺は寒いよマートル……。

そういえばなんだかんだ、マートルと初対面なんだよなぁ。ゴーストにも俺の噂は届いているらしく、マートルの視線は周りの熱狂的なファン達とあまり変わりはない。……いや、ゴーストで遠慮がない分ねちっこい気がする。

 

 

「あら、一人じゃないのね」

 

 

マートルはヴォルに気付くと、ふわりとヴォルの近くを浮遊し顔を見せないヴォルを胡散臭そうな目で見下ろした。

 

 

「ま、いいじゃん。俺と話そうぜ?」

「ええそうね!勿論よ!」

 

 

ころりとマートルは声音を変え、俺を舐めるように見ながらふわふわと飛ぶ。ちらり、とヴォルに視線を向ければ、ヴォルも意味がわかったのかこっそりとこの場から逃げ出そうとして音もなく後退りをしているところだった。

 

 

「ああ、本当に美しいわ……肌も初雪のようにスベスベで……まつ毛も長くて……鼻筋は通っていて……こんなに綺麗な人なんて、今まで見た事──そういえば、むかーし、ノアと同じくらいきゃーきゃー言われてる人がいたわねぇ……」

「え?誰?」

 

 

俺並みにきゃーきゃー言われてる人ってどこのどいつ?ま、ハリポタキャラ美形多いから──シリウスとか??

マートルは五十年前からホグワーツにいるし、風呂覗いてるから美少年美青年のアレコレナニトカを知ってるんだろうなぁ。

 

マートルはふわふわしながら「えーっとぉ、んーとぉ……」と俺を焦らす。その間にヴォルはトイレの暗がりへ姿を隠し、静かに扉へ向かっていた。よしよし、こうして俺が気を引いている内に逃げればいい。ヴォルの見た目は髪色を変えてもやっぱりジニーだし、ホグワーツを探索してるマートルが気付く可能性もある。

 

 

「確か……そう!トム・リドルよ!」

 

 

マートルは手をパチン、と叩き俺を見てにっこりと笑う。

 

 

「すっごくハンサムで、賢くてみんなに優しいトム。トムはみんなに好かれていて……そう、ノア、あなたみたいにファンクラブもあったわ」

「へぇー!……そんなにイケメンなら俺みたいにモデルやってたりしてないかな?見てみたいな」

「うーん、してなかったと思うわ」

 

 

モデルやってない事は勿論わかっていたが、それらしく適当に会話を続ける。マートルは俺が興味を持つ話題をふれたことに嬉しそうに笑い、ふわふわと側を掠めて通りながら「でもぉ」と上目遣いに俺を見上げながら言う。

 

 

「確か、ファンクラブの子が隠した写真がこのトイレにあったわね」

「まじで?」

「何だと?」

「うわ!帰ってなかったのかよ!」

 

 

いつの間にかヴォルが後ろに戻ってきていた。

ヴォルはフードを掴み、マートルに下から覗き込まれても顔が見えないようにしながら辺りを見渡す。

 

 

「どこにあるんだ?」

「あら、アンタも見たいの?ふん、アンタみたいな顔を見せない奴に──」

「俺も見たいな、マートル」

「──ここよ!この鏡の裏」

 

 

マートルはヴォルを睨んでいたが、俺の言葉にすぐに態度を変えると洗面台の近くにある一つの鏡を指差した。

すぐにヴォルが鏡の裏に向かって杖を振る。

びゅう、と風が吹き、鏡と壁のわずかな隙間を風が通れば一枚……いや、二枚の紙がひらりと飛び出る。すぐにヴォルは掴もうとしたが、それよりも早く俺が手を伸ばし空で掴んだ。

ヴォルは嫌そうに口を歪ませ、チッと舌打ちをするが俺の手から無理矢理奪うことは無い。

 

 

「どれどれ」

 

 

色褪せ少しカビた写真をぴらりと捲る。

そこにいたのは、セピア色の美男子であり、視線が合ってないところから間違いなく盗撮である。多分大広間で食事してるところを撮られたんだなこれ。

黒い髪、高い背、大きくやや吊り目がちな瞳。静かに上品に食べている様子は知性も感じられて、女子に多大な人気がありそうな見た目。

うっ……確かにイケメンだな!俺と方向が違うタイプの正統派イケメン!女子が好きそうな真面目爽やか系イケメン!!

俺のアイドル系美青年とは違う、どっちかというとセドリックっぽい見た目好青年!中身はもちろんお察しだけど。

 

 

「確かに……。めちゃくちゃかっこいいな」

「でしょう?周りの子はみんなうっとりしていたわ。その次に人気でハンサムだったのは、えーっと……そうねえ、シリウス・ブラックかしら」

「シリウス・ブラックの写真は?」

「ここじゃ無いわね。シリウス・ブラックの写真の闇取引は、確か天文台の塔の螺旋階段の途中にある、果物が沢山描いてある絵の裏だったわ。でも多分、ファンが持っていってないと思うけど」

「……イケメンってそんなに闇取引されてるんだ?」

 

 

マートルは不敵な笑みを浮かべると「勿論よ」と当然のように言う。「イケメンだけじゃなくて、可愛い女の子の写真も闇取引されてるわ」だなんて、ナニに使ってるのかあんまり知りたく無いような事も言われてしまった。

まぁ、そりゃあ。娯楽の少ない閉鎖的な寮生活で?可愛い女の子やかっこいい男の子がそういう標的になるのは仕方がない。

ただ闇取引はなぁ……俺はともかく一般人からしたらかなりショックだろ……。

 

 

「でも、そのトム・リドルのファンはこの写真入れっぱなしにしてたんだな」

 

 

ファンだったら取りにくるの忘れなさそうだけど。

ひらり、と振ればヴォルの視線が写真を追っているのが見えた。

ヴォル──ヴォルデモートからしたら、自分の外見は憎き父親と瓜二つでありそんな頃の写真が残っているなんて思いもしなかったのだろう。消したくてたまらないんだろうな。

 

 

「ああ、それは──このトイレで色々あったから」

 

 

マートルは俺の興味をくすぐろうと、含みのある言い方をしてふわりと天井付近まで飛ぶ。「聞きたい?聞きたい?」とその目が語っていたが、マートルが話す前に昼休み終了のチャイムの音が遠くから響いた。

 

 

「──あん、残念ね」

 

 

もっと話したかった。とばかりにマートルは眉を下げ頬を膨らませながら俺の前に立ち、甘えるような上目遣いをする。

あ、そうだ。マートルが色んなところで「ノアがトイレに来た」って言いふらさないように口止めしとかないとなぁ。

 

マートルには触れられないけど、そっとマートルの頬に手を伸ばし──マートルはぴしりと固まった──にこり、と微笑みかける。うわ、冷気がやばい。

 

 

「マートル。……君と話した事は二人だけの秘密にしたいんだ。俺のファンが嫉妬するからね、だから、今日の事は内緒……な?」

 

 

シー、と口に手を当て悪戯っぽく笑えば、マートルは目を大きく見開きぶるぶると震え、頬に手を当て「きゃあああっ」と甲高い悲鳴を上げ俺を通り抜けた。

 

 

「寒っ!」

「勿論よノア!私はここでずぅううううっと待ってるわ!!」

 

 

そんな叫びと共に、マートルは自分の場所であるトイレの便器の中へ飛び込んでしまった。

 

びっしゃーん、ぼたぼたぼた。ぴちゃん。

と水の音がトイレにこだまする。

トイレの奥の排水管辺りからは、くぐもったマートルのご機嫌な鼻歌が聞こえてきた。

 

 

「よし、んじゃ帰るか」

 

 

授業開始まであと五分くらいだし。とヴォルを見れば、ヴォルはじっと俺の手にある写真を睨む。

 

 

「その写真、どうするんですか?」

「どうしようかなー」

「……そんな、昔の人の隠し撮りを持っているなんて、趣味が悪いですよ」

「そうだけどさ、本人は知らないわけだし。写真の古さからしてもまあまあ昔の人だろ。本人が嫌だっていうなら捨てるけどさ」

「………」

「何、一枚欲しい?……ヴォルはこういう外見が好みなんだー?」

「……ええ、とっても」

 

 

からかえば、にこ!とヴォルは口先だけで微笑む。

彼の偽りの鎧ががらがらと剥がれ落ちているのか、フードからチラチラ見える目は嫌悪と憎悪に塗れていた。そりゃそうだ、日記のヴォルは自分の父親を殺して分離した魂を分霊箱に残したんだもんなぁ。

どの分霊箱よりも、一番父親に対する恨みや憎しみの念は強そう。鮮明な記憶として焼き付いているだろうし、何よりまだまだ子どもだし。

 

 

「じゃ、一枚だけ。この一枚は俺のだから」

 

 

トム・リドルのブロマイドかっこ盗撮だなんてレアアイテム、簡単に渡す事はできない!

だって、もしリドル対ハリーの時に見に行けなかったら、若きトム・リドルの姿はもう二度と見れないんだ。ヴォルは見た目ジニーのままだし、ヴォルデモートは蛇ヅラ鼻ナシ禿頭になってしまったし!いやあれはあれで最高だけどさ。

 

ヴォルは不服そうにしたが、俺を納得させる言い訳が見つからなかったのだろう。じっと写真を睨みつけたまま黙り込んだ。

 

 

「ヴォルも早く授業行けよー」

 

 

写真をローブのポケットに突っ込み、そのまま背を向ける。

 

 

──バチッ!

 

 

「……ん?」

 

 

背中で強い静電気があったような、電気玉が弾けたような音がして振り返れば、ヴォルが杖を俺に突きつけていて、なんだか目を見開いていた。

 

 

「なんで……」

 

 

呆然、と呟く。

そんなにこの写真渡したくなかったんだ?

 

 

「俺、世界最強の魔法使いだって言わなかったか?」

 

 

驚愕したままのヴォルに ひら、と手を振り笑いかけ、トイレから出て次の授業がある教室へ向かう。

 

 

俺を気絶させたかったのか、硬直させたかったのか。方法はわからないがその隙に写真を奪おうとしたのだろう。

だけど、流石に──若きヴォルデモート卿と丸腰で会うほど馬鹿な俺じゃない。まだ互いに信頼も信用もしてないし。ヴォルと会う時は勿論防御魔法マシマシだ。

 

 

「しっかし……めちゃくちゃかっこいい。やっぱ生で見たいなぁ……」

 

 

リドル少年の写真をまじまじと眺め呟いた。

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。